【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 97 [千五百七十二年 十二月下旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十二年 十二月下旬(*原文网页序列号 - 106)
武田軍の突撃を見た織田・徳川軍も負けじと咆哮を上げ、武田軍を迎え撃たんと突撃した。
武田军发起冲锋,織田・徳川军也奋起咆哮,并发动攻击迎击武田军。
武田の騎馬隊は有名だが、騎馬隊とは騎馬兵だけで構成される訳では無い。騎馬の利点はその突破力と機動力にある。
武田的骑马队很有名,但骑马队并不仅仅由骑兵组成。骑马的优点在于其突破力和机动力。
相手に素早く迫り、一撃を加えて離脱することに意味がある。勿論騎馬隊だけで突撃するのでは意味がない。
迅速地接近对手,进行一次打击并快速离开是有意义的。当然,仅仅由骑兵队突击是没有意义的。
折角打ち込んだ楔くさびは押し開かない事には本領が発揮されない。後続の部隊が崩れたところを押し広げてこそ戦果が上がる。
只有把已经插入的楔子打开,才能发挥其真正的作用。只有在后续部队出现崩溃时将其扩张,才能取得战果。
また日本では馬に去勢手術を施さず、目隠しもしないため、馬が密集して並走することが不可能となる。
在日本,马医学手术不会施行阉割手术,也不会使用眼罩,因此马无法密集并排奔跑。
馬は視界が350度ほどもあり、生来臆病な性質であるため密集を嫌うのだ。今日の競馬などではブリンカーと呼ばれる目隠しを装着することがある。
马的视觉范围大约达到了350度,由于天生胆小的性格,它们不喜欢拥挤。在今天的赛马比赛中,有时会使用称为“遮眼罩”的装置。
仮に武田が馬を並走させられたとしても、三方ヶ原台地のような障害物の少ない場所ですら騎馬だけの運用はしないだろう。
即使武田能够让马匹并驰,但在三方原台地这样没有障碍物的地方,也不可能仅仅使用骑马运输。
それを証明するかの如く、武田の軍学書である甲陽軍鑑こうようぐんかんにも、騎兵運用に関する記載がある。
就像证明一样,龙马的军事学书《甲阳军鉴》中也有关于骑兵运用的记载。
詳細については割愛するが、馬は大将と少数の騎兵だけで問題なく、いくさの主力は歩兵である。
不详细赘述,但马只需要将军和少数骑兵,问题不大,战争的主力是步兵。
馬を数多く並べて相手へ突進など、いくさを知らぬ愚か者の戯言に過ぎない、といった記述が見られる。
“在战争中,仅仅是将许多马匹排列在一起向敌人发起攻击这样的行为只不过是无知愚蠢之人的胡言乱语。”
それゆえ敵味方を問わず、軍の主力は歩兵となる。
因此,不分敌我,军队的主力将是步兵。
突撃の勢いのままに白兵戦へと雪崩れ込むかと思われたが、両軍とも弓の射程に入ると盾を並べて射撃の応酬となった。
双方突进到白兵战位置时,都进入了弓箭的攻击范围,于是双方都摆出盾牌进行射击。
先陣を務める者たちが互いに矢を撃ち合い、膠着状態に陥るかと思われた頃、ふいに乾いた銃声が空気を切り裂いた。
当先锋们互相射箭并陷入僵局时,突然间干燥的枪声撕开了空气。
突然の銃声に驚いた武田軍だったが、銃弾が届かない事を知ると、猛然と矢を射かけてきた。それ以降も数度銃声がこだましたが、もはや武田軍も構いはしなかった。
突然的枪声吓到了武田军,但知道子弹射不到他们后,他们猛烈地射了箭。从那以后,几次枪声响起,但武田军已经不再理会了。
「良い傾向だね」
"很不错的趋势"
双眼鏡で武田軍の動きを確認していた静子は、彼らが音の認識を誤ったと判断した。続いて自軍と武田軍を交互に見比べる。
静子用望远镜确认了武田军的动向,判断他们对声音的认知存在误差。接着她开始交替观察自己和武田军的情况。
「そうそう、まずは拮抗している・・・・・・事が大事だよ。最初から勝てる・・・けど、それをすると相手が警戒するからね。まずは武田軍に勝っているように思わせないとね」
“是的,首先必须确保对手与我们实力相当……这很重要。如果一开始就取胜的话,对手会变得警觉。所以我们必须让武田军认为我们并没有取得优势。”
それから暫く、静子は双眼鏡で最前線を確認していた。
然后,静子使用双筒望远镜确认了最前线一段时间。
織田軍と武田軍の小競り合いが膠着している状況が四半刻程も続いたころ、静子は双眼鏡を下ろして周囲を見回した。目当ての人物を見つけると、彼女は声を掛ける。
当织田军和武田军的小冲突陷入胶着状态约四个小时后,静子放下望远镜环视四周。当她找到目标人物时,她就会叫他们名字。
「終わった?」
"结束了吗?"
「はい、殿。新式銃の較正は完了しました。これで命中精度は飛躍的に向上するでしょう」
“是的,大人。新式枪支的校准已完成。现在命中精度将大幅提高。”
「よろしい。各自に通達、準備が済み次第最前線に出なさいと。全員揃えば私も前に出ます」
“好的。各自宣布通知,在准备好之后前往第一线。当全部人员到齐时,我也会前往前线。”
「そ、それは危険かと」
“那、那太危险了吧。”
最前線では今なお、激しい矢の応酬が繰り広げられている。いくら静子の甲冑が特別製であっても、鎧の無い部分は存在する。
目前最前线仍在进行激烈的箭矢对射。即使静子的盔甲是特制的,但仍有一些没有铠甲保护的部分存在。
「構いません。将が命をかけないで、兵がついてくるでしょうか」
“没关系。如果将军不冒生命危险,士兵们也会跟着来吗?”
「殿……はっ! 御身おんみはこの命に代えても必ずやお守りいたします」
"大人……咳!我愿意用这条生命来守护您的安宁。"
「頼みます」
"麻烦你了"
短い会話を終えると静子は合図を送った。静子の合図を確認した将兵は配下の兵を所定の位置へと移動させる。鉄砲衆が前へ、そしてその後ろに長可隊が移動した。
结束了短暂的对话后,静子发出了信号。确认了静子的信号后,士兵们将他们的部队移动到预定位置。火枪手向前行军,随行的长卡队跟随其后。
静子は鉄砲衆と長可隊の間に陣取っていた。鉄砲隊たちは頭上に盾を掲げており、既に矢が飛んでくる位置にいる。静子の位置も一つ間違えば矢が飛んでくる危険な場所だと言える。
静子站在铁炮手和长可队之间。铁炮队指挥官举着盾牌,就在箭矢飞来的位置上。静子的位置,稍有闪失,就可能成为飞箭的危险区域。
静子は空を見上げて太陽の位置を確認する。おおよそ予定通り・・・・の位置にあった。順調に計画が進んでいる事に、静子は薄く笑みを浮かべる。
静子抬头望向天空确认太阳的位置。它大致上是按照计划的位置。看到计划顺利进行,静子微笑了。
「鉄砲衆たちよ! 辛く苦しい訓練によくぞ耐えた!」
“火枪手们!你们很好地经受了辛苦的训练!”
気持ちを切り替え、静子は銃弾を装填し射撃準備に入っている鉄砲衆を鼓舞する。
振作起来,静子为装弹准备好的枪手们打气。
「誇るが良い! 訓練に耐えた君たちは今、栄えある史の岐路きろに立っている! この後何千、何万という人間が、諸君らの背中を追うであろう! まさに闇を切り裂く光明なり!」
「值得骄傲!经过训练的你们现在站在荣耀的历史分岔路口!今后将有成千上万的人会追随你们的脚步!这正是破除黑暗的光明!」
軍配代わりのクーゼを天高く掲げ、静子は更に言葉を続ける。
将库泽高高举起,作为军队的代表,静子继续说道。
「始まりの一歩を踏みし精鋭たちよ! 武田に、この日ノ本にいる者たちに、渾身の一撃を見せてやろうぞ! 全員構えぇ!……斉射ァーーーーーー!!」
"踏出第一步,精锐们!向武田和这日本国的所有人展示最强一击!准备好!……齐射啊——————!"
静子がクーゼを武田軍に向けて振り下ろすと同時に、最前線に並んでいた鉄砲衆が一斉に射撃した。
静子挥下手中的库泽同时,排在最前线的火枪手齐射了一轮。
間を置かず、武田軍の最前線を構成する小山田信茂軍の盾持ちたちが蜂の巣と化した。
不等待片刻,构成武田军前线的小山田信茂军的盾手成为了蜂巢。
その光景は武田軍は勿論、射撃をした鉄砲衆たちですら息をのむほどであった。
那景象令不仅是武田军,就连开枪的火枪队也不禁屏息。
僅かにずれたため増幅された破裂音が響いたかと思うと、前線を支えていた盾持ち達が一斉に倒れ伏した。
仅仅有一点偏差就引发了巨大的爆炸声,前线的盾手们纷纷倒地。
若竹を燃やしたかのような音がしたかと思えば、盾で身を守っていたはずの兵が盾ごと倒れる光景は、誰の目にも異常に映った。
听到像燃烧着若竹的声音,接着看到原本用盾牌保护自己的士兵连同盾牌一起倒下的场景,让所有人都感到异常。
鉄砲衆が驚くのも無理はない。彼らは自身が使う銃に数百メートルを狙えるポテンシャルがある事を知らなかった。
铁炮手们感到惊讶也并不奇怪。他们不知道他们所使用的枪有能够瞄准数百米的潜力。
訓練では近距離で小さい的を狙って射撃を繰り返していたため、これほどの距離でも殺傷範囲にあるとは思っていなかったのだ。
在训练中,由于一直在近距离射击小型目标,所以没想到在这么远的距离也有杀伤范围。
「次弾装填!」
"准备下一发弹药!"
