【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 127 [千五百七十五年 五月中旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十五年 五月中旬(*原文网页序列号 - 144)
静子は京に着くと、一先ず自らの京屋敷へと身を落ち着ける。訪問の先触れを出し、真っ先に京都所司代を務める村井(むらい) 貞勝(さだかつ)と約束を取り付けた。
静子到达京都后,先回到了自己的京屋安顿好。接着,她向村井贞胜,也就是京都的代官,发了拜访的邀请,安排好了会面。
村井は古くから信長に仕える行政官であり、織田家と朝廷との橋渡しを担い、禁裏の修復事業や二条城の造営、公文書調査から係争の調停など、彼が果たしてきた役割は決して小さいものとは言えない。
村井是一位长期为信长服务的行政官,他担任着织田家和朝廷之间的桥梁作用,参与了禁裏的修复工作、二条城的建设、公文书调查以及纠纷调解等多项工作,他所扮演的角色绝非微不足道。
京における行政全般を取り仕切り、信長の名代とも言える信任篤い村井を指して、ルイス・フロイスは『都(京都)の総督』と称した。
指向负责京都行政的村井,他是信长的代表,并受到充分的信任。路易斯·弗洛伊斯称他为“京都总督”。
村井が『都の総督』ならば、静子は言わば『尾張の総督』であり、互いの任地が決定的に離れていたため、今まで直接交流を深める機会に恵まれなかった。
如果村井是“都的总督”,那么静子可以被称作是“尾張的总督”。由于双方的任职地点明显分离,他们一直没有机会直接加深交流。
今年は幸いにして静子が京へと足を運ぶため、急遽ではあったが会談を持つことが可能となった。
今年幸运的是静子能来京都,我们得以紧急举行会谈。
「此の度は急な申し出にも関わらず、お時間を割いて頂き感謝しております」
「尽管这次是突然的请求,您抽出时间,我感到非常感激。」
「何を仰います。静子殿と言えば、上様が尾張をお任せになる程のお方。お噂はかねがね伺っておりまする」
“您有何吩咐。说到静子殿,她可是上様信任把尾張交给她负责的人物。她的名声早已广为流传。”
「ははは、お耳に入っているのが良い噂ならば構わないのですが、若輩者ゆえ不手際も多く、お聞き苦しい話などもあったのではないでしょうか?」
“哈哈哈,如果您听到了好的传闻,那就无妨了。但是由于年轻的原因,可能会有许多疏漏和令人不快的话题,您觉得这可能会让您不舒服吗?”
下手をすると祖父と孫程にも歳が離れた静子を相手に、村井は下にも置かないもてなしで遇し、柔らかい物腰で応対していた。
遇到静子这样年龄差距很大的祖父和孙子,村井对她采取了非常热情的款待,非常温柔地对待她。
それに静子が京に滞在することは、村井にとってもメリットがあった。静子が率いてきた軍は、静子が京に滞在中、交替で休暇が与えられる。
此外,静子在京城停留也对村井有利。静子率领的军队在她逗留期间,可以轮流休息。
とは言え、緊急の召集に即応できねばならないため、遠く離れることなく、京のあちこちで無聊(ぶりょう)を慰めることになる。
然而,由于必须随时响应紧急召集,因此必须在京城内四处寻找乐趣来消磨时间。
休暇中とは言え、精鋭の軍属であるため物腰からして一般人とは異なる。必然的に悪人は鳴りを潜め、京の治安は引き締められることになる。
尽管休假中,但由于是精锐的军属,举止言谈与普通人不同。恶人自然而然地变得小心谨慎,京城的治安也被加强了。
また静子軍は羽振りが良い事でも有名であり、末端の兵にまで比較的金が行き渡っており、財布の紐が緩い。
同时,静子军以其富有和向下级士兵分发相对可观的金钱而著名,因此他们的钱袋子非常松散。
兵たちは珍しい京の土産を買ったり、京の街並みや見世物などを冷やかしたりして金を落とし、時ならぬ好景気に街は沸いていた。
士兵们购买了稀有的京都特产,嘲笑着京都的街景和景点,花费金钱,城市因此热闹起来,时至今日的景气非比寻常。
「さて、早速鴨川(賀茂川)普請へ黒鍬衆を派遣していただき、ありがたく存じます」
“那么,我们立即将黑锄手派往鸭川(贺茂川)的普建工地,非常感谢。”
「いえいえ、鴨川の安堵は京の重用事。お力添えとなったのなら幸いです」
"不用谢,镰仓的安堵与京都的重要事务有关。如果我能帮上忙,那就再好不过了。"
鴨川は過去に何度も氾濫を起こした暴れ川である。
鸭川是一条曾多次爆发洪水的狂暴河流。
そもそも川自体に急な勾配が付いており、自然と流速が上がることに加え、水源地である北山の樹木が伐採され保水力が落ちた事が原因とされる。
首先,河道本身具有陡峭的坡度,自然流速就会增加,加上北山的森林被砍伐,水源容量降低,这是导致问题的原因。
平安末期に於いて、絶大な権勢をふるった白河法皇でさえも、思い通りにならないものとして『加茂河の水』を挙げたほど、時の支配者をして手を焼かされていた。
在平安末期,就连拥有巨大权力的白河法皇,也像对待“加茂河的水”一样对待时代的掌权者,无法让他如愿以偿,让他感到非常棘手。
余談だが現在では鴨川は賀茂川との字を当てることがある。読みは同じだが表記が異なる理由は、上賀茂神社(かみがもじんじゃ)と下鴨神社(しもがもじんじゃ)に起因する。
顺便说一下,如今有时把鸭川写成“贺茂川”的字。虽然读音相同,但拼写不同的原因是因为上賀茂神社和下鴨神社。
それぞれの神社が、己の支配域を流れる川を神社名に因んで賀茂川、鴨川と呼んだため、現在の加茂大橋(かもおおはし)より上流を賀茂川、下流を鴨川と呼び分け、総称を鴨川と表記している。
每个神社都因其支配区域流经的河流以神社名称命名为贺茂川或鸭川,因此现在称上游为贺茂川,下游为鸭川,并统称为鸭川。现在的加茂大桥以上称贺茂川,下游称鸭川。
村井の語った普請とは、川底の掘り下げと堤防の構築、老朽化の進んだ五条大橋と四条大橋に加え、史実に於いて江戸時代に公儀橋(こうぎばし)に指定された三条大橋の改修を指す。
村井所说的普修工程包括挖掘河床和筑堤防,除了五条大桥和四条大桥这两座老化严重的桥梁之外,还包括修缮江户时代被指定为公家桥的三条大桥。
帝のおわす御所から遠いとは言え、戦略的価値を有する橋の工事を任されるということは、信長の権力もさることながら、それを現実の計画へと落とし込める村井の調整力の高さを示していた。
