【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 101 [千五百七十三年 二月中旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十三年 二月中旬(*原文网页序列号 - 118)
将軍、足利義昭は自業自得により窮地へと追い込まれていた。
将军、足利义昭因自己的所作所为而陷入了困境。
戦国最強と目され、反織田思想の根幹となった武田軍は、格下と思われた織田・徳川連合軍に完膚なきまでの敗北を喫した。
被認為是戰國時代最強的武田軍成為了反對織田思想的核心,但他們最後被被視為劣勢的織田和德川聯合軍打敗。
時流を読み間違った。それを思い知った反織田連合の国人達は、蜘蛛の子を散らすように離れていった。
时代潮流被错误地解读。反织田联盟的国民意识到了这一点,他们纷纷离开,就像散落的蜘蛛之子一样。
朝倉に至っては2万もの兵を擁しながら、一度も矛を交えることなく自領である越前へと逃げ帰った。
朝仓一方虽然拥有两万军队,但从未交战,最终逃回了自己的领土越前。
反織田勢力の急先鋒、本願寺は長島一向宗の敗残兵受け入れで自縄自縛に陥っていた。
反织田势力的急先锋,本愿寺因接收长岛一向宗的败残兵而陷入了自缚的境地。
信長は敗残兵に必要最低限の食料しか持たせずに解放したため、本願寺へと到達する頃には飢えて殺気立った難民と化していた。
信长释放败残兵时,只给了他们最少量的食物,导致他们在到达本愿寺时已经饥饿,成为了充满敌意的难民。
これを見捨てれば衆生救済を謳う本願寺は大義を失う。受け入れれば遠からず食料不足から破綻するのが見えていた。
如果放弃这个,宣扬普度众生的本愿寺将失去大义。如果接受它,很快就会看到由于粮食短缺而崩溃的情况。
教義を拠り所に民衆を動員しただけに行動を縛られ、教義ゆえに破滅へと突き進む信長の策に抗することが出来なかった。
仅依赖教义动员民众,因此受到行动的束缚,无法抵抗信长冲向灭亡的计划,这是教义的影响。
義昭陣営の内部崩壊も始まっていた。まず義輝が暗殺された時から支え続けてくれた細川藤孝が離反した。
义昭阵营内部也已经开始崩溃。从义輝被暗杀时起一直支持他的细川藤孝率先离开了。
そのまま光秀を通じて織田へと下り、義昭陣営の内部事情までが筒抜けとなった。
原文:そのまま光秀を通じて織田へと下り、義昭陣営の内部事情までが筒抜けとなった。 简体中文翻译:直接通过光秀传达给织田,義昭的内部情况也一览无余了。
細川藤孝が離反する前に、義昭へと告げた最後の言葉が「ほとほと愛想が尽き申した」であった。
细川藤孝叛离之前,他告诉义昭的最后一句话是“实在无法再忍受了”。
茨木城主の荒木村重も、三好家から織田家へと移ったこともあり、改めて信長に臣従することを宣言した。
茨木城主荒木村重也从三好家移居到織田家,因此再次宣布效忠信长。
既に義昭がどれほど手を尽くそうとも、彼に味方する者はおらず、増してやこの期に及んで兵を出そうなどと言う奇特な勢力は存在しなかった。
即使義昭竭尽全力,也没有人支持他,更不用说在这个时候提出出兵等奇怪的力量了。
その状況下で、武田軍を鎧袖一触に下した織田軍を率いた信長が京へとやってくる。
在那种情况下,率领着打败武田军的織田军的信长来到了京都。
義昭だけでなく、反織田連合に与(くみ)した国人たちは眠れぬ夜を過ごし、逃れ得ぬ死の気配に怯え暮らしていた。
不仅是义昭,与反织田联盟合作的国人们也度过了不眠之夜,生活在逃不掉的死亡气息中,感到恐惧。
「ふふっ、愛い奴よ」
“呵呵,可爱的家伙”
一躍、時の人となった信長であったが、彼は西洋の猫に心を奪われていた。
一跃成为时代人物的信长,但他被西方的猫所迷倒。
彼だけでなく、公家筆頭の近衛前久、織田家における京の要たる明智光秀、そして義昭を見限った細川藤孝の三人も同様だった。
不仅是他,作为公家筆頭的近衛前久、在織田家中担任京都要职的明智光秀和看不惯義昭的細川藤孝也同样如此。
朝廷を牛耳っていた関白、二条晴良は信長から疎んじられて勢力を失い、彼を擁護していた義昭も死に体となっているため孤立し、信長から帝への奏上もあって前久は帰洛を許されていた。
关白二条晴良曾牛耳朝廷,但被信长排挤失势,同时支持他的义昭也奄奄一息,导致孤立无援。因信长向天皇上奏,前久被允许返回洛阳。
前久は二条城前に新居を構える予定だが、それまでは今まで通り岐阜で過ごしていた。
前久计划在二条城前建立新住所,但在那之前,他一直在岐阜度过。
「なんという愛くるしい仕草……」
“多么可爱的举止啊……”
今日は舶来の猫をお披露目するという名目で、3人は特別に招待されていた。
今天三个人特别受邀,请到展示外来猫的场合。
尤もターキッシュアンゴラを信長から譲り受けて飼っている関係からも、4人の親交はそれなり以上に深くなっていた。
通过从信长那里继承土耳其安哥拉猫的养殖关系,这四个人之间的友谊也变得更加深入。
「ニャーニャー」
"ニャーニャー" translates to "喵喵" in Simplified Chinese.
「うにゃあ」
"うにゃあ" translates to "呜呜呜" in Simplified Chinese.
錚々たる顔ぶれだが、猫にとっては関係ない。猫たちは奔放に振る舞い、誰もそれを咎めないため、爪を立てられた畳はボロボロになり、障子や襖は穴だらけという惨状を呈していた。
阵容强大,但对于猫来说并不相关。猫们自由自在地行动,没有人责备他们,因此脚爪磨损的榻榻米变得破烂不堪,障子和纸门布满了洞。
信長たちはその行状を咎めるどころか、我が物顔で毛づくろいをする姿に頬を緩めていた。
信长们并没有责怪他们的行为,相反地却面带微笑地看着它们自顾自地舔毛。
貴人の為にと贅を凝らされた菓子にも手を付けず、何者にも縛られぬ自由な猫の生き様を愛した。
为了贵人所准备的精心制作的点心,也不敢碰一口,因为他爱上了那些无拘无束、不受任何东西约束的自由的猫的生活方式。
「まるで猫喫茶ですね」
“简直就像猫咖啡厅一样。”
現代のアニマル喫茶を知る静子は、思わず口を滑らせた。緩みきった表情を見ては彼らの沽券に係わると思い、後方に控えていた彼女だったが、その考えは正しかった。
知道现代动物咖啡厅的静子不小心说漏了嘴。她看到放松的表情,意识到这关乎他们的生计,所以一直待在后面。她的想法是正确的。
恐らく4人の現状は、彼らの配下には到底見せられない有様だろう。
可能四人现在的情况,对他们的下属来说绝对不能展现。
日々、厳しく己を律する事を求められ、常に緊張を強いられる生活を送っているせいか、猫の愛らしくも美しい佇まいと、気品さえ感じる自由奔放な振る舞いに魅せられるのだろう。
日复一日地要求自己严格自律,始终处于高度紧张的生活状态,也许是因为这样,才让我迷上了猫那可爱而美丽的姿态,感受到了它自由奔放的优雅气质。
そんな事を考えていると、猫たちが大きく欠伸をすると、うずくまって眠ろうとしている事に気付いた。昼寝の時間だと察した静子は、全員に聞こえるよう立ち上がって手を叩く。
想着这些事情,当猫们大口打哈欠、蜷缩睡去时,静子注意到了这一点。她意识到是午睡时间了,于是站起来拍了拍手,让所有人都能听到。
「はい、お開きですよー」
"好了,可以结束了哦"
4人は不満さを隠そうともせずに振り返った。如何に不満であろうとも、これ以上は猫の負担になるため休ませる必要があった。
四个人不隐藏不满地回头。无论多么不满,为了不给猫带来更多负担,需要让它休息一下。
暗にもう少し延長しろと要求する4人に、静子は指でバツ印を作って強く言い放つ。
静子用手指做出了叉叉的标志,强烈地说道,要求延长一点时间的四个人。
「駄目です。これ以上は猫が嫌がります」
不行。再这样猫会讨厌的。
猫に嫌われるとあっては4人も引き下がる他はない。
如果被猫嫌弃,除了四个人都放弃之外别无选择。
「仕方あるまい、猫を休ませるとしよう。隣で将棋でも指さぬか?」
"无可奈何,就让猫休息吧。要不要在旁边下一盘将棋?"
