卑怯の僕の物語 [8]
[8]
もう人間とは呼べないと知ってる
孤独と痛みの真実を知らずに生きてきた「人」を、見守りながら微かな羨みを抱い続ける
理解などとっくに望んではいない
人は人、人間もどきは人間もどきのままで構わない
構わないのに
世界は、孤独という願いすら許してくれない
口を開けば、言の葉は次第に呑まれ、砕かれ、再び「人」の口から溢れ出すものは歪みきったものしかなかった
責められ、嘲笑われ、否定され、罵られる
そして、次の声を押し殺される
口をこもれば、誰もがそれを許せず、心臓ごとこじ開けようとし、想像まかせに解釈する
打たれ、迫られ、歪まれ、壊される
個としての「自分」を持つことを許されずにいる
死が誘惑するように耳元で囁く
雲のように風につられて消えたい
雫のように短くも純粋な一生を送りたい
鳥のように一瞬だけでも小さな翼で青空を抱き締めたい
草のように枯れる日に向かって葉を伸ばしたい
ーー永遠の眠りを、望み続けてきた
ただ一つの理由で、死んだ心を繋ぎ止めてきた
ーー君だ
ーー君なんだ
翌日の朝日を迎える勇気をくれた、
誰かを恨む憎しみを払いた、
悲しみを意図もせずに吹き飛ばしてくれた、
果てしない孤独から、連れ出してくれた
ーー救ってくれたんだ
自分自身からも逃げたくなる自分にとって、贅沢すぎた光
…ただ
……ただ
………ただずっと、
君と一緒にいたい
#卑怯の僕の物語#