从天皇的御所来说虽然很远,但担任修建具有战略价值的桥梁工程,不仅显示出信长的权力,也显示出能将其转化为现实计划的村井的协调能力的高超。
橋を整備し、交通の便を良くすることは防衛力の低下を招くが、元来京は攻めるに易く、守るに難い土地である。
"修筑桥梁,改善交通便利度会导致防御力下降,但京都原本就是攻城易守难的土地。"
京まで軍勢が攻め込んできた時点で詰みであり、信長は最初から京での防衛戦を考えていなかった。
当军队攻入京城时,信长就已经陷入了绝境,他并没有考虑过在京城进行防御战。
その後も村井との会見は終始和やかに進行した。互いの近況を語り、それぞれの情報を交換し、時に信長を主君と抱くが故の苦労に対する愚痴を零し合う。
随后,与村井的会见一直保持着和谐。他们互相谈论彼此的近况,交换信息,有时候还会抱怨自己作为信长的忠臣所经历的磨难。
性別も年齢をも超えた重臣同士の会談は、双方にとって有意義な時間となったが、共に多忙な身であるため、僅か一刻ばかりでお開きとなった。
性别和年龄都超越的重臣们进行的会谈是对双方都有意义的时光,但由于两人都很忙,只能短暂地结束了。
「お名残惜しゅうございます」
"非常惋惜"
「こちらこそ、名高き静子殿と交誼を結べたことを嬉しく思います。されど、今は刻苦精励(こっくせいれい)を以て上様の日ノ本統一を支える時。天下統一が成った暁には、お互いの身辺も落ち着いておりましょう」
「我也很高兴能与名声显赫的静子大人交往。但现在是以勤奋努力支持君主的日本统一的时刻。天下统一之后,我们的生活也会平静下来。」
「その折には是非、尾張へお立ち寄り下さい。今度は私が精一杯おもてなし致しましょう」
"请务必在那个时候顺道到尾张来。下次我将竭尽所能地招待您。"
「名にし負う尾張の風物、心より楽しみにしております」
「闻名遐迩的尾张名胜,我非常期待。」
静子の暇乞いを以て、村井との会談は終わった。村井は下げていた頭を起こし、静子達が見えなくなったのを確認して、ようやく肩の力を抜いて大きく息を吐いた。
在静子请求空闲之后,与村井的会谈结束了。村井抬起低垂的头,确认静子们消失后,才松了一口气。
「人の噂とは当てにならんな。武田を下した剛の者と聞き、どのような鬼女が現れるかと思えば、気品すら感じさせる手弱女(たおやめ)ぶりよ」
“人们的传言不可靠。我听说能够打败武田的勇者,以为会是一个鬼女,没想到她却是一个甚至连温柔美丽的女子都不如的柔弱女子。”
「実に惜しい御仁でございます。女子でさえなければ、天下を窺える器であったことでしょう」
“实在是一位很可惜的人。如果不是女子的话,她本来有能力成为觊觎天下的人才。”
村井の補佐を務める長男、貞成(さだなり)が父の言葉を継いだ。息子の的外れな意見を、村井はからからと笑い飛ばす。
担任村井的助手的长子貞成接过父亲的话题。村井用干笑化解了儿子不切实际的意见。
「静子殿には天下を獲るだとか、歴史に名を残すだのという俗人が抱く野心は無かろうよ。彼女が持つのは故事に曰く『王佐の才』、上様と共にあってこそ輝くのだろう。唯一つ難点を挙げるならば……」
「静子殿可能不会抱持着那些俗人渴望着能够统领天下、留名青史的野心。她拥有的是故事中所说的『能辅佐国王的才华』,只有与上级一起才能闪耀。如果真要挑出一个难点的话……」
貞成は父の言葉に喉を鳴らし、次の一言を待った。
"貞成喉咙发出声音,等待着父亲的下一个话语。"
「余りにも歳の差があり過ぎ、また彼女は才を持ちすぎた。静子殿と接していると、孫のように成長を見守りたくなる」
「年龄差距太大了,而且她太有才了。与静子殿交往,让人想像看着孙子一般见证她的成长。」
多忙を極める村井へは、静子が出向く形を取ったが、多くの人々は静子の京屋敷を訪れた。
静子前往忙碌中的村井那里,但很多人却前往拜会静子在京都的宅邸。
公家に限らず武家の人間や、仏家ですらも静子との誼(よしみ)を求め、目通りを願って列を為した。
不仅是官员,武家人和出家人也都希望和静子交往,纷纷前来拜访。
天下に王手を掛ける信長の懐刀であり、穏やかな人格者と名高い静子に取り入りたいと考える人間は多い。
许多人想要得到信长的得力助手,并以其和善的个性而闻名的静子为己有。
そんな人々の織り成す欲望と駆け引きに辟易としながら、しかし表面上は分け隔てなく終始にこやかに対応していた。
对于这些人们编织而成的欲望和博弈,尽管内心感到厌烦,但表面上仍然坦然以对,毫不分别地与他们交往。
静子は次に、自分の後見人であり義理の父にあたる前久へと先触れを遣わせた。折り悪く前久は急用の為、堺へと出向いており都合がつかなかった。
静子随后让作为她监护人和义父的前久先行一步。不幸的是,由于急事,前久前往堺市且无法安排时间。
静子が堺まで足を伸ばすこともできたのだが、前久の家宰がそれには及ばないと遠慮したため、会談が実現することはなかった。
静子可以伸展她的脚到堺市,但是由于前久的家祖认为自己不及静子,所以会面就没有实现。
代わりに静子直筆の文と、各種手土産を家宰に託し、近衛の屋敷を後にした。後に静子とのすれ違いを知らされた前久は、静子との用件については判断する前に、早馬を仕立ててでも自分の意見を仰ぐようにと家宰を窘(たしな)めた。
代替,她将静子的亲笔信和各种手信托给家宰,离开了近卫家庭。之后得知与静子擦肩而过的前久,在判断与静子的事务之前,就责令家宰准备快马,以便听取自己的意见。
「うーん。濃姫様ですら嫌がる理由が判ったかも……なんと言うか毒気に中(あ)てられるね」
「嗯。甚至连浓姬殿下也讨厌的理由可能也被找到了……怎么说呢,会被毒气所中毒吧。」
少しばかり憔悴した面持ちで、静子は文机に突っ伏した。『魚心あれば水心』と故事にはあるが、下心を隠そうともしない賄賂の応酬は、想像以上に静子の精神をささくれさせた。
面容有些憔悴,静子伏在写字台上。虽有谚语“有鱼之心,无水不活”,但这场公款贿赂的明争暗斗,即便藏着私心,也超出了静子的想象,激怒了她的精神。
静子の手が精神安定を求めて想像上のヴィットマンを触ろうとしたところへ、小姓の足音が近づいてくる。慌てて居住まいを正し、小姓の呼びかけに応じた。
在静子试图用手触摸想象中的维特曼以寻求精神稳定之际,侍从的脚步声逐渐靠近。她匆忙到住所,并回应了侍从的叫喊。
「静子様、宗易(そうえき)様がお目通りをお求めです。如何致しましょうか?」
"静子小姐,宗易先生想与您见面。您有何打算?"