静子の号令により鉄砲衆の体は反射的に動いた。被害を受けた武田軍よりも訓練を積み重ね、頭よりも先に体が動くようになった鉄砲衆達が立ち直る方がはるかに早かった。
在静子的呼唤下,火枪手们的身体反射性地动了起来。经过多次的训练,火枪手们比遭受了损失的武田军更加镇定,并且身体比头脑更快地做出反应,因此他们更快地站了起来。
反射的に銃弾を込めた鉄砲衆は、そのまま狙いをつけると射撃体勢を取った。
反射条件下填装了子弹的火枪手们立即瞄准并采取了射击姿势。
「斉射ァーー!」
"斉射啊啊!" (Note: The Chinese characters used in this translation may vary depending on context and personal preference.)
今度は揃った銃声が雷鳴の如く鳴り響いた。またしても武田軍が大きく欠けた。三度目の装填は落ち着きを取り戻し、射撃後すぐに行っており、すぐさま射撃体勢が整った。
这次齐声响起的枪声像雷鸣一样响起。武田军再次大大减少。第三次装填时,他们恢复了冷静,射击后立即进行了第三次装填,并立即调整了射击姿态。
「斉射せよ!」
"全部开火!"
静子の声とともに小山田信茂軍の兵は櫛の歯が欠けるようにバタバタと倒れていった。
伴随着静子的声音,小山田信茂军队的士兵们像梳子齿缺损一样一个接一个地倒下了。
攻撃力と防御力が均衡し、小競り合いが続いていた状況が、あっという間に織田軍優勢へと傾いた。
进攻力和防御力达到平衡,小规模战斗一直持续着,但瞬间情况便向織田军优势倾斜了。
しかし、小山田信茂軍が劣勢を認識する暇はなかった。銃声が轟く度に無数の屍が量産されるのだ。火縄銃が使われていると言うのは銃声で理解出来た。
然而,小山田信茂的军队没有时间意识到劣势。每次枪声响起,就会制造出无数的尸体。可以通过枪声理解到正在使用火绳枪。
しかし従来の火縄銃に盾を撃ち抜く程の威力はなかった。そしてあり得ない発射間隔の早さが、混乱に拍車をかけた。
然而,传统火绳枪没有足以击穿盾牌的威力。而且不能想象的快速发射间隔加剧了混乱。
だが武田軍は歴戦の部隊。原因は分からずとも結果から判断することは出来た。
但是武田军是经历过许多战役的部队。虽然原因不明,但可以从结果来判断。
「う、うわあああああああああ!! 死にたくねぇーー!!」
"呜、呜哇啊啊啊啊啊啊啊!!我不想死啊啊!!"
それは銃声とともに兵が死ぬ。聞こえた時にはもう遅いという恐怖だった。そしてその死には盾も鎧も役に立たず、草のようにただ刈られるのみだという事実が心胆を凍らせた。
那是士兵和枪声一起死去的。听到时已经太晚,这是一种恐惧。而且那些死亡无论是盾还是铠甲都没有用,只是像被割草一样的事实令人心惊胆战。
しかし敵に背を向けて逃げようとも、密集しているために満足に動けず、銃弾は次々に命を刈り取っていく。
然而,即使背对着敌人逃跑,由于人群过于拥挤,无法顺畅移动,子弹还是不断地夺去生命。
(――見えた!)
(――看到了!)
双眼鏡で様子を確認していた静子の目に、小山田信茂軍が完全に瓦解した事、そして背後にいる武田軍最強の赤備え、山県昌景軍が入る。
静子通过双筒望远镜确认了小山田信茂军已经全军覆没和身后最强的武田军红装队伍,山县昌景的军队已经进入。
素早く双眼鏡から目を離すと、静子はやる気に満ちあふれている長可軍に体を向ける。
迅速地从双筒望远镜中移开目光,静子转向充满斗志的长可军。
「待たせたな、猛者たちよ! 小山田軍は崩壊した! もはや山県昌景を討ち取る障害はない! さぁ貴様らの出番だ! 鬨の声を上げよ! そして見事、山県昌景を討ち取ってまいれ! 赤備えを討ち取らば、末代までの誉ほまれぞ!!」
"等待够了吧,勇士们!小山田军队已经崩溃了!现在没有任何障碍可以阻止你们击败山县昌景了!现在轮到你们了!振奋人心地战斗吧!成功地消灭山县昌景!夺得赤装备,将获得永久的荣誉与名声!!"
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
"哇啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!"
一番先頭にいる長可が静子以上に吠える。それは腹の底にまで響く獰猛な獣の咆哮だった。そして長可なりの督励でもあった。
领头的长可比静子更凶猛地吠叫,那是一种令人听得到肚子底下狂野的兽吼,也是长可的鼓励。
長可の咆哮に聞いた兵たちが、声を上げるとともに士気を上げる。やがて咆哮が最高潮に達した時、長可は武器を武田軍に向けた。
听到长可的咆哮,士兵们一边高喊一边提高了士气。当咆哮达到顶峰时,长可把武器对准了武田军。
「全員、突撃だぁーー!!!」
"全员,突击啊!!!" translates to "全体冲锋!!!" in Simplified Chinese.
長可軍が走り出す。静子と鉄砲衆たちは長可たちが咆哮を上げている間、彼らが通る道を空けるため脇によけていた。
长可军开始奔跑。静子和火枪手们在长可们发出咆哮声时,把道路让开,躲在一旁为他们让路。
地響きを立て、喊声かんせいを上げて長可軍は武田軍の最前線となった山県昌景軍へと突撃した。
地动山摇,长可军高声呼喊,冲向成为武田军先锋的山县昌景军队。
鬼気迫る勢いで突進してくる長可隊を見て、僅かに残っていた小山田信茂軍の兵が這う這うの体で逃げ出す。
看到长可队以鬼气逼人的势头猛烈冲刺,仅剩下的小山田信茂军士兵无力地爬着逃跑。
小山田信茂軍の背後にいた山県昌景は、突然前衛が崩れた理由を理解していなかった。しかし目前に迫った敵を見て、彼は咄嗟に小さな鶴翼の陣を構えて迎え撃つよう兵に命じた。
站在小山田信茂军背后的山县昌景突然不明白前线崩溃的原因。但是,当他看到眼前逼近的敌人时,他立即下令让士兵构筑起小鹤翼阵型迎击敌人。
彼の判断は誤りではない。突出した兵に対して大軍の有利を活かせる鶴翼の陣は理に適っている。包囲して袋叩きにすれば歩兵の突撃などたかが知れている。
他的判断并不错误。针对突出的士兵,利用鹤翼之阵的优势可以充分发挥大军的威力。围攻并袭击敌军,则步兵的冲锋等战术不足为奇。
その判断は長可隊が通常の歩兵であった場合に限れば正しかった。
如果长可队是普通步兵,那么这个判断才是正确的。
しかし残念なことに、静子が用意した対武田用兵器は新式銃だけではなかった。間もなく、彼らは信じられない光景を目にする事になる。
然而,令人遗憾的是,静子准备的对付武田的武器不仅仅是新式枪。不久之后,他们将目睹不可思议的景象。
「何だ、あいつらは!」
"他们是什么人!"
