二人で幸せになろうとした人外の話
進んで、進んで、進んで、進み続けて
逃げて、逃げて、逃げて、逃げ続けて
数え切れぬ生をすくって
数え切れぬ死をつくって
奇跡を見た
地獄を見た
まだやるべきことが
もうここに居たくない
大丈夫何度でも諦めずに開き直す
死んで死んで死ねばみんなの明日が良くなる
*
「......なあ」
「願いごとの一つや二つぐらい、あるだろう」
「.........」
「教えなよ」
「—————、———たい」
「 ? 」
もののけは、震えながら
心の臓を曝け出す
「愛する、誰かに...」
恐怖の叫び声が脳の奥に響き
死よりずっと怖い悪意に怯え
それでも
「っ...愛する誰かに、愛され...たかった」
*
言ってしまった
きっと貴方は、もう
振り向くことは
「......そうか」
「俺と一緒だな」
互いの距離と違い
まるで気にしなかったように近付き
いつものように、手を差し伸べくれた
「——————————————え?」
「お前...え?ってないだろう?そんなおかしいこと言った?」
「——だって」
声が軋んで掠れ
体は異様に歪み
顔も醜く砕けた
目汚しでしかないのに
「......」
「......」
「——あ」
「?」
「お前、まさか立てないのか?悪いな、気づかなかったよ」
「よいしょっと」
「?!??!?」
「腹も減った、サッサと帰ろう」
今それを言う——?!!
「オレの消耗も激しいから、あんま暴れるなよ」
「傷も痛むしさ」
「......」
「......」
「.....あのさ」
「?」
「こんな体で大丈夫か?」
「ほら、生活に支障が出て、いきなり死んだりとか......しないよな?」
しないわよ
「わあったわあった、抗議はやめろって」
異形の爪と言えど、こうも力加減したら逆に痒いらしい
その笑みを見てると、他のことが急にどうでも良くなった
「でもまあ」
「さすがに今までどおり、は難しいか」
「......」
*
怒り半分で誤魔化せた
順調に担いたが、相変わらず騙しやすくで逆に心配だぞおい
話を戻って
オレは(心配だが)一向に構わないが
人前は間違いなく一発アウト
コスプレやソリットビジョンとかで誤魔化せそうにない
いや
逆に言えば人前に出なけりゃいいか
それはいい......いやいやいや
危うくあいつに似た考え方をしちまった
「とりあえずしばらく引きこもるか」
「手持ちの依頼も一通り終えた——」
見ないうちに
またこの世の終わりのような顔をした
見なくともわかる
そういう雰囲気が漂ってるから
担いてる肩が微妙に寒いのも原因の一つ
「なあに余計な想像してんだよ」
ポンポンと背中だった所を叩く
人の形がまるでわかんないぐらい変わったわけじゃない
......ここで変なとこ触ったら笑えないが、幸い正解みたいだ
安心して説教できる
「今のは人前の話、ひ と ま え」
「いつもそうだから誤解されるだ」
「だいたいお前はなあ......
*
「......」
わかってるつもりでも
自分より誰かか困るよりずっとましたから、変えようがないと言える
君にとってきっと散々で
見切りを付けても
「——もうちょっと」
「もうちょっとオレを信じてよ」
「......付き合ってる意味で」
「————————」
*
気のせいか
冷んやりした空気一気に暑くなった
此度の沈黙はそう続いてなかった
「......ああもう!」
「帰るぞ!」
「.......(無言に頷く)」
耳まで赤くなってるお二人さんは
無事に帰りました
めでたしめでたし