「おや? 珍しいお方からのお誘いですね、お会いしますので、そのように伝えて下さい」
"哦?是一个不寻常的邀请,我很愿意见到他/她,请转达我的回复。"
「はっ」
"「はっ」" in Simplified Chinese is "「哈」".
利休が会見を求める理由が思い当たらず、静子は首を傾げつつも、実りの無い腹の探り合いよりはと思い、彼との会談を了承した。
利休请求见面的原因让静子想不起来,但她觉得与其进行无果的明争暗斗,不如同意与他会谈。
「此度(このたび)はお忙しい処、お時間を取って頂き、有難く存じます」
"感谢你抽出时间来,尽管你很忙。"
「どうぞ、お気になさらず。こちらも欲得づくの面会に食傷しておりましたので。お連れの方は、初めて見る方ですね?」
“请不用客气。我们也对这次会面感到厌烦了。您的同伴是第一次来吗?”
互いに口上を述べた後、静子は利休の連れに話を向けた。外見からは30代後半の男性であり、職人のような芸術家肌の人物に見える。
互相说完感言后,静子转向利休的伙伴说话。从外表看,他像是一个长得像职人的艺术家,大约在30多岁左右。
利休が素性の怪しい人間を連れてくるとは思えないが、問い質さない訳にはいかなかった。
不能不追问,但我认为利休不可能带来可疑素性的人。
静子にとって初見の人物であると言及した途端、背後に控える才蔵や小姓たちは一瞬で前に飛び出せる姿勢へと移行している。
一提到这是静子初次见到这个人,才藏和侍从们立即就从原来的姿势中迅速转变成了立即向前跃出的姿态。
「失礼しました。遅ればせながらご紹介させて頂きます。こちらは私の友人で、名を長谷川(はせがわ) 信春(しんしゅん)と申します」
“失陪了。虽然晚了,我来介绍一下。这位是我的朋友,名叫长泽川信春。”
利休の紹介を受け、男が頭を下げる。静子は男の名前に心当たりがあった。
在接受利休的介绍后,男子低头致意。静子对这名男子的名字感到熟悉。
長谷川信春、後に等伯(とうはく)と号する彼は、長谷川派と呼ばれる派閥を構成する絵師だ。
长谷川信春,后来号称等伯,是组成被称为长谷川派的画派的画家。
史実では安土桃山時代から江戸時代初期に掛けて、当時画壇のトップであった狩野派を脅かす程の存在となる長谷川派を興す人物だが、この時は未だ雌伏の時を過ごしており、知る人ぞ知る程度の知名度であった。
在历史上,从安土桃山时代到江户时代初期,创立长谷川派并成为当时美术界顶尖的狩野派的威胁者的人物出现了,但当时他仍处于潜伏状态,并且名气仅在狭窄的范围内人尽皆知。
才蔵たち護衛の警戒は緩むことが無かったが、静子は現代で得た歴史の知識から、この時期の彼は利休や日蓮宗の僧侶、日通(にっつう)と交流を得ていたことを思い出した。
才藏们的护卫始终没有松懈,但静子凭借自己获得的现代历史知识想起了这个时期的他曾与利休、日莲宗的僧侣和日通进行过交流。
「長谷川……なるほど。それでは貴方が日堯上人(にちぎょうしょうにん)の肖像画を描いた方ですね」
"长谷川……原来如此。那么你就是画了日堯上人肖像画的人啊"。
静子が長谷川の名を聞いただけで、素性を察した上に作品の一つを口にしたことに驚きを隠せない二人。利休は勿論、作品を言い当てられた信春自身が露骨に狼狽(うろた)える。
听到长谷川的名字,静子就猜出了他的身份并口中念出了他的作品,两人都感到非常惊讶。不仅利休,就连被猜中了作品的信春自己也露出了明显的慌张。
「私はこれでも芸事保護を任されております。将来有望と目される方の情報は、多少なりとも私の耳に届くようになっております」
“我负责艺术保护工作,未来有潜力的信息,稍微有些也会传到我耳边。”
「はっ! お褒めに与り光栄です」
「哈!受到夸奖感到荣幸」
我に返った信春は頭を下げた。未だ在野に埋もれている己に目を付けていてくれた静子に、彼はその腕の広さに驚愕しつつも嬉しさを隠せなかった。
我清醒过来后,信春低下了头。他感到惊讶又高兴,因为静子注意到了他,即使他还在野外。
静子としては後の業績を知っているがための知識であるため、先見の明でも何でもなく、少し申し訳ない気分になっていた。
作为静子,她知道后来的成绩,所以她并没有预见能力,只是有知识罢了,这让她感到有些抱歉。
「彼を私に紹介すると言うことは、何か狙いがあってのことでしょう?」
“介绍他给我这件事,肯定是有什么目的吧?”