山県の鶴翼の陣中央目がけて突き進む長可隊は、傍目には猪武者の自殺行動にしか見えなかった。
山县的鹤翼阵中央瞄准前进的长可队,在旁人看来只是猪武士的自杀行为。
左右の翼にあたる部隊から矢の雨が降り注ぎ、中央へ辿り着く前に力尽きると赤備えは確信していた。
箭雨从左右翼部队降下,红备在到达中心之前就已经确定力不从心。
しかして長可隊は降り注ぐ矢をものともせず、勢いを保ったまま走り抜けた。
然而,长可队毫不畏惧地忍受着箭雨,保持着强大的冲击力,冲过了去。
目の良い者は気づいただろう。長可隊へと降り注いだ矢は、殆どが弾かれ鎧に刺さっている矢すら稀であったことを。
有好眼力的人应该注意到了。倾泻到长可队身上的箭矢,大部分都被弹开或者刺进了铠甲,能卡住的箭矢也很少。
「はっ! 凄まじいな、この甲冑は。柳に風とばかり矢を受け流すのだからな」
“啊!这铠甲真是厉害。像柳树一样迎风而立,箭矢也无法击穿。”
先頭を馬で疾走する長可が軽口を叩いた。彼が言葉を発している間にも、右腕の篭手に矢が当たる。しかし鋭い鏃が付いたはずの矢は、曲面を滑ると刺さることなく逸らされた。
长可骑马飞驰在最前面,还说了一些轻口,他说话的时候,右臂护臂上却中了一箭。然而箭头本应很锐利,却滑过曲面偏离了目标,没有扎入肉里。
隊長格である長可だけが特別なのではない。末端の足軽に至るまで同じような光景が、あちらこちらで繰り広げられていた。
队长级别的长可并不是唯一特殊的人。从末梢的随从到各个地方都上演着同样的场景。
これこそが信忠(奇妙丸)の甲冑にも採用されている弐号装備。石英ガラスを高熱で処理し、繊維になるまで引き伸ばしたガラス繊維を編みこんだ甲冑だった。
这就是信忠(奇妙丸)的铠甲中也采用的二号装备。该铠甲是由经过高温处理的石英玻璃和拉伸成纤维的玻璃纤维编织而成的。
現代ではFRP(ガラス繊維強化プラスチック)にも用いられているガラス繊維だが、戦国時代では強化プラスチックが手に入らない。
现代FPR(玻璃纤维增强塑料)也使用玻璃纤维,但在战国时代无法获得增强塑料。
米と麻を使ったバイオプラスチックは実用化出来ているが、鎧を作る程の強度は持ちえなかった。
用米和麻制作的生物塑料已经可以实际使用,但它没有足够的强度来制作盔甲。
そこで金属繊維とガラス繊維を交互に編み込むことで鎧の表面を形成し、鎧の下に着る帷子部分にもガラス繊維を編みこんだ軽量かつ強靭な甲冑を実現した。
因此,通过交织金属纤维和玻璃纤维,形成盔甲表面,并在披风部分嵌入玻璃纤维,实现了轻便且坚固的铠甲。
ただ古典的な製法でガラス繊維を作成しているため、不純物も多く強度を優先したために寿命が短い。
仅使用传统制法制造玻璃纤维,因此不纯物质较多,并且为了优先考虑强度,其寿命较短。
戦国時代基準では恐ろしい防御力を誇る反面、2〜3年で劣化してしまう使い捨てとも言える装備となった。
在战国时代的标准下,它具有可怕的防御力,但同时也是一种在2-3年内会劣化且可以视为一次性使用的装备。
無論剛性が高いだけでは衝撃が浸透し、兵士がダメージを受けることになる。
无论刚性有多高,冲击力也会传导,导致士兵受到伤害。
しかしファクチスを衝撃吸収材として挟んだり、メッシュ状に繊維を編みこんだりすることで靭性を伸ばし、やっと矢程度ならば寄せ付けない強度を実現出来ている。
然而,通过将弗莱克特夹在撞击吸收材料中,或者将纤维编织成网状结构来增加其韧性,才最终实现了能够抵御箭的强度。
「おのれ、妖術の類か!? 何をしているのか分からぬが、このままでは終わらせぬ!」
“你这个妖术师!?虽然不知道你在做什么,但我不能让你继续下去!” translated to Simplified Chinese would be: “你这个妖术师!?虽然不知道你在干什么,但我不能让你继续下去!”
叫ぶと同時に山県昌景は指揮棒を特定のパターンで振り、合図を送った。
山县昌景一边高喊着,一边以特定的模式挥舞指挥棒,发出信号。
それは第二陣に控える武田軍の諸将に前線の異常を報せるとともに、ある作戦の実行を報せる合図でもあった。
那是通报给第二阵营等待的武田军将领前线异常情况,并宣布执行某项作战的信号。
「あれは……皆の者、下がるぞ!」
“那是……大家,退后!”
山県昌景の命令が何かを理解した赤備えは、一斉に後ろへ下がる。その統制の取れた見事な撤収行動は長可たちにも戦局の変化を報せた。しかし足を止めるつもりは毛頭なかった。
理解了山县昌景的命令后,准备好的红军齐齐向后退去。他们完美有序的撤离行动让长可等人知晓了战局的变化。然而,他们并没有停下来的意图。
長可からすれば山県昌景が鶴翼の陣を敷くことも、弐号装備に驚いて隊を下げることも想定通りの展開なのだから。
从长远来看,山县昌景布置鹤翼阵和因第二装备而惊退的情况都是可以预料到的。
赤備えたちが山県昌景の命令に従い、左右の翼を残しつつ中央だけが後退してゆく。中央が後退するとどうなるのか。
听从山县昌景的命令,准备好的士兵留下左右两侧的翼,只有中央后退。如果中央后退会发生什么?
敵の戦線は後退と共に縦に伸び、Vの字の谷へと誘い込まれ、懐が広がった左右両翼から長時間の攻撃に晒されることとなる。
敌方阵线随着后退而纵向伸展,陷入V字形谷地,从宽阔敞开的左右两翼长时间地遭受攻击。
長時間の猛攻に晒され、窮地を脱しようと後方や左右へと逃れる連中を叩く。現に加勢として第二陣の馬場信春や内藤昌豊などが駆けつけて、長可隊を包み込もうとしていた。
长时间的猛攻让敌人暴露在困境之中,他们企图向后或左右逃跑,被我们击打。第二支队的马场信春和内藤昌豊也前来增援,试图包围长可队。
「よっしゃ! 引っかかったぞ、連中! 竜騎兵ども、頼んだぞ!」
"耶!上钩了,伙计们!龙骑兵们,请你们了!"
だが長可には包囲網が閉じようとしている今こそが好機であった。彼は一緒についてきた竜騎兵、仁助や四吉たちに号令を出す。
然而,现在正是包围网即将关闭的好机会。他下令给跟随他的龙骑兵人仁助和四吉。
彼らは長可の号令の下、一斉にコンパウンドボウを構えると、鶴翼の陣の左右の翼を担う兵たちの密集した地帯を射抜いた。
他们在长可的号令下,齐心协力地拉开了复合弓,射穿了鹤翼阵左右两翼的密集区域。
放物線を描き相手の中心に飛び込んだ矢の数はおよそ30本。敵兵の数に比べれば一本一殺が為ったところで雀の涙であっただろう。
抛物线描绘,跳进敌人中心的箭约30支。相比敌军数量,即使一支箭杀掉一个人也不过是麻雀之泪。
矢は笛のような音を鳴らして飛翔し、重力に従って落下した。通常の矢であれば勢いを失えば終わりだが、その矢には続きがあった。
箭发出像笛子一样的声音飞翔,随着重力落下。通常的箭失去势头就结束了,但这支箭有着续篇。
耳を劈つんざく轟音とともに兵士たちが空を舞った。
随着刺耳的轰鸣声,士兵们翱翔于空中。
爆心地付近にいた赤備えは今まで経験したことのない轟音と、理解の範疇を越えた衝撃をその身に受けた。
爆炸发生时,站在爆炸附近的穿着红装备的人经历了前所未有的巨响和超出理解范畴的冲击。
余りの衝撃に踏ん張ることもかなわず吹き飛ばされ、もうもうと立ち込める土煙と頭痛を伴う耳鳴りが赤備えの視覚と聴覚を奪っていた。
在太强烈的冲击下,我无法坚持住脚步,被吹散了。茫茫烟尘和头痛的耳鸣夺走了我红色准备的视觉和听觉。
視界が晴れた頃、彼らは本日何度目になるか判らない衝撃を受ける。衝撃の発生源と思わしき場所は、すり鉢状に大きな穴となっていた。
视野清晰时,他们第几次受到冲击已经失去了数数的能力。冲击发生的地方显然是一个大碗般的坑洞。
酷い耳鳴りの合間にようやく聞こえるようになってきた耳に届くのは兵士たちの絶叫であった。周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
在可怕的耳鸣中,终于听到了士兵的尖叫声。周围变成了一个惨叫和嚎叫的地狱场景。
直撃を受けて体を欠いた者、破片を受けて体中から血を流す者、目や耳から血を流し、嘔吐しながら弱弱しく蠢くもの。
受到直击而身体残缺的人,受到碎片撞击而全身流血的人,从眼睛和耳朵流血,同时呕吐并虚弱地蠕动的人。
馬ですら引き裂かれ、赤黒い腸はらわたを晒して横たわっていた。およそ周囲に無事な者が見当たらない惨状が展開されていた。
