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死者の旅

2020-06-20 21:57 作者:洛茶Royaltea  | 我要投稿

 --あの時のわたしは、まだ何も知らなかった。死んだばかりのわたしはただ、自分は消えるべきだと、そう思っていただけだった…--

 

 黄昏のようなオレンジ色に染まる空の下、わたしたちはこの奇妙な都市を漫ろ歩いている。

「どう?葉、死後の世界にも面白いこと沢山あるでしょう」

 ワクワクしながら話しかけてくれた釋をよそに、わたしはただ、目の前に広がるこの不思議な光景に惹き付けられて、感心せずにはいられなかった。

 風格異様な建物がどこまでもいけるように遠くへと並んでおり、人間らしき者がちらほらと存在する。見た目は人の形を保ったままだから、少なくとも化け物ではないことが分かるが、ぐったりとした動きや虚ろの表情からは、正気で居られているとは言えない。彼らは建物の前で嘆いたり、あるいは、わたしたちと同じく、ある方向に向かってぐったりと歩いたりしている。

 都市中心区。この辺で一番建物が高くて多く、異様な雰囲気を漂わせている場所であり、行く当てもない私たちが向かっている場所でもある。そこに行ったら何か分かるかもしれないという気持ちも含めて、わたしたちは探険兼ねてあそこへと足を運んでいる。

 

「これ以上進んじゃいけないよ、危険だから」

 周りの風景に専念するわたしたちは遠くから聞こえてくる声に気を取られた。あちらへ目をやると、人が集まり騒いでいることが分かる。先頭に立つのは一人の少年、群れてくる人たちを止めているらしい。

「何かあったのかな?」

「気になる?」

「えっ?うん、ちょっとね」

「じゃあ、いってみよう!」

 まともに話をしているようだから、もしかしたら私たちと同じかもという私の気持ちを見通した彼女は、わたしの手を引いて、騒ぐ所へと小走りで連れていってくれた。

 ちょうどその時、前方からも奇異な服に身を包んだ男と女の二人組が群れに混じりこんでくる。男が声を上げて場を竦みあがらせようとしている時、後ろから前へ突っ込んで状況を探ろうとする釋にぶつかられた。適当に謝りながらあちこちをちょろちょろ見ている釋に構えなく、わたしは再び目の前の風景に目を取られ感心していた。鮮明な色で艶やかに描かれた風景、対比強き色彩に釣り合わない静寂、そして、たまに通りかかる縫いぐるみ。

 えっ?縫いぐるみ?

 縫いぐるみは、この騒ぎがまるで無いもののように平然と通りかかっていく。その無機質な感じを見ているわたしは思わず言葉を漏らす。

「縫いぐるみも、死ぬんだぁ……」

 小さい頃、縫いぐるみの童話を聞いたことがある。確か縫いぐるみに誘われて……

「……い…」

 あれ?思い出せない、なんでだろう……

「おーい」

「えっ?!」

 考え込んで釋の声が聞こえなかった。目の前に手を振られてようやく気付いた私がさっそく返事をする。

「あ、ごめん、どうした?」

「それはこっちセリフだよ。なにボーとしてんの?」

「あ、いや、ちょっとね」

「ふんん、まあいいや。それよりさ、興味ある?」

 釋は笑いながら都市中心のほうに指差している。

「そうね、確かにちょっと危ない感じだけど…」

「行ってみたいよね!」

 釋は私を連れて、さっき見つけたのだろう裏道を潜り、都市中心へ足を速めた、少年の呼び止めを構わずに。

 

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「あっ、ちょっと!危ないって言ってるのにぃ!」

 エリアに入っていった二人を呼び止めたが無視された少年は、この場を警察さんに任せて追いかけようとする。

「もう、皆さんも中へ入ってはいけないよ!では警察さん、あの二人を探してくるから、ここはお願いしますね」

「おい!おまえ、こらぁ!」

 こっそりと入っていった二人の少女と一言残して姿を消した少年、三人ものまともな奴を危険エリアに入られて、何があったら後はいろいろ面倒くさいし、ここはさっさと見つけて連れ出したほうが良策だと判断した男は、自分がカッコいいと思うポーズをして、口を開いた。

「だからガキっつったらなぁ」

「あんたもガキでしょうに」

 女に突っ込まれて少し眉を震わせた男は、なかったことにしようとする。

「どうやら、警部の出番みてぇだな。こいつら頼んだぞ、お嬢!」

 と頼んで、先に都市のほうへ走っていった。

 残された女は「わたしに指図するとは、なんて不孝だ」とため息ついてから、表情を整えて群れの前に立つ。

 閉じていた目を開いたら、そこから弱い光が放ち、分析が始まった。しばらくすると、一人言とともに光が消えた。

「どうやらやばいものはないらしいわね」

 再び目を閉じ、女は群れの群衆に言葉をかける。

「あんたたち、引き揚げなさい。ここから先は、立入禁止よ!」

 結界を張った後、女も都市のほうへと姿を消した。

 