朝廷より芸事保護を任されている静子の許には、信長が執心している茶器は勿論、様々な美術・芸術品が集まってくる。
由朝廷授予保护艺术的职责,信长所热衷的茶具和其他各种美术艺术品都聚集在静子的所在地。
また、寺院などが秘蔵している品についても、特別に閲覧を許される権限を付託されていた。
此外,他还被授予了特别浏览权限,可以查阅寺庙等机构珍藏的物品。
この時期の信春は伝手を頼って様々な美術品に触れ、襖や衝立(ついたて)に描かれた障壁画と呼ばれる障子絵に影響を受けたとされる。
据说在这个时期,信春靠着关系接触了各种艺术品,受到了描绘在襖和屏风上的屏风画所称的障子画的影响。
それらに刺激を受け、知識や技術を吸収して独自の画風へと昇華させるに至ったのだ。
正是在这些刺激的影响下,我吸收了知识和技巧,最终发展出了属于自己的画风。
信春の才能を認めた利休が、最も多くの美術品を管理する静子に彼を紹介し、少しでも多くの作品に触れる機会を作ってやりたいと思うのは自然な流れであった。
认识了信春的才能后,利休想介绍他给管理最多美术品的静子,自然而然地希望能够创造更多机会让他接触到更多的作品。
「はい、こちらの男は素晴らしい才を持っておりますが、それが開花するには今暫し修養を積む必要があるとみております。つきましては、当代一級の作品群を管理される静子様の所蔵物を開陳していただけまいかと思い、大変厚かましい願いではございますが連れて参りました」
“是的,这位男士拥有出色的才华,但为了让它开花,他需要进行一些修养。因此,我想请求静子女士展示她所收藏的一流作品,虽然这是一个非常厚颜无耻的请求,但我还是带他来了。”
「ふむ」
“ふむ”翻译为简体中文可为“嗯”。
素性は利休が保証すれば問題ないが、だからと言って何の利益も無しに彼だけを優遇するのは、流石に外聞が悪いと静子は考えた。
如果利久可以保证他的素质没有问题,那就没有问题。但是,静子认为,仅仅因为他没有任何好处就优待他,这确实会给人留下不好的印象。
彼に美術品閲覧の許可を与えるのは簡単だが、その事実が知れ渡れば利休以外にも、静子の知己を通して同等の許可を求める人々が殺到するのは目に見えている。
给他浏览艺术品的许可很容易,但一旦这个事实开始传开,肯定会有大量的人通过静子的关系来要求同样的许可,而不仅仅是利休。
静子自身は信春が大成するのを知っているが、現時点の信春は無名の存在であり、彼だけを優遇するに相応しいと万人に認めさせる根拠を示させる必要があった。
静子自己知道信春已经取得了巨大的成就,但目前的信春还是一个默默无闻的人,需要展示出只优待他这一点是值得大家认可的依据。
「宗易殿のご紹介ですし、その人品や腕前は確かなのでしょう。しかし、彼だけを優遇する根拠とするには弱い。彼が今後の美術界を、ひいては画壇を牽引するであろう第一人者たると、優遇するに相応しい実績を示して頂きたい」
“介绍一下宗易殿,他的品德和技艺是可靠的。但是,把他单独优待的根据不够充分。我们希望他能展示出优待他的资历和实力,成为未来艺术界,画坛的领袖。”
そう言うと静子は小姓に指図し、とある屏風(びょうぶ)を運び込ませた。屏風は左右で異なったモチーフが描かれており、左側の屏風の二面を使って松が、右側の屏風の二面には檜の姿が描かれていた。
"静子这样说着,指示着仆人运进了一扇屏风。这扇屏风左右两面画上了不同的图案,左边的屏风上画了松树,右边的屏风上则画了檜树。"
これは四曲一双(よんきょくいっそう)と呼ばれる作風であり、その鮮やかな色彩や、躍動感あふれる精緻な筆致は、素人目にも一廉(ひとかど)の人物の手に拠るものだと理解できた。
这是一种被称为“四曲一双”风格的创作风格,其鲜艳的色彩和充满活力的精致笔触,即使对业余爱好者来说,也能理解它是一个有一定水平的人所创作的。
因みに屏風は1つの面を扇(せん)と呼び、一つながりとなった扇の数で二曲、四曲、六曲と偶数で増えていく。そして左右一組となる作品を双(そう)、単独で成立する屏風は隻(せき)と数えられた。
顺便说一下,屏风的一个面被称为“扇”,通过扇的数量增加来定义二曲、四曲、六曲等偶数的屏风。如果左右两侧连接在一起,则称其为“双”,而只有独立成立的屏风则被称为“隻”。
「これは狩野(かのう)殿(狩野 永徳(えいとく))が私にと、献上された屏風です。当代随一と名高い狩野殿を超えよとは申しませんが、これを見て私が貴方を優遇するに相応しいと思えるだけの作品を描いて頂きたい。それを以て許可を与えるか判断したいと思います」
「这是狩野殿(狩野永徳)献给我的一屏风。虽然不想超越被称为当代第一的狩野殿,但我希望您能画一件足以让我认为您值得优待的作品。我会根据这个来判断是否批准。」
狩野の屏風に魅入っている信春に、静子は決然と宣言した。
被狩野的屏风所迷住的信春,静子坚定地宣布。
「今すぐにこれを超える才を示せと言う訳ではありません。現時点で画壇の頂点に立つ人物の作品に対して、自分なりの表現で作品を作ってみてください。明確な期限は切りません。必要ならば人や物、金も支援いたしましょう。代わりに必ずや、自分なりの回答となる作品を提出して頂きます。して、返答や如何に?」
“并不是要求您立即展现超越这个的才华。请尝试通过自己独特的表达方式创作作品,并向现在站在画坛巅峰的人物的作品致敬。我们没有设定明确的期限,如果需要, 我们将支持您的人力、物力和资金。但是我们希望您一定能提交一份代表您的回应的作品。那么,您的回答是什么呢?”
