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【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 162 [千五百七十七年 五月下旬]

2023-05-21 15:34 作者:爱吃果冻的沙耶  | 我要投稿

书名 战国小町苦劳谭

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作者: 夹竹桃

原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/

翻译工具:ChatGPT

*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*

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千五百七十七年 五月下旬(*原文网页序列号 - 186)

東国征伐に於ける二大目標、最後の一つである北条征伐は大きく延期することが宣言された。元々天候不順によって順延を繰り返していたのだが、東北情勢もあり計画自体を見直すことになったのだ。


东瀛征伐的两大目标之一——北条征伐的延期宣布了。虽然原本因为天气原因多次推迟,但现在还因为东北地区的情况不得不重新审视整个计划。


当然これは延期であって中止ではない。北条側にとっては九死に一生を得たかのような好事なのだが、生産力・経済力・軍事力のいずれもが上回っている織田家にとってもこれは有利に働いてしまう。


当然这只是延期而不是取消。对于北条方来说,这是一个像九死一生般的好事,但是对于生产力、经济实力和军事实力都超过他们的织田家而言,这也会带来有利的影响。


基礎能力の差が決定的に開いてしまっている以上、何か手を打たない限りこの差は開き続けてしまう。


基础能力的差距已经决定性地拉大,如果不采取任何措施,这种差距将继续扩大。


それにもかかわらず、史実に於いて『小田原評定(ひょうじょう)』と呼ばれる故事となったように、北条側はこの値千金の時間を無駄な議論に終始することで浪費し続けていた。


然而,顽固北条一方在史实中被称为“小田原评定”,却一直在浪费这宝贵的时间,纠结于无意义的争论中。


そのころ静子は尾張の地にて領地運営計画を確認していた。天然痘対策に関する越権行為の懲罰として、年貢に関する一割加増を収めた際の領地運営計画が事務方から上がってきており、想定外の巨額出費に対しても揺るがない余裕が数字として確認できる。


那时,静子在尾张领地确认领地经营计划。为了打击超越职权的天然痘对策行为,她从事务方面得到了关于缴纳年赋增加十分之一时的领地经营计划,即使对于预想之外的高额支出,数字上也能够确认她的不动摇和余裕。


この時代に於ける領主の私有財産と領地の運営資金は明確に区別されていない。しかし尾張に関しては異なっており、領主である静子の私有財産と、領地運営に掛かる領主が運用する資金が明確に分けられていた。


在这个时代,领主的私有财产和领地的运营资金并没有明确区分。但是,与尾张相关的情况不同,领主静子的私有财产和领地经营所需的领主资金被明确分开。


そして静子が持つ莫大な私有財産は膨れ上がる一方であり、静子は今回の罰則金である一割加増分を己の財布から賄おうとしていた。


而静子拥有的巨额私人财产不断膨胀,她正试图从自己的钱包中支付本次罚款的十分之一加成。


静子の感覚としては死蔵し続ける財産など経済に対する重しでしかなく、独断専行に対する責任を取る形で放出するのは渡りに船とさえ考えていたのだ。


静子的感觉是这些被长期隐藏的财产对于经济只会是个负担,凭个人意愿放出来也只是为了承担个人行为的责任,毕竟是走投无路时的一种选择。


しかし、静子の腹心たちはこれを良しとしなかった。静子一人に罰を負わせたとなれば、尾張の民にとって末代までの恥となると強硬に反対した。


然而,静子的亲信们并不认同这一做法。他们强烈反对仅仅让静子一个人承担责任,因为这会让尾張人民蒙受永久的耻辱。


今回の決定は静子が最終判断を下したが、腹心たちも納得してこれに加担しているのだから、これは尾張国の総意として処理するのが妥当だと主張する。


这个决定是由静子作出最终判断的,但由于她的亲信们也认可并参与其中,因此认为这应该作为尾张国的总体意见来处理。


一方で領民たちも天然痘という死病の恐怖は祖父母や両親から何度も繰り返し聞かされていたため、静子の判断を美談として支持してすらいた。


另一方面,由于领民们多次听到他们的祖父母和父母反复提到天花这种致命疾病的恐惧,因此他们支持静子的决定,甚至将其视为美谈。


身も蓋もない話をすれば、庶民ですら他者のことを慮(おもんぱか)れるほどに尾張が富んでおり、それだけの余裕があるからこその結果なのだが、それら全てを長い年月をかけて築き上げたのは他ならぬ静子の手腕である。


不隐讳地说,因为拥有这样的富裕,经常会考虑他人,即使是普通民众也能够考虑到他人。 然而,这些事情都是由静子长时间积攒的财富成就的,这取决于她的才能和能力。


そうして尾張から巨額の資金が他領へと流出し、一時的に経済が停滞するかに思われた。これに対して静子は腹心や領民たちの好意を無駄にしないよう、私財を投じて多くの公共事業を尾張全土に広げた。


这样一来,自尾张流出了大量资金,导致经济一度停滞。静子为了不浪费心腹和领民的好意,投入个人财产开展了许多公共事业,覆盖了整个尾张地区。


結局私財を投じるのでは元の木阿弥と思われるかも知れないが、単なる流出と投資は結果が異なる。インフラ周りの公共事業であるため即時に利益とはならないが、これらは尾張領民たちの生活基盤を底上げし、それは巡り巡って税収となって戻ってくる。


投入私人财产可能会被认为是另一种浪费,但流出和投资的结果是不同的。由于这是基础设施领域的公共项目,因此不会立即产生利润,但这些项目将改善尾张领民的生活基础设施,最终将以税收的形式返回。


こうした現代であればバラ蒔きと揶揄(やゆ)されかねない政策と、領民たちの奮起が一致したことにより尾張は例年以上の活発な経済活動が行われることになっていた。


在这种现代情况下,由于政策可能被嘲笑为随意实施,加上人民的努力,尾张地区经济活动更加活跃。


そうしている間にも暦は五月となり、各地に散っていた慶次や長可、才蔵に足満も尾張へと帰還を果たした。


就这样,时间悄悄地来到了五月。散布各地的景次、长可、才藏和足满也都顺利回到了尾张。


長旅の疲れもあってか帰還した者は例外なく泥のように眠り込み、静子の許へと報告に向かったのは翌日の昼過ぎになってのことだった。


长途旅行的疲劳加重,回归者无一例外地像泥一样沉睡,直到次日午后才朝向静子回报。


長可に関しては領地を賜っており、領主として現地に残ることもできたのだが、彼はその全権を森家当主でもある兄の可隆(よしたか)に引き継いでしまった。


他已被授予领地,可以留在当地作为领主,但他将所有权力转让给了森家族长也是他的兄长可隆。


長可としては反乱が起こる可能性があるから留まっていただけであり、治安の快復した領地に興味が持てなかった。血気盛んな長可にとって安定した領主生活よりも、血沸き肉躍る北条征伐への参陣の方がよほどの関心事であったのだ。


