日本小6课文:实现的愿望——成为日本人【久我Masahi的日语课堂】#93

叶えられた願い—日本人になること(实现的愿望——成为日本人)
作者:ドナルド=キーン
私の原点(我的原点)
私は、アメリカのニューヨークで生まれました。子供の頃は、身の回りに日本を連想させるようなものは殆どありませんでした。しかし、十八歳の時に、たまたま手にした本から、私は、日本文学と日本文化に関わる、長い一筋の道を歩き始めることになりました。そして、このたび、日本国籍を取得しました。今、私は九十歳を過ぎています。(我出生于美国纽约。孩提时代,我身边基本没有让我联想到日本的东西。然而,十八岁时,从我偶然得到的书开始,长期地一心扎进了日本文学和日本文化。并且,我这次取得了日本国籍。现在,我九十多岁了。)
十八歳の私が最初に日本文学に出会った年は、世界中が大きな戦争に向かい始めた一九四〇年でした。私は平和主義でしたから、戦争に関する最新ニュースが怖くて、新聞が読めなかったくらいです。この頃は、戦争に対する憎しみが心を締め、私の人生の中でも精神的に最も辛い時期でした。そんな思いで過ごしていたある日、私に運命的な救いの手が差し伸べられました。大学生だった私は、ニューヨークのタイムズ·スクエアにある売れ残りの本を安く扱う店に何気なく立ち寄りました。するとそこに「The Tale of Genji(源氏物語)」と言う題名の本が山積みされていたのです。二巻セットでたったの四十九セント。初めて目にする題名でしたが、挿絵から、この作品は日本に関するものに違いないと思いました。(十八岁的我最初与日本文学邂逅的那年,是在全世界开始大战的1940年。由于我是和平主义,因此很害怕战争相关的最新新闻,害怕到几乎不能看报纸。那时,对战争的憎恶令我揪心,这是我人生中精神上最煎熬的时期。就抱着这种心情度过的某日,命运向我伸出了救赎之手。大学时的我,无意地走到了在纽约时报广场的低价出售剩货书的店。于是在那里标题为《源氏物语》的书堆积如山。一套两卷只要49分。这是我第一次看到的书名,然而从插画来看,这个作品一定与日本有关。)
軽い好奇心で手にしただけでしたが、「源氏物語」は、たちまち私の心を奪いました。千年も昔の日本の貴族の生活を描いたその物語には、季節とともに移ろう彼らの生活と心情が生き生きと描かれており、「果てしなく美しい世界」が広がっていました。私は、「源氏物語」の世界と自分のいる現実の世界とを比べました。物語の中には、小さな諍いはあっても、戦争はありませんでした。もしも、この時にこの物語と出会わなかったら、私は、日本文学の美しさを世界に伝えるという仕事に、自分の生涯を捧げていたかどうか分かりません。(虽然是一丝好奇买下的书,《源氏物语》很快攫住了我的心。描写了千年之前的日本贵族生活的这个故事,将他们随着季节变化的生活和心情描写得非常生动,“无边无际的美丽的世界”展现开来。我对比了《源氏物语》的世界与自己所在的现实世界。故事中虽然有小小的纠纷,但是没有战争。如果,我当时没有遇到这个故事的话,不知道自己是否会奉献一生,从事向世界传达日本文学之美的工作呢?)
