日本民法債権総論 第三講

皆さん、こんにちは。今日は債権の目的について勉強させていただきます。
まず、債権の目的の要件は確定可能性と適法性および社会妥当性です。
これは理解しやすいと思います。
次は特定物債権のことを紹介させていただきます。
特定物債権とは何ですか?
特定物債権は特定物の引渡し(占有の移転)を目的とする債権です。
例えば、特定物売買における買主の目的物引渡請求権、賃貸借契約による賃借人の目的、物引渡請求権…
では、特定物は何ですか?
特定物とは、債権関係の当事者が「この物」という意味で給付の対象を個別化した物のことである。
特定物と不特定の違いを紹介させていただきます。
特定物か不特定物(種類物)かは、その物の個性に着目し、当事者が「これ」と定めて合意したものか否か(当事者の主観)によって定まるということです。
ちょっと注意してください。
代替物と不代替物の異なる点について、
代替物か不代替物かは、その物の客観的な性質に着目し、
同じ種類・品質・数量の他の物で代えることができるか否か(客観的、取引通念)によって定まるということです。
次、特定物債権の義務を勉強しましょう。
特定物債権の義務は主に引渡義務、保存義務をもっています。
まず、引渡義務を紹介します。
引渡義務は目的物である特定物を債権者に引き渡す義務、つまり占有移転義務です。
民法483条によって債権の目的が特定物の引渡しである場合において、
契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、
弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
しかし、それは注意してください。
単に、「この物」を引き渡せば引渡義務が履行されたというものではないです。
次、保存義務です。
保存義務は引渡しをするまで特定物を保存する義務です。
民法の400条によって、債権の目的が特定物の引渡しであるときは、
債務者は、その引渡しをするまで、
契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、そのものを保存しなければならない。
この「善良な管理者の注意」とは、一般に、合理的な人ならば他人の財産を管理するときに尽くすであろう注意です。
自己の財産に対するのと同一の注意ではないです。
引き続き保存義務違反の効果を紹介します。
債務者が保存義務に違反した場合は、債権者は債務者に対して、
保存のために必要な措置を講じるように請求することができます。
それでもなお債務者がそのような措置を講じなければ、履行の強制をすることができます。
また、契約上の債権の場合には、債権者はその要件を充たせば、
契約の解除をすることができます。
さらに、保存義務違反を理由として損害賠償を請求することができます。
では、次400条の適用範囲のことを検討させていただきます。
400条は、債権の目的が特定物の引渡しであるときは、
債務者は、その引渡しをするまで、
契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、
そのものを保存しなければならない。
400条の適用範囲は「引渡しをする時」までであって、履行期以降も含みます。
履行期に債務者が履行の提供をしたにもかかわらず、債権者が受領しなかったときには、
受領遅滞の問題となります。
413条1項によって、債権者が債務の履行を受けることを拒み、
又は受けることができない場合において、
その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、
履行の提供をした時からその引渡しをするまで、
自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
受領を拒絶し、または受領遅することができなかった債権者は、受領遅滞の責任を負うということです。
そして、債務者は、それ以降は物の保管についての注意の程度が自己の財産に対するのと同一の注意にまで軽減されます。
履行期に債務者が履行の提供をしなかったときは、
履行遅滞の問題となります。
この場合に、債務者の側に履行遅滞を正当化できるだけの事由がなければ、
債務者は、それ以降は目的物がたとえ不可抗力によって、滅失、損傷した場合でも、
原則として責任を負います。
民法413条第二1項によって、
債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、
債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
つまり、履行遅滞の発生が認められるときには、
債務者は、それ以降に生じた滅失、損傷について免責されないということです。
もし債務者が同時に抗弁権を履行する場合、
民法533条によって、双務契約の当事者の一方は、
相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
つぎ、不特定物債権つまり種類債権について勉強させていただきます。
不特定物債権は共通の性質によって一定の種類に属する物の一定量の引渡しを目的とする債権です。
種類物とは、共通の性質によって他のものと区別される物の総体です。
制限種類債権は特定の場所・範囲によって制限されている種類債権です。
種類債権と制限種類債権の違いについて、
制限種類債権とされるものも、
当事者の意図によって他のところから同じ種類に属するものを調達する場合があり、
種類債権とされるものでも、履行不能が生じる場合があります。
では、同一種類に属する物について品質の上下が存在するとき、どの品質のものを引き渡せばよいですか?
民法401条によって、(1)債権の目的物を種類のみで指定した場合において
法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、
債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
(2)前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、
又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、
以後その物を債権の目的物とする。
そして、種類債権の特定について、
種類債権では、債権の内容を実現するためには、種類に属する物のなかから、
具体的に引き渡されるべき物を選定しなければならないです。
この種類債権の履行の段階で、具体的に給付されるべき個物を選定する行為は種類債権の特定です。
特定の方法はこの三つがあります。
(1) 必要な行為の完了
(2) 債権者の同意を得てその給付すべき物の指定
(3)両当事者の合意(特約)による特定。
この中で必要な行為の完了を紹介します。
特定が認められるためには、この物に特定するとの当事者間の合意があるか、
債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したか
債務者が債権者の同意を得て給付すべき物を指定したことが必要です。
このうちに債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了するという行為が一番です。
給付のされるべき場所がどこかにより、異なった処理がされます。
持参債務の場合に、持参債務とは、債権者の住所に目的物を持参して給付をすべき債務です。
持参債務の場合には、債務者が種類物の中から特定の物を選定したうえで債権者の住所に持参し、
現実に提供したときに、特定が生じます。
取立債務とは債権者が債務者の住所で目的物を取り立てて履行を受ける債務です。
取立債務の場合には、弁済準備ができたことを通知して受領するように催告をしました。
このうち、対価危険と給付危険をもっています。
対価危険とは、双務契約において、一方の債務の目的物が滅失・損傷した場合に、相手方に対してその対価を支払う債務を履行すべきかどうか。
給付危険とは、債務の目的物が滅失・損傷した場合に、債務者が債務不履行責任を負うべきかどうか
これに対して、現民法は目的物の滅失、損傷に関する危険の移転を「特定」から切り離して、
「引渡し」に結びつける規律を採用し、売買の箇所に明文の規定を置いて、
「特定」された目的物について「引渡し」以降に生じた当事者双方の責めに帰することができない事由による目的物の滅失・損傷の危険を買主が負担するものとしています。
最後は送付債務です。
送付債務とは債務者の住所・債権者の住所以外の第三の場所に目的物を送付すべき債務
です。
送付債務では、第三の場所が当初から給付をすべき場所と定められていたときには、
その第三の場所で現実の提供をすることによって、特定します。
次、特定の効果です。
第一、保存義務です。
特定された個物について、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」善良な管理者の注意を用いた保存義務が生じます。
第二、変更権です。
種類債権の特定があれば特定物債権に関する法理が妥当するからといって、
種類債権が特定物債権に変わってしまうわけではないです。
特定があった後も、債務者は、債権者に不利のない限り、給付される物を他の個物に変更することを信義則上認められることがある。
第三には、所有権移転です。
特定された個物について、特定と同時に、個別の所有権が債務者から債権者に移転します。
最後は特定後の引渡しによる危険の移転などです。
売買契約において、特定がされることにより、特定された個物の所有権が債権者に移転し、受領した後に、当事者双方の帰責自由なしに滅失・損傷したときには、
売主は目的物の滅失・損傷を理由とする責任を負わなければならないし、
買主は売主に対して代金を支払わなければならないです。