静子の提案に対して信春は即答できなかった。望み得る最高の支援をする代わりに、逃げを許さぬ条件だと彼は気付いたからだ。
信春无法立即对静子的提案做出回答。他意识到,为了提供最好的支持,他必须接受毫不妥协的条件,而不是逃避。
人手さえあれば、金さえあれば、時間さえあればもっと良い物が作れたという言い訳を許さず、その時点での最善を尽くした作品で、当代随一の才能と競い合えという厳しい問いだ。
只要有人力、有金钱、有时间,不允许有“如果有更多”这种借口存在,应该尽力做出最好的作品,与当代最杰出的才能竞争,这是一个严厉的要求。
「暫し、時間を頂戴しとう存じます」
"暂时请给我一点时间" (Simplified Chinese)
及ばずとも良いが、その時点で最高の才を示し、劣っているのを認めよという厳しい問いに、信春はようようそれだけの言葉を絞り出した。
尽管不抵达至最优水平也无妨,然而面对严格的要求,必须展现出最高才能,承认自己的不足。信春费尽口舌,才勉强说出这几句话。
返答を保留された形の静子だが、彼女は気にした風でもなく、答えが出たら利休を通じて伝えるようにとだけ告げた。
保留回复的静子没有流露出任何不安的神色,她只是告诉利休,让他等待她的答复并转达出去。
信春の用件が終わると、利休は彼と共に場を辞した。利休は信春と静子とを引き合わせるためだけに訪問しており、自身はこれといって用事を持たなかった。
信春事情处理完毕后,利休与他告别离开了。利休此行只是为了介绍信春和静子,且他并没有别的事情要处理。
「少し厳しい注文を付け過ぎたかな? でも、明らかに特別扱いするには、それに相応しいと言える実績が必要。誰にでも気軽に見せる開架方式じゃない以上、資質を示して貰わないと収拾がつかなくなるからね」
"有点点过于严苛的要求了吗?但是,明显需要有相应的实绩才能特别对待。既然这不是对每个人都随意展示的开架式,所以必须要展现出素质,否则会失控的。"
唐の作品や古今東西の一級品を目に出来るかもと期待を抱いていたところへ、厳しい課題を突き付けられたのだ。その落差たるや想像するだに恐ろしい。
也许可以看到唐代的作品和各种一流艺术品,但期望被摆在了一个严峻的挑战面前,巨大的落差让人感到非常恐惧。
「さて、お次はオルガンティノ殿か。この処、男装をしていなかったから、なんとも窮屈だね」
“接下来是奥尔甘蒂诺殿了。因为没穿男装,所以感觉有些不自在呢。”
侍女にサラシで胸を締め上げられながら、男装を纏う静子がぼやいた。
静子穿着男装,被侍女用纱布勒紧胸部时喃喃自语。
そろそろ正体を明かしても良いのではと思わないでもないのだが、信長から許可が下りない以上は男装を続けるしかなかった。
我不得不继续男扮女装,因为我认为现在揭秘身份的时机差不多了,但既然信长没有下令,我只好继续装扮成男性。
一方信長と言えば、最初の一件以来同席することがないため、静子に男装させていることを失念していた。
如果提到信长这个人,因为自从第一次见面后就没有同桌过,所以一时也忘记了静子正在穿着男装。
窮屈な恰好に耐えつつ休憩していると、会談の準備が整ったと小姓が告げた。一つ気合を入れると肩を回し、静子は謁見の間へと歩を進める。
忍受着拘谨的打扮休息着,小姓告诉静子会谈准备就绪。换上一股气,静子转动肩膀,走进了接见室。
「ご無沙汰しております、閣下のご活躍は遠く離れた故郷でも度々噂となっております。こうして直接お目通りが叶い、お元気な姿を拝見し心よりお慶び申し上げます」
"您好久不见了,阁下的辉煌事迹即使在遥远的故乡也时常传闻。今天能够与您面对面交流,看到您健康状况良好,我很高兴。"
「これはご丁寧に。流石はオルガンティノ殿と言った処でしょうか、我が国の文化にも長じておられるご様子。そちらはお変わりありませんか?」
"这是非常周到的。确实像是奥尔加蒂诺殿说的那样,您似乎也在熟悉我国的文化。那边还好吗?"
謁見者を代表してオルガンティノが口上を述べ、それに静子が応じる。今回謁見に訪れたのはオルガンティノ、フロイス、ロレンソの三名となる。
代表接见者发言的是奥尔甘蒂诺,静子作出回应。这次接见会见的人是奥尔甘蒂诺、弗洛伊斯和洛伦佐三人。
修道士たちはそれぞれ布教に勤しんでいるのか、ここのところ姿を見せることはない。
修道士们最近都在忙着布道,所以已经有一段时间没有出现了。
「前の任地(インド西海岸のゴア州)で暑さには慣れたつもりだったのですが、こちらの暑さは一味違いますな。こうしてお会いする前には行水が欠かせませぬ」
“我曾在前任地(印度西海岸的果阿邦)适应了热,但这里的热又有些不同。在与您见面之前,我不能没有冲凉。”
「京は盆地であるため、湿気がこもりますから、どうしても暑さ寒さが厳しくなりましょう。夕暮れともなれば、多少は涼しい風が吹くのですが」
“由于京都位于盆地中,空气湿度很大,所以不可避免地会有相对严重的寒暑两极。尽管傍晚有些许凉风吹来。”
オルガンティノはすぐに用件を切り出さない。まず挨拶から入って近況を語り合い、会話を弾ませ相手と共感を得ることで会話の糸口をつかむ。
奥尔加蒂诺不会立即提出要事。他首先通过问候和交流近况,让对话变得活跃并赢得对方的共鸣,以此获得对话的线索。
必然的にオルガンティノが話題を提供することが多くなるが、彼の話術は非常に優れていた。
必然会有更多的人提起OrganTino,但他的演讲技巧非常优秀。
実体験に裏打ちされた豊富な話題に、言葉の抑揚や間の取り方は言うに及ばず、己の失敗談すらもユーモアを交えて笑い話にしてしまう。
由丰富的实体经验支持,不仅言辞抑扬和停顿有分寸,就连自己的失败故事也能调皮地当成笑话说出来。
「箸というのは面白い道具です。当初はあんな棒切れで食事が出来るものかと思いましたが、一度習熟してしまえばあれほど万能な道具もありません。手掴みで麺を口に運ぶ故郷の人々にも教えてあげたいぐらいです」
「筷子是个有趣的工具。起初我还以为那只是一根木棒,怎么可能用来吃饭呢。但是一旦熟练掌握,它就是无所不能的工具。它甚至能帮助传统地用手叉面的故乡人们。」
「習得に少し時間を要しますが、慣れれば小豆と大豆を皿から選り分けるといったことも可能となるそうです」
“虽需要一些时间才能掌握,但一旦习惯了就可以从盘子里挑选出红豆和大豆这样的事情了。”
「なんと! 丸い豆を滑らずに掴めるようになれば、挑戦してみたいと思います。そうそう、豆を掴む話で思い出したのですが、以前伺った真珠の件、少しお話しても宜しいでしょうか?」
“什么!如果能够不滑落地抓住圆形豆子,我想尝试一下挑战。顺便说一下,想起了一个抓豆子的故事,以前听说的珍珠事情,可以讲一下吗?”
