徒然草 第84段 法顕三蔵の、天竺に渡りて、・吉田兼好 日文念书

法顕三蔵の:<ほっけんさんぞう>。中国東晋時代の高僧、三蔵法師。『高僧法顕伝』の著者。399年60歳を過ぎてからインドに渡り、経・律・論を採集して帰国。東アジア仏教の基礎を確立した。422年没。89歳。
故郷の扇を見ては悲しび、病に臥しては漢の食を願ひ給ひける事を聞きて:法顕がインドに渡ってから、うちわを見ては故郷を思い出し、病気で寝ているときには、故郷の「斉食」を求めたという、以下は、そういう話を聞いた人たちの感想。
弘融僧都:第82段参照。次のようなことを言ったので、彼は法師らしくなく、すばらしく思えた。兼好は、典型的な坊主を嫌ったようだ。
優に情ありける三蔵かな:<ゆうになさけあるさんぞうかな>まことに心優しい三蔵法師だなぁ。
法師のやうにもあらず、心にくゝ覚えしか:ここは、弘融僧都が法師にもかかわらず、こういう褒め方をしたことを指して、法師らしくなく、実に奥ゆかしい、というのである。