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千歳の湯

2021-11-06 22:28 作者:ki9503  | 我要投稿

英二君の家にはおふろがなかったので、いつもお母さんと一緒に近くの銭湯にかよっていました。銭湯には、いつもきまって夕方の五時ごろ行きます。

夏の陽が長い時に行くと銭湯の窓から夕陽が差し込みました。

逆に真冬の時は外はもう真っ暗で、ときおり雪が降るのを見ることができました。ちょっとした温泉気分です。

いつもは英二君は、お母さんと一緒に女湯に入っていましたが、ある日同級生の直子ちゃんと一緒になってしました。

英二君はそれまで女湯という場所を特別に意識していなかったのですが、それからは違いました。

女湯に入っている自分がとても恥ずかしくて、直子ちゃんと会ったときは、ずっと目をつむって、下を向いたまま、頭ばかり洗っていました。

その時から、銭湯に行くのが嫌だと思うようになりました。そしてある日、英二君は思い切ってお母さんに言いました。

【僕、明日から男湯に入る】

英二君の決心はとても固いものでした。お母さんは言いました

【英二、一人で体や頭、ちゃんと洗えるの。べつに女湯に入るのはまだ小さいから大丈夫なのよ。】

【ちゃんと洗える。一人で洗える。明日から男湯に入る】

翌日、遊びから帰ると、英二君は一人でいつもの銭湯の用意をして、台所にいるお母さんに右手を差し出しました。

【銭湯行くからお金ちょうだい】

【本当に、ひとりで行けるの、大丈夫なの、本当に。】

お母さんはとても心配でしたが、直立不動で真剣な目で見つめる英二君に、しぶしぶながら銭湯代七十円を渡しました。七十円をにぎりしめた英二君はあっという間に銭湯に着きました。ここからが以前とは違います。いつもは右。今日からは左が入口になるのです。

男湯というおっきな文字が入った紺色ののれんをくぐった瞬間、ただ右と左が違うだけで、自分自身がとってもおっきくなったような、かっこよくなったようなそんな感じを英二君は覚えました。

くつをぬぐと、英二君の好きな中日ドラゴンズのマーチン選手の背番号、四番の下足箱に入れました。そしていよいよ、本当に男湯の扉を開けるときがきました。

さっきのれんをくぐったときはワクワクでしたが、いざ扉を開けるときは、ドキドキに変わっていました。

がらがら

重くて、たてつけの悪い男湯の扉を開けると番台に座っているいつものおじさんが言いました。

【いらっしゃい。あれ、今日はお母さんといっしょじゃないのかい。お母さん風邪でもひいたかい】

英二君は背伸びをしながら、七十円を番台に置いて答えました。

【きょうから、一人でこっちなんだ。これからずっとこっちなんだ。】

おじさんはちょっとおどろいた感じで、

【へぇ、えらいねえ。ちゃんと洗いなよ。】

と言いました。

【うん】

とだけ言うと、英二君はさっさと服をぬぎはじめました。ズボンと一緒にパンツ。トレーナーと一緒にシャツ。二回めいで終わりです。そしてお母さんがいつもしているみたいに、バスタオルを脱いだ服の上にかけて、風呂場へ向かいました。

ガラス戸を開けて、風呂場に入ると、右側の一番奥の場所でまずシャワーを体にかけました。頭から一気に。それが終わると、湯船に行きました。そして、湯船に右足を入れた瞬間

【熱い】

と英二君は、さけんでしまいました。すると湯船の奥の方から低くてしゃがれた声、

【ぼう、熱いか。でもおとこだったらがまんしろ】

とおじさんがはなしかけてきました。そのおじさんは頭にタオルを乗せ、全然平気そうな顔をして肩までお湯につかっていました。

【ちょっとだったら水出していいぞ】

おじさんは続けて言いました、英二君は水をちょろちょろ出しながらゆっくり、そろりそろりとお湯に入っていきました。

それから、英二君は一人で男湯にいくようになりました。一番最初に声をかけてくれたおじさんは、いつも英二君の背中を流してくれます。交代で英二君も力いっぱいおじさんの背中を流してあげます。

いつか、おじさんに、たわしで背中を洗われたときは必死でがまんしました。いつも英二君にシャンプーを借りに来るおじさんもいました。

そのおじさんはいつも悪いからと言って、いちご牛乳をごちそうしてくれました。こうした男湯の経験は英二君が中学に入って、となり町へ引っ越し行くまで続きました。

英二君のお父さんは英二君が赤ちゃんのときに亡くなっているにで、男の裸のつきあいというのはこれが最初でした。裸になっちゃえばみんなおんなじなんだということを英二君は学びました。

月日がたら、社会人になってこの町にもどってきた英二君は裸のつきあいをしてくれた、あのおじさんたちのことを今でも思いだします。けれど、裸のつきあいをした【千歳の湯】は大きなマンションに今は変わってしまいました。


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