オルガンティノが世間話の延長から、実に自然に本題へと話を誘導する。オルガンティノが訪問を申し入れてきた時点で、静子としてはおおよその事情を掴んでいる。
奥尔加天诺自然地从闲聊中引导话题到正题。当奥尔加天诺提出拜访时,静子已经大致了解情况。
静子が領土で養殖している真珠の件について、何らかの進展があったのだろうと当たりを付けていた。
我猜想关于静子在领土上养殖珍珠的事情可能会有一些进展。
「ええ、構いません。そのご様子では、双方にとって良いお話と思って良さそうですかな?」
“是啊,没关系。以那个样子来看,这似乎是对双方都有好处的故事,你觉得呢?”
「勿論です。まずは前任地であるゴアと、我らの故郷の王侯貴族たちに情報を流したところ、概ね好感触を得ることができました」
“当然可以。我们首先向前任地果阿以及我们的故乡的王侯贵族传递了信息,大体上获得了好反应。”
オルガンティノの言葉に静子は頷いて次を促す。
奥尔加提诺的话让静子点头并催促他说下去。
大きく時代を先取りした養殖真珠が受け入れられるか否かは、神ならぬ静子としては祈る他なかったのだが、オルガンティノの言に依れば好評だったようだ。
广泛采用先进时代的养殖珠宝是静子真正祈求的事情,但根据奥尔加汀诺的话来看,好像很受欢迎。
しかし静子は、話がそれだけでは終わらないだろうとも予感していた。
然而静子预感故事不会就此结束。
「しかし、難点が無いわけでもありません。一番問題となったのは、その色合いです。我らの常識では真珠とは銀に近い色味を呈するのですが、閣下にご用意頂いた真珠は純白に近い色を示しております」
“然而,并非没有困难之处。最大的问题是它的色彩。按照我们的通常认识,珍珠的颜色接近银色,但您所准备的珍珠显示出接近纯白色。”
「……ふむ、色合いですか。なるほど……」
“嗯,是指颜色搭配吗。原来如此……”
当時欧州に流通していた天然真珠は銀色、対して養殖のアコヤ貝産真珠は白色となる。これは真珠質を分泌する母貝の種類に起因している。
当时在欧洲流通的天然珍珠是银色的,而饲养的珍珠贝产生的珍珠是白色的。这是由于分泌珍珠质的母贝种类不同所致。
当時の世界は銀を貴ぶ風潮にあったため、静子は白色よりも銀色の方がヨーロッパ人の好みに合致すると考えた。
当时的世界因珍视银而流行,静子认为比起白色,银色更能迎合欧洲人的口味。
「色合いを銀に近づけるのは困難です。別種の真珠として売り込んでは頂けませんか?」
「将色调接近银色是困难的。您可以将其推销为另一种珍珠吗?」
「そうなりますと、相手が譲歩した形となりますので、閣下の希望される値段より幾ばくか値下げを求められるかと思います。これを呑んで頂けるのであれば、交渉の余地があるかと」
“如果这样的话,对方会被视为做出了让步,所以我想要求比阁下期望的价格稍微降低一些。如果您愿意接受这个条件的话,我们可以继续谈判。”
オルガンティノは終始にこやかに善意で交渉しているように話を進める。静子はそれを受けて、流石は宣教師だと舌を巻いていた。
奥尔加蒂诺一直以微笑和善意的态度推进谈判。静子听了这话,不禁惊叹于奥尔加蒂诺作为传教士的能力。
色の好みというのは確かに一つの要因なのだろう。しかし、実際のところは瑕疵(かし)(欠点)を指摘することで、少しでも安く仕入れたいと言うのが本音であろう。
"颜色偏好确实是一个因素。但实际上,指出瑕疵是为了尽可能以更低的价格采购,这才是真实的想法。"
彼らの手に掛かれば、色の好み程度は何とでも出来るのだろうが、それを材料に価格交渉を迫る。好々爺(こうこうや)然(ぜん)としながらも、中々に強かな策略家であった。
如果落到他们的手中,颜色的喜好程度可以进行任何调整,但却会利用该因素来进行价格谈判。他虽然表现得像个温和的老爷爷,但实际上是个相当狡猾的策略家。
しかし、オルガンティノを指して腹黒いとは思わない。この程度の腹芸が出来なければ、母国と言う後ろ盾がない敵地で侵略行為に近しい宗教の布教など出来ようはずもない。
然而,我不认为指责奥尔甘蒂诺为心黑之人。如果不能施展这种程度的谋略,就不可能在没有本国支援的敌境中进行类似侵略性宗教布道的行为。
「(ならばプランBを採用する時!)当然でしょうね。売り手としては少しでも高く買い取って頂きたいが、買い手がつかないのでは商品となりません。値下げも必然でしょう」
"如果采用B计划的话,当然了。作为卖家,我们希望能以尽可能高的价格把商品卖掉,但如果没有买家,商品也就成了无用之物。因此,降价也是必然的。"
「ご賢察、恐れ入ります」
“非常抱歉,恭请见谅”
「それらを考慮した上で、こちらは二つの方案を提案しましょう。一つは買取価格を下げての通常の取引、もう一つは価格を据え置いた状態での独占販売契約を結びます」
"在考虑到这些因素之后,这里提出两个方案。第一个方案是通过降低回购价格来进行常规交易,第二个方案是以维持价格不变为前提签订独家销售合同。"
「詳しくお話を聞かせて頂けますか?」
能否请您详细讲述一下?
