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黄昏症候群同人文 そばに居てくれる人

2021-03-28 13:44 作者:長谷川ユカリ  | 我要投稿

男は嫌い。


馬鹿だし、嘘つきだし、うまい事言って誤魔化して、私の二度と手の届かないところへ勝手に行ってしまう。そして、もう振り返ってもくれない。


女は嫌い。


ずるくて、計算高くて、人のことを思いやっているフリをして、その実その顔の裏でどうやったら人を上手く動かせるのかと考えている。そうして、無神経に私を傷つける。 



深入りしなければ傷つかない。

1歩引いて見ているだけで、距離は私を守り。世界は醜く愚かに見えて、私はそれに染まらないように、また1歩身を引く。なのに、穢れは脚先から私を侵食するように、憎んだ狡さと弱さを少しずつ露呈させていく。




でも、もし、こんな私でも、望むことが許されるなら。願わくばーーーー………



⸜🌷︎⸝‍



ソイツが教室に入ってきた時、ドアを開けるところからして既にうるさかった。上級生のクラスにも関わらず、アイツがこの教室に来るのはもうクラスの連中からしても習慣化していて、注目されることもなければ、むしろ親しげに話しかけられてさえいた。赤みがかった柔らかそうな髪、同年代の女子よりも伸びた背。胸はそれほどでもないが、スラリとした体つきはまるで鹿のようで、やや野生的とも言えるほど健康的な美しさをたたえている。そうだ、私をじっと見つめてくる大きな目も、まるで鹿みたいだ。


岸井ミカ。


私の日常に突然やって来て、とんだ非日常ーーつまるところ、噂の検証とか、主に心霊系のナニカがいるような、それから、異界とかーーへと連れ出した存在だ。


馴れ馴れしくて、表向き軽薄で適当なことばっかり言っているミカだが、見た目だけは良い。なので、あのさくらんぼ色の唇から、変な噂を立てられないために女子は彼女を避けるが、男子たちは頑張って話しかけてみたりなんてする。と言っても、今は放課後で大して人もいなかったし、ませた口調で「男なんて〜」と言うふうな口を利くミカは、いつだってろくに話もしないで、窓際に座る私の方へ来るはずだった。

だが。


なんとも珍しいことに、ミカは話しかけてきたクラスメートと出ていってしまった。


教室の隅にいた女子たちが一斉に囁き交わす。



ーーなに、アレーーー


何となく苛立ちを感じて、衝動的に帰りたくなった。しかし、去り際のミカが一瞬こちらを伺うような、ミカには珍しい済まなそうな表情を浮かべてこちらを振り返った気がして、帰るに帰れなくなってしまった。

仕方がなく、持ってきた本を鞄から引っ張り出して読み進める。なかなか内容に集中出来なくて、うんざりした。けれど、悪戦苦闘しているうちにそれなりに時間はたっていたらしい。

目の前で足音がして目線を上げると、そこにはミカが立っていた。



「何か用?、告白でも、されてたんじゃないの?」


「告白?、何言ってるんですかセンパイは。もー、そんなことはどうでもいいですよ、帰りましょ」


「なんであんたのスケジュールに合わせなきゃ行けないわけ」


何故か口調が刺々しいものになる。歳上なんだから、いや、そもそも何の理由でこんな風に接してしまうのかわからない。

これ以上口を開けるとロクでもないことを口走りそうで閉ざす。


「そんなぁ、いっつも一緒に帰ってるじゃないですかー、あ、その本はなんですか?『キャロル』?何だかメルヘンな名前、金髪ガールの少女時代とか描いてそー」「金髪はあってるけど、『赤毛のアン』みたいな話ではないよ」


「あ、逸島センパイ!」


「チサト、ごみ捨て、終わったの?…」


今週はチサトの班が掃除当番だ。先程ごみ捨てに焼却炉の方へ向かっていた。


「終わってなきゃ戻ってこないよ、どうしたの、ユカリちゃん、ミカちゃん?何かあった?」


「別に…………」


チサトがふらふらと脚を彷徨わせる。チサトはいつでも、人の気持ちを読むのが上手だった。しかも励ます時は励まし、放って置いて欲しい時はそうしてくれる。得難い友達を困らせているとは分かっているが、つっけんどんに返してしまった。ああ、口を開くのは良くない。