长可之所以留下,是因为反叛的可能性很大,而他对安定的领主生活不感兴趣,只对北条征伐这种充满激情的战斗感兴趣。因此,他参加征伐更令他感兴趣。


「さて。皆、お疲れさまでした。既に聞き及んでいるとは思うけれど、北条征伐は延期になりました。おそらく次は夏になるだろうけれど、その時は才蔵さんの出番だね」


“大家辛苦了。虽然我想你们已经听闻了,但北条征伐被推迟了。可能下一次会在夏季,到时轮到才藏出场了。”


静子は帰還した全員を一堂に集めて労をねぎらった。北条征伐に関する状況を伝え、次回の遠征が夏ごろになるだろうことを推測だと前置いた上で話す。


静子集合了所有返回的人员并表示感谢。她宣布了有关北条征伐的情况,并提前预测下一次远征可能会在夏季左右进行。


それだけの準備期間があれば軍需物資の調達に集積など、兵站を十分に整えることができる。近代化を推し進めた結果、比較的少数でも高い戦闘能力を誇る織田軍なのだが、それでも長期遠征となれば莫大な量の物資が消費される。


如果有足够的准备期,可以在军需物资的采购和积累等方面充分整备后勤。由于推进现代化,織田军队虽然人数相对较少,但具有高度的战斗能力。但即使如此,如果行军时间过长,也会消耗大量的物资。


史実に於いてフランスの梟雄(きょうゆう)ナポレオン・ボナパルトが語ったように「軍隊は胃袋で動く」のだ。


在历史上,正如法国雄鹰拿破仑·波拿巴所说,“军队靠的是胃口”。


「陣中飯も悪くはないが、味気なさは否めない。久々に尾張の旨い飯を腹いっぱい掻き込みたいぜ」


“军中饭虽然还不错,但味道确实有点单调。我很想吃到久违的尾張美食,填饱肚子。”


「旨い酒もな」


"旨い酒もな" 翻译成简体中文为 "没有美味的酒"。


「貴様ら……帰参早々に言うことがそれか!」


"你们……回来就说这种话吗!"


慶次と長可の言葉に、才蔵は憤懣(ふんまん)やるかたない様子を示す。食に関しては生活の基本であるため、不満が出ないよう静子としても細心の注意を払っていた。


庆次和长可的话让才藏表现出愤怒的样子,静子也非常注意不要让任何不满情绪涌现,毕竟食物是生活的基本需求。


それでも携帯性と保存性を重視せざるを得ない軍用糧食の味は改善の余地があった。メタノールを燃料とする携帯用コンロの配備などで、温かい食事が常に摂(と)れるようになっただけでも長足の進歩なのだが、それでも長期間それが続くと不満は溜まるものだ。


尽管军用食品需要保持便携和保存,但味道仍有改进空间。例如,采用甲醇燃料的便携式炉具,能够持续供应温热食物,这是巨大的进步。但如果长期使用,仍会引起不满。


静子としても糧食の改善に関する研究は続けており、電化と機械化が進められる尾張では減圧冷却の実用化が見えてきていた。フリーズドライが可能になれば、軍用糧食の食事事情は一気に改善する。


静子也一直在进行粮食改善的研究,随着电气和机械化的推进,压力减少冷却已经开始实用化。一旦冷冻干燥变成可能,军用食品的饮食情况将会得到迅速改善。


それまでは各地に拠点を設け、流通でそれらを結びながら集積をするしかない。もしくは逆転の発想として、重要拠点に街を構築し、生産拠点化してしまうという方法もある。


在此之前,只有在各个地方设立基地,通过流通将它们连接起来并集中起来。或者作为一种逆转性思维,也有一种方法是在重要基地建造城镇并将其转化为生产基地。


流石に戦闘が予想される最前線や国境付近は無理だろうが、交代で街まで戻れば十分な補給が受けられるという体制は悪くないと静子は考えていた。


尽管预计战斗最激烈的前线和边境附近可能不可行,但静子认为交替返回城镇则可以获得足够的补给,这样的情况还算不错。


「食事に不満があるのは仕方ないね。ようやく帰ってこられたことだし、久しぶりの尾張の味を楽しんで頂戴。お酒もいつもより良いものを準備したから」


「饮食不满是可以理解的。毕竟您已经回来了,尽情地享用尾张的美味吧。我们也准备了比平常更好的酒。」


「流石は静子、話が早いぜ! 俺は新鮮な肉だな。塩蔵されたガッチガチの硬い干し肉なんて飽き飽きだ」


"静子真了不起,说话真快!我是新鲜的肉。厌倦了盐腌干瘪发硬的肉干了。"


「おいおい、まずは酒だろ? 乾物以外の肴があると尚嬉しいな。新鮮な刺身に辛口の清酒だな!」


“喂喂,先来一杯酒吧?除了干货,还有其他美食更让人开心。来些新鲜的刺身,再来上一杯辛口清酒!”


「どっちも用意しておいたから楽しんでね。それよりも先にお風呂を頂いてきて頂戴。自分では気付いてないだろうけど、皆すごく臭うよ」


“两个都准备好了,开心享用吧。但比起这个先去洗个澡吧,虽然你自己可能没有意识到,但是你有点臭。”


慶次と長可からは饐(す)えたような臭いが染みついていた。汗と垢に土や埃(ほこり)、蒸れた甲冑や軍馬の獣臭、排泄物等の悪臭が纏(まと)いついているのだ。


庆次和长可身上弥漫着一股发臭的气味。汗水、尘土、蒸腾的盔甲和马匹的畜生气味、以及排泄物等难闻的气味轮流侵袭着人们的鼻子。


彼らは既に嗅覚が麻痺しているため、自覚できていないが同じ部屋にいるだけで刺すような臭いが鼻を突く。


因为他们的嗅觉已经麻木,所以他们并没有意识到,但是只要在同一个房间里,刺鼻的气味就会袭击鼻子。


「ん? 俺らってそんなに臭いか?」


“嗯?我们这么臭吗?”