「上様、某がお相手仕ります」
"上位者,我会为您提供服务"
「某が記録を取りましょう」
让某人来记录。
「それでは私は、少しばかり外の空気にあたるとします」
“那么我将出去呼吸一点新鲜空气。”
4人はそれぞれに動き始めるが、その所作が奇妙なことに気付いた静子は、制止の言葉を投げかける。
四个人开始行动,但静子注意到他们的动作很奇怪,于是喊停他们。
「お待ちなさい! 皆さま、何を懐に入れておられるのですか?」
“请等一下!大家,你们都带着什么在怀里呢?”
ぎくりと言う擬音が聞こえてきそうな程に固まった4人は、静子の視線を避けるように露骨に背を向けてそっぽを向いた。と、同時にどこからともなく猫の鳴き声が聞こえる。
似乎听到了类似于“咯咯”的声音,四个人僵硬地站着,明显是在避开静子的视线,背对着她。与此同时,也听到了从何处传来的猫叫声。
静子はそれで全てを察した。彼らはそれぞれにお気に入りの一匹を懐に隠しもっていたのだ。意外な手癖の悪さに静子は頭が痛くなった。
静子已经明白了一切。他们每个人都把自己喜欢的一只小动物藏在怀里。静子被他们意外的坏习惯搞得头痛。
「では、こうしましょう。おひとり様一匹まで、譲歩できるのはここまでです」
“那么,就这么办吧。每人只能放弃一只,我们现在可以妥协到此为止。”
「よし! 言質を取ったぞ、ものども入って来い」
"好了!我已经取得他们的承诺,现在让他们进来吧。"
信長の言葉とともに、入り口から猫運搬専用の籠を抱え持った小姓たちが入ってくる。彼らはそれぞれの小姓に懐から出した猫を預け、籠に猫を寝かせるよう指示していた。
小姓们手拿猫货专用的篮子,跟随着信长的话语从入口进来。他们从怀里掏出各自的猫,把它们交给小姓们,指示他们将猫放在篮子中休息。
彼らの準備の良さに開いた口が塞がらない静子だった。やがて4人は信長がサイベリアン、前久がブリティシュショートヘア、光秀がノシュク・スコグカット、細川藤孝がエジプシャン・マウを連れて部屋を後にした。
静子张大嘴巴惊叹于他们的准备之充分。不久之后,4人带着信长的西伯利亚猫、前久的英国短毛猫、光秀的挪威林猫和細川藤孝的埃及猫离开了房间。
静子は使用人たちと共に残った猫をケージに入れると、腰を下ろして一息ついた。
静子和使用人们一起把留下的猫关进了笼子,然后坐下来喘了口气。
「ここまで猫に熱狂するとはなあ。帝や京の民たちもターキッシュアンゴラに夢中だし」
“这么狂热地喜欢猫啊,天子和京城居民们也热爱土耳其安哥拉猫呢。”
信長より贈られたターキッシュアンゴラを、正親町天皇は深く愛した。宇多天皇と同じく猫日記を毎日認(したた)め、事あるごとに「うちの子が一番可愛い!」と周囲に自慢していた。
信长赠送给正觉寺天皇的土耳其安哥拉猫备受疼爱。他像宇多天皇一样每天都记录猫的日常,并总是以“我的孩子最可爱!”来炫耀。
日記だけに飽き足らず、正親町天皇はターキッシュアンゴラのために専用の小屋(・・・・・)を建て、猫の世話役として5人を置き、近くに獣医を待機させた。
不仅仅满足于写日记,正親町天皇还为了他的土耳其安哥拉猫建造了一个专用的小屋,并雇佣了5名猫的看护人员,并让兽医随时待命。
その熱狂ぶりは帝の寵を競う女性たちを嫉妬させ、後宮女房や公家衆も愛憎入り混じる光景に絶句した。
那种狂热嫉妒了追求皇帝宠爱的女性们,使得宫廷女仆和公家人士也被爱恨交织的景象惊讶地屏住了呼吸。
正親町天皇より少し遅れて京の民にも、ターキッシュアンゴラが贈られると、京の民は「お白(しろ)さま」と呼んで非常に可愛がった。
从正民间多少有些晚的天皇开始,京都的居民也被赠送了土耳其安哥拉,京都的居民非常喜欢把它们称为“白色 (shiro) 轻音”,因为它们非常可爱。
民たちは誰に言われるまでもなくターキッシュアンゴラの世話を買って出て、子供たちも進んで遊び相手となっていた。
人们不需要被告知就自发地照顾土耳其安哥拉,孩子们也乐意做他们的玩伴。
明日をも知れぬ時代背景が、猫のような愛玩動物に心酔する一因となったのではと、静子は考える。
明天未知的时代背景可能成为迷恋像猫一样的宠物的原因,静子这样认为。
犬も同じく愛玩動物ではあるが、一時期京で猛威を振るった野犬のイメージが定着しており、犬人気の復権は難しく思われた。
犬也属于受人喜爱的宠物,但京都曾经有过猛犬泛滥的印象,导致恢复狗狗的受欢迎程度比较困难。
「そう言えば、足満おじさんが将軍と交渉するんだっけ。近衛様は問題ないと仰ってたけど、大丈夫かなあ」
“说起来,好像是足满大叔与将军进行谈判。虽然近卫大人说没有问题,但还是有点担心啊。”
今回の交渉では、義昭に息子を人質として信長に差し出させ、蟄居中に家臣から諫めさせるのが目的だ。
这次谈判的目的是让義昭把他的儿子作为人质交给信长,并让他的家臣在蟄居期间劝阻他。
だが感情的な義昭は意固地になると周囲を顧みない。処刑されないのを良いことに、徹底抗戦の構えを取る可能性すらあった。
但情绪化的义昭一旦固执起来就不会顾及周围。他甚至可能会利用自己未被处决的优势,采取全力抗战的姿态。
この交渉の場において、足満が如何に義昭を制御できるか、それが試される場となる。
在这个谈判场合,将考验足满控制义昭的能力。
「逆恨みして、もう一回ぐらい戦いを吹っかけてきそうだなあ」
“他可能会因为怨恨而再次发起一场战斗。”
そんな未来を予想してぼやく静子は知らない。信長が静子に語った目標は、あくまでも最低限であり、真の狙いは他にあることを。
那个抱怨着对未来的预测毫无所知的静子不知道。信长告诉静子的目标只是最低限度,真正的目的在别处。
信長の真の目的。それは足利将軍家が(・・・・・・)自ら幕府を閉ざす(・・・・・・・・)事だ。室町幕府に引導を渡す、足満はまさにうってつけの人材と言えた。
信长的真正目的是关闭足利将军家的幕府,将他们送上绞架。足满正是最合适的人选。
織田家と足利将軍家との交渉は、おおよそ交渉と呼べるものではなかった。足満は開口一番、一方的に要求を突き付けた。
織田家与足利将军家的谈判基本上不能称为谈判。足满一开口就单方面提出了要求。
「異論があるなら申してみよ。その時点でわしの敵(・・・・)となるがな」
「如果有不同意見,就說出來試試看。那時候你就成為我的敵人了」。
静寂が支配する場で、足満が足利将軍家に仕える者たちを睥睨する。その様は異様の一言に尽きた。
在静寂的支配下,足满目睹着侍奉着足利将军家的人们,这场景异常恐怖。
織田家の交渉役として出向いたはずの足満が、本来義昭が座すはずの上座に腰を下ろしていた。肝心の義昭は、足満の尻の下に敷かれ、座布団の役目を仰せつかっていた。
本来作为织田家的谈判代表出面的足满,却坐到了本应由义昭坐的上首位置。而关键的义昭则被安排在足满的下面,扮演了座垫的角色。
義昭の顔は見事に腫れ上がり、あちらこちらに青あざを拵えているところから、足満が義昭を殴って黙らせたことが窺えた。
义昭的脸肿得惊人,到处都瘀青,这表明足满打了义昭并让他闭嘴。
「織田はこの阿呆の子を将軍として盛り立てようとしている。が、わしはそんな話を認めはせん。足利将軍家は征夷大将軍の役目を返すのが世の流れよ」
“織田试图让这个傻瓜的孩子成为将军,但我不会承认这样的说法。足利将军家归还征夷大将军的任务是时代的潮流。”
「あ、兄上……それはあまりにも……ぐふっ!」
"啊,兄长......那也太......咳咳咳!"