「そうですよ、逸島センパイ、私、一緒に帰ろうとしてただけです。センパイもどうですか?」


「そう……、でも、今日は部活があるから、2人で一緒に帰って」


「え!?」


言ってから気付く。知っていることだってのに、何言ってんだ、私。


「だって、ユカリちゃん、私を何時間も待つの嫌でしょ」


「う………」


「さ、じゃあとっとと帰り支度してください!帰り、何処か寄って行きましょうよ」


「………………っ」


話をするのに、本を置いて自由になった手を、ミカが馴れ馴れしく掴んできた。

とっさに振り払おうとしたが、子供っぽくてやめた。


そして、気付けば校門をくぐってお馴染みの道を歩いていた。


「それでね、センパイ、この前撮った写真なんですけど、アラマタの会社に持ってったんですよ、いっつも夜中に電話掛けてるから、そのお詫びというか、ツマラナイものも持って行って」


相変わらずあまり機嫌は良くないが、とりあえず返事をする。


「あんたにそんな一般常識をもった人間みたいな神経があったなんて」


「ひっどい!、そのぐらいのジョウシキは持ち合わせてますよ……っても、渡す粗品の値段なんて、心霊写真代に比べたら微々たる物にしておきましたけどね」


悪ぶって低く笑う声につられて少し笑う。

ミカはパフォーマーのように手を広げたかと思うと、笑うのをやめた。


「なのに!聞いてくださいよセンパイ!せっかく持って行ってやったってのに『幽霊がこんなにはっきり写る筈ないだろう?、合成にしても、もっとさりげなくやらないとね、ここは日本なんだから、海外みたいに派手なエフェクトは必要ないよ』ですって!!」


うぎー!!

自分で再現して自分で苛立ったらしい、ミカがその場で地団駄を踏んだ。


「どの写真?」


「センパイと、逸島センパイの周りが火事みたいにメラメラ燃えてたヤツですよ、それで黒い灰みたいなのが、叫んでる顔に見える……」


思い出した。夏休み後のツアー第1弾で行ったところだ。やめれば良いのに火事があったアパートに行って、いろいろ嫌なものを見た上に、原因は何かを突き止めるまでは、とチサトが張り切り、最終的に正体不明の(少なくともその場で何かが燃えていたわけではなかった)煙に巻かれて死にかけた。今までの探検の中でもひどい方だ。


「それは、納得いかないわね」


頭の中で被った面倒の数々を再生しながら顔を顰める。こんな苦労した結果を認められないなんて。


「本当ですよ!見る目ないんだから……、あ、アラマタだけは本物だって言ってましたけど」


その時に披露されたのだろう蘊蓄をミカがどこまで正しいのやら呪文のように唱え始める。


…………火事というのは近代に至るまで非常に身近なものだった。特に日本は古来からの木造建築で神社仏閣が燃えて重要文化財のようなものも共に消失してしまうことも多かった。江戸時代には特に将軍の住む江戸城すら火災に逢い、火事と喧嘩は江戸の華と呼ばれるほど頻発し人々が焼け出された。近代では建築素材の変更により、以前よりも火災というものは起こりにくくなった(………)話は変わるが自殺というものがあるね、思いつきか、追い詰められてか、痛ましいことだがその方法の一つに(……)一説には人は焼かれることにもっとも強い痛みを感じるとも言われている、覚悟をして臨んだとしても苦痛を消せるものじゃない、痛苦は強い思念となってその場に残り、同じような苦しみを持った人たちを集めてしまったのでh………