马甚至也被撕裂,红黑色的肠子暴露在外。周围几乎找不到一个安全的人,场面极其惨烈。
何が起きているのか理解できない。ただ一つ刻み込んだのは、笛の音と共に地獄の蓋は開く。
不理解正在发生什么,唯一铭记的是,随着笛声,地狱的大门被打开。
そして彼らの耳に、無慈悲な死を告げる笛の音が届いた。逃げる、という考えを行動に移す前に、幸運にも軽傷だった赤備えが肉片となった。
然后,一支宣告着残忍死亡的哨声传入了他们的耳中。还没来得及想着逃跑,幸运的是只受了轻伤的紅备便已成为肉饼。
爆風と共に巻き上げられ、かつて赤備えだった者の腕や足が、長い滞空時間を終えて地面に落ちた。
随着爆炸的风暴袭来,曾经身着红装的人的手臂和腿,在漫长的滞空之后落到了地面。
遅れて血と臓物と糞尿の雨が降り注ぐ、停止した思考が激烈な臭気に晒され強制的に戻り、心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に絶叫した。
血、器官和粪尿的雨不断地倾泻着,思维已经停止,被强烈的气味所包围,被迫回到现实,就像心脏被抓住一般尖叫着恐惧。
「は、半端ねぇな、あの炸裂筒。確かに静子が使い途を誤るなって何度も念を押すのも納得だわ」
“那种炸裂筒不是一般的厉害。我完全能理解为什么会一遍又一遍地警告静子不要使用不当。”
炸裂筒とは、ダイナマイトを封入した筒を括りつけた特殊な矢を指す。
爆炸筒是指装有炸药的筒子和特制箭头组成的特殊箭头。
本来ダイナマイトのような爆発物は、密閉した空間で使う事が望ましい。密閉空間の方が衝撃を分散させずに、高い威力が期待できるからだ。
一般来说,像炸药这样的爆炸物,最好在密闭空间中使用。因为密闭空间可以更好地分散冲击力,从而实现更高的威力。
開放空間で使用した場合、衝撃の殆どが開放空間に放たれ効果が激減する。
当在开放空间中使用时,几乎所有的冲击力都会传递到开放空间中,从而导致效果显著降低。
判り易い例を挙げるのなら、掌で爆発すれば火傷で済む爆竹も、握り込んだ状態で爆発すれば指を根元から吹き飛ばす威力となる。
举一个容易理解的例子,掌心炸开的爆竹仅仅会造成烧伤,但是握紧后炸开就会有足以把手指从根部吹飞的力量。
しかし本来は岩を破砕し、山を崩すダイナマイトである。至近距離で炸裂すれば如何に威力が減衰しようと、人間程度なら一溜まりも無いのは想像に難くない。
但其实它本来是一种可以破坏岩石、崩塌山峦的炸药。即使在近距离爆炸,尽管威力会逐渐减弱,但对于人类来说,一点保命的余地都没有,这点想象起来就很难受。
だが爆風よりも大きな効果を上げるのが音だ。新式銃もそうだが、炸裂筒も音の効果を計算して設計されている。
但是声音比爆炸更具有影响力。新式枪械和爆炸筒都是按照声音效果进行设计的。
特徴的な『音』と共に『誰かが』死ぬ。相手にそう刷り込めば、音そのものが恐怖の対象となる。
伴随着独特的“声音”,“某人”就要死了。如果将这种印象灌输给对方,那么声音本身就成为了恐惧的对象。
音がするだけで体が竦み、戦闘などとても覚束なくなる。そしてそれが未知の物ならば効果は更に高くなる。
仅仅是听到声音,身体就会紧张,战斗等变得非常不可靠。如果那是未知的东西,则效果会更加强烈。
どういう原理で死ぬのか理解出来れば対処もできようが、未知の物への対処は往々にして難しい。
如果了解死亡的原理,就能够采取对策,但对于未知的事物,往往很难应对。
そこに恐怖が更に判断を鈍らせる。音恐怖症という病名もあるほど、正体不明の音は恐怖感や不安感を与える。人によっては正体不明の音を聞くだけで発狂し、失神する事もある。
那里的恐惧会进一步迟钝人的判断。有些人甚至被诊断为音恐怖症,无法确定来源的声音会引起恐惧和不安。有些人甚至仅仅听到无法确定来源的声音就会发疯或昏厥。
「さて……ようやく見えたぜ、山県昌景ェェェェェェ!!!!」
“好了……终于看到了,山县昌景!!!!”
鶴翼の陣を敷き、更に両翼を厚くしたため正面の防御が薄くなっていた。これこそ長可が待ち望んでいた状態である。長可は吠えると後ろの歩兵の速度を無視して、馬の足を早める。
部队布置为鹤翼阵,两翼更加加厚,结果正面的防御较为薄弱。这正是长可所期待的情况。长可指挥士兵高喊着,忽视背后步兵的速度,加紧马速。
急に長可が突出したことに気づいた随伴兵たちも、慌てて速度を上げるが反応が遅れた。一方、赤備え達は両翼の壊滅から立ち直れていなかった。
突然发现长可突出,伴随的士兵们也慌慌张张地加快了速度,但反应较慢。与此同时,红备们未能从两侧的覆灭中恢复过来。
その間にも長可は迫り、ついに交戦圏内に入っても、赤備えたちは思考が麻痺していた。
与此同时,长可迫近,最终进入交战范围内。由于他们被红色装备的威胁所惊吓,其思维已经完全麻痹。
「山県昌景ェェェェェェ!!!! テメェの首を貰いに来たぜぇぇぇ!! とっとと首を俺に寄越せぇぇぇぇ!!!」
"山县昌景!!!我来拿你的首颅了!!!赶快把头给我!!!"
今までに見た事もない巨大武器——バルディッシュ——が最前列にいる赤備えたちを薙ぎ払った。長可が錐と呼ぶには些か広範囲に穿った穴を押し広げるようにして、後続の兵たちも突撃する。
之前从未见过的巨大武器——巴尔迪奇——将身穿红色制服的前列军士扫荡。长可扩展了被称为錐的武器,使其刺穿了广泛的区域,并让后续的士兵跟进突击。
吹き飛ばされて大地を這い、ようやく窮地を悟った赤備えたちだが、既に心が折れていた。
被吹飞到地上爬行的红装士兵们终于意识到自己已经陷入绝境,但他们的心灵已经崩溃了。
萎縮した心では本来の力を半分も出せず、精強無比と言われた赤備えたちが次々と討ち取られていった。
萎缩的心态使得本来的力量只能发挥一半,曾被称为无比强大的红衣士兵们接连被击败。
「金子が転がっているようなものだぜー!」
“就像金子滚来滚去的东西一样!”
「赤備えを殺せ! 地に落ちようとも武田の赤備えだ。首の価値は高い!」
"杀死穿着红色装备的敌人!即使跌倒在地,也是武田红装的勇士。他们的头颅价值不菲!"
長可隊の足軽や雑兵たちが口々に叫びながら、赤備えを討ち取っていく。目をぎらつかせて赤備えを狙う光景は異常とも言えた。だが彼らが赤備えを狙う理由はきちんと訳があった。
长可队的足轻和杂兵们口口相传,夺取红备。他们瞪着眼睛盯着红备,情形异常。但他们瞄准红备的理由是有正当理由的。
赤備えの首は末端の足軽でも、それなりの報償が出るからだ。幾ら防御力に優れた甲冑を身にまとおうが、炸裂筒という広範囲破壊兵器があろうが、死の恐怖は簡単にぬぐえない。
赤色装备的首领即使是末端的足轻,也会得到相应的报酬。无论身着多么优秀的防具,有着广泛破坏力的爆炸枪等武器,死亡的恐惧也无法轻易摆脱。
その恐怖を克服するには名誉だけでは無理がある。長可という先陣を走り牽引する存在、そして討ち取れば多くの報償を得られるという欲が、彼らに死の恐怖を克服させていた。
光荣并不足以克服那种恐惧。长可扮演了先锋并领导了战斗,一旦成功便能获得许多酬劳,这种渴望激励着他们克服死亡的恐惧。
討ち取られている赤備えからすれば、名誉や面子はないのか、と憤慨するかもしれないが、足軽や雑兵からすれば、名誉で腹は膨れない。
对于被击败的红备而言,他们也许会愤怒地问:‘我们难道没有荣誉和面子吗?’;但是对于低级士兵和雇佣兵来说,名誉并不能填饱肚子。
「首だ! 首を寄越せぇぇぇぇ!!!!」
「把脖子伸过来!!!」
「恩賞のために首を寄越せぇぇぇぇ!!!!!」
「为了恩赏,把你的脖子伸过来!!!!!」
こうして色々な思惑が混ざり合い、長可と彼に従う兵たちは山県昌景の首を狙って突撃し、それ以外の者たちは目に入る赤備えを討ち取るという混沌とした戦場が出現した。
于是各种想法混杂在一起,长可和跟随他的士兵们冲向山县昌景的首级,而其他人则在混乱的战场上击败目标。
「随分とまぁ……派手だね」
"真是相当……华丽啊"
様子見をしてきた斥候の報告に、静子は乾いた笑いしか出なかった。足軽でも首一つにつき、割高な恩賞を出すと言ったが、予想以上に効果があった。
根据侦查员的监视报告,静子只能发出干笑。虽然她说过即使是低级士兵砍掉一个首级也会给予高昂的奖赏,但实际效果超出了预期。
双眼鏡で他の場所を見ると、才蔵と足満の軍が馬場信春軍に、慶次と高虎の軍が内藤昌豊と真田兄弟と戦っていた。