「いんや、そんなに臭わないが静っちが言うならそうなんだろう。まずは身綺麗にするとしよう」


“不过,我倒觉得没那么臭。但既然静乃这么说,那就是这样吧。先洗干净身体再说。”


長可は己の腕を鼻の辺りに持ち上げ臭いを嗅(か)いで怪訝(けげん)そうな表情を浮かべるが、慶次はさっさと席を立つと湯殿へと向かい、慌てて長可が後を追った。


长可将自己的手臂举起来,闻了一下并露出怀疑的表情,但慶次迅速离开了座位,朝着浴池走去,长可紧随其后。


旅の汚れを落とし、用意された衣装に着替えた長可が再び静子の私室に戻ると、彼以外の面々は既に集合していた。


当长可洗去旅途的污垢,换上准备好的服装后,再次回到静子的私人房间时,他以外的人已经聚集在那里了。


足満に才蔵は言うに及ばず四六ですら身支度を整えてから出向いていることに、己の無頓着さに少し恥じ入る長可だが自分と同類の慶次までが涼しい顔をしていることが腑に落ちない。


足满听了才藏的话,不用说已经做好了准备再出门,而长可却为自己的冷漠感到有点惭愧,连与他同类的慶次都能泰然自若,让他有些不解。


「皆からの報告は目を通したよ。才蔵さんはこれから報告受けるけれど、他の皆はそれなりに楽しめたようだね」


“大家的报告我已经阅读了。才藏先生还没有报告,不过其他人好像都玩得很开心。” 转换为简体中文。


「反乱を起こしてまで俺たちの統治を覆(くつがえ)そうとした割には物足りなかったが、地に根付いた民ならではの戦いが見られて楽しかった。そういえば与吉(藤堂高虎のこと)の姿が見えないが、奴はまだ西国だったか?」


“虽然起义试图推翻我们的统治,但表现并不令人满意,但我看到了源于民间根深蒂固的战斗,感到很有趣。说起来,与吉(指藤堂高虎)的身影没看到,他还在西国吗?”


「与吉君は今も西国に詰めて貰っているよ。新しい技術を導入した部隊運用を試行錯誤しているみたいだから、もう暫くは戻ってこないんじゃないかな?」


「与吉君现在还在西国任职。似乎正在试验引入新技术的部队运营,所以可能会暂时不回来了。」


長可は一堂に会した面々を眺めた末に、高虎がいないことに気づいてそのことを訊ねた。高虎は静子の側近の中で唯一西国に向かっており、いくさ場での活躍の機会を奪われているのだが、本人は新技術に夢中でそのような事は眼中にないようだ。


长可注意到在场的人们后,察觉到高虎不在,便问起了这件事。高虎是静子的亲信中唯一前往西国的人,被剥夺了在战场上活跃的机会,但他对新技术着迷,似乎并不关心这件事。


現在は秀吉の毛利攻めを支援している状況であり、定期的に報告がなされてはいるものの発電状況が思わしくないため、電話の利用に制限が掛かっている状況だ。


目前处于支援秀吉攻打毛利的状况,虽然定期报告已被提交,但由于发电状况不佳,电话使用受到限制。


一応鉛蓄電池を繋いで運用しているのだが日中の発電量が消費量に追いつかず、発電機を増やすために河川から支流を引き込む工事が始まっているようだった。


暂时连接了铅蓄电池以运营,但白天的发电量无法满足消耗量,似乎已经开始从河川引入支流以增加发电机数量。


「電気ってのは不足するもんなのか?」


"电力短缺吗?"


「うん。私たちが動くために毎日ご飯を食べるように、あの機械たちも働いている間中はずっと電気を食べ続けるのよ」


“是的。就像我们每天吃饭才能有能量一样,那些机器在工作时也需要不断消耗电力。”


「食いながら働くのかよ! 大喰らいな働き者も居たもんだな」


“一边吃一边工作,真是吃货兼勤劳的家伙啊。”


「その代わりに不眠不休で常に働き続けるぞ。わしは佐渡でそれなりに楽しんできたぞ、現場を引き継いだ代官が青い顔をしておったが、何も言ってこないのだから問題ないのだろう」


“作为代替,我将不眠不休地工作。我在佐渡岛稍微享受了一下,接替了现场掌管的代官脸色青白,但是他没有说什么,所以应该没有问题。”


「足満おじさんはともかく、皆も存分に力を振るえたんだね。才蔵さんは北条征伐に参陣するまで待って貰うことになるけれど、大規模な兵同士のぶつかり合いは無いかもしれないね」


“除了足满叔叔之外,大家都发挥了自己的力量。虽然才藏先生要等到北条征伐时才能参战,但也可能不会有大规模的军队交战。”


「問題ございません。将としての誉れを示す場がなく、たとえ残党狩りとなったとしても静子様の御名に恥じぬ活躍をしてご覧にいれましょう」


没有问题。虽然没有能够表现出作为将领的荣耀,即使变成残党追杀也将以静子女士的名声为荣,展现出不会让你失望的活跃表现。


「才蔵はどうにも堅苦しくっていけねえな。今後は大砲がドンと鳴りゃ、敵兵がドバッとおっ死ぬっていう風情も糞もないいくさ場になるんだ、ここで一花咲かせずいつやるんだって話だぜ」


“才藏太过拘谨,不能在这种大炮震耳欲聋、敌军铺天盖地死伤的战场上表现出色,现在而言我们需要行动起来,而不是等待时机。”


慶次が軽口を叩いて才蔵の台詞を混ぜっ返す。軽薄にさえ感じる慶次の物言いに渋面を作る才蔵だが、慶次は才蔵の肩を軽く叩くと酒瓶片手にさっさと部屋から出て行ってしまった。


"桂次开玩笑,把才藏的台词弄混。才藏听了桂次轻浮的话感到生气,但桂次轻轻拍了一下才藏的肩膀,拿着酒瓶匆匆离开了房间。"


それを目にした長可も、用事は済んだとばかりに後を追う。その様子に苦笑しながら、静子は才蔵の方へと向き直る。


长可看到这一幕,就像完成了任务一样紧随其后。看着他们的样子,静子苦笑着转向才藏。


「慶次さんじゃないけれど、気負わずに最後のいくさを思うように駆け抜けて下さい。私の名などどうでも良いのです。己が心の赴くままに北条征伐を楽しんで欲しいの」


"虽然你不是慶次先生,但请毫无压力地尽情奔跑,为了最后的战斗而奋力一搏。我的名号并不重要,希望你能尽情享受北条征伐的过程,随心所欲地行动。"


「お心遣い痛み入ります。某(それがし)は某なりに、己に恥じぬ戦いを致しましょう。さて、某はあの馬鹿二人が羽目を外さぬよう、様子を見て参ります」


"感谢您的关心。本人会认真战斗,不辱使命。至于那两个笨蛋,我会继续观察,确保他们不会太过放肆。"