「もう途中で気が遠くなっちゃって、帰ってきちゃいました」

「それは、そうだろうね」

「センパイ、なんか上の空ですね、何か気になる事でも?」

それまでずっと付かず離れず、というよりは近いがそれでも並ぶようにして歩いていたミカが、こちらを覗き込んでくる。

「気になる事なんか、ないよ。チサトじゃあるまいし」

「ちがうちがう、違いますよ、写真のことじゃなくって、センパイ自身が!」

「………………」

追及する目線の強さに怯み、後ずさると、その分ミカが前進する。

「なんであんた、そんなに熱心なわけ、また」

「噂になんてしようとしてませんよ。これは、本当にセンパイのことが知りたいからですよ」

「…………なんで…………あたし、こんな態度じゃん。嫌にならない訳?」

ふと、去っていった男たちの背中を思い出した。父もカズヤも、宥めるように、希望を持たせるように優しげな言葉をかけたけれど、結局帰ってこなかった。 そうしていなくなってしまった背中が、何故かミカに重なり、無性に不安になった。

ミカはモテるのだ。それに、飽き性でもある。いつかは私といるのにも飽きて、もしかしたらさっき話していたクラスメートみたいな男子と、青春というものをするのかもしれない。 だったら、きっと。

「ねぇ、ミカ。興味があるなら聞くけど、何、話してたの。教室出て」
「教室………?」
ミカは一瞬、本気でなんの事か分からないという顔をして、それからやっと思い出したのか、あー、と呟いた。
「なんだ、そんなこと、もしかしてシットって、やつですか、愛されてるな〜私♡」
「……………」
また1歩、私は全てから遠ざかることにする。そうすれば、傷つかない。いつか私に飽きるミカの背中を見ても、なんとも思わずに生きていけるはずだ。
「バカ言うんじゃないよ、愛してなんか……ない」
それだけ言うのが精一杯で、胸の中もいっぱいいっぱいだった。
散々文句を言ってたけど、私はチサトと、ミカと過ごすのが楽しかった。心配するふりで、私を操ろうと口出しする母親から逃げる口実だったのに、いつしか私の方がのめり込んでいた。探検にも……ミカにも。
漠然とした真実はあったのに、目を逸らし続けていたことに、今更気付く。
「このまま、真っ直ぐ帰るよ、あたし。寄り道はしない」
ミカが反論する前に、さっさと歩き出す。
しかし、腕を掴まれた。
「痛いよ、離して、あたしはあんたのおもちゃじゃない」
「センパイは、おもちゃじゃないです」
「んじゃ、何、マイブームってやつ?」
いよいよ言葉の棘を抜くことも出来ずにそのまま吐きだしてしまう。あーあ、本当に、何をしているんだか。友達を取られそうになって癇癪を起こすなんてあまりにも幼くて嫌になる。冷静ぶった表面の下は、お父さんがいなくなってから、ちっとも成長していないのかもしれない。
手首が痛くて、熱かった。
解放して欲しいのに、されたら何か別のものが壊れてしまいそうだ。
「離して!」
怒声に周囲の通行人が振り返る。
「………嫌です」
対してミカは、普段の様子から想像もつかないほど冷静な声をしていた。
「センパイ、センパイは、マイブームなんかじゃありません。でも、ここで話したくない。待ってください」
その時のミカには、有無を言わせない迫力があった。真剣すぎるほどの気迫というものだろうか。気圧されて、そのまま歩き出すミカに、手を強制的に引かれ、歩いていく。
背中はいつまでも離れていかず、私はそれを追っている。

どこまで行くのかと思い始めたところで、あろう事かミカの足はラブホテルの前で止まった。


「ちょ、ちょっとなに考えて………」

「カラオケは落ち着いて話をするにはうるさすぎます。喫茶店じゃ周りがいる。私の家は兄貴が彼女を連れ込んでいるので無理です、大丈夫ですよ、女の子が2人できたって、なんとも思われませんって」

「い、いや、やだ」

「センパイ、来たことないんですか?」

正直言って、無かった。今までに付き合った男子はいるが、体の関係を持つのはどうにも不安だったし、カズヤの場合、未成年の私と関係を持つのは最悪法律に引っかかるからと、こういった所には縁がなかったのだ。

「とにかく、駄目、だったらあたしの家にして、今日はお母さん遅くまで帰ってこないから」

「え?、いいんですか」

表向き普段通りの声音が、奇妙な緊張感を醸す。

どうしてこんなことを言い放ってしまったのか。いや、友達を家に招くことなんてままある事だ、万一一緒にいるところを見られたとしても、そんなことは自然で、そもそもこんな風に気を回すこと自体おかしくて……などと考えているうちに、私の足はいつの間にか自宅へとたどり着き、自室へとミカを招き入れていた。 ミカは感心したように部屋のあちこちへ細かに視線を向け、私に勧められるがままベッドへ腰掛けた。