義昭が反論をしようとするが、足満は聞く耳持たずとばかりに義昭の頭を踏みつけ、彼の顔を床にこすり付けさせた。
义昭想要反驳,但是足满不耐烦地将他的头压在地上,并将他的脸摩擦在地上,不听他的解释。
足満の膂力に抗えるはずもなく、義昭は呻き声を上げつつも床に額をこすり付けることとなる。
义昭无法抵抗足满的力量,只能呻吟着将额头磨擦在地板上。
「この期に及んで未だ分からぬか! 愚か者どもが。天下泰平(たいへい)ならば、貴様ら無能が遊んでいようと世は回る。しかし今は乱世だ。貴様が恋々と将軍位にしがみ付き、無能を晒し続ければ民は営々と受け継がれた将軍を軽んじるようになる。武田が織田を倒せば、足利の世が戻ってくるだと? 世迷言を、武田が織田に代わるだけで足利の世など二度とは来ぬ。乱世に於いて力なきは罪。力なき将軍に従う者などおりはせぬ。足利将軍家は地盤を固めるまでの繋ぎに過ぎず、利用価値がなくなれば罪を押し付けられて断罪されるのが落ちよ」
“到了这时候还不明白吗?这些愚蠢的人啊!如果世界大同了,无能的人们玩耍也无妨,但现在是乱世。如果你们痴心妄想地抓住将军的位置,继续晒出无能,百姓们就会轻视依然传承下来的将军。武田打败織田,足利世家就会复兴吗?那是荒谬言论,只是武田取代了織田而已,足利世家不会再回来了。在乱世中,无力就是罪。跟随无力的将军的人是不会存在的。足利将军家只是为了打牢基础的过渡措施,一旦用不上了,他们就会被指控罪行并判刑。”
仮に武田が織田・徳川連合軍を打ち破り、上洛を果たしていたとする。自らが信仰する宗教すら政治利用する信玄だ。足利将軍家の権威を利用するのに躊躇うはずがない。
假设武田成功打败了织田和德川的联合军,并且达到上洛。信玄即使自己信仰的宗教也会被政治利用。他不会犹豫利用足利将军家的权威。
信長と同じく、いやもっと苛烈に義昭を利用し、勢力図を塗り替えるために粛清を繰り返し、その全てを義昭の罪として裁くだろう。
像信长一样,甚至更加残忍地利用义昭,为了改写势力图而反复进行清洗,并将所有行动都归咎于义昭的罪责。
結局、戦う力を持たない足利将軍家は、食われるだけの弱者に過ぎない。
最终,没有战斗力的足利将军家只是一个被吞噬的弱者。
「上京(かみぎょう)ごと滅ぼされるのを望むか、それとも波風を立てずに去るか、好きな方を選べ。結論を下す前に一つだけ教えてやろう。貴様らが再び織田へ反旗を翻した時、その先陣に立っているのはわし(・・)だ」
“你可以选择是希望京城被毁还是默默无闻的离开。在做出决定前,我只告诉你一件事:当你再次向织田翻起叛旗时,我将站在先锋。”
足満は腰に佩いた刀の柄へと手を掛ける。その音で足利将軍家のものは足満を見上げ、そして言葉を飲み込んだ。
足满把手放在佩戴在腰间的刀柄上。足利将军家的人们听到声音后抬头看向足满,然后噤声不语。
彼らは足満の表情を見て震え上がった。昔の彼を知るものは、その変貌ぶりに困惑する。足満の表情はおよそ人が浮かべるものではなく、悪鬼羅刹の類がするそれだった。
他们看到足满的表情,吓得发抖。曾经认识他的人,对他的变化感到困惑。足满的表情不像人类应有的表情,更像邪恶恶鬼。
意見を述べるまでもなく、視線を合わせるだけでも殺される。異様な熱を帯びつつも、背筋を凍らせる程に冷たい視線に見据えられると、己が一刀の下に切り伏せられる未来を鮮明に思い描き、顔を上げることすらできなくなった。
不需要发表意见,只是对视而已就会被杀死。当面对一种异常炽热却又冷酷的目光时,整个人都会感到背脊发冷并清晰地想象到自己最终会被一刀斩落。甚至连抬起头都做不到。
足利家とて武家の一門。中には豪胆な者もいたのだろうが、皆一様に押し黙り、下を向いて震えていた。彼らは足満を『畏怖』した。人ではなく非業の死を遂げた怨霊が顕現したのでは、とさえ思った。
足利家虽然是武士的一门,其中也许有勇猛的人,但他们都默默地低头颤抖着,对着足满感到惊恐。他们认为,这不是一个普通的人,而是冤魂的出现,经历了非人类的死亡。
「断っておくが、わしはわしを見捨てた足利家を恨んでなぞおらぬ、微塵もな。わしは様々な要因を天秤にかけ、足利家にとって最も良い道を選んでいるに過ぎぬ」
"我先声明,我并不恨弃我而去的足利家,一点都没有。我只是将各种因素权衡,为足利家选择最佳的道路而已。"
冗談めかして語る足満だが、誰も笑いはしなかった。否、笑えなかった。
开玩笑似的谈论着足满,却没有人笑。不,他们笑不出来。
笑声を立てた瞬間、足満がどのような行動をとるか誰も想像できず、自分の命を賭けての博打を打てるものはいなかった。
笑声响起的瞬间,谁也无法想象足满会采取什么行动,没有人敢孤注一掷。
「わしとて鬼ではない。こちらの条件を飲むのなら、有終の美をくれてやる。足利家は武田にそそのかされた(・・・・・・・)とでも申し開きをせよ。わしから織田に口をきいてやろう」
“我并不是鬼。如果你同意这个条件的话,我会给你一个完美的结局。如果你被武田诱导了的话,那就请向我开口承认。我会替你跟織田说话。”
「わかり、申した。織田家からの条件、全て受け入れて降伏いたします」
“我明白了,我会接受来自织田家的所有条件并投降。”
結局、これは交渉ではなく織田家からの降伏条件を告げる場に過ぎなかった。足利将軍家には最初から降伏するか、死ぬかしかなかったのだ。
结果,这只是一个宣布来自织田家的投降条件的场合,而不是交涉。对于足利将军家来说,要么投降,要么死亡。
織田が武田を破ったことで、世の流れは織田家へと傾いた。今まで反織田連合に加担していた国人も次々と離反し、急先鋒であった本願寺ですら意見が割れ始めていた。
織田打败武田之后,局势开始向織田家倾斜。曾经反对織田的联合国士们也纷纷离开,即使是当时极为强硬的本愿寺内部也开始出现分歧。
完全に孤立した足利将軍家では、そもそも交渉の舞台に立つことすら出来ない。
在完全孤立的足利将军家,甚至无法走向谈判的舞台。
「その言葉、忘れるな」
"那句话,别忘了" (Nà jù huà, bié wàng le)
それだけを告げると足満は義昭から立ち上がり、周囲の視線を意にも介さず部屋を後にした。
只听到这句话,足满便站起身来,毫不在意周围的目光,离开了房间。
彼の足音が聞こえなくなった頃、足利将軍家一同が盛大に息を吐きだしたのは言うまでもない。
当他的脚步声消失时,足利将军一家无疑松了一口气。
信長が義昭に申し付けた条件はいくつかあるが、主要なものは以下の通りだ。
信长向义昭下达的条件有几个,其中主要的如下:
一つ、足利義昭は征夷大将軍を自主的に退き(・・・・・・)、その地位を朝廷へ返す。
一个,足利义昭自愿辞去征夷大将军的职位,并将该职位归还给朝廷。
一つ、足利家に伝わる宝刀や名刀、その他私有財産の全てを織田家(実際は足満)へと譲り渡す。
