日本小6课文:河鹿屏风【久我Masahi的日语课堂】#95

河鹿の屏風(河鹿屏风)
作者:岸(きし) なみ
昔、上狩野(かみかの)に代々続く家の主(あるじ)に、菊三郎(きくさぶろう)と言う人がありました。(从前,上狩野历代的家主中有一个叫作菊三郎的人。)
悪気はないが怠け者で、のらりくらりと遊び暮らしたあげくに、山林や田畑を大方売り尽くし、それでも、まあだ借金が残ると言う始末でした。(菊三郎虽没有歹意,但是个懒汉,游手好闲地混日子,最后卖光了大部分的山林、田地,即便如此,还有借款未还。)
そこで菊三郎は、最後に残った山を売るため、山見に出掛けて行きました。(于是菊三郎为了卖掉最后剩下的山,出门去看山了。)
その山は、谷川を挟んで、美しい木立が昼も暗いほど茂り合っていました。(山间夹着溪流,美丽的树丛繁茂到白天也很昏暗。)
そして、谷の川床(どこ)には、昔から沢山の河鹿(かじか)が住んでいました。毎年初夏の頃から、哀れ深い河鹿の鳴き声がこの辺り一帯に満ちて、そのために、ここを、河鹿沢(ざわ)と呼んでいるくらいでした。(并且,山谷的河床边从以前开始就栖息着很多河鹿。每年初夏起,这一带满是河鹿无比凄凉的鸣叫声,为此,这里甚至被称作河鹿泽。)
菊三郎は、遥々山見にやって来て、売り払うつもりの木や土地の見積もりなどをしていましたが、そのうちに疲れて一休み、沢の岩陰に凭れている間に、ついうとうとと眠ってしまいました。(菊三郎千里迢迢来看山,估价了准备卖掉的树木、土地,累了便休息片刻,倚靠在湿地岩暗处的时候,不知不觉间迷迷糊糊地睡着了。)
やがて、ひどく冷たい手が肩を揺すぶるのに目を開けてみると、そこに、不思議な老人が立っていました。(没过多久,非常冰冷的手摇着他的肩,他睁开眼睛一看,只见不可思议的老人站在眼前。)
顔は河鹿にそっくり、着物は川藻(も)の如く垂れ下がり、裾からは、ぽとぽとと雫が垂れていました。(老人的脸和河鹿长得一模一样,和服像河藻一样下垂,衣服下摆处水珠滴滴答答地滴落着。)
老人は、しわがれた声で菊三郎に言いました。「菊三郎どの。わしは、この河鹿沢の河鹿の頭領じゃ。折角の昼寝の妨げをしたは、ここに住みつく河鹿どもに代わって、お願いをするため。聞いてくだされよ。お願いというのは、ほかでもない。今、そなたが立ち木を数え、地を測って売ろうとしているこの河鹿沢を、なにとぞ売らないでくだされということじゃ。売り渡されれば、両岸の木は切られて、谷は日照りに乾き、雨があれば、川床は濁り水に押し流されてしまうであろう。河鹿どもが住むことは、できなくなりますのじゃ。」(老人用沙哑的声音对菊三郎说道:“菊三郎大人。老朽是这河鹿泽的河鹿首领。打扰到您午睡是因为我要代表住在这里的河鹿们,向您提出请求。请听一下。请求不是别的,正是请不要卖掉您数树木、测土地而准备卖掉的这个河鹿泽。卖掉的话,两岸的树木将被砍掉,山谷会被日照晒干,一下雨,河床将被浊水冲垮。河鹿们就无法居住了。”)
なるほど—と、菊三郎は思いました。河鹿は、緑深い、清らかな谷川の畔を好んで住みます。(原来如此,菊三郎想道。河鹿喜欢住在绿意盎然的、清澈的河床边。)
「のう—、お願いじゃ。」老人がそう言って、押し頂くようにして菊三郎の手を取った時、その手があまり冷たいので、菊三郎は、はっとして我(われ)に返りました。(“拜托您了。”老人如此说道,恭敬地抓住菊三郎的手的时候,由于那双手过于冰冷,菊三郎一下子清醒过来。)
「さては夢であったか—。それにしても、不思議な。」夢にしては生々しく、ひどく気になってなりません。(“这是梦吗?若是梦的话很不可思议啊。”作为梦来说栩栩如生,菊三郎对此非常在意。)
流石怠け者の菊三郎も、夢のためばかりでなく、先祖から受け継いだ山や谷を人手に渡すことを、初めてすまないと思うようになっていました。(就算是懒汉菊三郎,也不只是因为梦,他初次觉得把从祖先那里继承下来的山谷交给其他人很过意不去。)