用双筒望远镜观察其他地方,才藏和足满的军队正在与马场信春的军队作战,而景次和高虎的军队则在与内藤昌丰和真田兄弟作战。
山県昌景が第二陣の補佐を求めたように、静子も残り四人に長可の補佐を命じた。炸裂筒で第二陣連中の足止めが成功し、その横腹にそれぞれが穴を穿つ形で突撃した。
像山县昌景一样,静子也命令剩下的四个人由长可协助。使用炸裂筒成功阻止了第二批人的前进,然后以每个人在侧面开个洞的形式发起了进攻。
鉄砲衆もそれぞれ300ずつ連れているため、武田軍第二陣は山県昌景の補佐に参加出来なかった。それどころか慶次や才蔵、足満、高虎と戦うだけで精一杯だった。
由于每个火枪手都带有 300 个炮弹,因此武田军的第二阵无法参加山县昌景的辅助。相反,他们只能全力与景次、才藏、足满和高虎作战。
特に足満の部隊が異質だった。全身に矢が刺さっている状態でも、声にならない声を上げながら敵陣に突撃する兵がいた。
特别是足满部队很特别。甚至在全身被箭射穿的情况下,仍有士兵在无声地呐喊着向敌军发起冲锋。
口からよだれを垂らし、どこを見ているか分からない虚ろな目で、人間とは思えぬ力で鉄の棒を振り回す。そんな連中が100人近くいた。
有近100人口水滴落,在空洞的眼神中不知道看著哪里,用看似非人力的力量揮舞著鐵棒。
「殺れ」
"杀了它"
足満の命令で鉄砲衆が一斉射撃する。鉄の棒を振り回す連中ごと、馬場信春の兵が薙ぎ払われる。だが虚ろな目をする者たちは、ふらふらと立ち上がるとまた鉄の棒を振り回していた。
在足満的命令下,火枪手们进行了齐射。像挥舞铁棒的人一样,马场信春的士兵被斩倒。但那些瞪大了眼睛的人却摇摇晃晃地站起来,又挥舞着铁棒。
異常な光景に馬場信春の兵は震え上がった。味方ごと敵を撃つのも異常だが、何よりも鉄の棒を振り回す輩が全く理解出来なかった。
场面异常,场上的马场信春的士兵们开始颤抖。即使是对敌人和盟友一起开火也已经让其感到异样,但更让他们无法理解的是那些挥舞着铁棒的人。
「奴らは味方ではない。武田の間者だ。連中ごと馬場信春の兵を殺せ」
他们不是我们的盟友。他们是武田家的间谍。杀掉所有幕府军,包括马场信春的士兵。
鉄の棒を振り回す連中の正体、それは信長が捕縛した武田の間者だった。そして彼らに足満は恐るべき事を行っていた。
挥舞铁棒的人们的身份是信长捕获的武田间谍,而他们被足满恐吓着执行可怕的任务。
ダチュラから抽出した麻薬成分を元に、意識混濁やせん妄状態が強く出るよう改良した薬を精製し、間者たちに投与してマインドコントロールを施した。
根据从曼陀罗提取的麻醉成分,精制并改良了一种药物,增强了意识混乱和幻觉状态,并将其注入间谍中以实施心灵控制。
度重なる薬剤の投与と洗脳により、間者たちは人格が崩壊し、ただ命じられるままに戦う殺戮マシーンへと変わり果てていた。
经过频繁药物投入和洗脑,忍者变成了人格崩溃、成为了仅会听从命令并冷酷屠杀的武器。
今、馬場信春軍に襲いかかっている連中も、薬物投与による恍惚感から痛みを感じていないため、銃撃されてもショック死することは無い。
现在,袭击场信春军的人们也由于药物投入产生的恍惚感,无法感受到疼痛,因此即使被枪击,也不会因为休克而死亡。
しかし出血は確実に体の力を奪い、肉体の損壊はその寿命を縮めていた。
然而,出血肯定会削弱身体的力量,身体的损伤也会缩短其寿命。
非道な作戦だが足満から見れば、使い捨ての間者を再利用しているぐらいの意識だった。
虽然这是一次卑劣的作战,但从足满的角度来看,他们只是再利用一些可有可无的间谍。
「よし、突撃だ」
"好的,冲啊"
おおよそ片付いたところで足満は、兵たちに号令を出す。一瞬躊躇した兵たちだが、足満が走り出すのを見て慌てて後を追いかける。
足满大约收拾好了,便发号施令给士兵。士兵们稍稍犹豫了一下,但见足满出发奔跑,便赶紧跟了上去。
配下の兵たちが恐怖に震え上がり、馬場信春がいくら声を張り上げようとも誰も応じなかった。ゆえに突撃してくる織田軍に為す術なく、次々と兵が蹂躙されていく。
下属的士兵们颤抖着因为恐惧,无论马场信春如何高喊,没有人回应。因此,面对冲过来的織田军队,他们束手无策,士兵们接连被蹂躏。
「ちい! あそこまで外道な策を使うとは!」
“这么使用卑鄙的策略,太卑劣了!”,翻译为简体中文。
軍の立て直しはもはや不可能に思えたが、馬場信春はそれでも踏みとどまり奮起を促した。しかし彼の命の灯火は今まさに消えようとしていた。
军队的重建似乎已经不可能了,但马场信春仍然坚持并鼓励奋起。然而,他的生命之火即将熄灭。
「無駄だ。このいくさ、勝ったのは我らと宣言したであろう」
“无用的。这场战斗,胜利者将由我们宣布。”
馬場信春の前に足満が立ち塞がった。子飼いが足満の足止めをしようとするが、一撃の下に斬り捨てられた。
马场信春前面被足满挡住了去路。随从试图阻止足满,但却被一击砍倒。
「だが流石は馬場信春、ここまで耐えた事は褒めよう」
"但是流石是场信春,这里所经历的值得赞扬"
「貴様……こうまでして勝ちたいのか。貴様には武士の矜持というものがないのか!」
"你……想到这样的程度都要赢吗?你没有武士的自尊吗!"
薬物で狂わせた兵を突撃させ、その背後で味方ごと敵を薙ぎ払う。まさに悪鬼羅刹の所行だと馬場は思った。
用药物狂化士兵,让他们发起突击,然后趁机在背后扫荡敌人。马场认为,这就像恶鬼般的行为。
「ふん、貴様はまだそんな事を言っているのか。良いか、馬場信春。わしは征夷大将軍だった。だが京の連中はわしが邪魔だと考えた時、暗殺という手段を取った」
"Hmph, are you still saying such things? Listen, Nobuharu Baba. I was once the Shogun. But when the people in Kyoto thought I was in the way, they resorted to assassination." translated to Simplified Chinese is: "哼,你还在说这些吗?听着,信春场。我曾经是将军。但当京都的人认为我在路上的时候,他们就采取了暗杀手段。"
「それと今の何が関係ある!」
“那跟现在有什么关系!”
「分からぬか、愚か者。仮にも武家の棟梁たる征夷大将軍を暗殺したのだ。暗殺のどこに正道がある。だが暗殺された事を誰も非難せず、あまつさえ次の征夷大将軍を据えた。さぁ答えろ馬場信春、正道を説くならば、何故わしが暗殺された時に道を正そうとしなかった!」
“你不明白吗,愚蠢的人。你杀死了作为武家领袖的征夷大将军。暗杀有哪里符合正道呢?但是没有人谴责这次暗杀,甚至还任命了下一位征夷大将军。现在回答我吧,马场信春,如果你要讲正道,为什么当我被暗杀时你不想纠正错误呢!”
「ッ!」
「ッ!」转换为简体中文为「咻!」。
「理解したか。貴様の正道は、貴様の都合の良い正道に過ぎぬ! わしは暗殺された時に理解した。この世に正道も邪道もない。強いて言えばーーーー」
"你理解了吗?你的正道只不过是你自己方便的正道罢了!我在遭到暗杀时才明白,在这个世界上并无所谓正道或邪道,如果非要说的话——"
刀の先端を馬場信春に向けると、足満は感情が感じられない冷たい言葉を紡いだ。
将刀尖对准马场信春,足满说出了毫无情感的冷语。
「勝者にのみ正道があり、敗者には正道を口にする資格はない」
“只有胜者才有正道,败者没有资格谈论正道。”
「この、減らず口を……ッ!」
"不要再说话了!"
何とか言い返そうと馬場信春が足満をにらみ返した時、彼は異常に気が付いた。足満は笑っていた。
当马场信春试图反驳时,他突然感到不对劲。足満在笑。
それは勝利を確信し、敗者たる馬場信春を嘲笑う笑みではなかった。
那不是一个确信胜利,嘲笑作为失败者的场信春的微笑。
異様な足満の態度を訝る馬場信春の耳に馬が駆ける音が届いた。音源を探して周囲を見回そうとした瞬間、彼の目には才蔵が槍を構えて突撃してくる光景が映った。
马场信春疑惑地对着异常踌躇不前的才藏表现出不解的态度时,他听到了马儿奔跑的声音。他想找到声音的来源并四处张望时,他的眼前出现了才藏拿着长矛冲锋的场面。
「馬場信春!! その首、貰い受ける!」
"马场信春!!我要收下你的首级!"