将足利家传世的珍宝剑、名刀以及其他私人财产全部让给织田家(实际上是足满家)。
一つ、京より立ち退き、以後は毛利家預かりとする。
一个,从京都搬离,以后归属于毛利家保管。
一つ、嫡子である足利義尋を、信長に人質として差し出す。
将足利义寻作为正儿子,作为人质交给信长。
将軍義昭との交渉も無事終了したと聞かされ、静子は暇を持て余していた。後は信長の帰国に従って、戻るだけなのだが、なかなか出立の報せがこない。
听说与将军义昭的谈判也顺利结束后,静子无事可做。只等信长归国后一同归去,但迟迟没有出发的消息传来。
帰路の途中で伊勢神宮へと寄る関係から、その準備をしていたが、それすらも終えると本格的にやることがなくなった。
因为在回程途中要去参拜伊势神宫,所以做好了相应的准备。但是一旦完成了这些准备,就真的没有什么具体的事情要做了。
信長は権力者としての付き合いや、決裁すべき案件が山ほどあり、前久は建設中の自宅を視察したり、関係者への挨拶をしたりと多忙な日々を送っていた。
信长作为权力者有很多需要处理的案件和审批事项,前久则忙于视察正在建设中的自宅以及向相关人员打招呼。
対する静子は信長が厳選した少数の者しか訪ねてこないため、農地の無い京では暇を潰すことすらままならなかった。
对于静子来说,由于信长只邀请了少数精挑细选的人前来访问,所以在没有耕地的京城里,她甚至无法打发时间。
最初は何をしようかと思い悩んだ静子だが、京ならではの調査をしようと思い立った。
一开始静子一直在考虑要做什么,但后来想到了可以做京都独有的调查。
それは市場調査だ。尾張・美濃に於いては末端まで把握しているが、京は勝手が違う。
这是市场调查。在尾张和美濃地区,我们已经了解到了最低层,但是京都的情况不同。
どこの店が何をどこからどれだけ仕入れ、それがどれだけ市場へ流れ、余剰は何処へと流れていくのか細かく調査しようと静子は考えた。
静子考虑进行详细调查,确定每家商店从哪里以何种数量购进商品,商品有多少进入市场,剩余的商品流向何处。
市場の仕組みを把握するのも大事だが、どこに寺社勢力の金脈があるかを調べるのも大きな目的だ。
了解市场机制很重要,但也需要调查寺庙力量的资金来源。
本願寺に代表される寺社勢力は、畿内に網の目のようなネットワークを形成し、作物や商品の供給量を調整して高い市場価格を維持し、暴利を貪るという寡占企業さながらの事業を展開していた。
本愿寺代表的寺社力量在近畿地区形成了像是网状的网络,调控着作物和商品的供应量,维持市场高价,开展着类似垄断企业的商业活动,追求高额利润。
武装した僧兵を抱え、専売品による市場操作を行う巨大な組織。朝廷や多くの武家と繋がりを持つ彼らを潰すには、単純な武力に任せたごり押しでは効率が悪い。
拥有武装僧兵的大型组织,通过专卖品进行市场操纵。要摧毁他们与朝廷和许多武家的联系,单纯地依靠武力强行攻击效率不高。
そこで静子が着目したのが経済だ。経済を議論するならば経済学の出番となるが、高校生であった静子には荷が重く、そちらは足満が最も詳しい。
因此,静子注意到的是经济。如果要讨论经济,那么就会涉及到经济学,但对于还在上高中的静子来说,这个领域太过沉重,因此足满是最了解其中情况的人。
しかし現代日本の高等教育を受けた静子は膨大な基礎知識を持っており、元より歴史を趣味としていたことで、ある程度の経済の動きを把握していた。
然而,接受现代日本高等教育的静子拥有丰富的基础知识,并且由于原本就以历史为兴趣,因此在一定程度上理解经济走向。
日本史と経済では一見関係無さげに思えるが、実際は政治と経済は切って離すことの出来ない関係にあった。
日本历史和经济乍看起来似乎没有关系,但实际上政治和经济是密不可分的关系。
特に信長が取った施策は、経済に根差したものが多く、それゆえ彼は当時の人間から理解されず、異端とされていた。
特别是信长采取的政策,大多基于经济根源,因此他当时并未被人理解,并被视为异端。
後の世に於いて信長が神をも畏れぬ人間と呼ばれるのも、運否天賦が左右する商売事をするに当たり、その運命を司るとされた神仏を奉じる寺社勢力に真っ向から立ち向かったからだ。
在后世,信长被称为不敬神明的人,是因为在经营商业时,他直面崇尚神佛的寺社势力,这些寺社势力被认为主宰着命运。
「うーん、割と生活必需品が高いね。特に油が高い」
“嗯,相当多的生活必需品价格都很高。特别是油很贵。”
戦国時代、油は灯油(ともしびあぶら)としての需要が高い。
战国时代,油作为灯油的需求很高。
特に寺社は夜間に行う行事が多く、それゆえ油を独占的に扱う油座(あぶらざ)が寺社に多く、中には神人の資格を有した油神人(あぶらじにん)と呼ばれる商人がいた。
特别是寺庙和神社会在夜间有很多活动,因此会有很多油座专门经营油脂,并且在这些油座中,有一些商人被称为油神人,他们具备神人的资格。
特に有名な油座が、離宮八幡宮(りきゅうはちまんぐう)の大山崎(おおやまざき)油座である。もっとも応仁の乱で幕府の権威が失墜すると同時に、彼らの権力もまた地に落ちていた。
特别著名的油茶座位于离宫八幡宫的大山崎油茶座。然而,随着应仁之乱幕府权威的下降,他们的权力也跟着落了下来。
「だからといって、今すぐどうこうするとかは考えられないかな」
“因此,我觉得现在马上做些什么可能是不可想象的。”
付け入る隙は見えていた。しかし、時期を見誤れば思わぬ反撃を受けることになる。
露出了可乘之机,但若错过了时机,就会遭受意想不到的反击。
「静子様、上様がおいでになりました」
"静子小姐,上先生来了" translated to Simplified Chinese is "静子小姐,上先生来了".
どういった介入が望ましいのか考えていると、信長の来訪を小姓が告げた。特に急ぐ用事もないことから、すぐに向かうので先に信長を通すように命じて準備を整える。
当考虑到需要什么干预时,侍从通报了信长的到来。由于没有急事,他立刻命令做好准备,让信长先通过。
「足満以外は下がれ」
"除足满外全部下降"
信長と彼に同行していた足満、そして出迎えた静子が座ると、信長は開口一番人払いを命じた。小姓たちが息を飲むが、信長の無言の圧力に逆らえず席を立った。
当信长和他的同伴足满以及迎接他们的静子坐下来时,信长首先下令将仆人赶走。虽然侍从们感到惊讶,但他们面对信长无言的压力,不敢反抗,只能离开了座位。
蘭丸のみが微妙な表情を浮かべていたが、信長の命令に背けるはずもなく、皆と一緒に部屋を出る。
兰丸脸上露出微妙的表情,但他没有违抗信长的命令,和其他人一起离开了房间。
三人のみとなった部屋で、信長は用意された茶を一口飲んで声を発した。
在只有三个人的房间里,信长喝了一口准备好的茶,发出了声音。
「それで、何を企んでおる」
“所以,你打算干什么?”
「え?」
"哎?"