「綺麗にしてますね」

「当たり前じゃない。待ってて、お茶とお菓子か何か持ってくるから」

「…………………いや、いいです」

その前に、お話させてください。我知らず喉がなって、引っかかるはずもない唾液が喉に引っかかった気分になる。 我が物顔で人の毛布を叩き、ミカが隣に座るようにうながす。 ミカの表情からは、普段見せている軽薄さは失せている。つられてこちらの表情筋も固まる。

「………センパイは」

「………うん」

「はじめは、……確かにマイブームみたいなところはありました。初対面のときも言いましたけど、センパイ、クールビューティーってカンジで、人気があって、私もセンパイのこと、イイナって思ってました。だから、気を引きたかったことは認めます」


考えたことがそのまま肯定された。ほら、やっぱり。心に広がる冷たい感情は、何だろう。 まだ落胆を簡単に割り切れるほど、大人ではない。お茶とお菓子、お茶とお菓子…… 所在なく脚を見ていたが、遠慮がちに、でもミカは私の手に手を重ねて、ほとんど力の入ってない握り方をした。

「なに………それ」

「逃げようとしてる。分かるんです」

「何が」

「センパイ、人との間に壁を作って、自分のこと、隠そうとするじゃないですか。本当は、センパイはクールなんかじゃない」

「………そうだよ、失望した?………っ!」

遠慮がちだった手が明確な意志を持って手を引き、布団の上に押し倒される。逃げ場がない。ピッキングと同じく、女性の押し倒し方なんてどこで習うんだか。

「………好き」

「え?」

「すきなんです。センパイ。長谷川センパイのことが………はは、かっこ悪い。いろいろ言葉、考えてたのに、全部忘れちゃった」

一瞬だけ道化師の仮面が戻って、すぐ眉間に皺を寄せた、苦しくてたまらないという顔つきになる。

「サクラちゃんに連れていかれそうになったとき、センパイの声が聞こえてきて、すごく嬉しかった。自分は、センパイにそんな風に思われてるなんて、思ってなかったから。……人付き合いなんて、てきとーに出来てればいいと思ってたんです。嘘みたいな作り話も、所詮一瞬だけの話題提供みたいなもの。まわりの心が離れていこうが、避けられようが、その時が楽しければ良いと思ってた。……でも、センパイたちと過ごす時間は、そんな風に終わって欲しくなくて、……センパイのなかで、自分が切り捨てられる存在じゃなかったことが、すごく、すごく嬉しかった」

「…………あたし、あんたへの思いに、そんな自信なかったよ」

ミカのさくらんぼ色の唇が、苦笑に撓る。


「知ってます。でも、そーとーの執着が無いと、私の事連れ戻せなかった筈だ、って逸島センパイが言ってました」


「………………」


「あ、拗ねないで下さいよ。……全てが消えていく夕日の中で、でもセンパイのことを最後まで覚えていられたのも、嬉しかった。あのね、センパイ。私、信じてもらえないかもしれないけど、センパイのことが本気で好き。

つれない態度も、1人で橋を渡っちゃう脆いところも、全部すきなんです」


「………………………っ……………?…」



気付けば、頬が濡れていた。ミカが慌てて頬に触れようとして、その手を止める。


「………触れても、いい?」


「……何を、今更」


「だって、私の好きは………」


「……いい、目の前で好きな相手が泣いてたら、どうにかしようと思うでしょ」


今度はミカがごくりと息を飲んだらしい。ペタと濡れた頬に温かい手が触れる。心地よくて、目を瞑る。

こんな風に、押し付けられない優しさが欲しかった。触れてくれる人にいて欲しかった。そばに居てくれる人がいることに、涙があとからあとからしみ出すように流れていく。

それをまたあとからあとから、ミカの細い指が拭っていく。伏せた瞼の暗闇の中、仄かな体温。それから、唇に柔らかい感触。目を開ける。間近にミカの顔。嫌な感じはしなかった。