いくさ帰りで気が高ぶっている慶次と長可を放置するのは危険と判断した才蔵は、静子に深々と頭を下げて一礼すると滑るような足取りで部屋を後にした。


蔵判断,在东征回来兴致高涨的景次和长可被放置是危险的,便向静子深深地鞠了一躬,然后滑稽地离开房间。


残るは身内である足満と四六だけとなり、静子は幾分肩の力が抜けたのを自覚する。


只剩下亲戚足满和四六,静子感到肩膀上的负担略微减轻。


「足満おじさん、佐渡島攻略お疲れ様でした。代官から定期報告が届いており、今日から相川金銀山の試掘が始まるとあったね。上様直轄領として運営されるから、その露払いを果たしたおじさんには報奨が下賜されると思う」


「足满伯伯,辛苦啦!攻略佐渡岛的工作做得非常好。代官发来了定期报告,从今天开始要开采相川金银矿了。这里是上大人直接管理的领地,所以我认为完成这项工作的伯伯将会受到奖励。」


「くれるというなら貰うが、褒美よりも人足をありったけ回して欲しいものよ。尾張用水もなるほど大事だろうが、どうせ知多半島を潤すならばついでに発電所も造れば良いものを……」


「如果有人送给我,我当然会收下,但比起奖励,我更希望能有尽可能多的劳动力来运转。尾張用水确实很重要,但既然要滋润知多半岛,建个发电站也顺手就好了......」


「あまり佐渡には興味ないみたいだね。あちらは厳しい法が敷かれ、私腹を肥やす輩が出ないよう綱紀粛正を図るらしいけれど。あと、おじさんが望むような大規模な発電所は当面難しいかな。送電網を張り巡らせれば嫌でも目立つし、当面はある程度の水量と傾斜があればそれなりに発電できる螺旋水車式発電機で賄うしかないよ」


“似乎不怎么对佐渡感兴趣。据说那里实行了严格的法规,为了防止贪污腐败的行为,采取了严厉的纪律整顿措施。此外,像叔叔所期望的大型发电厂目前似乎有些困难。如果强行建立输电网络,就会不得不引起不必要的关注,因此不得不依靠一定的水流量和倾斜度来发电,只能使用螺旋水轮发电机。”


叶う事ならば尾張の電化を目論む足満としては、遅々として進まぬ計画に歯痒い思いを隠せないでいる。その様子を静子は生温かい目で見守っていた。


如果能够实现的话,作为策划着尾张电气化的足满,对于这个进展缓慢的计划感到非常恼火。静子看着他们的状况,心中温和。


取り急ぎそれぞれの帰還報告を受けたのち、改めて越後行きに加わった一行が集められた。即ち慶次、四六と越後勢の代表として景勝、兼続の四名である。


收到每个人的回报后,再次聚集了前往越后的一行人。其中包括代表越后势的景胜,兼续以及慶次和四六。


「まずはおめでとうございます。塗炭の苦しみに耐えて見事大願を果たされましたね」


"首先恭喜你。你经历了痛苦和考验,最终达成了伟大的愿望。"


「勿体のうございます。それもこれも静子様のお力添えあってのことと存じておりまする」


「不敢当。我认为这也是在静子女士的帮助下完成的。」


景勝は本心から静子の援助に心からの感謝を伝えているのだが、当の静子本人は如才ない景勝の社交辞令だと受け取っており、微妙に話が噛み合っていない。


景胜真心向静子表达了感激之情,然而静子却将其视为景胜的客套话,对话不太契合。


「それに御実城(おみじょう)様(謙信のこと)は未だ後継者を宣言しておられませぬ」


「此外,御実城殿(指謙信大人)尚未宣布继承人。」


景勝と景虎との後継者争いは景勝の勝利に終わったが、兼続の言葉にあるように謙信は未だ後継者を指名していなかった。


景胜与景虎的继承人争夺以景胜的胜利告终,但如同兼续所言,信玄仍未指定继承人。


しかし、ことここに至って嫡子である景勝を後継者に指名しないはずがなく、上杉家の家臣たちは景勝を次期当主であると認識している。


然而,现在不可能不指定继承人景胜作为嫡子的继承者,上杉家的家臣们认可景胜是接班人。


「上杉様の御心は推し量れませんが、上杉領安堵の為にも誰が後継者であるかを天下に知らしめる必要があるでしょう。無いとは思いますが、またぞろ傍流の誰かを擁立して騒動を企てる輩が現れないとも限りません」


「虽然无法揣测上杉大人的心意,但为了保障上杉领土的安稳,有必要让天下人知晓谁是继承人。虽然不希望发生,但也不能排除会有武库家的某些人支持其他傍系家族发动骚乱的可能性。」


史実に於いて『御館(おたて)の乱』と呼ばれた上杉家のお家騒動は、謙信が後継者を指名せぬまま急死してしまったことに端を発している。


历史上被称为“御馆之乱”的上杉家族纷争始于謙信突然去世未能任命继承人。


当世に於いては謙信も未だ健在であり、彼が景勝を次期当主に指名すれば混乱は回避できると思われた。


在当世,信长依然健在,他若宣布将景胜指定为继承人,则可避免混乱。


しかし、謙信は後継者候補であった景勝と景虎との対立が表面化しても次期当主を指名しなかった。静子としては謙信なりの深謀遠慮があってのことだと考えているのだが、今後も混乱が続くようでは織田家としても介入せざるを得なくなる。


然而,謙信未指定下一任继承人,即使景胜和景虎作为候选人之间的分歧浮出水面。静子认为这是謙信在深思熟虑后的决定,但如果混乱持续下去,織田家也不得不介入。


「越後の安堵は北条征伐に於いても重要であり、延(ひ)いては上様の治世を揺るがす要因にもなりかねません。ややもすれば上様から催促が飛ぶこともあり得ますので、ご実家とは連絡を密にされるようご留意下さい」


「越后的安心感对于北条征伐也非常重要,而且可能成为动摇上面治世稳定的因素。甚至有可能接到上面的催促,因此请务必保持与故乡的联系。」


今後の東国征伐では後顧の憂いなく北条を攻めるために、現在調略中の伊達家及び越後にて織田家の背後を守る上杉家の存在が重要となる。


未来的东国征伐中,为了毫无后顾之虑地攻击北条,目前在计划中的伊达家和越后地区,以及守护织田家背后的上杉家的存在至关重要。


静子の推測では景虎の討ち死にによって、上杉家内の勢力図が刷新されつつあるため、事態が落ち着くまで相応の時を要するのだろうと考えていた。


据静子的推测,由于景虎的战死,上杉家内的势力格局正在得到改变,因此需要相应的时间来稳定局势。


「格別のご配慮ありがたく存じます。御実城様よりお声が掛かるまでは、引き続きこちらにお留め置きいただき、尾張の文物を学ばせて頂きとう存じます」


“特别的关照非常感激。在得到御实城先生的指示之前,我将继续留在此地学习尾张的文物。”