「……ここのところ、市場調査と嘯(うそぶ)いて、あちこち嗅ぎ回っていたではないか。またぞろ、何事か策を思いついたのであろう。何をするつもりなのか先に申せ、と言っておるのだ」
“最近你一直在市场调查,这只是谎言,你到处乱闻。我想你又想到了什么计策,先告诉我你打算做什么。”
信長の問いに対して惚けてみせる静子を見て、信長はため息を吐きつつ経緯を説明した。静子が市場調査を始めたことは、すぐに信長の耳に入った。
看到静子对信长的询问装出愚笨的样子,信长一边叹息,一边解释了经过。静子开始进行市场调查,这件事很快就传到了信长的耳中。
しかし、それが何を目的にしているのか、何の役に立つのか誰にも分らない。
然而,目前没有人知道它的目的是什么,有什么用处。
何しろ素人目には売り上げを調べているだけだ、それなりの商人ならば自分の商う商品に関してぐらいは把握している事柄である。
毕竟在业余人士看来,只是在调查销售额而已,而对于相应的商人来说,关于自己经营的商品,他们应该了解的事情至少是要掌握清楚的。
天下人の懐刀と呼び名も高い、静子自らが手掛けることには到底思えなかった。
‘天下人的得力干将并被称为“懐刀”,静子自己根本想象不到会亲自动手来做这事情。’
「ああ……はい。端的に言えば、本願寺の力を削ぐためです」
“啊……是的。简单来说,为了削弱本愿寺的力量。”
犬笛を吹いて犬達に周囲を警戒させると、静子は咳払いをして策を口にした。
当她吹响狗笛来警惕周围的狗,静子清了清嗓子并提出了策略。
「本願寺をはじめ、寺社勢力は畿内の経済を一手に握っています。故に彼らの財力は莫大であり、我々が武力で力圧(ちからお)ししようとも、彼らは経済力を背景に抗戦を続けるでしょう。ならば、補給を支える経済力を断つというのが、私の考えです」
「本愿寺及其他寺社势力掌握了畿内的经济。因此,他们的财力庞大,就算我们用武力压制也无济于事,他们会凭经济力量继续抵抗。所以,我认为断绝经济补给是解决问题的关键。」
「それと市場調査に何の関係があるのか申せ」
"那跟市场调研有什么关系?"
「彼らの市場支配は座に支えられています。独占販売権、非課税権、不入権等の特権を盾に競争原理を排し、生活必需品で暴利を貪っているのです。そこで彼らが独占している商品を調べ、より安い価格で市場へと流すのです。同じ商品がより安く買えるとあれば、利に敏(さと)い商人ならば飛びつきます。そうなれば彼らとしても値を下げざるを得ず、思うように資金を調達できなくなります。いつの世も、軍事力を支えるのは経済力です。経済力を失えば、自ずと養える兵力に翳(かげ)りが生じます」
他们的市场支配是由座位支撑的。他们以垄断销售权、免税权、不入权等特权为盾牌,排除竞争原则,在生活必需品上贪婪地获取高额利润。因此,他们会调查并以更低的价格将他们垄断的商品流入市场。如果同样的商品可以以更便宜的价格购买,那么敏锐的商人就会跳进去抢购。这样一来,他们不得不降低价格,无法按照自己的愿望筹集资金。在任何时代,支撑军事力量的是经济实力。如果失去经济实力,就会对养活士兵产生影响。
座とは特権を持つ一握りの人間が商品を独占し、高額で市場に流通させる仕組みである。これが寺社勢力に富を齎す源泉だと静子は言う。
坐席是指一小撮特权人士垄断商品,并以高价在市场上流通的机制。静子说,这是寺社势力获取财富的源泉。
この仕組みを破壊し、競争原理の働く市場を取り戻すことで、既得権益を持つ寺社勢力の力を削ぎ、活発な経済活動を促進させ、民にまでその利益を還元する。
通过破坏这种机制并恢复竞争市场的原则,削弱持有既得利益的寺社势力的权力,促进活跃的经济活动并回报给人民。
「ふむ。足満とは違う方向か」
“嗯。这是与足满不同的方向。”
「あれ、足満おじさんも何か考えていたの?」
“哎呀,足满叔叔也在想什么呢?”
「……端的に言えば金融政策だ。その為に通貨発行権を握る。これさえ掌握すれば、誰がどんな権利を振るおうと関係ない。金を介して商業が成り立つ限り、誰が市場を支配しようとも、更にその上前を撥ねる事が出来る。通貨を支配する者、即ちそれが経済の支配者となる」
「简而言之,这就是金融政策。持有货币发行权即可,谁拥有什么权利都无关紧要。只要商业以金钱为中介存在,无论有谁支配市场,都可以更进一步地推动其前进。掌握货币的人,即成为经济的支配者。」
信用を背景に無から金を産み、金を回すことで更なる金を生み出して利益を得る。足満の目指すところはそれだ。
以信用为背景,从虚无中产生财富,通过运用资金来创造更多的财富并获利。这就是足满所追求的目标。
商取引の原則は物々交換であり、それを便利にするため通貨が存在する。全ての商取引が通貨で行われれば、通貨を製造する者が物の価値の支配者となる。
商业交易的原则是物物交换,货币为实现这个原则的便利而存在。如果所有商业交易都采用货币进行,生产货币的人就成为物品价值的支配者。
江戸時代の幕府支配を揺るぎないものとしたのも、貨幣鋳造こそ他に委託したものの、通貨発行権を独占し経済を支配し続けたからである。
江户时代幕府得以保持稳固的统治之所以有赖于其独占货币发行权并持续支配经济,尽管铸币权已委托他人实行。
いわば通貨発行権は支配者の証と言える。
所谓货币发行权可以说是统治者的象征。
「まぁ確かに……紙幣を発行するの?」
"嗯,确实……要发行纸币吗?"