悲しいことに、まもなく日本とアメリカは悲惨な戦争に突入しました。ですが、私の日本語の知識は、この不幸な時代に得たものです。当時、私はまだ、自分が何になりたいのか分からないでいました。しかし、この偶然の出会いをきっかけに、日本語や日本文学の研究を続ける決意をしたのです。(令人悲伤的是,日本和美国不久突入了悲惨的战争。但是,我的日语知识是在这个不幸的时代学得的。当时,我还不知道自己想成为什么。然而,以这个偶然的邂逅为契机,我下定决心继续研究日语和日本文学。)
私は、自分が何年経っても基本的に変わっていないと、よく自分に言い聞かせます。世界は変わりました。飛行機が普通の交通手段になって、人々が蒸気機関車を懐かしく思う日が来るなんて、私が子供の頃、どうして想像できたでしょう。将来は、人々は個人用のロケットで宇宙を旅するのが普通になり、飛行機や自動車を懐かしがるかもしれません。(我时常告诉自己,无论过了多少年,自己也基本不会改变。世界变了。我孩提时代为什么能想象到飞机成为了普通的交通手段,人们怀念起蒸汽火车的日子竟然来了?或许将来,人们乘个人用的火箭去宇宙旅行会成为一件寻常的事,人们会怀恋飞机和汽车等。)
それでも、一番大切なものは、多分変わらない。「源氏物語」を読むと、そんな気がします。私達の生活が千年前の貴族の生活と大きく違っていても、この物語が自分のことのように分かるのは、紫式部の描き出した心の世界が、現代を生きる私達自身のものでもあるからです。愛情、友情、日々の生活やユーモアなど、人々の心に響くものは変わらない。昔の文学を読む大きな楽しみの一つは、時空を超えて人々が同じ感情を共有していることを発見することにあるのです。(即便如此,最重要的东西大概不会改变。只要读《源氏物语》,就有这种感觉。虽然我们的生活与千年前的贵族的生活差异很大,但是对这个故事像自己的事一般了解,是因为紫式部所描写出的内心世界,也是生活在现代的我们自己的内心。爱情、友情、日常生活或幽默等,感动人们内心的事没有变化。阅读以前的文学的极大的乐趣之一是超越时空,发现与人们共情的事。)
日本人とともに生きたい(想与日本人一起生活)
十八歳の時から現在まで、私は毎日、何かしら日本のことを考えて生きてきました。それなのに、どうしてもっと早く日本人にならなかったのかと、次第に不思議に思うようになっていました。(从十八岁时至今,不知怎的,我每天考虑着日本的事生活。然而,为什么我不早点成为日本人呢,渐渐地觉得这点很不可思议。)
そんな私を後押ししたのは、私が八十八歳の時に起きた東日本大震災でした。この時、私は残りの人生を日本人として、日本で過ごすことを決めました。良い時を共に過ごすのは難しくありませんが、困難な時を共に過ごす為には、強い思いが必要です。今こそ、長年の思いを形にする時だと思ったのです。(朝这样的我背后推了一把的是我八十八岁时发生的东日本大地震。那时,我决定作为日本人,在日本度过此后的人生。一起度过好时光并不难,然而一起度过困难的时光需要强烈的感情。现在正是将长年的感情化作形式的时候。)
では、私は、どうしてそんな強い思いに駆られたのか。一つには、勿論日本文学や日本文化が大好きだったということがあります。けれども、それだけではありません。私は、母が亡くなった時、本当に辛い思いをしました。そんな時に、日本の友人達はいつもと変わらず温かく迎え入れてくれました。その中で私には、ある確信が芽生えていったのです。自分がどん底に陥った時には、いつでも日本と日本人を頼りにすることができ、再起を助けてくれるということです。気が付けば、いつも自分を助けてくれる多くの日本人に囲まれていました。(那么,我为什么被如此强烈的感情所驱使呢?原因之一当然是我最喜欢日本文学和日本文化。然而不只是如此。我母亲去世的时候,真的是非常难过。那时,日本的友人们一如既往地亲切欢迎我。使我心中萌生了一种确信。自己陷入绝境的时候,总是依赖日本和日本人,帮我走出绝境。注意到的时候,自己身边有很多总是帮助我的日本人。)
