【日本小5道德】7#久之星
ひさの星(久之星)
作者:斎藤 隆介(さいとう りゅうすけ)
昔、秋田の北の外れ、鹿角と言う所に、ひさと言うおなごのわらしがおってなあ。
(从前,在秋田北方的尽头,名为鹿角的地方,有一个名叫久的女孩。)
そう、年は十だったべか、十一だったべか—。このひさは、何にも喋らん無口なおなごのわらしであったが、皆で誰かの家さ遊びに行くと、一番後から、上がってきて、そっと後ろに座るようなわらしであった。
(是啊,年纪是十岁还是十一岁。久是个沉默寡言的女孩,大家一起去谁家玩的时候,她跟在最后进屋,悄悄地坐在后面。)
ある時、ひさが肩や足に噛み傷だらけの怪我をして帰ってきたので、おっかあはびっくりしてしまうて、薬を付けて傷口を縛ってやりながら叱り付けた。
(有一次,久回家时,肩膀和脚上被咬了很多伤口,老妈非常惊讶,给她涂了药后,边包扎伤口边责问道。)
「一体全体、これはどうしたこったば!」
(“这到底是怎么回事!”)
ひさはすまなそうに答えた。
(久感到很抱歉地回答道。)
「—おら、犬に噛まれて……。」
(“我被狗咬了……”)
「犬なんど、かまうからだどほんとに!顔でも噛まれたらなんとする!」
(“谁让你去逗狗了啊真的是!脸也被咬了怎么办!”)
おっかあが叱ったが、ひさは黙っていた。
(老妈虽然这样斥责,但久保持沉默。)
するとそこへ、伝ヱ門のおっかあが、わらしを抱いて走ってきた。
(这时,伝内门的老妈抱着伝内门跑了过来。)
「なんと、ひさのおかげでおら家のわらし助かった。庭ではいはいしてたわらしに、大きな黒犬が飛びかかってな!ひさが被さって守ってくれねえこったば—、なんともなんともありがたかったであんす!」
(“多亏了久,我家孩子得救了。一只大黑狗扑向了在院子里爬的孩子!要不是久覆在他身上保护他……真是万分感谢!”)
ひさは、そういうおなごのわらしであった。
(久就是这样的女孩。)
ある夏、その夏は大雨ばかり降る夏でなあ。釜底川の水かさが増して、ごうごう音を立てて岸すれすれに増えた水が走っているのは、恐ろしいような有様であった。
(某个夏天,总是在下大雨。釜底河水位上涨,水声隆隆,水都快到岸上了,非常可怕。)
やっと雨の小ぶりになった朝、新助お父うが、田んぼがやられてやしねえかと、見回りに行くとな、頭から着物から足の先まで濡れ鼠になった政吉が、川っぷちでワァワァ泣いているでねえかや。
(雨势终于变小的一个早晨,新助老爸去巡视了一下农田是否淹了,看到浑身湿透的政吉在河岸边哇哇哭泣。)
驚いて裸にして、ひっちょって、濡れた着物は丸めてぶら下げて家さとどけた。川さ落ちたらしいのだが、三つの政吉はワァワァ泣いて、ただ、「ひさが、ひさが!」と言うばかり。政吉のお父うはもうかんかんに怒ってな、ひさの家さ怒鳴り込みに行った。
(新助老爸惊讶地脱光他的衣服,背起政吉,湿透的和服拢成一团垂挂着,把他送回了家。三岁的政吉似乎是掉进河里了,他哇哇哭着,只是一个劲地说着“久,久!”政吉的老爸已经火冒三丈地跑到久的家中怒骂。)
「おめえとこのひさが、おらとこの政吉を川さ突き落とした!雨上がりの水かさが増して唸ってる川だ。もし死にでもしたらどうしてくれる!」
(“你家的久把我家的政吉推到河里了!雨后水位上涨,水声涛响的河中。要是死了你怎么赔我!”)
ひさのおっかあは平謝りに謝った。しかし、ひさは家にはおらなんだ。朝早く馬に食わせる草を刈りに出て、まだ帰っていなかったのだ。
(久的老妈一个劲地低头道歉。然而,久不在家。她一大早出去割给马吃的草,还没回来。)
それから日暮れになっても夜になっても、ひさは帰ってはこなんだ。村中総出で松明をつけて探し回ったが、ひさは見つからなんだ。
(然后到了傍晚,到了夜晚,久也没有回来。全村出动点着火把到处找,也没有找到久。)
政吉のおっかあが、やっと政吉から、政吉が川っぷちの朝の蛍を捕ろうとして川に落ちた時ひさが飛び込んで助けてくれたのを聞き出したのは、その晩遅くであったとや。
(政吉的老妈终于从政吉口中得知他在河岸想要抓早晨的萤火虫,掉进了河中的时候,是久扑进来救了他,听说此事已经是这晚很晚的时候了。)
政吉の幼い話しぶりから、ひさが政吉を岸さ押し上げると、自分は、ごうごう叫ぶ泥川に沈んでしまったことが分かって、夜中岸にかがり火をたいて船を出して竿で探ったが、ひさは見つからなんだ。
(从政吉稚嫩的口吻中,得知久把政吉推上岸后,自己沉入了隆隆作响的泥河中,夜晚,在河岸边燃起篝火,出船用竹竿摸索,也没有找到久。)
その後何日も、川口まで探したが、ひさの姿はどうしても見つからなんだ。
(之后的几天也一直找到河口,但怎么也找不到久的身影。)
そしてひさが見えなくなった日の夜から雨は止んで、東の空に青白い星が一つ、輝き始めたとや。
(从久不见的那天晚上起雨停了,东方的天空中有一颗青白色的星星开始闪耀。)
村の衆は後々、その星を見るたんびに、「ああ、今夜もひさの星が出てる。」と言い合うたげな。
(后来村民们每次看到这颗星星,都会异口同声地说:“啊,今晚久之星也出来了。”)