土蔵の中の書画や骨董、あらゆるものを金に換えて、やりくり算段に駆け回ったあげく、やっとどうにか河鹿沢を持ちこたえることが出来た時、家の中に残った物と言っては、こればかりは売り物にもならぬ白い枕屏風が、たった一つだけ—。菊三郎は、この枕屏風を枕元に立て回して、やれやれの吐息と一緒に、その夜を独り、ひっそりと、眠りにつきました。(菊三郎用仓库里的书画、古董等所有的东西换了钱,四处奔走设法筹钱,最后终于勉强保留下了河鹿泽的时候,家里只剩下卖不了的一扇白色枕边屏风。菊三郎将这枕边屏风竖围在枕边,叹了口气,然后这一夜独自静静地睡着了。)
明け近いと思われる頃、沢山の河鹿の鳴き頻る声に取り巻かれたような気がして、菊三郎は目が覚めました。(临近黎明之时,菊三郎感觉被众多河鹿不断鸣叫着的声音围绕着,便醒了。)
ふと起き上がった菊三郎は、思わず、あっと叫びました。(一下子爬起来的菊三郎不禁叫了起来。)
枕元から縁側にかけて、点々と水に濡れた足跡が続いています。そして、白い屏風の面(おもて)には、いつの間に、誰が来て描いたのでしょう、墨の色も鮮やかに、沢山の河鹿が谷間に戯れている絵が、生き生きと描かれてありました。画面はまだ濡れていて、見ると、床の間の矢立の筆からは、墨が滴っているのでした。(从枕边到走廊,有着一点点湿漉漉的脚印。并且,白色的屏风表面,不知何时,有人来画了墨色鲜明、栩栩如生的众多河鹿在谷间嬉戏的画。画面还是湿的,再一看,地板间的砚盒中的笔还滴着墨。)
なんとも不思議な—と、菊三郎は、その絵に見とれました。墨一色の濃淡をものの見事にかき分けた、河鹿の群れ遊ぶ図は、見る者の心に不思議な感動をそそりました。(多么不可思议啊。菊三郎看这幅画看得入迷了。仅用不同浓淡的墨色,完美地画出的河鹿群嬉戏图,勾起了观者内心不可思议的感动。)
描いた者の知れない名画として、河鹿屏風の噂は、人から人に流れました。(河鹿屏风作为画者不明的名画,广为流传。)
都から遥々下ってきた、ある名高い絵師は、この屏風を見るより感嘆の声を放ちました。千両箱を携えて、屏風の譲渡しを頼んでくる者も、二、三にはとどまりませんでした。が、何を思うところあってか、菊三郎は、この屏風を、一代の家宝じゃと言って、手放しませんでした。(从京城千里迢迢赶来的某个著名画师,看到这扇屏风的时候连连感叹。带着千两箱,恳求转让屏风的人也不止两三人。然而,不知菊三郎是怎么考虑的,说这扇屏风是一代家宝,没有出让。)
そして、何一つないがらんどうの家の中から、生まれ変わったような、働き者の第一歩を踏み出しました。(然后,菊三郎从空空如也的家中开始,脱胎换骨,踏出了勤劳工作的第一步。)
やがて、長い月日の後に、見事に家を再興した菊三郎は、老いて亡くなりました。菊三郎が亡くなると、不思議なことに、屏風の絵は年ごとに薄れていって、とうとう消えてしまったということです。(最后,经过了漫长的岁月,复兴了家族的菊三郎衰老死去。菊三郎死后,不可思议的是,屏风的画一年年地淡化,最后消失了。)
俗に河鹿沢と言う、浄蓮(じょうれん)の滝の上の方、渓流にやや川床の開けた辺りでは、今でも、鳴きしく河鹿の声を聞くことが出来ます。(世称的河鹿泽,在净莲瀑布的上方,溪流中一些河床的附近,至今也能听到河鹿频频鸣叫的声音。)

词汇
上狩野:静冈县伊豆市中部的村子。
のらりくらり:游手好闲、无所事事;推推托托、态度暧昧
見積もり(みつもり):估量、估计、估价
うとうと:迷迷糊糊、似睡非睡
ぽとぽと:液体不断滴落的声音及其样子
やりくり:设法安排、筹划、筹措;男女幽会
戯れる(たわむれる):玩耍、嬉戏;戏弄、调戏
矢立(やたて):箭筒;小砚盒;携带式笔墨盒
千両箱(せんりょうばこ):江户时代保管货币的容器,一般是放一千两,也有两千两、五千两的箱子,箱子大小不定
携える(たずさえる):携带、拿;偕同、携手、手拉手
がらんどう:空空的、空旷的

作业
1.读课文