「っ、」


「ミカ、あんたが誠実に言ってくれたみたいだから、あたしもきちんと言う。

まだ、あんたと同じ、好きって感情、あんたに抱けてない。けど、今のは嫌じゃなかった。出来るところまで試してみない?、嫌だったらすぐに」 


「手をあげるんですか?ひどいなー」


きっとそんなことはしないけど、他愛ないやり取りと、覆いかぶさって見下ろしてくるミカの瞳があまりに優しくて、少しだけ、そこに溺れたくなった。

もう、認めるべきなんだろう。

この子を、姫神桜に渡したくない程の強い執着を、夕焼けに溶けるような街で、最後まで彼女を覚えていたことも。……この騒がしいトラブルメーカーはいつの間に、こんなにも私の心を占めるようになったんだか。


ミカの手が伸びる。


お父さんとも、お母さんとも、カズヤともちがう。

もしかしたら、同じようになるかもしれない。でも、ならないかもしれない。漠然とした不安と期待の中、私は1歩踏み出して、世界との距離を縮めることにした。


何故って、お騒がせなこの後輩が、私の手を側で掴んで引っ張ってくれるから。うわーーーーっ、どうしよう。

美佳视角

頭の中大パニック。訳分からないこと叫んで、アラマタにでも電話しちゃいそう。それであの訳の分からない話を列挙されたら少しは冷静になれる?いや、なれない。

つまりシンケンってやつ。

怖い。愛しい。触れていいって、ぽんと投げ出された許可。

涙で少し濡れ赤くなった目元も、ベッドに広がる艶やかな髪も、桜色の唇も、どこを触れても良くて、どこにでも触れたくて、どこから触れれば良いのか迷う。しくじったら拒絶されて、二度と近づけないのかもしれないと思うと、手が震える。


まず、撫でてみる。センパイの目が、猫みたいに細まる。これは平気。

さっきまで触れていた頬を包む。熱い。これも平気みたい。

首筋を辿る。少しセンパイが身動ぎする。擽ったい?、それとも嫌だった?

放棄されていたセンパイの手が伸びる。早い限界だった。

と思ったら、後頭部ごとセンパイの方に引き寄せられて、………所謂オトナなキスってやつをされた。


滑らかな舌が私の唇をつついて開かせる。舌は中に入り込んで、私の舌を探し、奥で怯えて縮こまっているのを器用に引っ張り出して絡んできた。粘膜の擦れ合いが、異様に生々しくて、強すぎる官能に溺れそうで逃げたくなる。それを読んだかのようにセンパイが口を離す。つ、ふたりの間に銀糸が紡がれて、すっごいイケナイことをしてる気分になる。

別に同じことをしたことが無いわけじゃないけど、センパイへの思い入れが強すぎて、感じ方が別格だ。


センパイはニヤッと笑ってこう言った。

「随分遠慮するんだね、いつもこっちの都合なんか考えないくせに」

「だって………嫌がられるの、怖くて………」

気持ちを素直に吐露すると、堪えられないとばかりにセンパイが吹き出して、しばらく苦しげに呼吸するほど笑っていた。

「ひとの純情をなんだと思ってるんですか」

「………っ、はは………ゴメン、でも、意外とあんたも臆病だね。

あのね、ミカ。何したって、今更でしょ」

「はい?」

「さんざん酷いことに巻き込んだじゃない」

「それとこれは別です」

「はぁ!?、………ごほん、とにかく、いいんだって、気にしなくて。私は大丈夫。嫌だったらキスしないっての、ほら!それとも私の方から動かないといけないわけ?」

「………………っ!っ!センパイ!!」

「苦しいってば、もー…………っ、ん」

センパイの身体を強く抱きしめると、すっごく良い匂いがした。止まらなくて良いのなら、止まらない。 考えてみれば、センパイを見下ろすこともあんまりない。座ってる時の頭頂部ぐらいは見たことがあるけど、近くで顔とかはないかも。 今度は自分からキスをして、柔らかい唇から中へ入っていく。何もかも知りたくて、舌で形を探る。上顎、下の歯、前歯の裏に触れると、センパイが身体を震わす。ここが気持ちいいんだ。しばらくそこを撫でるように舌を動かしていると、門番のようなセンパイの舌が妨害をしてくるから、今度はそちらに自分の舌を絡ませた。そうしながら、センパイのベストをたくしあげる。シャツのボタンをひとつずつ外していく。ペースが遅いのはしょうがない。指の先端が掠めるだけでセンパイの身体がわずかに跳ねる。もしかして、それだけで反応しちゃってる?なんてのは、思い違いだろうか。