「それも不換紙幣(ふかんしへい)をな」
"那也是不可兑换的纸币"
不換紙幣とは金貨や銀貨の交換が保証されていない紙幣を指す。金銀の価値の影響を受けず、政府の信用で流通する貨幣なので、信用紙幣とも言われている。
不换纸币是指没有保证可以用金币或银币兑换的纸币。它是一种在不受金银价值影响的情况下通过政府信用在流通的货币,因此也被称为信用纸币。
現代の先進国は不換紙幣で、経済政策や供給量の調整を行う事で、通貨価値の信用を維持している。これを管理通貨制度(かんりつうかせいど)と言う。
现代先进国家通过使用不可兑换纸币来进行经济政策和供应量的调整,以保持货币价值的信誉。这被称为货币管理制度。
対して十九世紀から二十世紀前半の紙幣は兌換紙幣(だかんしへい)と呼ばれ、金貨や銀貨に交換する前提の紙幣だった。
从19世纪到20世纪初,纸币被称为兑换纸币,意味着它们是可以兑换成金币或银币的前提纸币。
貨幣というより、貨幣となる金や銀などの貴金属の預かり証の意味合いが強い。不換紙幣と違い、交換する金銀などの貴金属の価値の影響を受ける。
与其被视为货币,更应该被看作是存放黄金、银等贵金属的存款证明。与可交换的纸币不同,其价值受到交换金银等贵金属的影响。
「権威と信用は朝廷と織田家で担保し、市場への流通には寺社にも協力させれば良い。あ奴らが使うとなれば認知度は高くなる」
“权威和信用可以由朝廷和织田家来保证,而在市场上流通则可以得到寺庙和神社的合作。如果他们开始使用,认知度就会很高。”
不換紙幣は極論するとただの紙である。その紙切れを価値あるものとするには条件がある。
不更换纸币,严格来说只是一张废纸。要让这张废纸变得有价值,则需要满足一些条件。
それは信用、認知度、そして十分な量が市場に供給されることだ。
那就是信用、认知度以及市场上有足够的供应量。
信用は朝廷が保証するのだが、それが通用したのは貨幣そのものに価値がある貴金属であったためだ。
信用得到朝廷的保证,但其通用是因为货币本身具有贵金属的价值。
貨幣そのものに価値がない不換紙幣を担保するには朝廷だけでは足りず、織田家が後押ししてやる必要があった。
货币本身没有价值的不换纸币,要抵押需要朝廷和织田家的支持。
無論織田家にも負担がかかるが、代わりに様々な特権も得られる。
无论对织田家造成负担,但可以获得各种特权。
まず通貨発行を朝廷から委託されたという形式をとれば、通貨の偽造をした相手を朝敵として大義名分の下、処罰することができる。
如果将货币发行委托给朝廷,就可以以逮捕伪造货币的人为朝敌,以此为正义名义处罚。
他にも朝廷より信認を得られる事も大きい。政治の実権を失った朝廷であろうとも、延々と受け継がれた帝の権威は比類なきものであり、後ろ盾を得る事は大きなメリットとなる。
除此之外,获得朝廷的信任和信赖也是很重要的。即使朝廷失去了政治实权,历代传承的天皇权威仍然是无与伦比的,获得后盾将成为一个重要的优势。
最後に不換紙幣を発行することで、どのような変化が起こるか誰も把握していない点だ。
最后发行不可兑换纸币会造成哪些变化,目前谁也不清楚。
経済や金融に疎い武家は勿論、公家や寺社であろうとも未知の事情へは対処できない。それが如何なるメリットを織田家に齎すかを知る頃には手遅れとなっている。
对经济和金融一窍不通的武家,当然包括公家和寺社,无法处理未知情况。等到他们了解这种情况为织田家带来的好处时,已经为时过晚。
「武田が敗北したことで、本願寺は織田家と和睦をせざるを得ない。ただでさえ、大量のお荷物を抱えているのだ。今、織田家とことを構えるのは自殺行為でしかない。その際に、条件として様々な事を認めさせれば良い。奴らはいずれ反旗を翻すつもりだ、空手形として条件を飲む振りをするだろう」
“由于武田的失败,本愿寺不得不与织田家和解。他们已经负担了大量的包袱。现在与织田家对抗只会是自杀行为。在这种情况下,可以通过接受各种条件来使他们认可。他们打算某时候背叛,所以会假装作为空头支票来接受条件。”
「宋銭(そうせん)や明銭(みんせん)はそろそろ限界じゃ。新しい貨幣が必要となる。が、それを今のように唐頼りでは、唐の影響を少なからず受ける。精銭(せいせん)と鐚銭(びたせん)の交換比率を決めた(永禄十二年から翌年に発令した撰銭令(えりぜにれい))が、商人からは手間がかかると苦情も多い。ならば、新しい貨幣の発行を掌握するのがもっとも良い」
"宋钱和明钱已经接近极限了。需要新的货币。但是如果像现在这样依赖唐朝,会受到唐朝的影响。商人投诉制定精钱和铜钱交换比率的选钱令(从永禄十二年到次年颁布),这需要花费很多时间。所以,掌握发行新货币的权力是最好的选择。"
「貨幣の権威は朝廷が保証し、その価値を担保し、製造・発行を担うのが織田家、流通を推進するのは寺社ですね。そう考えると、今の時期に相手の経済基盤を縮小させるのは得策じゃないですね」
“货币的权威由朝廷保证,价值由朝廷担保,制造和发行由織田家负责,流通促进由寺社负责。因此,在当前这个时期,缩小对方的经济基础不是一个好策略。”
「そうだ。新しい貨幣を流通させるには、寺社の流通を利用する。しかし静子の策も悪くはない。今は貨幣を優先すべきなだけだ」
“是啊。为了让新的货币流通起来,要利用寺社的流通渠道。不过,静子的计策也不错。现在只需优先考虑货币问题即可。”
なるほどと静子は納得した。信長としても寺社勢力の経済力を削ぎたい、しかし新しい貨幣を流通させるには寺社勢力が持つネットワークを利用する方が都合も良い。
静子立刻明白了。信长想要削弱寺社势力的经济实力,但要推广新的货币,利用寺社势力的网络更方便。
経済力を奪うか、新しい貨幣の流通促進かを天秤にかけ、信長は貨幣が流通した後でも経済力を奪えると判断し、先に新紙幣の流通と認知度向上を優先すると決めたのだ。
将经济实力剥夺还是促进新货币流通,信长将这两者权衡,判断出即使在货币开始流通后仍可以剥夺经济实力,因此决定先优先推广新纸币的流通和知名度提升。
「では新紙幣の流通と同時に、帳簿の記載を商人たちに義務付けると良いでしょう。上から押し付けられた高い税を払うのではなく、手間はかかるが売り上げに応じた税を課し、年に一回帳簿を提出させることで払い過ぎた税の還付や、税を誤魔化す連中を締め上げることに使えます。帳簿の記載に応じない連中は、予め多くの税を課して痛い目を見させれば良いかなと」
那么就可以随着新的纸币投入流通,将记账作为商人的义务。不再向他们强制收取高额税款,而是根据销售额征收税款,一年一次提交账簿以获取退税或打压那些逃税者。对于不遵守记账义务者,可以事先征收更多的税款来加强管理。
「なるほど、帳簿か。悪くはない案だ」
“原来是账簿啊,这是个不错的提议。”
「帳簿が何か分からぬが、それがあれば金の流れが見えるというのなら実行するが良い」
如果不知道账簿是什么,但如果能通过它看到金钱的流向,那就执行吧。
「後で教えてやろう。ひとまず、通貨発行権を得る。これが最初にして最大の重要事項だ。これがあるとないでは話が全く違う。本願寺が和睦してきた時、この点だけは絶対に譲ってはならん」
“等会再告诉你。暂时先要获取货币发行权。这是最初也是最重要的事项。有了它和没有它完全是两回事。当本愿寺求和时,这一点绝不能让步。”
「分かった。本願寺には、他にも税制や土地の改革を認めさせねばならんが、通貨発行権は確実に認めさせよう」
“明白了。虽然本愿寺还需要争取税制和土地改革等其他权利,但货币发行权一定要争取到。”
本願寺が和睦を申し入れてきた時、信長はいくつかの条件をのませる気でいた。道路整備、土地の所有者問題、税制改革、市場改革などだ。
当本愿寺提出和睦请求时,信长打算提出几个条件,如修路、土地所有者问题、税制改革、市场改革等。
道路整備は勿論、流通を整備するためだ。軍用道路として整備しても、普段の流通でも非常に役立つ。近道が出来たりすれば、人や物の流通が促進されるのは当然の結果だ。
道路整备不仅是为了军事用途,而且也是为了方便交通流通。即使修建成军用道路,平时也能对普通交通产生极大地帮助。如果能建成捷径,那么必然会促进人和物资的流通。
土地の所有者問題とは、現在の土地には複数の所有者がいる問題だ。
土地所有者问题是指现有土地存在多个所有者的问题。
先祖代々土地を治めていた者と幕府から拝領した者が互いに所有権を主張して争い、武力衝突へと発展する場合もあった。
有时,代代治理土地的祖先和从幕府领取土地的人会彼此主张拥有权并争夺,甚至发展为武力冲突。
この状態でもそれぞれが税を徴収するため、百姓たちは税の支払い先が二重、下手すれば三重になる場合もあった。これを整備するのが信長の土地改革だ。
即使在这种情况下,每个领土都有权征收税收,因此农民有时会支付重复的税款,甚至可能支付三次税款。信长进行的土地改革旨在解决这个问题。
具体的には差出方式で検地を行い、土地の所有者をはっきりさせる。この差出方式で検地を全国規模で行ったのが後の太閤検地である。
具体来说,通过派遣人员进行测量,以明确土地所有者。这种测量方法在全国范围内进行,后来被称为太阁调查。
「でも土地問題って割と揉めそうですよ?」
“但是土地问题可能会引起相当大的争议,不是吗?”