「そうですね、人質と呼ぶには些(いささ)か奇妙な立ち位置でしょうが、我が家と思ってご逗留ください」


“嗯,称之为人质可能有些奇怪,但请将这里视为你的家并在此逗留吧。”


「ありがたき幸せ」


“ありがたき幸せ” in Simplified Chinese is “令人感激的幸福”


人質という処で僅かに言い淀んでしまった静子に、景勝と兼続は小さく笑みを浮かべる。彼らの待遇は人質扱いからはほど遠く、賓客に近しい好待遇を受けている。


静子略微含糊其辞地说到“人质”一词,景胜和兼续微笑着。他们的待遇远非像待在人质身份下一样,而更像贵宾一般享受优越待遇。


流石に他国の人間であるため完全に自由とはいかないが、衣食住が保証された上に連絡さえ付くのであれば短期外泊すら可能という、余人が想像する人質生活からはかけ離れた生活を送っていた。


虽然作为外国人并不完全自由,但由于保证了衣食住,并且可以进行联系,因此过了与其他人质生活相去甚远的日子,甚至可以短期外出。


ただし、彼らの殆どは外泊などするはずもない。専ら利用しているのは兼続であり、お目付け役と言う名目で同道している慶次と花街に繰り出しては、情報収集と銘打って遊興にふけっている。


然而,他们中的大多数不可能出外过夜之类。 唯一在使用的是兼续,慶次和花街也伴随其旁听,以监察为名外出收集情报并尽情娱乐。


「皆が無事に帰還したことを祝う宴の前に、慶次さんと四六から話を聞こうかな?」


"在庆祝大家平安归来的宴会之前,我想听听慶次先生和四六的故事。"


そういうと静子は慶次と四六へと顔を向けた。四六は神妙な面持ちを浮かべているが、慶次はいつもと変わらぬ涼しい顔だ。


这时,静子转向了慶次和四六,四六一脸严肃,而慶次则表情冷静如常。


静子としては勝手に跡継ぎを連れ出した慶次を叱責しなければならないのだが、四六の思いと慶次の思惑をある程度察しているだけにどうにも扱いに困ってしまう。


作为静子必须谴责慶次擅自带走继承人的行为,但是考虑到四六的想法和慶次的打算,我感到很为难。


四六が無事に戻ってきたのは結果論であり、本来四六を止める立場である慶次が危険な旅に連れ出したことは罰されねばならない。


四六平安回来只是结果论,本来作为制止四六的立场的慶次将其带入危险的旅途,应该受到惩罚。


とは言え余りに重い処分を下せば、慶次に頼み込んで付いて行ったであろう四六が己を責めてしまい、ただでさえ遠慮がちな四六の行動が萎縮してしまう可能性があった。


然而,如果下达的惩罚太重,四六去求慶次来陪同他,并会自责而变得更加犹豫不决,可能会导致他的行动进一步受阻。


ここは匙加減が肝要であると静子は心を引き締める。


这里需要掌握匙加减的重要性,静子紧绷心神。


「さて。申し開きがあるならば聞きましょう」


"好的。如果有解释的话,请讲出来听听。"


とりあえずは軽いジャブのつもりで彼らの方から自発的な申し開きを引き出そうと試みた。


试着像轻轻地出一闵的左拳一样,引导他们自愿地作出解释。


しかし、慶次は己の行動に対する責を負う覚悟があるためか、一切の言い訳を口にしない。


然而,可能是因为景次有准备承担自己行为的责任,他不会说任何借口。


「俺は申し開きなんざするつもりはないぜ。四六を連れていくと決めた時から処罰は覚悟の上だ」


“我不打算辩解。从决定带着四六走的那一刻起,我就已经做好承受惩罚的准备了。”


「良いでしょう。では四六に問います、何故私に相談することなく慶次さんにも迷惑が掛かると解った上で強行したんですか?」


“好吧。那么问题来了,你为什么不向我咨询,而是在知道会给景次带来麻烦的情况下还要强行这样做?”


「はい、私は『死』について肌で感じ取りたかったのです。そしてそれは母上の庇護下にいる限り、決して叶わぬことだと考えました」


“是的,我想亲身感受‘死亡’。但我认为只要在母亲的庇护下,这是永远无法实现的。”


「そう、思惑は判りました。それで四六は今回のことで得たものはありますか?」


“是的,我明白你的想法了。那么,这次四六得到了些什么?”


四六は相応の覚悟を以て臨み、慶次にもその咎(とが)が及ぶとあってすら己の我侭を押し通した。これで得るものが無かったのであれば愚の骨頂だ。


四六以相应的觉悟应对,即使吉次也会受到其责任的影响,甚至坚持自己的任性。如果没有获得任何收获,那就是愚蠢至极。


「私が母上に拾われる前、『死』とは常に私の傍(かたわら)にあるものでした。今よりも更に無力であった私は、生殺与奪を握る強者である乳母の顔色を窺い、諂(へつら)うことで死から少しでも遠ざかろうと藻掻く日々でした。しかし、今や母上の後を継ぐとなれば私が強者となり、配下の者に死を命ずることすらある立場になるのです。母上の庇護という大きな腕(かいな)に包まれた今、私にそれができるとは到底思えなかったのです」


在我被母亲救起之前,“死亡”一直围绕着我。当时的我非常无能,每天都在虚伪地拍马屁,企图通过观察乳母的神色来远离死亡的阴影。但现在,如果我继承母亲的位置,就会成为掌握生死大权的强者,可能甚至可以命令手下去死。在母亲的庇护下,我感到非常温暖,但我从未想过自己也可以有这样的权力。


「ふむ。私の跡継ぎにはなれぬと言うのですか?」


“嗯。你是说我不能成为我的继承人?”


「いいえ、違います。私は偉大なる母上の後継となりたいのです。ですが安全なここに居ては覚悟が定まりません。ならば再び『死』を間近に感じられる状況に身を置けば、あの暗く冷たい死に対する嗅覚が戻り、覚悟が決まるやも知れぬと思い行動致しました」


"不,不是这样的。我想成为伟大母亲的继承者。但是在这里感觉安全,我无法下定决心。因此,我选择了置身于再次感受到“死亡”在身边的情境中,这样我就能够重新拾起感觉到黑暗和寒冷的死亡嗅觉,并做好准备。"


「そう。そうまでした甲斐はありましたか?」


“是的。这样做值得吗?”