「ふふ…………」


「なに…………よ………」


「いや、やっぱり見られて困る下着、着けて無いんだなって」


真っ白なシャツの下から現れたのは、すっごく大人っぽい黒のレースの下着。センパイの白い肌によく映えていて、色っぽい。

でも褒められて小さく「ばか」と呟くところなんかは、セクシーな下着がセンパイの背伸びにも見える。

胸の真ん中に着いているリボンを撫でて、引き締まったお腹を撫でる。


「くすぐったい………」


「そう?、こっちは?」


まだ嫌がってはいないらしい。

今度は太腿を撫でて、程よい肉付きを楽しむ。前はバスケ部に入っていたからか、こちらも結構引き締まっている。

撫でているうちに、手だけでは我慢できなくなって、肌に口付け出す。普通ならキスされてる方が満たされるんだろうけど、むしろこっちが満たされてる感じ。


勿体ないな、と思いながらブラジャーに手をかけると、私の頭を抱え込むようにしていたセンパイが身体を起こした。そして、たくしあげていたままのベストとシャツ、ブラジャーはおろかスカートも下着も脱ぎ捨ててしまった。男前すぎる。いや、え!?


「い、いいんですか?」


「毒を喰らわば………」


「赤くなる?」


「そりゃ朱に交わればよ!、もう……、ほら、あんたも脱いで!私だけ脱いでるのなんか、恥ずかしいよ」


「え、あ、………はい」




ってったって、威勢の割にセンパイの顔は赤いし、私の顔だって多分赤いし、どっちが先にそうなったんだかわかんないし。顔を隠すように服を脱ぐけど、もたもたしてたら怒られた。


「あんたも可愛い下着、着けてたじゃん」


「そりゃ、センパイをリスペクトしてますから!………」


指で招かれるまま、キス。センパイの手が頭の後ろに回る。うわ、すっごい幸せ。


「………触るよ、センパイ………」


脚の間に手を入れて、壊れ物を扱うみたいに触れる。濡れてなかったら痛いだろうと心配したけど、そこは濡れそぼっていて安心した。

全部が全部、私が超危険で保護のために出してるわけじゃないだろう。感じてくれたということで。

女の人とははじめてだけど、自分の良いところは多分センパイにも効果がある、はず……

下の毛をサリサリと撫で、ふっくらとしたおまんじゅうみたいな質感を楽しむ。割れ目からまだ控えめな突起を、水気と絡めてくるくると撫でると、センパイの押し殺した声がし始唇より少し濃い色味のそこは、他人からの刺激に慣れていないのか、触れる度に水気を増す。こりこりと明確なしこりとなった。小さいものを愛でる気持ちがどんどん膨らんでいく。

「声我慢しないで……ききたい」

「うっ………!」

人差し指をセンパイの腔内へ。熱いひだが絡みつく。少しだけ男が羨ましくなる。私はセンパイのナカで気持ちよくはなれない。でも、センパイを気持ちよくすることは出来ると思いたい。 弄りやすいように脚を持ち上げて、入口付近をさまよっていた指を少し奥へと進める。少しざらついたところ、膨らんだところ? お豆の裏側を目指し、指を進めると、センパイの踵が背中を蹴った。

「…………ん、ふ、血とか……出てない?」


つぽん、確認のため引き抜くと、突然だったせいでまた蹴られた。


「ダイジョーブですよ、私の特技は何ですか?」


「………ピッキング?」


「その通りですよ!大体、余程粗雑な奴じゃない限り、血なんて出ませんし、私はセンパイを大事に大事に思ってますから………どうです?」


「ん…………そん…………な…………あ!?…………」


ヂュプ、ヂュポ、感じる部分を幾度も往復しながら圧迫すると、胎内の異物感にしかめられていた表情が、花が開くように変わっていく。指を増やしてみたけど、痛くないみたい。素質、あるなあ。