周囲の兵たちも足満に意識を向けていたため、才蔵の存在に気付くのが遅れた。
由于周围的士兵们都在注视着脚下,所以才蔵的存在察觉得比较晚。
最初から足満は馬場信春を討ち取る気はなかった。才蔵が馬場を討ち取るための囮役に徹していた。
最初开始,足满没有想要击败马场信春的想法。才藏一直在充当击败马场的诱饵角色。
武田の話を足満が何度も蹴り続けたのは、馬場信春が出てくる時期まで待っていたからだ。
因为足满一直等到马场信春出现的时候才停止踢武田的故事。
馬場信春と会談した時、必要以上に彼を挑発し侮蔑したのも、自分を見れば馬場信春が必ず戦いを挑むと足満が判断したからだ。
当与马场信春会谈时,足满觉得他需要挑衅和侮辱,因为足满认为马场信春肯定会发起战斗。
どれだけ冷静になろうと努めても、あれだけの人がいる前でこれ以上ない程に面罵されれば、叩き潰したいという感情がわく。
无论我如何努力冷静,如果在那么多人面前被无限谩骂,我会感到想要打垮的情绪。
そうして内心怒りに震えた馬場信春を最前線に出し、深く食い込んできた所で馬場信春を才蔵が討ち取る作戦だ。
这样,将内心愤怒的马场信春派到最前线,在他深入阵地后,才蔵就会采取打败他的计划。
途中まで才蔵の軍が全く目立たず陰役に徹していたのも、馬場信春と彼の兵たちに才蔵の軍は恐るるに足らずと油断させるためだ。
一直到途中,才藏的军队完全默默无闻地扮演着配角,这也是为了让场信春及其士兵放松警惕,认为才藏的军队不足为虑。
こうまでして早くに馬場信春を討ち取ろうと考えたのは、何も最初に討ち取りやすい位置に彼がいたからではない。
这么做早早地想要击败馬場信春,并不是因为他最初处于易于击败的位置。
彼は指揮能力や戦局の分析能力に優れている。だからこそ何十年もの間、かすり傷一つ負わずいくさ場で暴れられた。
他拥有出色的指挥能力和战局分析能力。因此,他能在战场上数十年不受伤。
そして戦局の分析能力に優れた人間は、いくさの後半になればなるほど厄介な存在になる。
而且,那些具有优秀战局分析能力的人,在战争后期会变得越来越棘手。
武田四天王や武田二十四将をどれだけ討ち取ろうとも、肝心の武田信玄を討ち取れなくては意味がない。
无论杀死了多少武田四天王或武田二十四将,如果不能杀死关键的武田信玄,一切就没有意义。
逆を言えば武田軍がどれほど生き残ろうとも、信玄の首さえ上げればお釣りがくる。
换句话说,即使武田军队幸存下来,只要取下信玄的头颅,就会有雪中送炭的回报。
それほどに信玄の首は重要であり、その最大の障害となる人物が馬場信春だった。緒戦で彼を討ち取ろうと考えるのは、戦略上至極当然の判断だ。
信玄的头颅如此重要,并且成为其最大的障碍者是马场信春。在战略上,考虑在开战初期击败他是极为明智的决定。
だが通常の戦闘を仕掛けても、多少損害を与えるだけで立て直しを図られるのが落ちだ。
但是发动通常的战斗,只能造成一些损失,对方会立即采取纠正措施,这是一个败笔。
だからこそ外道・非道の誹りを恐れず、相手の首を討ち取るために何でもする足満が採用された。
因此,为了除掉对外道和非道言行的责备,足满被聘用为袭击对手的手段。
心理的な揺らぎが一つもなく、人を当然のように使い捨てる足満の作戦を実行して、初めて馬場信春は敵の真意に気付かず戦う状況に陥った。
没有任何心理上的波动,足满执行着利用和抛弃他人的计划,直到此时,馬場信春才意识到了敌人真正的意图,陷入了战斗中。
そして様々な怒りを覚えて足満に意識を集中したため、最初にして最後ともいえる馬場信春を討ち取る好機が生まれたのだ。
因为他们感到愤怒,并集中精神在阿足满上,于是出现了一次可以说是第一次也是最后一次击败馬場信春的机会。
瞬時に今までの足満の言動は自分を討ち取るための策だった、と馬場信春は気付いた。だが気付いた時には手遅れだった。
瞬间,马场信春意识到之前的言行都是为了自毁而制定的计策,但当他意识到时已经太晚了。
刀で才蔵の攻撃を防ごうとしたが時既に遅し、馬場信春が刀を抜くより早く才蔵の槍が疾走はしった。
使用刀想要抵挡才藏的攻击,但为时已晚,马场信春还没来得及拔刀,才藏的长矛已经猛地向前刺去。
馬場信春の首が宙を舞う。刎ねられた首は胴体と離れた事を知らず、空中でまだ鬼の形相を浮かべていた。
马场信春的头颅在空中翻飞。被砍下的头颅不知道与身体分离,仍带着鬼神般的表情悬浮在空中。
やがて地面に落ち、ころころと地面を転がる。何かにぶつかってようやく馬場の頭は転がるのを止めた。馬場の頭がぶつかったのは才蔵の足だった。
不久后落在地面上,滚动着在地面上滚动。终于碰到什么东西才停止了场地的头部滚动。场地的头部撞在了才藏的脚上。
彼は馬場の頭を掴むと、天高く掲げて宣言した。
他抓住马场的头,高高举起并宣布。
「馬場美濃守が首、可児才蔵が討ち取ったりぃ!!」
「马场美濃守的头被可児才藏斩了!」
刻は少し戻り、馬場信春と足満・才蔵が戦っている中、長可は一直線に山県昌景を目指していた。今や随伴兵が30ほどしかついてきていないが、それで十分だった。
刻钟稍稍倒流,当场场上,马场信春与足满・才藏战斗中,长可一路向着山县昌景直冲而去。此刻,跟随他的士兵只有30人左右,但这已足够。
彼らは長可の子飼いであり、精鋭中の精鋭だ。たとえ心が折れていなくとも、赤備えに後れを取るような連中ではない。
他们是长可的子饲,是精锐中的精锐。即使没有打破心灵,他们也不是那种会落后于赤备的人。
子飼いたちが一薙ぎするたびに、赤備えが斬り伏せられていく。冷静に考えれば数で押せばどうにかなるものの、心が負けてしまった赤備えは長可に近づこうとすらしない。
每当手下们同时冲上前去,红备被斩杀殆尽。如果冷静思考,只要以数量压倒对方就能胜利,但因为心理上的恐惧,红备甚至都不敢靠近长可。
「山県昌景ェェェェェェ!!!!」
"山县昌景!!!!" (Note: Simplified Chinese does not have the elongated "ェ" sound in Japanese, so it is omitted in the translation.)
長可は叫ぶ。それが子飼いたちにとって助勢なのか、彼が叫ぶたびに子飼いたちに気力が満ちあふれていく。
长可大声叫喊。这对于他的手下来说是一种助威,他每次叫喊时,手下们就会充满活力。
バルディッシュを振るい、障害となる敵兵を薙ぎ倒していく。そうしてどれほどの時間が経ったのか判らなくなったころ、ついに長可は赤備えの囲みを突き破った。
挥舞巴尔迪希,砍倒阻碍前路的敌兵。在不知道过了多久的情况下,长可终于突破了赤备围。
赤備えの後方にいた山県昌景を視界に捉えると、長可はバルディッシュを持ち直す。ことここに至れば、もはや退路や周囲を窺う余裕など頭の片隅にも過りはしなかった。
当长可注意到站在备战的后方的山县昌景的时候,他重新握紧了他的巴尔迪希。现在他已经到了这一步,已经没有时间去寻找逃脱的道路或者关注周围的情况了。
ただ一直線に山県昌景を目指す。山県昌景の方も長可を確認したが、彼は撤退という選択をしなかった。
只是一直朝着山县昌景前进。山县昌景也注意到了长可,但他没有选择撤退。
今でさえ後方に陣取るという無様を晒している。その上、敵に喉元を突かれて逃げ出したとあれば、赤備えの名は地に落ちる。それだけではない。
眼下已经暴露出了后方阵营的无耻行径。若再加上被敌人逼到绝境而落荒而逃的情形,赤备之名更将黯然失色。而这并非唯一之事。
兵は勿論、その家族まで肩身の狭い思いをすることを強いられる。そして大一番で臆病風に吹かれて逃げ出したと末代まで語り継がれる。
士兵们不仅如此,还迫使他们的家人感到难堪。这件事将被传承下去,就算是在决定胜负的时刻,他们也会被吓得逃之夭夭。
もはや山県昌景だけの話では済まない。彼の両肩にはこれまでの赤備えの名誉と、一族の名誉、そして赤備えに関わる全ての者の名誉がのしかかっていた。
已经不仅仅是山县昌景的事情了。他肩负着之前的红备荣誉、家族的荣誉以及所有关联红备的人的名誉。
ゆえに彼は撤退しない。逃げるという考えすら浮かばないのだ。たとえ破滅が待っていようとも。
因此他不会撤退。他甚至没有考虑逃跑。即使灭亡也在等待着他。
「小僧がぁ! わしの名を呼ぶなど十年早いわ!」
“小子!别提我名字还差十年呢!”