静子の問いに四六は黙って首肯する。


四六默默地点了点头,回答了静子的问题。


「判りました。四六が掴んだものが何か、私にはわかりませんが己が一生を懸けて示す覚悟ができたのであれば、これ以上の言葉は不要でしょう。四六、貴方はこれから生涯を懸けてそれを他者に示し続けなければなりません、それは修羅の道です。今ならばまだ引き返すこともできるでしょう、それでも尚進むと言うのですね?」


“明白了。我不知道四六抓住的是什么,但如果已经做好了用一生来证明自己的准备,那就不需要再说什么了。四六,你必须继续向他人展示,并用一生来做到这一点,这就是修罗道。现在你还可以回头,但你仍然选择前进吗?”


静子は再び念を押して問う。四六はまっすぐに静子を見つめ、決然と頷いて見せた。


静子再次强调并询问。四六直视着静子,坚定地点了点头。


「判りました。それでは二人に下す沙汰を伝えます」


“明白了。那么我会将决定告知给你们两个。”


四六が己の意思で行動し、また学びを得て成長できたことは素直に喜ばしい。しかし、だからと言って規則を破って良いことにはならない。決まりを守らぬ為政者に付いてくる者はいないからだ。


四六能够凭借自己的意志行动,得到学习并成长,这是令人欣喜的。但是,这并不意味着可以违反规则。因为没有人会跟随不遵守规定的政治家。


「それほど厳しい処罰を下すつもりはありません。四六は私が良いと言うまで外出禁止。その間毎日図書室で今回学んだことを文章にしたため、私に提出なさい。そして四六を連れ出した慶次さんには明日から半月の外出禁止と断酒を命じます」


“我并不打算下达严厉的惩罚。直到我说可以为止,46号禁止外出。在那期间,每天都要在图书馆把所学写成文章提交给我。而对那个带走46号的慶次先生,我会命令他从明天开始禁足半个月并戒酒。”


「明日からってことは、今日は構わないのか?」


「明天开始,那今天就无所谓了吗?」


「結果論ですが、四六は無事に生還し、本人曰く成長もあったようです。つまり慶次さんは賭けに勝ったのですよ。ですが不正があったようなので、それについての落とし前だけは付けて貰います。何より今日は宴がありますからね、流石に生還を祝う宴で禁酒させるほど鬼ではありませんよ」


"结果论,四六平安无事地生还了,据本人说还有些成长。也就是说,慶次赢了赌局。但似乎存在不正行为,需要着手解决。无论如何,今天有宴会,我不是禁酒的恶魔,当然要祝贺他的生还了。"


慶次も四六も静子が当然反対するものと考え、置手紙を残して出発した。しかし、そんな真似をせずとも四六が同道したいと願い出たならば、慶次に諮(はか)った後に許可をしただろう。


庆次和四六认为静子肯定会反对,因此留下了便条就出发了。然而,如果四六希望结伴同行,即使不这样做,庆次也会征求意见后给予许可的。


出生が特殊であるため、四六の正確な年齢は判らない。しかし、元服を終えたことで社会では大人と見なされる。現代人の価値観で言えば十代半ばなど子供のうちだが、戦国の世に於いては一人前として扱われる。


由于出生的特殊性,无法确定四六年龄。然而,通过完成元服,社会认为成年。按现代人的价值观,十几岁可以算是孩子,但在战国时期,已被视为成年人。


一人前の大人の決断に、親があれこれと口を挟む必要はない。助言を求められれば与えるが、本人が覚悟を以て決めたことであるならばそっと背中を押してやるのが親というものだろう。


成年人的决定是需要自己面对的,父母不必插手过多。如果他们请求意见,我们可以给予,但如果是本人已经做好决定的事情,那么作为父母,我们应该默默地支持和鼓励。


「罰とは言っても形式的なものですから、そう四角四面に構える――」


“虽然说是处罚,但只是形式上的东西而已,不必太过拘谨——”


必要ないと言おうとした静子の言葉は遂に発されることがなかった。静子よりも先に慶次と景勝、兼続が気付いたようであり、各自は既にいつでも飛び出せるよう身構えている。


静子想说“没必要”,但最终没有说出口。慶次、景勝和兼続比静子更早地注意到了这一点,并已经做好了随时可以出发的准备。


ただ一人、四六だけが周囲の変化について行けず泡を食っていた。それでも荒々しい足音が近づいてくるのに気付き、四六は静子と共に慶次たちに庇われる位置へと退避する。


只有四六没有跟上周围的变化,一边沉浸在自己的思维中,一边吃着泡泡。但是他还是注意到了急促的脚步声,于是和静子一起躲到了慶次等人保护的位置。


「失礼いたします! 静子様、火急の報せが届きました」


"失陪了!静子夫人,收到了紧急的消息"。


「構いません、報告なさい」


"不要紧,报告吧"


襖一枚を隔てた向こうから、小姓の慌てた声が飛び込んできた。喘鳴(ぜんめい)混じりの声から察するに、一刻を争う事態なのだと理解できた。


隔着一扇褶子门,传来了小姓慌张的声音。听从闷响中可以判断,情况十分紧急,需要立即行动。


「はっ! 本願寺教如が退去を拒んで挙兵し、寺に立て籠りました!」


「啊!本愿寺教如拒绝离开并举起武装,藏身于寺中!」


荒い呼吸が収まらぬ小姓とは裏腹に、報告を受けた静子は冷静だった。


尽管小仆从喘着粗气,但静子接到报告后保持了冷静。


「判りました。教如たちの兵数や武装は判りますか?」


“我明白了。你们知道教如他们的兵力和武装吗?”


「教如は無数の僧兵を率い、また多くの武具や矢を持ち込んでいる模様。物見の報告では武装解除前に匹敵するとのこと」


「教如率领着无数僧兵,并带有许多武器和箭矢。根据侦查报告,在解除武装前,他们的武力是相当强大的。」


静子は教如が行方を眩(くら)ませた時から、何かしらの反乱を起こす可能性があると踏んでいた。その為に色々と手を打っていたし、警戒を怠ることはなかった。


静子从教如失踪开始就认为她有可能会发动反抗。为此,她采取了各种措施,并且一直保持警惕。


実際に石山本願寺は織田軍の手によって包囲が敷かれ、静子軍からも多くの人員が派遣されている。ゆえにこそ、教如が包囲を破ったわけでもないのに本願寺内に入れたことのみが不審であった。


实际上,石山本愿寺被織田军包围,还有很多人员从静子军那里被派遣过来。因此,尽管教如没有打破围攻,但他能进入本愿寺,这一点是有问题的。


「本願寺の周囲は、上様の軍によって包囲されていたはず。直接戦闘はあったのですか?」


“本愿寺周围应该被上方军队包围了。是否有直接的战斗?”