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 都市中は静寂と言えるほど静かであり、どこからともかく差してきた光に照らされている。いろんな形をした縫いぐるみたちが町の住民のように行き来して、ここの異様さをより一層まがまがしく染め上げてくる。

 そんな中を歩く私たちはあちこちを見ていて、緊張しながら少しもワクワクする。

 遠くない先に、一匹の小さな縫いぐるみが自分より何倍も大きな箱をずらしながらゆっくりと移動しているところ、わたしたちに気づいたらすぐ箱の裏に身を隠し、こちらの様子を覗いていた。

「ここ、ちょっと不気味だね」

 隣でわたしの腕を絡んで周りを警戒している釋を見て、わたしは笑って返事してあげた。

「連れられてきた私より怖がっててどうすんのよ」

「これはあなたのためでしょう、こんな面白い世界に来たのに、急いで転生しに行くなんて、何考えてんのよ、まったくもう」

「知らなかったんじゃないかぁ、はい、感謝してるよ、あ・り・が・と・う!」

「ちぇー、全然誠意が感じられなーーい」

「そんなことないよ、ほら……」

 そんな他愛もない会話を遮ったのは急に鳴り始めた踏切の音。話をしながら進んでいたら、鉄道の前にやってきた。電車もあるのかと思いきや、レールの上を走ってきたのは一列の……

「縫いぐるみ?!」

「な、何あれ?」

 縫いぐるみが手を繋いで鉄道の上を走っている。その奇妙な光景に熱中していたせいか、さっきからずっと箱の後ろに身を隠し手招きしてくれた縫いぐるみには気づかなかった。よほど大事なことがあるらしく、臆病でありながらも勇気を絞ってこちらに走ってきてくれた。

「あっ、さっきの子だ、なに?」

 縫いぐるみはわたしの足を引っ張って自分の箱のほうに腕を振っている。

「あら、可愛いい」

 その子の焦りをよそに抱っこしようとする釋だが、巧に避けられた。いまはそんなことしてる場合じゃないと言わんばかりに、こっち来てという気持ちを必死に伝えている。

 見つめ合って行ってみようと決めた私たちは、鉄道の向こうからわたしたちを探しに来た少年のことにも、不気味に変形して少年の道を阻んだ鉄道のことにも、すべて気づかぬまま、縫いぐるみについていったのだ。

 

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 縫いぐるみは箱から小さな看板を取り出して、何かを書いている。

 --はやくこのエリアから離れて!--

「離れるって?そりゃ確かにちょっとは不気味だけれど」

 お互いに見てからまた縫いぐるみに向かう私たち。 

「どうしてなの?ここに何かあるの?」

 縫いぐるみは頭を振って理由は知らないと示し、結果だけを看板で私たちに教えた。

 --ぼくみたいになっちゃう!--

「……」

「……」

 意思疎通がしづらい状況で、縫いぐるみは隣の大きな石の後ろからテレビみたいのモノをずらしだした。ポンポンと叩いてからその上に乗ってうつ伏せになると、スクリーンがザッザッとし、男の子の声が伝わってきた。 

 --ぼく、好奇心で、来て、縫いぐるみに、なっちゃ、った…--

 縫いぐるみになるって怖いことなの?なんて訳の分からないことが一瞬頭を過ぎる。

「縫いぐるみになったら、どうなるの?」

 --忘れる、すべ、てを--

「でも縫いぐるみさんは忘れてないみたいじゃない?」

「おい、ぬっちゃん?」

 返事をしてくれなかった。さっき少し光っていた目も完全に光が消えた。

 その様子から、またあの童話のことを思い出させてくれる。

 縫いぐるみに誘われて行ったら、そこに閉じ込められて、そしてその子はもう……

「…逃げなきゃ…」

「えっ?なに?」

 急な言葉に、釋は状況を理解できなかった。そんな彼女を分からせる暇もないように思い、わたしは釋を連れて早速その場から逃げることにした。

「はやく逃げないと二度と出られなくなっちゃうよ」

 釋にはまだ完全に理解してないが、こんな異様な世界だ。いつどんな怖いことが起きてもおかしくない。葉が嫌な予感がするなら、わざとここにずっと留まる理由もない。だからそのまま、葉に連れられて逃げることにした。

 さっき二人が立ち留まった場所から、闇がどんどん広がってくる。鉄道の変形のように、ここの空間自体が歪み始めた。縫いぐるみもテレビも真っ黒に染まりつつあり、目とスクリーンは赤い光が点滅しながらす、縫いぐるみは最後の言葉を残す。

「暗く、なる、まえに、逃げ、ださな、いと……」

 全ても呑み込まれた闇の中、縫いぐるみは目を真っ赤にして、異様な笑みを浮かべていた。

 