「ア…………あ………み、か……………」


「はい、センパイ………………」


私の脇腹あたりに添えられていたセンパイの脚が震え出す。余裕なく乱れていくセンパイの顔、吐息。指が狭い胎内の痙攣を捉え出す。


「んあ…………あ、あーーーっ………!」


センパイが全身を震わせて、イった。指が収縮する肉壁に締め付けられ、離され、また締め付けられる。

センパイの乳  首 を舐めていたら、そうしていた頭ごと息が止まるほど抱きしめられた。いや、というか息止まってた。圧迫でじゃないよ。センパイのカイカンってやつが、私にシンクロしたみたいになって、衝撃的で、ふわふわして、勝手に涙が出て……。



「…………ミカ………」


「なんです…………」


「わたし、あんたのこと…………」


頭ごと引き寄せられて、耳元で囁かれた。


こんなに嬉しいことって、あるんだ。



「センパイ!」


「うわっ!もう………苦しいってば」


「わたし、ずっとセンパイの側にいますから!!」


顔をあげると、センパイは真っ直ぐな眉毛を下げて、悲しげに微笑んだ。

あ、これ、信じてないな。


まー、確かに私は人付き合い世渡り全部表面をなぞるように楽しく興味なく過ごしてきたし、センパイはセンパイでイロイロあったみたいだけど。


「それはいいけど!あんたは満足なの?」


「何が?、カラダ?いいですよ無理しなくて。センパイ見てたら満足しました。帰ったらセンパイをしばらくオカズにさせていただきます………いった!」


加減なく後頭部を殴られた。乱暴だなぁもう。

と思ったら指をクイクイして、唇まで導かれて、キスした。大人っぽい、濃厚なの。


「次ね、次はあんたに醜態を晒させてあげる……」


「次!があるんですか!!」


そっちじゃないでしょ!短く叫んだセンパイと戯れ、2人並んでベッドに寝転がる。緊張と経験によるショックが切れて、眠くなってきた。センパイが私のことを揺さぶるんだけど、眠い、眠くってたまらなくて、瞼が勝手に降りていく。

上から落ちてきた水滴で頬が濡れる。


なんだろうと思ったけど、すぐあとにセンパイが小さい声で、「本当に、ずっとそばにいてくれたいいのに」と呟いた。

でもそれに応える前に、私は眠りに落ちてしまったのだ。







「こーんにーちわー!!!ゆ……長谷川センパイ、逸島センパイ!」


不自然なくらい明るい声が出た。

教室に入ったときから、もうセンパイにしか目がいかない。

上の学年の教室にお邪魔しても、今まではちっとも緊張なんかしなかったのに、センパイがいるってだけでまるで別の空間に変わってしまう。


「いらっしゃい、ミカちゃん、今日も元気だね」


センパイの席の前に座っていた逸島センパイが、夕日に髪を染めながら、こちらに向かって微笑んだ。


「!、と……ミカ………」


一方、その逸島センパイの前にいたセンパイは、明らかに夕日だけじゃない朱に顔を染め、動揺し出す。

で、それは私にも感染った。

センパイの好きな曲みたいに心臓が喧しくなり出す。


一旦寝て、私の存在に驚く(逸島センパイ以外の友人をはじめてみたらしい)センパイのお母さんに挨拶して、帰って、センパイの夢を見て…………、いつでも夢見心地と変ないたたまれなさに叫びそうなのをなんとか堪えて、今日一日をすごしてきたのに、センパイを見ただけで発作的に恥ずかしいやらなにやらで叫びそう。 平常心を保つため、逸島センパイに向き直った。