静子の言葉を受けて、オルガンティノが纏う雰囲気が変わった。
接受静子的话后,奥尔加蒂诺身上的氛围发生了变化。
表情は変わらないが、警戒しつつも大きな利益を掴めるかも知れないという野心が、彼をして滲(にじ)み出てしまうのだろう。
他的表情并没有改变,但他的野心可能会让他抓住巨大的利益,虽然他也持有警惕心。
掴みは得られた。静子は心中でガッツポーズをとっていた。頭巾を被っているため、表情は読まれないが、それでも言葉に感情が乗らないよう慎重に会話を進める。
抓住了机会。静子心中暗自高兴。因为带着头巾,所以面部表情看不清,但她还是小心进行交谈,避免言语带有情绪。
「通常の取引については、特にお話することはありません。独占販売契約について解説いたします。まず買い取り価格ですが、以前こちらが提示した価格での提供となります。代わりに原則として提供できる真珠の全量を貴方がたのみに販売致します。売れ行きが振るわず在庫を持て余す可能性を含みますが、貴方がたが我が国から産出される真珠取り扱いの唯一の窓口となれるのです。その立場が生み出す優位性は、商売に明るいオルガンティノ殿ならばご理解頂けるかと」
“关于常规交易,无需特别谈论。现在我们将解释独家销售协议。首先,收购价格将以我们先前提供的价格为准。作为代价,我们原则上将向您提供所有可供销售的珍珠数量,但这可能会导致库存积压和销售不畅的风险。但值得注意的是,您将成为我们国家的唯一珍珠货源代理商,这样的地位将带来许多优势,相信对于商业敏锐的客户来说,您能够理解。”
二つの案を提示してはいるが、オルガンティノならば独占契約を選択するとの確信があった。
虽然提出了两个方案,但有信心选择独占契约,如果是奥尔甘蒂诺的话。
その背景には近頃、プロテスタント系の商人が東洋に進出し、活発に活動を始めているとカトリック系の商人から聞いていたというものがある。
那背后有近来,听说来自天主教派别的商人得知新教派系的商人正进军东方,开始积极开展业务。
未だ東南アジア以東の諸国や、中国、日本の市場へは進出していないが、それも時間の問題だと言える。更にイエズス会派が交易を独占できる時間的猶予は残り少ない。
尽管尚未进入东南亚以东、中国和日本等市场,但这只是时间问题。此外,耶稣会垄断贸易的时间余地不多了。
プロテスタント側の商人が東洋へと歩を進めたという事は、彼らが独自の航路を確立したことを意味する。
“基督新教的商人向东方前进,这意味着他们建立了独立的贸易路线。”
数年も経てば、イギリスやオランダというプロテスタント国家が、極東日本まで進出し商圏拡張を巡ってカトリック国家と覇を争うことになるのは容易に想像できる。
几年后,可以轻易想象到英国和荷兰这样的新教国家将进入远东的日本,为扩大商业领域而与天主教国家争夺霸权。
「……大変興味深いお話ですが、少々私の裁量を上回ります。一度話を持ち帰り、改めてお伺いするという流れでも宜しいでしょうか?」
"虽然听起来很有趣,但是可能超出了我的职权范围。能否将这个话题带回去,稍后再做回复呢?"
目の前に吊るされた餌に飛びつくかと思われたが、オルガンティノは冷静に判断を保留した。
看起来奥尔甘蒂诺会扑向悬挂在眼前的食物,但他保持冷静并暂缓了判断。
静子としては騙し討ちにするつもりもなく、商売相手をイエズス会に限らねばならない理由もない。
静子并没有欺骗的打算,也没有必须将商业伙伴限制在耶稣会内的理由。
そこまで織り込み済みのプランBであり、全て想定内の事象に収まっていた。
已经在计划B中考虑得非常周到,所有的情况都在预料之中。
「勿論構いません。こちらも我が国の真珠が脚光を浴びると思い、少々前のめりになり過ぎておりました。ご存分にご検討いただき、その上で良いお返事が頂ける事を願っております」
当然没有关系。我也因为想让我们国家的珍珠受到关注而有些冲动。希望您仔细考虑后能够给出好的答复。
「とんでものうございます。閣下のご意向を国許に伝え、必ずや良い返答を勝ち取って参ります」
“实在是一件荣幸之事。我将向您的国土传达您的意愿,并一定会争取到良好的回答。”
「オルガンティノ殿が請け負って頂けるとあらば、これ以上頼もしいこともありますまい」
“如果可以托付给Organtino殿,就不会有更值得信赖的事情了。”
オルガンティノの言葉に、静子は頭を下げて礼を述べた。
奥尔加蒂诺说完这话,静子躬身向他行了一礼。
真珠については仮押さえということで折り合いがついた。
有关珍珠的问题,我们达成了暂定意见。
当面、静子は真珠を他所に流さない代わりに、オルガンティノたちは輸出用に準備されていた真珠箱二つの全てを買い取った。
当面,静子没有卖掉珍珠,而奥尔加蒂诺们则购买了准备用于出口的两个珍珠盒子。
この仮押さえが本契約へと進むか、それとも破談となるかは、今後のオルガンティノたちの活躍次第ではあるが、静子としては十中八九本契約に至るであろうと考えていた。
这个暂定协议是否会进展为正式合同,还是会破裂,取决于今后奥尔甘蒂诺们的表现,但静子认为很可能会顺利达成正式合同。
「いやはや、疲れた疲れた……」
"哎呀呀,累死了累死了……"
自室に戻って男装から解き放たれた静子は、全身を伸ばしつつ独り言を漏らす。
回到自己的房间,解放了男装束束缚的静子,一边伸展全身,一边自言自语地说着。
凝り固まった肩を解しながら、会談の最中にロレンソとフロイス両名が殆ど喋らなかったことを思い出していた。
解开了僵硬的肩膀,他回想起洛伦索和弗洛伊斯在会谈中几乎没有说话的情景。
真珠の件も、それ以外についても話を主導するのはオルガンティノであり、意見を求められた時以外は二人が口を開くことは無かった。
真珠的事情,以及其他事情都由奥尔甘蒂诺主导谈话,除非需要征求意见,否则两人都不会开口。
(恐らく、窓口担当はオルガンティノに一本化されるんだね。そして、二人はスムーズに引継ぎが出来るよう、サポートに徹しているのかな?)
(很可能,窗口负责人将集中在奥尔加蒂诺。然后,这两个人会全力支持,以便顺利进行交接吧?)