「それが、突如として本願寺内に集団が現れたとのことです。未発見の隠し通路があったのでは無いかと推測されます」


“据称有一群人突然出现在本愿寺内。据推测可能是由于存在未被发现的隐藏通道。”


石山本願寺は前座主(ざす)であった顕如を裏切った下間(しもつま)頼廉(らいれん)の手によって管理され、門徒たちの退去も完了して信長へと引き渡される運びとなっていた。


石山本愿寺被下间依靠裏切曾是前座主的顯而进行管理,门徒们也已全部离去并被移交给信长。


石山本願寺は信長に降伏する際に、朝廷に仲介を申し入れた関係から引き渡しに先んじて朝廷から派遣された役人が敷地内を検め、安全が確認された後に信長へと引き渡される手筈となっている。


石山本愿寺在向信长投降时,由于在朝廷中提出调解请求,因此在交接之前,派遣的官员先检查了该处的场地,确认安全后再将它移交给信长。


本願寺門徒と織田軍は直接戦闘を何度も行っており、第三者である朝廷による調停の下で交渉を行うことに双方が合意したためだ。


本愿寺门徒和织田军多次进行了直接战斗,因双方同意在朝廷的调停下进行谈判才得以结束。


そして本願寺門徒の退去が完了したとの報告を受け、朝廷から派遣された役人が内部を検めるため包囲を解くように織田軍に申し入れ、それを受けた織田軍は一部の包囲を解いて朝廷の使者を本願寺内部に入らせた。


接着,接到了本愿寺门徒已经全部离开的报告后,朝廷派遣的官员要求织田军解除包围以便进行内部搜索。织田军接受了请求,解除了部分包围并允许朝廷使者进入本愿寺内部。


その後、数日の定期報告を受けながら内部確認が行われていた矢先に今回の騒動が勃発したのだ。


随后,在接收数天的定期报告的同时,进行了内部确认,然而这场骚动在这时爆发了。


「朝廷からの使者殿の安否は確認されているのですか?」


"朝廷派来的使者您的安危得到确认了吗?"


「それが、教如派を名乗る僧兵たちが門扉を閉ざした後は何の音沙汰もなく、使者殿の安否に関する情報も入ってきておりません」


“此后,自称教如派的僧兵们关闭了门扉后,没有任何消息,也没有关于使者殿安全的信息传来。”


「となれば使者殿は既にこの世におられぬか、最悪人質に取られたとして行動する必要がありますね。ありそうなのは、使者殿が共謀して教如派を招き入れたでしょうか?」


如果是这样,使者大人已经不在世上了吗?必须按照最坏的情况行动,假设使者大人被作为人质拿走了。是不是他与教如派串通一气,让他们进入了这里呢?


「なっ! 滅多なことを仰らないで下さい。万が一にもそのお言葉を耳にした者が漏らせば、責任問題となりましょう!」


"什么!请不要随口说出那种重要的话。如果传出去的话,就会变成责任问题!"


唐突に放たれた静子の言葉に小姓は狼狽する。主君である静子は室内にて越後の人質たちと謁見しているはずである。臣下として不興を買ってでも止めようと必死になった。


突然发出的静子的话让侍从感到惊慌。作为主君的静子应该在室内会见越后的人质。侍从即使得罪也必须竭尽所能制止。


「構いませんよ、十中八九使者殿と教如は共謀関係にあります。いくら何でも都合が良すぎますからね。まあ、それだけで判断した訳ではないのですが、良いでしょう」


“没关系,十之八九使者大人和教如一定是谋划好了的关系。这种情况太过方便了。虽然不仅仅是因为这个判断的,但也可以吧。”


「あの……それで、如何いたしましょうか?」


「那个……那么,我们该怎么办?」


「確か私の配下が顕如及び頼廉の身柄を押さえていたはずです。まだ神戸三七郎(信孝のこと)様に引き渡していないはずですし、早急に彼らの身柄を私の京屋敷へと移送するよう伝えなさい。神戸様へは私から説明をしますので、まずは彼らの安全を確保することが最優先です」


“我记得我的手下已经控制了顕如和頼廉的身体。他们还没有被交给神户三七郎(信孝)先生,所以请立即将他们的身体转移到我在京都的住所。我会向神户先生解释,但现在最重要的是确保他们的安全。”


「はっ!」


「はっ!」转换成简体中文为「哈!」


「警護の者には彼らの命を絶対に守るよう伝えて頂戴。特に顕如の命が奪われれば、上様にとって望ましくない状況となりますので、万難を排するよう全武装の持ち出しを許可します」


请将以下文本翻译成简体中文: "请通知保安人员一定要保护他们的生命。特别是如果顕如丧生,那将会是上级不希望看到的情况。因此,允许所有武装人员携带武器以排除万难。" Translated content: 请通知保安人员一定要保护他们的生命。特别是如果顕如丧生,那将会是上级不希望看到的情况。因此,允许所有武装人员携带武器以排除万难。


「承知しました。それでは失礼いたします」


"我明白了,那我就告辞了" (Simplified Chinese translation of "「承知しました。それでは失礼いたします」")


静子の命を受けた小姓はそれだけ告げると、踵を返して立ち去って行った。足音が廊下を曲がり、聞こえなくなったころに静子はほっと大きく息を吐いた。


接受静子的命令后,仆人说了这么多就转身离开了。当脚步声在走廊转弯后消失时,静子松了一口气。


「困ったことになりましたね」


"真麻烦啊"


「全く困っておられるように見受けられぬのですが」


“我完全没有看到您有任何困难的迹象。”


困ったと口にしつつも、余裕の態度を崩さない静子を見て景勝が思わず突っ込んでしまう。慶次はそんな静子に慣れているのか、全く気にしていない様子だった。


看到静子一边说着困扰的话,一边却依然保持着从容的姿态,景勝情不自禁地插了一句嘴。而慶次似乎已经习惯了静子这样的性格,完全没有受到影响。


「いえいえ、困っては(・)いますよ。野望を捨てて大人しく出頭してきてくれれば、一手間省けたなあと思うぐらいには」


“不不,我感到困扰。如果你能放弃野心,老实地自首,那我会认为可以省去一些麻烦。”


「これはしたり。静子様に掛かれば本願寺の反乱も一手間に過ぎぬと言うことか。ならば我らは御身を煩わさぬよう、今まで通り過ごさせて頂くと致しましょう」


“这就是了。如果让静子小姐插手,那么本愿寺的反叛也只是稍加注意便可解决。既然如此,我们就像以前一样,不会给您带来麻烦,让您安心过日子吧。”


「別に聞かれて困ることもありませんが、お休みになる時間も必要でしょう。あ、そうそう。宴に関する希望があるなら、今のうちに仰って下さいね。料理の手配がありますので」


"虽然没有什么令人困扰的事情需要问,不过您也需要休息时间。对了,如果您有关于宴会的任何愿望,请提前告知。我们需要安排食物。"