長可に負けじと叫び返すと、山県昌景は手綱を操って突撃する。まさかの単騎突撃に山県昌景の側仕えたちは唖然とした後、慌てて彼を追いかけた。
长可大喊:“绝不会输!” 山县昌景操纵缰绳,发起猛烈冲锋。在这出人意料的独骑突击中,山县昌景的随从目瞪口呆,随后慌忙追赶。
「小僧じゃねぇ! 俺の名は勝蔵! 森勝蔵長可もりかつぞうながよしだ! よぉく覚えてから地獄に落ちやがれ!!」
“我不是小子!我的名字叫胜藏!森胜藏长可也是森胜藏长吉!好好记住,然后跌入地狱!”
「減らず口を! 我が名は山県三郎やまがたさぶろう兵衛尉ひょうえのじょう昌景まさかげ!! 貴様を冥府へ送る者の名よ!!」
「少说废话!我的名字是山县三郎兵卫尉昌景!我是将你送到冥府的人!谨记我的名字!」
一騎打ちになる。双方の子飼いは誰が言うまでもなくその事を理解すると、一騎打ちの邪魔にならないよう離れる。
一对一的决斗。双方的侍从无需言说便能理解这件事情,为避免干扰一对一的决斗,它们会移开。
その他、駆けつけた武田の赤備えや長可の兵も、一騎打ちが始まると理解すると、それぞれの背後に陣取った。
此外,赶来支援的武田军队和长可的士兵们,一旦意识到即将开始的一对一战斗,便立即占据了各自的后方。
『良いか勝蔵。貴様が山県と相対するとき、圧倒的に不利と心得よ。幾つものいくさ場を渡り歩いてきた山県と、貴様とでは圧倒的に経験が違う。刻が経てば経つほど不利になり、経験がものを言うようになる』
“勉为其难,赢藏。当你与山县对峙时,要心知肚明你处于极为不利的地位。经历了多次战场的山县和你所拥有的经验相差甚远。时间流逝,你的处境只会更加不利,而经验决定一切。”
長可は父親である森可成の言葉を思い出す。言われた時は分からなかったが、こうして山県昌景と相対して初めて気付く。
长可回想起了他的父亲森可成曾经说过的话。当时他还不理解,但是现在在与山县昌景对峙时才意识到其含义。
山県昌景は大剛なる武士である事を。相対するだけで押し潰されそうな重圧、肌がヒリヒリするほどの気迫、何もかも今の長可にはないものばかりだった。
山县昌景是一位大力士。仅仅与他相对就会感受到沉重的压力,充满气势,这些是长可现在所没有的。
『若さに任せた気勢など、歴戦の猛者の前では風前の灯火、何の役にも立たぬ。更に山県は追い詰められた状態だ。単なる将ではない、一騎当千の死兵である事を心得よ』
"年轻的气势在经历过战斗的勇士面前只是九牛一毛,毫无用处。而且山县现在处于被逼迫的状态。他不仅是普通指挥官,更是一名勇猛无比的战士。要明白这一点。"
(分かったよ、親父……今まで経験した事のない……本当の強敵って奴をよ!!)
“我知道了,老头……我现在遇到了从未经历过的真正强大的敌人!!”
バルディッシュを持つ手に力を込める。長可は最初の一撃に全てを込める。成功すれば山県昌景を討ち取れるが、失敗すれば長可が討ち死にする事は確定だ。
握住巴尔迪武士刀的手臂用力收紧,长可倾注全力发出第一击。若获得胜利,他可以斩杀山县昌景,但若失败,也意味着长可将付出生命的代价。
既に大戦果を挙げている長可にとっては分の悪い賭けになる。
对于已经取得了巨大战果的长可来说,这是一个不利的赌注。
しかし山県昌景の首を挙げないことには勝利はない。ここまでしてようやく長可たちは、名にし負う武田の赤備えを自分の土俵に立たせることが出来たのだ。
但是,如果不拿下山県昌景的首级就不算胜利。长可才能够把以武田家为傲的赤装备带到自己的领地上,必须做到这一点。
もし長可が破れれば、今までの苦労は全て水泡に帰する。一時の勝利など山県昌景を逃せば、すぐに立て直されてしまう。
如果长可破裂的话,之前所有的努力都会付诸东流。如果错过了一时的胜利,像山县昌景一样,很快就会被重新击败。
「山県昌景ェェェ!! その首、貰ったァァァァ!!!」
"山县昌景!!那个头,我得到了!!!"
(ふん、若造が。馬上槍の難しさを噛みしめて死ぬが良い!)
(哼,年轻人啊。感受马上枪战的难度吧,最好死在那里!)
馬上槍を扱うには相当な修練が必要となる。武田軍ですら殆ど武将は馬上槍を用いず、突撃後は下馬して歩兵として戦うのが常である。
马上枪械的使用需要相当的修行。即使对于武田军的武将来说,他们几乎不使用马上的枪械,而是在冲锋之后下马,以步兵的身份参加战斗是常见的。
そもそも馬はいくさ場を素早く移動するための手段であり、高い位置にあることや勢いの有利を以ての突撃や、機動力を生かした歩兵では取りえない迂回からの側撃という後方攪乱が主要な運用となる。
马最初是为了在战场上快速移动而设计的工具,主要用于高处突击以及利用高速冲锋和机动能力进行侧翼攻击来干扰敌方后方。步兵无法进行这种迂回打击,因此这成为了马在战场上主要的运用方式。
それゆえに戦場の華となるものの、馬の足が止まれば一気に優位性を失う。一度勢いが死ねば、全ての行動が隙となる致命的な欠点が馬上槍にはあった。
因此,虽然成为战场上的華丽存在,但一旦马停下来,马上枪就会失去优势。一旦气势消失,所有行动都会变得脆弱,这是马上枪的致命缺点。
「この腕、貴様にくれてやろう!」
“这只胳膊,我给你!”
片腕を犠牲にして長可の攻撃を防ぎ、馬の操作が乱れた所で長可を討つ。
牺牲一只手臂阻止张可发动攻击,在马失控的时候击败张可。
それが山県昌景のとった作戦だ。最上とは言えずとも極めて有効な戦法だった。山県昌景でなくとも誰しもそうしたであろう。
那是山县昌景采取的战略。虽不算最上策,但非常有效。不仅山县昌景,其他人也会这么做。
「ああああああああああああああああああっ!!!」
"啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!" translates to "啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!" in Simplified Chinese.
叫びながら長可がバルディッシュを振るう。山県昌景は片腕で長可の攻撃を受け止めようとした。バルディッシュの攻撃を受けた瞬間、彼は篭手ごと己の腕が粉砕される音を聞いた。
长可喊着叫,挥舞着巴尔迪希。山县昌景试图用一只手挡住长可的进攻。在巴尔迪希的攻击下,他立刻听到了他的臂膀连带着篭手被粉碎的声音。
(骨が砕けたか。だが……何ぃ!)
(骨头断了吗。可是……什么!)
骨が砕けたが腕自体は無事、そう思っていた。だが山県昌景は致命的な間違いを犯した。長可の膂力は彼が知る若者とは、比較にならないほど強いという事を。
骨头碎了,但手臂本身还好,我一直以为。但山县昌景犯了致命的错误。长可的肌力比他所认识的年轻人强得不可同日而语。
「俺を、なめるなぁぁぁぁぁ!!!!」
“不要小看我!!!!”
叫び声とともに、長可は限界を超えた力を発揮する。
伴随着呼喊声,长可发挥出了超越极限的力量。
バルディッシュの勢いは止まらず、山県昌景の腕を両断すると、その刃は彼の首へと迫った。下から振り上げる刃で鎧ごと腕が断ち切られるという予想外の事象に、山県昌景は防御出来ないまま長可の攻撃を受けた。
巴尔迪什的势头不停,直到扬谷昌景的手臂被斩断,然后剑锋逼近了他的脖子。由下往上挥动的刀锋突然将扬谷昌景的盔甲和手臂一起切断,他没有防御长可的攻击。
「うあおっ!」
哇哦!
勢い余った長可は、山県昌景を斬ると同時に落馬した。馬は勢いのまま駆けると、少し走ったところで足を止めた。対して長可は痛む体を無理矢理起こして、山県昌景の姿を確認する。
长可斩山县昌景之余,也跌倒了。马匹继续奔跑,稍稍跑了一段路后就停了下来。与此相比,长可强行站起身来,确认山县昌景的身影。
「ば、馬鹿な……ごぼっ……こんな餓鬼の……どこにこんな力が……」
"啊,真是蠢啊……噗嗤……这样的小屁孩……从哪儿来的这么大力气啊……"
首から血を噴き、口からも血を流す山県昌景が、驚愕の表情で長可を見つめていた。長可の一撃は山県昌景の腕諸共、左脇腹を通り抜け逸らした首すらも切り裂いていた。
山县昌景从头部和口中喷出鲜血,惊恐地注视着长可。长可的一击不仅贯穿了山县昌景的手臂和左腹,甚至砍断了他的头颈。
誰が見ても助からないと判る傷だった。己の状況を察した山県昌景は、ニヤリと太い笑みを浮かべ、無事な右腕で刀を握った。
伤口显然是无法挽救的。山县昌景意识到了自己的处境,露出了得意的微笑,他用健康的右臂握着刀。
「餓鬼……いや、森勝蔵長可よ! 見事なり。だがこの山県昌景は貴様の手には掛からぬ。我が死に様を……とくと見届けよ!」
“饿鬼……不对,森胜藏长可以了!真是太棒了。但这个山县昌景不会落入你的手中。好好观看我的死亡方式!”