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「一体、どうしたの、急に」

 走りながら喘ぎ声で訳を聞いてくる釋に返事をする葉。

「読んだことないの?あの童話」

「童話?」

「縫いぐるみに誘われてそっちの世界に入っちゃったら、戻れなくなっちゃうって」

「は?」

「ほんとかもしれないよ」

「そ、そんなのって」

 走りの疲れで突っ込みもまだ碌にできていないうちに、前のほうから誰かが走ってくることに気づいた。

「あれは」

「よ、お嬢ちゃんたちが、探してたぜ!」

「あなたたちは」

「警察だぞ!」

 と男は言いながら銃をかっこよく構えた。

「え、いや、そうじゃなくて……ひっ!」

 話の途中で躊躇いもなく私たちのほうへ一発を撃ってきた。

 それを見た女は男の足を強く踏んで戒める。

「ちょっと、子供を脅かすんじゃない!」

 振り向いたら、どうやら縫いぐるみに襲われかけたらしい。

 助けてくれたのはありがたいけど、少し優しい方法でやってほしいななんてことを思う暇もなく、わたしたちは縫いぐるみ軍団に囲まれたことになった。

 どうやらあの警察の二人も追われているみたいね。

「おい、あの坊やは?一緒じゃなかったのかい?」

 一緒に頭を横に振るわたしたち。

「ち、面倒くせぇ!だから子供っつったらなぁ」

 再び銃を構え、男は狙いを定めた。

「お嬢ちゃんたちはよく隠しとけよ!弾には目が生えてねぇからな!」

 

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 追ってきた縫いぐるみは全部仕留められたら。女はそこらへんで寛いで、男はわたしたちのほうに来た。

「光のあるとこ沿ってさっさと帰れ。いいか、暗いとこには絶対入んなよ!なにかあるかわかんねぇからな。一応冥界だから」

「じゃあ、おじさんたちは?」

「お兄さんだ!……さっき入口の坊やがお前らを探しに入ってきたんだ、そいつも見つけねぇとな」

 ちょっと雑っぽいけどいい人みたいだなと思って、わたしは彼らにお礼を言った。

「助けてくれてありがとう!じゃあわたしたち行くね」

「おお!気をつけろ!死ぬんじゃねぇぞ!」

「うん、おじさんたちもね」

「お兄さんだ!!!」

 この光景を見てクスクスと笑う女に、男は突っ込んでいった。別れを告げたわたしたちも出口へと足を速める。

「積極的になったわね」

「うん?なんの事?」

 釋の言葉が理解できない私は、釋の次の言葉を待っている。

「転生に急ぐんじゃなかったの?」

「まあ、いまは暫く、この世界を楽しもうと」

「そっか、うんうん。ほら、そろそろ出口だよ、ここを出ればまず一安心だから、急ごう!」

「うん!」

 

 もうかなり暗くなってきている。出口もはっきりと見えないくらいだが、そこにとどまっている人たちはまだやや見えてくる。

 ……

 留まってる?え?どうして?

 近くに来たわたしたちは、目の前の光景に愕然した。

 道が、無くなった。両側を接続通路が消えて、崖になっている。下から点々たる蛍光が舞い上がり、その先は、底の知れぬ淵であった。

 四周から縫いぐるみたちもどんどん集まってくる。こちらを見つめるその視線は鋭く険しく、周りの異形に変化していく風景と共に、わたしたちの置かれた状況の危険度を猛スピードで引き上げていく。

 完全に暗くなった。都市中心を象徴する一番高いビルが大きなスクリーンのように真っ黒に身を染め、二つ赤い点を目のように回して、わたしたちに向けてくる。

 ~なあ、一緒に遊ぼうよ~

 耳障りな音がビルから伝わってくる、まるで全身の毛穴一つ一つまで毒針を刺そうとするように。隅々まで滲み込んでくる恐怖に、わたしたちはどうしようもなく、ただお互いを抱き合って、蛇に狙われた蛙みたいに、身を震わすしか、できることはなかった。

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 ~なぁ、友達になろうよ~

 出口での出来ことはテレビに映り、それを見る少女が楽しくそう言った。

 そしてその天真爛漫な目に映ったのはまた、とても平和で和やかな光景だった。

 ~そうだ、新しい友達に会うには、大好きな服を着なきゃ~

 少女はとても嬉しそうにテレビから離れ、パジャマを抜いて縫いぐるみの服に着替えた。

 出かける前に何かを思い出したかのように、

 ~あっ、パパ、ママ、雫、行ってくるね~

 と一言挨拶をして、その誰もいない部屋を後にした。

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 あれはすべての始まり。

 -雫の部屋を映るカメラが急速に落下し、移り変わる窓は走馬灯のように様々さ光景を紡ぎだす-

 -少年を見つけたロストとクロス。再生を繰り返した魔物を目の前にして、三人は苦戦に陥る「ち!きりがねぇかよ」「あなたは何者なの?」「僕は、あの子を助けたいんだ!」-

 あるいはすべての終わり。

 -縫いぐるみにひきずられていく釋。彼女の手を必死に捕まえている自分。その間は、巨大な包丁を握り叩き切ってくる縫いぐるみ「いやああああ!!!」-

 そして、

 その因果に置かれたわたしたちは、

 ただ……

クロス


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