「センパイ………、!逸島センパイは今日は、部活は?」

「今日はお休みだよ」

何が面白いのか、逸島センパイの頬が膨らむ。意味深な笑みに、全てを見透かされている気がする………

「な、にしに来たのよ」

やっと正気を取り戻したってタイミングでセンパイが口を開く。 それを受けて、私もぎこちなく答えた。

「え、えと、今日、新しいウワサを仕入れてきたんですよ、行きましょうよ」

「またあんたは………それで、どういうのなの?」

「えと………確か、道ならぬ恋に自殺した2人が出る、とかいう………」

「ミカ、あんた、デリカシーない」

「え!?へっ!?いやその、そんな結末望んでませんよ!!」

「望んでない?どういう意味?」

「へっ!?」

「チサト!な、なんでもないわよ!ほら、とっとと行きましょ、ここで駄弁ってても時間の無駄!」

そう言ってカバンを掴んだセンパイは、普段からはありえないほどの俊敏さで教室から出ていった。嵐のように過ぎ去った彼女を、数人の生徒が驚いて振り返っていた。

「行っちゃった………」

「珍しいね、ユカリちゃんが乗り気だなんて、そんなに気になる話だったのかな?」

逸島センパイが自分の席からカバンを取るのを追って、待つ。

「そう、ですね、珍しいですね、私たちも早く行きましょうか、校門らへんで待っていてくれるといいですけど……」

歩き出した瞬間。

「ミカちゃん、ユカリちゃんのこと、大事にしてね」

「………っと!なんで知って…………」

「バレバレだよ、……だから、もしユカリちゃんに何かあったら、それにもすぐ気付くよ」

逸島センパイの丸い目がす、と細まる。普段優しげなセンパイの顔が、一気に冷たくて何か腹に一物ありそうな感じになる。脅し以外の何物でもないし怖い。

「………うわっ、逸島センパイって、人類ですか……?」

鋭い目を誤魔化すように、センパイがニッコリと笑う。 うわ、もっと怖いよ。

「2人とも遅いよ!………どうかしたの?チサト」

固まっていたら、女神が戸口から顔を出していた。どうやら戻ってきてくれていたみたい。 仮面を付け替えるように、逸島センパイが普段のおっとりした雰囲気に変わる。

「なんでもないよ」

「そう?、じゃあ、早く来てね」

センパイが顔を引っこめる。 後を追おうとした一瞬に、逸島センパイはこう言った。

「もちろんミカちゃんに何かあったら、その時もちゃんと仲裁に入るから。でも、なるべく仲良く、ね」

「も、もちろんですよ」

尊敬を通り超えて威圧感たっぷりの笑顔を残し。軽やかな足取りで逸島センパイが先を行く。

「待ってくださいよ!ふたりとも!!」

どっちも、その言葉に、でも受け入れられている喜びを感じながら、今度こそ私は2人の後を追って走った。









私の好きな人は、 孤高の存在ってカンジで、いつもきりっとしてる。 でも、心の中はそんな見た目とは似ても似つかない脆さと激しさが渦巻いていて、本当は私はそこに惹かれたんじゃないかと今では思う。 本物なんかいらないし、表面だけ楽しめればそれでいいと思ってた。けど、この人だけは本物じゃないとダメだ。

センパイ。私、あなたの強いところも、弱いところも、何かもう、笑えるぐらい好きです。

あなたの関心を得る人々への嫉妬で、時々どうにかなっちゃいそうなくらい。

そんなアブナイ奴に応えちゃったんですから、センパイ、覚悟しといてくださいね。


一生、あなたのそばに居ます。
































「長谷川センセイ」


「あら、どちら様でしたっけ」


「ひっどい!あなたのSweetな恋人ですよ!」


「ぷっ、お帰りミカ。取材はどうだった?」


「今回ももー超大変。あ、ちゃんとお土産買ってきましたよ」


「別にいいのに……あのさ、ミカ」


「なんです?」


「前にさ、道ならぬ恋をした2人の幽霊について調べたじゃない」


「ああ、あの実は2人共生きていてお店を開いてたっていうあの、素敵でしたねぇ、私もあんなふうに生きたいなって……」


「生きない?」


「え?」


「わたし、ずっと怖がってたの。誰かを好きになること。でも、あんたは離れていかないって、もう充分、わかったから…、きつい、苦しいってば」


「センパイ、わたし、これまでも、これからも、ずっとーーーー







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