欢迎光临散文网 会员登陆 & 注册

舞姫(1)・森鴎外 日文念书

2023-08-20 21:32 作者:蜈蚣哥  | 我要投稿

石炭をばはや積み果てつ【注1】。中等室の卓(つくえ)のほとりはいと静かにて、熾熱灯【注2】(しねつとう)の光の晴れがましきもいたづらなり【注3】。こよひは夜ごとにここに集ひ来る骨牌【注4】(かるた)仲間もホテルに宿りて、船に残れる【注5】は余一人のみなれば。五年(いつとせ)前のことなりしが、平生(ひごろ)の望み足りて、洋行の官命をかうむり、このセイゴン【注6】の港まで来(こ)し頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新たならぬはなく、筆に任せて書き記しつる【注7】紀行文日ごとに幾千言をかなしけん【注8】、当時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日になりて思へば、幼き思想、身の程知らぬ放言、さらぬ【注9】も尋常(よのつね)の動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるししを、心ある人はいかにか見けん【注10】。こたびは途に上りしとき、日記(にき)ものせんとて買ひし冊子もまだ白紙のままなるは、独逸(ドイツ)にて物学びせし間に、一種のニル‐アドミラリイ【注11】の気象をや養ひ得たりけん【注12】、あらず、これには別に故あり。

げに【注13】東(ひんがし)に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず、学問こそなほ心に飽き足らぬところも多かれ、浮き世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、我と我が心さへ変はりやすきをも悟り得たり。昨日の是は今日の非なる我が瞬間の感触を、筆に写して誰にか見せん【注14】。これや日記の成らぬ縁故なる、あらず、これには別に故あり。 1 果てつ終えてしまった。「つ」は完了の助動詞。 2 熾熱灯白熱電灯。 3 いたづらなりむなしい。ナリ活用の形容動詞。 4 骨牌トランプ。 5 残れる残っている。「る」は存続の助動詞。 6 セイゴン地名。サイゴン。 7 記しつる記した。「つる」は完了の助動詞。 8 かなしけんつらなっただろうか。「か」は係助詞の疑問。「けん」は過去推量の助動詞。 9 さらぬたいしたことのない。 10 いかにか見けんどのように見たのだろうか。「か」は係助詞の疑問。「けん」は過去推量の助動詞。

11 ニル‐アドミラリイ何事にも無感動なこと。

12 や養ひ得たりけんはぐくんだのだろうか。「や」は係助詞の疑問。「けん」は過去推量の助動詞。

13 げにまことに・実際に。

14 誰にか見せん誰に見せようか。「か」は係助詞の疑問。「ん」は意志の助動詞。

舞姫(1)・森鴎外 日文念书的评论 (共 条)

分享到微博请遵守国家法律