「この状況でも宴は催されるのですか! なんとも剛毅なことだ。我らからの希望は特にございません、いつも通りご相伴に与(あずか)りまする」


"即使在这种状况下也要举行宴会!真是十分坚韧啊。我们并没有特别的希望,将像往常一样陪伴在你身旁。"


静子自身にまるで気負った処が見られないが、それでも部外者が居ては話しにくいこともあるかも知れないと、景勝と兼続は部屋を辞した。


静子本身没有任何紧张的迹象,但是在有旁观者的情况下可能会让人感到有些不好意思,于是景胜和兼续便离开了房间。


静子が語ったように二人が本願寺に関する騒動を知ったところで、こちら側には何ら瑕疵(かし)が無いため恥じるところがない。むしろ約定を破った本願寺側に問題があったという証人にすらなるため、好都合とさえ言えた。


就像静子所说的那样,即使两人知道了本願寺的争端,由于我们这边没有任何缺陷,所以没有可羞耻之处。反而,我们可以成为证人,证明违反协议的本願寺方面存在问题,这甚至可以说是一个好机会。


「丁度良いですね。四六の課題としましょうか」


"刚好,我们把这作为四六年级的课题吧。"


「は、はい」


「是,是的」


「そう気負わずとも構いません。丁度良い教材なので腕試しに取り組む程度で良いのです」


“不需要太紧张,这是一份很好的教材,可以当作提升自己技能的好机会。”


四六は静子の後継となりたいと口にした。ならば可能な限り四六に経験を積ませてやるのが、親の仕事だろう。


四六表示想成为静子的接班人。那么,让四六尽可能地积累经验,这就是父母的职责。


突発的な問題が生じた際に、己ならばその問題にどう対処するかを常に考えるのは為政者たるものの訓練になる。これを習慣づけてしまえば、想定外のことが起こった際にもパニックになることなく、己を客観視しながら対処できるようになるだろう。


在突发问题出现时,一个政治领袖应该始终考虑如何应对这个问题,这是一种训练。如果养成这种习惯,即使发生意想不到的事情,也不会陷入恐慌,而是能够客观地处理问题。


余計な苦労をさせたくないが、適度な試練は四六の血肉となって生を繋ぐ糧となる。


不想让你承受太多不必要的困难,但适度的考验可以成为坚强生命的支撑。


「一つ。私が顕如と頼廉の身柄を確保するよう指示しましたが、これの狙いを四六はどう考えますか?」


「一个。我指示捉拿顕如和頼廉,你认为这背后的目的是什么?」


「教如は顕如の実子と聞いております。父の身柄を確保して、教如に投降を呼びかけさせれば余計な戦闘を回避できるかと存じます」


「听说教如是顕如的亲生儿子。如果能确保父亲的安全,并促使教如投降,就可以避免不必要的战斗。」


「教如は既に顕如と袂(たもと)を分かっています。今更投降の呼びかけには応じないでしょう。応じたところで死を賜ることは確実ですしね」


「教如已经和显如分道扬镳了。现在即使下降请求,他也不会回应了。如果回应的话,死亡是确定的。」


静子の指摘を受けて四六は再び考える。蜂起した時点で教如に助かる道はない、それならば戦闘は不可避であるため、視点を変える必要がある。


接受静子的指责之后,四六再次思考。在起义的那一刻,教如并没有必胜的道路,因此必须改变视角,因为战斗是不可避免的。


顕如が生きていることによる利点は何かと考えを巡らせると、閃くものがあった。


思考顕如仍然活著所帶來的好處時,我突然有一個閃念。


「……顕如が死ねば、本願寺門徒は教如に殉ずるしか道がなくなります」


「若是顯如去世,本願寺门徒只有殉死于教如的路可走了。」


四六の発した言葉に、静子は良くできましたと言うような笑みを浮かべる。


四六说的话,静子露出了一个像是在说“干得好”的笑容。


「顕如の存在は本願寺が敗北したことの象徴となります。教如がいかに檄を飛ばそうとも、厭戦気運の門徒たちは顕如の方針に順じていると言い訳ができるのです。ところが顕如が死んでしまえば、『顕如は織田家によって騙し討ちにあった、本願寺門徒よ立ち上がれ!』とでも号令を飛ばされれば各地で一向一揆が勃発しかねません」


「顯如的存在成為本願寺戰敗的象徵。即使教如如何激昂慷慨,良心不願戰爭的門徒也能以顯如的方針為由辯解自己的行動。但是如果顯如去世,如果號令「顯如被織田家欺騙並遭到謀殺,本願寺門徒要奮起反抗啊!」被發佈,那麼各地都可能爆發起伏謀一揆。」


「逆に織田家が顕如を保護していると示せば、教如に大義が無いことを天下万民に晒すことになりますね!」


“相反,如果能证明织田家保护顕如,就会让天下万民明白教如没有正当理由!”


「正解です。教如に大義が無くなれば、我々が何とでも料理できるのです。こちらの出血を避けるならば、顕如を矢面に立たせて本願寺同士で対立させるという手もあります」


“这是正确的答案。如果教如失去了伟大的目标,我们就可以随心所欲地进行处理。如果想避免流血事件,还有一种办法,就是利用顕如让本愿寺之间互相对立。”


「……それは、本願寺同士での骨肉の争いになりませんか?」


“那不会演变成本愿寺之间的骨肉之争吗?”


「ただ、この選択肢は取らない方が良いでしょう。顕如が積極的に教如を征伐すると言い出さない限りは、我らが画策したとして禍根を残します。遠く離れた東国ならいざ知らず、尾張からも安土からも近い石山本願寺に立て籠ったのが敗因です」


"但是,最好不要选择这个选项。除非顯如主动宣布要征服教如,否则我们的筹谋会留下祸根。他们败因是在距离尾張和安土不远的石山本愿寺被包围了。"


「母上ならばどのように処理されるのですか?」


「如果是母亲的话会被处理成什么样?」


「それを言っては課題にならないでしょう? 四六ならばどうするのが最適かを考えるのです。我らが持つ手札と、相手側の手札、更に朝廷の思惑を加味して答えを出してご覧なさい」


「这么说不会成为问题吗?我们应该考虑在四六之中最优的做法。请考虑我们手中的牌、对手的牌以及朝廷的意图来给出答案。」


そう言って穏やかにほほ笑む静子と、その期待に応えんと必死に知恵を絞る四六の姿に慶次は親子の絆を感じていた。


这时,慶次感受到了母女之间的亲情,靜子微笑着说出这番话,四六则拼命想出应对之策。


【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 162 [千五百七十七年 五月下旬]的评论 (共 条)

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