言うやいなや山県昌景は自分で自分の首を切り落とした。切り落とされた首から鮮血がほとばしる。長可は呼吸を整え、山県昌景の首に手を合わせる。
一说话,山县昌景便自己砍下了自己的头。鲜血从被砍下的头部喷涌而出。长可恢复了呼吸,双手合十向山县昌景的头部虔诚地祈祷。
「山県三郎兵衛尉の死に様、天晴見事なり。大剛なる武士もののふとは、彼のためにある言葉なり」
"山県三郎兵衛尉的死亡方式,天晴壮观。即使是伟大的武士,也无法形容他的壮烈。"
長可は山県昌景を褒め称える。自分の攻撃が届かなければ、首を落としていたのは自分の方だった。手を合わせ終えると、長可は山県昌景がニヤリと笑ったように見えた。
长可赞扬山县昌景。如果他的攻击不能生效,那么他自己就会被斩首。祈祷结束后,长可看到山县昌景露出了得意的微笑。
我を討ち取った事を誇れ、そんな事を言っているような笑みだった。長可は笑みを浮かべると山県昌景の首を天高く掲げる。
“为杀了我而感到骄傲吧”,他带着一副说出这样话语的微笑。长可露出了笑容,高举着山县昌景的首级。
「山県三郎兵衛尉が首、森勝蔵長可が討ち取ったりぃ!!」
「山县三郎兵衛尉被森胜藏长可击杀了!!」
長可が山県昌景を、才蔵が馬場信春を討ち取った時間は殆ど同じだった。僅かに静子の方へ報告が届くのが早かった。それが勝負の分かれ目となった。
长可和才藏时间几乎同时杀死了山县昌景和马场信春。只是向静子报告的消息稍微早了一点,这成为了决定胜负的关键。
「太鼓を鳴らせぇ!!」
"敲鼓吧!!"
「はっ!!」
"哈!!"
陣太鼓がドンドンドンと鳴り響く。一度だけではなく、三拍子が二度、三度と続けられる。
阵太鼓咚咚咚地敲响着。不止一次,三个节拍一遍接着一遍,不断地响起。
それを聞いた静子軍は勿論、左右にいる佐久間、平手、水野、そして後方の徳川軍に変化が起きた。
听到这个消息,静子军和左右的佐久间、平手、水野以及后方的德川军自然而然地产生了变化。
「待たせたな、者ども! 目の前に武功が転がっていながら、今まで抑えてくれた事を感謝する!! だがもう耐える必要はない!!」
“让你们久等了!眼前的武功虽然一直被压抑,但我仍然感谢这一切!但现在,我不必再忍受了!”
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
"哇啊啊啊啊啊啊啊啊啊!!!"
「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
"哦哦哦哦哦哦哦哦哦哦哦!!!"
静子の声に兵士たちが雄叫びを上げる。静子は満足げに頷くと、クーゼを天高く掲げる。少し遅れて兵士たちが続く。
静子的声音让士兵们发出雄性的呼喊。静子满意地点了点头,然后高举起库泽。士兵们稍有延迟地跟着呼喊。
軍旗など色々なものを掲げたため、武田側からは織田・徳川軍の後方が見えにくくなった。ゆえに後方で起きている事に気付けなかった。
由于举起了许多军旗等物品,武田方面无法清晰地看到织田和德川军的后方。因此,他们没有注意到后方正在发生的事情。
徳川の軍旗が一つもない、という状況を。
"德川的军旗一个也没有的情况"
徳川軍の軍旗はなくなったが兵はそのままだった。そして兵たちが差している軍旗は、全くの別物だった。
德川军的军旗虽然不见了,但士兵们还是在原地。而士兵们手中挥舞的军旗,则完全是另外一种物品。
「やれやれ、ようやく出番ですね」
“哎呀哎呀,终于轮到我了。”
そんな事をぼやきつつ、羽扇で自分を仰ぐ人物は竹中半兵衛だった。彼だけが参加したのではなく、周囲にいる兵たちは秀吉の軍旗を掲げていた。
抱怨着的人是竹中半兵卫,他用羽扇遮阳。不仅只有他参加了,周围的士兵也举着秀吉的旗帜。
まごう事なき秀吉の軍である。そして秀吉の軍だけではない。彼らから少し離れた場所に陣取る軍は、柴田軍の軍旗が掲げられていた。
毫无疑问,这是秀吉的军队。不仅如此,远离他们一段距离的军队,也升起了柴田军旗帜。
「まさか本当に討ち取るとはな。皆の者!! 女子に負けておられぬぞ!!」
“竟然真的能够取胜啊。大家!!不要输给女孩子!!”
率いる武将はまさかの柴田勝家だった。彼らの他にも佐々成政、明智光秀、丹羽長秀、前田利家など、様々な織田家家臣たちの軍旗が掲げられていた。
领导这支军队的将领意外地是柴田胜家。除了他们之外,佐佐成政、明智光秀、丹羽长秀、前田利家等各种织田家家臣的军旗也在飘扬。
「最初は滅茶苦茶な話と思ったが、それぐらいでなければ武田には勝てぬか」
“最初我认为这个故事很混乱,但如果不是那样,就无法战胜武田了。”
「皆の者!! 武田を討ち取れば末代までの誉じゃ! 斬って斬って斬りまくれぇ!」
“各位!!只要击败武田,就能得到世世代代的荣誉!砍砍砍个不停!”
あちらこちらで武将による鼓舞が行われる。武田の側近中の側近を討ち取った事は、既に全軍に知れ渡っているので、武田と聞いて怯える兵は一人もいなかった。
这里那里都有武将鼓舞士气。据已经全军皆知,击败了武田身边亲信中的亲信,所以一点也没有因听到武田的名字而感到畏惧的士兵。
「本当に山県を討ち取るとはな。天晴れとしか言えぬ」
"真的将山县打败了啊,真是太好了"
そして後方の織田軍の中に、森可成の姿があった。彼はいつもの甲冑を纏い、これまで何度敵を討ち取ったか分からない愛用の十文字槍を握っていた。
后方的织田军中, 有着森可成的身影。他穿着惯常的铠甲, 握着他不知因多少次杀敌而得到的十字枪。
「父上。無茶をされては体に毒でございます」
"父亲。无理的行为会对身体有害。"
長男の森可隆よしたかが森可成の体を労る。だが、彼は首を横に振る。
长男森可隆为森可成按摩,但他摇了摇头。
「心配をかけてすまぬ。だが、血が……わしの血が騒ぐのじゃ。肩の負傷で諦めようと何度も思った。じゃが血の滾りには抗えぬ。安心せよ、これで最後じゃ」
「很抱歉让您担心了。但我的血液...我的血液在沸腾。因肩部受伤而一再放弃了治疗。但是我无法抵御血液的狂奔。请放心,这是最后一次了。」
「父上……わかり申した。某はもう何も申しませぬ。存分に、戦い下さいませ」
"父亲……我明白了。我不会再说什么了。请尽情地战斗吧。"
「わしが有終の美を飾るのに、武田は贅沢すぎじゃがの。だがわしが戦うのは本当にこれで最後となる。しかして我が武勇、その目にしかと焼き付けよ」
“我要为完美谢幕,但武田做得太奢侈了些。不过我这次战斗确实是最后一次。请务必记住我的英勇事迹。”
「ははっ! 父上の雄姿、我が眼まなこにしっかり焼き付けます!」
“哈哈!我会将父亲的英姿深深地烙印在我的眼中!”
可隆の返事に森可成は満足そうに頷く。全軍の士気は熱気のように溢れだし、陽炎のように揺らめいて見えた。後は静子が全軍突撃を命じるのみ、それを今か今かと待ちわびていた。
可隆的回答让森可成满意地点了点头。全军的士气像热气一样充沛,仿佛在热烈的烟雾中摇曳。此时只待静子下令全军发起突击,而他们也如饥似渴地等待着这个时刻的到来。
「皆の者!! 我に続け!! 全軍、突撃ーーーーーー!!!」
所有人!跟我上!全军冲锋!
そしてその時はやってきた。静子の号令とともに、織田軍は雄叫びを上げながら、武田軍へ突撃した。
然后那时候到了。伴随着静子的号令,织田军发出雄壮的呼声,向武田军发起了冲锋。
突撃するのは織田軍のみ、では徳川軍はどこへいるのか。忽然と消えた徳川軍が、一体どこにいて何をしようとしているのか、その事を信玄が知るのはもう少し後の事である。
冲锋的只有织田军,那德川军去了哪里?德川军突然消失了,信玄后来才知道他们在哪里以及他们在干什么。