静子とイエズス会との縁を紡いだのは、フロイスとロレンソだ。その二人がどういった経緯で静子との交渉役から離れ、オルガンティノに後を託したのかは判らない。
静子和耶稣会的联系由弗洛伊斯和洛伦佐编织而成。这两个人离开了与静子谈判的角色,并把重任交给了奥尔加洛天诺,但我们不知道他们为什么要这样做。
悩んでいても答えが出そうにないため、静子は心の片隅に留めおくことにした。
纵使困惑不解,答案似乎也无法出现,静子决定将其留在内心深处的某个角落。
「さて、そろそろ一度尾張に戻り、その後徳川家へ挨拶に向かわないとね」
"那么,差不多该先回尾張一趟,然后再去拜访德川家了。"
家康へのご機嫌窺いは、信忠からの命を受け、彼の名代として務めることになる。
"代表着信忠的命令,打探家康的高兴程度将成为他的代表的工作。"
表向きは信長より尾張と美濃を任され、正式に尾張奉行並びに美濃奉行に就任したことを同盟国でもあり、隣国でもある三河国(みかわのくに)及び遠江国(とおとうみのくに)に周知がてら挨拶に向かうこととなっている。
他被任命为尾张和美濃的奉行,并正式就任。作为同盟国和邻国,他将前往三河和遠江,并向他们致意。
奉行というと大岡越前や遠山金四郎を思い浮かべる方も多いだろうが、あれらは江戸時代以降の町奉行であり、ここで言う奉行とは朝廷から任命される公的役職ではなく、あくまで織田領国内のみで通用する役職となる。
提到“奉行”,许多人首先想到的可能是大岡越前和远山金四郎等江户时代后期的町奉行。但是,这里的“奉行”并非由朝廷任命的公职,而是仅限于织田领国内通用的职务。
奉行の主な役目は尾張及び美濃の守護に就く信忠の補佐となり、実務を実行する事務長官のような役目を担う。
奉行的主要职责是担任信忠的助手,担任尾张和美濃的守护,并承担类似执行实务的秘书长职责。
しかし、当の信忠は尾張と美濃の配下達の手綱を握ることで手一杯になっており、とても外交にまで気を回しているような余裕はない。
然而,信忠本人已经忙于掌握尾张和美濃的部下,并且没有时间专注于外交事务。
そう考えれば、一連の予定について手筈を整えたのは信長であり、彼が家康に伝えんとしたメッセージは明確であった。
这样想的话,整理一连串的计划的是信长,他传达给家康的信息非常明确。
(いよいよ、東国征伐が始まるのかな)
(终于开始东国征伐了吧?)
静子の徳川領行きは、東国を治める各国人に対して、旗幟を鮮明にする機会を明確に示すメッセージだ。即ち、服従するか、さもなくば死だ。
静子前往德川领地是向东国各国人明确传达旗帜鲜明的机会。即服从或死亡。
安土城築城の動きに隠されて見えにくいが、静子軍の中核を担う兵站軍が活発に動いている。
安土城修建的动向可能不太明显,但静子军的后勤军队正在积极活动。
そう遠からず、早ければ夏の終わりにも東国征伐が始まるだろう。そう静子は睨んでいた。
不久之后,最早也会在夏末开始对东国的征伐。静子一直在注视着这一点。
(きちんとお役目を果たさないと)
(不认真履行职责的话)- Simplified Chinese
京より戻った静子は尾張に数日留まり準備を整え、再び家康の待つ遠江を目指して旅立った。
京都回来后,静子在尾張停留数天整理行囊,再次启程前往等待她的家康所在的遠江。
三河国に入ると案内人を務める夏目(なつめ) 吉信(よしのぶ)と合流した。
当进入三河国时,加入了作为导游的夏目吉信。
史実では三方ヶ原の戦いで家康を逃がすために身代わりとなって命を落とした人物だが、今も生き永らえていることに静子は奇妙な感慨を覚えていた。
在历史上,他是因为替家康逃走而牺牲生命的人,参加了三方原之战。但是,静子感到有些奇怪的感慨,因为他竟然还活着。
案内人が必要となる理由は、三河や遠江は街道整備が十分でなく、地元の人間でなければ道中に難儀する可能性があるためであった。
需要导游的原因是三州和远江的道路并未完全整修,如果没有当地人的陪同,可能会遇到困难。
流石に案内役を任された夏目の先導は確かであり、何の問題もなく静子達一向は家康の居城である浜松城へと到着した。
夏目担任导游的确很靠谱,静子等人毫无问题地到达了家康的居城——浜松城。
「遠路はるばる、ようこそお越し下さいました」
"远路来远方,欢迎光临"
「徳川様も御壮健なようで、何よりです」
「徳川様也很健康,这真是太好了。」
謁見の場にて家康と言葉を交わす。ふと視界の隅で、忠勝が目立ち過ぎない程度に小さく手を振っており、気付いた半蔵と康政から肘鉄を貰っていた。
在拜见场合中与家康交谈。在视线的角落里,忠胜稍微低调地挥手,以免过于引人注目,被半藏和康政注意到后受到了点头示意。
(どうして、こんな時まで漫才をやるんだろう?)
(为什么要在这个时候做相声呢?)
場を和ませるための寸劇にしても、こっそりと周囲の目を気にしながら行うことではないと思いつつ、静子は家康に意識を戻す。
为了让现场气氛更加轻松愉悦,静子想表演一个小品,但她同时也知道不应该心虚地畏惧旁人的眼光,于是她重新集中精神,回到了和家康的对话中。
信長から明確なメッセージや文書を預かっていない以上、東国征伐の話題など出ようはずもない。尾張・美濃奉行就任の挨拶を終えれば、終始世間話の延長上の話題が飛び交う。
由于没有收到明确的来自信长的消息或文件,因此不可能出现有关东国征讨的话题。在完成尾张和美濃的代理职位介绍后,话题一直在闲谈中延续。
静子としては挨拶に訪れただけであり、元より長居するつもりもないため、会談後数日の逗留を経て尾張へと帰国することとなった。
静子只是前来致意,原本也没有打算长留,会晤后逗留数日后就返回尾张。
帰りの案内人は忠勝が務めることになったのだが、半蔵と康政が裏から手を回したのか、静子の周辺警備を担当したのは忠勝の叔父である本多(ほんだ) 忠真(ただざね)であった。
回程的导游被忠胜任命为,但是半藏和康政是否在背后搞了什么鬼,负责静子的周边警卫工作的却是忠胜的叔叔本多忠真。