「その時は軍隊をちらつかせて黙らせる」
"那时候就要展示出军队的力量,让他们保持沉默"
「あ、そうですか」
"啊,是吗"
静子が突っ込みを入れたが、信長としては既に考えていた事のようで、よどみなく回答が出た。
静子插话,但信长似乎已经考虑过这件事,毫不犹豫地给出了回答。
つまり差出方式に従え、さもなくば死ねという事だ。かなり強引だが、そうでもしなければ土地問題は一生片付かない、と信長は考えた。
换言之,遵循寄送的方式,否则就是让它死去。信长认为这样相当强硬,但如果不这样做,土地问题将永远无法解决。
「土地の所有者がはっきり決まると、公家や寺社は荘園の権利を失う。しかし民は複雑な多重課税を考えなくても良くなり、結果的に負担が軽減されて喜ぶ。織田家にとっても支配体系を簡略化出来、整備しやすくなる、という事ですか」
“当土地所有者确定后,官家和寺社将失去荘园的权利。然而,人们不再需要考虑复杂的重复征税,最终减轻了负担。这对于织田家来说也意味着可以简化和整合支配系统,使其更易于维护。"
「その通りじゃ。市場改革は言うまでもなく、楽市楽座令じゃ。これは地元の要請もあるゆえ、内容は地域ごとに変わるがな」
“正是如此。市场改革无需多言,这是实行“乐市乐座令”的必然。由于地方有需求,所以具体内容将根据每个地区而有所不同。”
「そうですね。まずは道路整備をして流通を促進させ、次に土地の整理を行い、最後に市場改革でしょうか。通貨の発行は最初から続けていく必要があるので、順番ではなく並列で行う事になりますね」
“是的。首先要进行道路整修,促进交通流通,然后进行土地整理,最后可能需要进行市场改革。货币发行需要从一开始就持续进行,因此需要并行而不是按顺序进行。”
「その通りじゃ。さて、おおよその話はこれで決まった。後日、細かい調整をするとしよう。わしは腹が減った。何ぞ美味い飯を用意しろ」
"是的。那么,大概的事情就这样定下了。之后再进行具体的调整。我有点饿了。给我准备点好吃的吧。"
話し合いが終わると、信長は姿勢を崩してそんな事を口にする。切り替えの早さは相変わらずだなと思いつつ、静子は食事の準備をするため部屋を後にした。
谈话结束后,信长放松了姿态并说出了这样的话。静子觉得他的转换速度一如既往的快,于是离开房间准备食物。
信長の政務が終わったのに従い、静子もまた岐阜へ帰国する。途中、伊勢神宮に立ち寄り、式年遷宮の為の資金として3000貫文を寄進した。
随着信长的政务结束,静子也返回了岐阜。途中,她在伊势神宫停留并捐赠了3000贯文作为式年遷宮的资金。
突然の織田軍訪問に、伊勢神宮の神官たちは大慌てしたが、寄進の理由を聞いてホッと胸をなで下ろした。
突如其来的織田军访问,使得伊势神宫的神官们非常惊慌,但听到捐赠的原因后,他们如释重负。
その他、信長が家臣たちを激励しつつ帰国したため、予想より時間がかかった。ようやく岐阜へ帰り着き、静子は尾張に戻ったところで愕然とする。
此外,由于信长在鼓励家臣并返回国时花费的时间比预期长,所以花费了更长的时间。最终,他们终于回到了岐阜,但当静子回到尾張时,感到非常震惊。
「でかい」
"大的"
それは静子が京へ行っている間に邸宅が完成し、既に新居へと引っ越しが済んでいたことに起因する。引っ越しだけなら問題はない。彩にも引っ越しに関する話は事前に依頼していた。
这是因为静子去京都期间,邸宅已经建成并已经搬进了新家。如果仅仅是搬家,问题不大。对于彩的搬家,我们提前进行了安排。
問題は自宅の門が、以前のそれと比べて遙かに巨大になっていたことだった。城ではないため防衛施設こそ少ないものの、城門を守る兵などは以前と変わらずだ。
问题是家门比以前巨大得多。尽管这不是城堡,防御设施比以前少了些,但保卫城门的士兵数目并未改变。
「おっきいなー」
"好大啊"
家を見て、静子はそれ以外の感想が浮かばなかった。家は大きく三つに分けられていた。
看到那所房子,静子没有其他任何感受。房子被分成了三个巨大的部分。
まず一番大きい本殿(ほんでん)だ。家と言うより政治的な施設という方が正しい。現代でいう庁舎に近い役割があり、彼女以外が政治を行う場合にも利用される。
首先,这是最大的本殿。它更像是一个政治设施,而不是一个家。它类似于现代的政府办公大楼,除了她以外的人也可以在这里从事政治活动。
信長が政治や政策を行うために利用される事も考慮しているので、静子の家というより織田家の統治用施設という面が強い。
在考虑到信长可能被用于行使政治和政策的情况下,这个地方更像是織田家的统治设施,而不是静子的家。
無論、静子も接見したり会議を開いたりする場合、利用する施設は本殿になる。
无论静子要进行会见或开会,所使用的设施都是本殿。
次に二回り小さい裏殿(うらでん)だ。ここが静子の家と断言出来る、彼女用のプライベート空間だ。
接下来是一个比前面小两圈的后殿。这里可以肯定是静子的家了,她的私人领地。
とはいえ、家臣やその家族が泊まったりする事もあるので、全部が彼女の空間ではない。
然而,既然有家臣和家人来住宿,所以并非所有的空间都是属于她的。
本殿にも台所はあるが、裏殿は食料保管の倉に近く、水場や風呂もある。静子は勿論、彩や蕭の部屋もある。
本殿里也有厨房,但后殿靠近食品储存仓库,还有水源和浴室。除了静子的房间,还有彩和萧的房间。
位が低くなるに従って部屋が狭くなり、侍女たちは共同で部屋を使う事になる。
随着地位降低,房间变得越来越狭小,侍女们不得不共用一个房间。
他にもヴィットマンファミリーやターキッシュアンゴラのタマ、ハナ。雪豹のゆっきー、オウギワシのシロガネなど、静子が飼っている動物たちの寝所も、裏殿の中にある。
除了Vitman一家和土耳其安哥拉的Tam和Hana之外,静子饲养的动物们的睡眠区域也位于宫殿的后面,包括雪豹Yukki和白金鹰Shirogane等。
最後が側殿(そくでん)だ。信長をはじめ、武将たちが寝泊まりする施設だ。本殿という政治施設がある関係上、このような施設が必要となった。
最后一间是侧殿。信长和其他武将们住宿的地方。由于存在着政治施设——本殿,必须要有这样的设施存在。
他と違って武家屋敷を小さくしたものが、いくつか並んでいるだけだ。信長用だけが一回り大きいのは、分かりやすい目印とも言える。
与他不同的是,除了几个缩小版的武家屋敷排列在一起外,只有信长用的大一号,也可以称之为明显的标志。
この他にもビニールハウス群や田畑、食料や武具、静子が蒐集した刀、献上品などを収納する倉、鶏や家鴨のような家畜を飼育する区画、厩舎、防衛を担当する兵士の寄宿舎や付随する施設、工房など多種多様の施設が存在する。
除了这些,还有存放塑料大棚群、田野、食物和武器、静子收集的刀、贡品等的储藏室、养鸡和家鸭等家畜的区域、厩舍、负责防御的士兵的宿舍及其相关设施、工作室等各种设施存在。
それらを城壁でぐるりと囲み、外側に堀があるのが静子の新居だ。家というより拠点という方が正確なのかもしれない。新居に従事するスタッフも前より一段と増えた。
这是静子的新居,被城墙包围着,外面还有护城河。不仅是家,更像是一个据点。新居的工作人员比以前多了一倍。
「もう笑うしかないよね、これは」
"这个只能笑了"
そんな事をぼやきつつ静子は裏殿へ入る。
这时,静子抱怨着走进了后殿。
「ところで君達には専用の部屋があるはずだけども?」
“顺便问一下,你们应该有专用的房间吧?”
入ろうとして後ろに慶次や才蔵、長可などいつものメンバーが揃っている事に静子は気付く。
静子发现在她要进去的时候,京次、才藏、长可等常见成员都在后面聚在一起。
「あんな広い場所では落ち着かん」
“在那么宽敞的地方我感到不安”
「某は馬廻衆ですゆえ」
"某是马廻衆" (Mǒu shì mǎ huí shū) which means "I am a member of the horse guard." in Simplified Chinese.