高見順(たかみじゅん)と言う作家の日記に、「私はこうした人々とともに生き、ともに死にたいと思った。」と言う言葉があります。その言葉も、私の決意を支えてくれました。普通の日本人になりたい。普通の日本人となって、考えたり感じたりしながらともに生きていきたい。そして、大好きな日本文学の研究を続けていきたい、そう願ったのです。(名为高见顺的作家的日记中,有这么一句话:“我想这样与人们同生共死”。这句话也支起了我的决心。我想成为普通的日本人。我祈愿成为普通的日本人,思考、感受,共同生活。然后,想继续研究最喜欢的日本文学。)
私の決意に対して、多くの外国人が、「震災の後、皆が日本を離れるのに、どうして日本人になるのか。」と問いました。けれどもこれは、私がずっとしたかったことです。また、そうすることで、私に親切にしてくれた沢山の日本人に、「ありがとう」と言う気持ちと日本への信頼の思いを伝えたかったのです。(对于我的决心,很多外国人问我:“地震后,大家都要离开日本,然而为什么你想成为日本人呢?”然而这是我一直想做的事。并且,我想通过这样做,向对我很亲切的众多的日本人传达感谢之情,以及传达对日本的信赖之情。)
一番大切なものは変わらないと、先程述べました。それは、自然の中で育まれてきた人々の心の姿。私が初めて日本の土を踏んだのは、終戦から四か月経った時でした。その時に見た東京は、見渡す限りの焼け野原で、煙突だけとか、蔵(くら)だけとかがぽつんと残っている、そんな無残な状態でした。それから再び日本を訪れたのは、八年後でした。けれども、そのたった八年の間に、日本には新しい建物が建ち、新しい生活が始まっていたのです。何もなかった状態から、日本はたくましく復活していたのです。そのたくましい心は、今も変わらずあるに違いありません。(方才讲述道最重要的东西不会改变。不会变的是在自然中养育的人们的内心。我第一次踏上日本土地的时候是在战争结束后的四个月。那时所看到的东京是一望无际的烧毁的原野,只残留着孤零零的烟囱,或是库房等,非常凄惨。之后再次访问日本是在八年后。然而仅仅是八年间,日本建起了新的建筑,开始了新的生活。日本从什么都没有的状态,坚强地复活了。那顽强的心现在也一定没有变化。)
日本は、大きな災害の後で、今、深く傷ついているように見えます。けれども、戦後の日本のように、必ず復活する。私も、あなた達も、同じ日本人として、それを信じていきましょう。(日本在大灾害之后,现在看上去深受重创。然而,像战后的日本一样,一定会复活。我和你们都同样作为日本人,如此坚信吧。)
日本の皆さんへのメッセージ(给日本各位的消息)
日本の皆さんは、もっと自国のことを知るべきです。よい日本文学を読むこと、そしてよい日本語を書くこと。日本の言語文化には、それだけの価値があります。それから、少なくとも一つの外国語を学ぶべきでしょう。自分の国を知るためには、外国のことを知らなければならない。自分が常識だと思うことも、他の国では常識ではないかも知れない。日本語にあって外国語にない言葉や、日本語になくて、外国語にある言葉がある。それを知ることは日本をより深く知ることになるとともに、世界人になることでもあるのです。そしてこのことこそ、時空を超えて変わらない私達全ての人間にとっての真実だと思うのです。(日本的各位,应该要了解更多本国的事。读优秀的日本文学,并且写优秀的日语。日本的语言文化,有其相应的价值。然后,应该学习至少一门外语。为了了解本国,不得不了解外国。自己所认为是常识的事或许在其他国家不是常识。有的词汇在日语中有,在外语中没有,以及有的词汇在日语中没有,在外语中有。了解这些会更深地了解日本,同时也会成为世界人。并且,我认为这才是对跨越时空、不改变的我们所有人类来说的真理。)

词汇
差し伸べる(さしのべる):伸出、伸向
何気ない(なにげない):假装没事、坦然自若;无意、无心;没有任何想法、没有特别深的意图;并未特别介意、若无其事
売れ残り(うれのこり):剩货;剩女

作业
1.读课文