「お、俺は別に構わんのだが、猫たちが離さなくてだな」
“哦,我无所谓,但是这些猫不肯离开呢。”
新居になってもいつも通りか、と静子は思った。足満と高虎は全体を見てくると言って立ち去ったが、言動から彼らもこの拠点に移り住む事になるのだろうか、と静子は漠然と思った。
新居已经搬进去了,但静子觉得一切还像过去一样。足满和高虎说要看看房子的全貌,说不定他们也要搬来这里吧。静子心里有些犹豫。
「結局、いつも通りか」
"最终,还是跟平时一样"
そんな事をぼやきつつ、新しい我が家に入った。そして玄関で気付く。つい先ほどまで、大人数が往来していた形跡が見てとれた。
这样抱怨着,我进入了新家。然后,在门厅里注意到了一点。刚刚还可以看到大量人来来往往的痕迹。
嫌な予感を覚えつつ、静子は寛ぐための部屋に移動する。
带着不好的预感,静子移动到放松的房间。
「おお、ようやく帰ってきたのかえ」
"哦,终于回来了啊"
静子の嫌な予感は的中した。裏殿の主人が寛ぐべき自室に、主人の静子より更に寛いでいる濃姫がいた。
静子的不祥预感得到了验证。在后殿主人应该放松的房间里,不仅有主人静子,还有更加放松的浓姬。
彼女だけではない。市やまつ、ねねなど、いつも通りの面子も勢ぞろいしていた。
不止是她一个人。伊市、松宫、娜娜等熟悉的面孔也一如既往地聚集在一起。
「……何をしておられるか伺っても宜しいでしょうか」
“请问您在做什么?”
「見て分からぬか。寛いでおるのじゃよ」
“你看不出来吗?我正在放松。”
「いえ、それは分かります、これ以上ない程に。私の質問は、何故私の家で寛いでおられるのか、です」
“不,我明白,比这更清楚不过了。我的问题是,你为什么在我家里放松?”
「新居の祝いに来たのじゃが、肝心の家主が不在でのう。ならばと家主が帰り着くまで寛がせて貰っているのじゃよ」
“我是来祝贺你们搬新家的,但房东不在。所以我就在这里等他回来。”
前半と後半が全く繋がらなさすぎて、頭が痛くなった静子だった。
前半和后半完全没有联系,让静子感到非常头痛。
「お待たせ致しました」
"不好意思让您久等了"
「おお、ようやくか。待ちわびたぞ」
"哦,终于来了。我已经等不及了"
静子が重いため息を吐いていると、彩がお膳に何かを載せて入ってきた。静子に一礼した後、彩はお膳を濃姫たちの前に置く。
当静子叹了一口沉重的气时,彩端着一个托盘进来了。她向静子鞠了一躬,然后把托盘放在了浓姬等人的面前。
お膳にはプリンが乗っていた。現代のように黄色ではなく、白色のプリンだが「す」がなく、綺麗な表面をしていた。
餐盘上盛着布丁。这份布丁和现代的不一样,不是黄色的,而是白色的。它没有“酸味”,表面看起来很漂亮。
「人の家の食材を食べ尽くす気ですか」
“你打算把别人家里的食材都吃光吗?”
「どうせ使い切れずに腐らせるであろうから、妾が有効利用しているまでじゃ」
「反正你们也会浪费着不用,我就自己好好利用吧。」
「うぐ、痛い所を……」
「嗯,疼痛的部位……」
消費より供給が随分オーバーしている静子にとって、食材を消費してくれる人物はありがたい。
对于静子来说,供应比消费要多得多,因此愿意消费她的食物的人是令人感激的。
だが、濃姫は何をどれだけ消費するか分からないので、その点だけが静子の頭を悩ませていた。
但是,由于不知道浓姬会消耗多少,这是静子唯一的烦恼。
もっとも、消費しなければ腐らせてしまう公算が高いため、食材の消費は歓迎すべきであった。
然而,由于不消费就会腐烂的可能性很高,因此消耗食材应该是受欢迎的。
「それにしても、総畳張りとは思い切ったのう」
“即便如此,总铺设榻榻米也是个大胆的决定呢。”
「畳の生産が追いつかないので、まだ畳が入っていない部屋もありますがね」
因为榻榻米的生产跟不上,所以还有些房间没有铺设榻榻米。
「前からしていた研究が成功して、大量生産が行えるようになったのじゃな」
“之前进行的研究成功了,现在可以进行大规模生产了。”
畳は江戸時代、徳川吉宗が享保の改革を行い、干拓が積極的に進められた事で、材料のい草が大量生産されて価格が下落したが、それまでは高級品であった。
榻榻米在江户时代德川吉宗进行享保改革时推动大规模干地开垦,导致榻榻米的原材料草制品大量生产,价格下降,而在此之前,榻榻米一直是高档商品。
無論、信長も静子の進言に従い、干拓を積極的に行い、い草の生産量は飛躍的に向上した。
无论信长还是静子的建议,都积极地开展了治理围田的工作。草原的生产量也得到了飞跃的提高。
い草の栽培は基本的に三段階に分けられる。最初の畑苗(一次苗)、これは他と変わらず元となる苗を作る畑だ。
稻草的培植基本上可以分为三个阶段。第一个阶段是田间苗(一次苗),这是种植原苗的田地,与其他作物相同。
12月ごろに苗を植え付け、そのまま苗わりを行う翌年の8月まで待つ。
大约在12月种植幼苗,等待到次年的8月进行收成。
時期がきたらい草は苗畑から二次苗の畑に移動させる。苗を引っこ抜いて泥を落とし、苗を一本一本割って植えていく。
到时候,艾草将从幼苗田转移到次幼苗田。将苗子拔出并清洗泥土,然后把它们一个一个地切成小苗并重新种植。
植えた直後は一本の苗だが、い草の生命力は強く、次々と新しい芽が出てくる。数ヶ月もすれば最初の弱々しい雰囲気などどこ吹く風、見違えるほど立派な苗へと成長する。
种下去当初只有一棵幼苗,但是蔓草的生命力非常强大,接二连三会长出新芽。几个月后,最初的微弱氛围就不见了,苗木长成了令人惊叹的壮观苗木。
こうして出来た苗を栽培する本田に植える。行う作業は一次苗を二次苗の田んぼへ移し替える内容と同じだが、苗が大きい分栽培する田で行う作業には熟練の腕を要求される。
将这些苗移植到本田的种植田里。这项工作与将一年生苗转移到二年生田块的工作相同,但由于苗子更大,因此在种植田里进行栽培工作需要熟练的技能。
苗を植えてから二年後の七月に、い草は収穫される。その後、泥染めという染土を溶かした水につけ込んだ後、乾燥させてようやく完成となる。
从种下苗木开始算起两年后的七月,草草就能够收获。然后将其浸泡在泥染色剂中,晾干后方能完成。
い草の栽培は熟練の腕を要するが、静子は全行程の殆どを機械で代用する研究を行い、見事成功した事で、尾張のい草生産量は飛躍的に向上した。
稻草的培植需要熟练的技能,但静子使用机器替代了大部分流程进行研究,成功提高了尾张地区的稻草产量。
「い草の移植機、収穫機、畳表の製織などなど、そういう専用の機械を開発する事で、高品質な畳を大量生産する事が可能になりました。が、今度は需要が跳ね上がったせいで、供給が追いついていないのです」
“通过开发专用机器,如草坪移植机、收割机和榻榻米制造机等等,现在可以大量生产高品质的榻榻米。但是,由于需求激增,供应无法跟上。”
「大量生産も一長一短じゃのぅ」
「大量生産也有长有短哟。」
「だからといって、やらなければいつまで経っても生活の質はあがりません」
“然而,如果不去做,生活质量将永远不会提高。”
「そうじゃな。それはさておき、茶請けがのうなったから、何か旨いものでも頼む」
"不过先放一边。这里已经有了点心,来点好吃的吧。"
言われて静子はお膳を見る。お膳の上にあったプリンは、いつの間にか全てなくなっていた。
被告知后,静子看了看膳食,发现盘子上的布丁不知何时已经全部消失了。