【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 115 [千五百七十四年 三月上旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十四年 三月上旬(*原文网页序列号 - 132)
二月。空気が澄みわたるような寒さを耐え、芽吹きの季節たる春を待ち望む頃。静子邸の厨からは炊事の煙が立ち上っていた。
二月。空气清新、寒气透骨。人们在等待着春天的到来。静子家的厨房里冒着炊烟。
一般的に魚は水温が低い方が美味しいとされる。低い水温に耐えられるよう、体に多くの脂を蓄えるためだが、これは魚だけに限った話ではない。
一般认为鱼在水温较低的情况下更加美味。为了能够承受低温,鱼类体内会积累更多脂肪,但这并不仅限于鱼类。
冬に収穫する大根が甘いのも、寒さに耐えるため水分を減らし、代わりに糖分を蓄えるからだと言われている。真水は0度で凍結するが、砂糖水は凍結しない。
据说冬季收成的萝卜甜味更浓,是因为它能耐受寒冷并减少水分,反而积累了更多的糖分。普通水在0度会冻结,但加了糖的水却不会冻结。
いわゆる『沸点上昇・凝固点降下』という現象である。因みに気温の影響を受けにくい、地中深くにある先端部分は、害虫などから身を守るため辛くなるとも言われている。
所谓的“沸点上升,凝固点下降”现象。据说深处的顶部不容易受到温度的影响,并且为了保护自己免受害虫等伤害,它也变得苦涩了。
「ほっほっ……冬はブリ大根に限るね」
“哈哈……冬天只能吃黄鱼大根了”
口から熱気を逃がしながら、静子がひとりごちた。
嘴里喷着热气,静子一个人自言自语。
ブリ大根とは日本全国に伝わる郷土料理だが、富山県の寒ブリを使ったそれが有名だ。色々なバリエーションが存在するが、ブリと大根を醤油で煮つけるところは共通している。
“鳗鱼大根是一道在日本全国流行的土特产美食,但使用富山县的寒鳗鱼制作的更为出名。虽然有许多不同的变种,但将鳗鱼和大根一起用酱油煮就是共同点。”
流通の発達した現代であっても、日本海側と太平洋側で獲れたブリの値段に倍以上の差がつくことがある。
即使在现代发达的流通环境下,有时从日本海和太平洋一侧捕捞的鲤鱼价格可能相差一倍以上。
北海道から南下し、日本海の荒波を乗り越え、富山湾まで辿り着いた『氷見の寒ブリ』と言えば、冬の味覚の王者とも呼ばれる。
自北海道南下并跨越日本海的汹涌波浪,一直到达富山湾的"冰见寒鳥(寒鰤)",被誉为冬季美食中的王者。
当然流通の発達していない戦国時代で、新鮮な『氷見(ひみ)の寒ブリ』など望めるはずもなく、静子が調理に使用した物も尾張で獲れたやや小ぶりなブリである。
当然,在流通不发达的战国时代,新鲜的“氷见的寒鲤”等应该是不可能指望的,静子使用的食材也只是在尾张捕捞的略小的鲤鱼。
「魚を口にするのは久方ぶりです。魚などは泥臭いか、極端に塩辛いかのどちらかと思っておりましたが、これは堪りませぬ!」
“很久没吃鱼了。我一直认为鱼要么有土味,要么太咸,没想到这一条太好吃了!”
少年のように目を輝かせながら昌幸が絶賛する。今宵は真田昌幸と彼の息子たち、信之、幸村(信繁)を招待しての夕餉となっていた。
少年般闪闪发亮的眼睛,昌幸大加赞赏。今晚是邀请真田昌幸和他的儿子信之、幸村(信繁)共进晚餐的场合。
山国である甲斐では、海の魚など望むべくもない。泥臭い川魚か、長期間の運搬に耐えるよう、きつく塩蔵されたものに限定される。
在山国的甲斐地区,渴望海鲜等东西是不可能的。只能选择泥泞的河鱼,或者是严格咸腌处理过、能够承受长时间运输的鱼。
高級品である砂糖を惜しげもなく使い、醤油とみりんに加えて、臭みけしに生姜と共に煮込まれたブリは、昌幸の心を少年に戻す程のものであった。
使用了高级品质的糖,慷慨地加入酱油和味淋,加上生姜和草药去腥,用心烹制的鲫鱼让昌幸回想起了他的童年。
「今日港で上がったばっかりのブリが届いてね。越中のブリには劣るけど、尾張のブリも中々のものだよ」
“今天刚刚收到从港口送来的鲤鱼。虽然不如越中的鲤鱼,但尾張的鲤鱼也是相当不错的。”
「なんと! まだこの上があると仰るのか……」
“什么!你还说这还有更高的吗……” translates to “什么!你还说还有更高的吗……” in Simplified Chinese.
昌幸は正に愕然と言った面持ちで、戦慄を隠せずにいた。興奮する昌幸とは対照的に、彼の息子たちは緊張し、遠慮しながら飯を食べていた。
昌幸面带惊讶的表情,无法掩饰自己的战栗。与兴奋的昌幸相反,他的儿子们紧张不安,谨慎地吃着饭。
「子供が遠慮なんてするもんじゃないよ。あそこの大人を見てごらん? 美味しい物をお腹一杯食べられるってのは幸せなんだよ。どんどん食べて、大きくおなり」
“孩子不应该有所顾虑。看看那边的大人们吧,能吃饱美味的东西是多么幸福的事情啊。越吃越多,长得更高大!”
子供たちを優しい目で見つめながら、静子は慶次たちの座敷を指さした。開け放たれた襖から見える、続きの座敷では慶次達がお櫃(ひつ)から飯を掻きこんでいた。
静子注视着孩子们,指向了慶次等人的座敷。从敞开的襖门里可以看到,慶次等人在隔壁的座敷里拿铲子舀着饭吃。
最初こそは膳と一緒に運ばれた椀で食べていたが、まどろっこしいとばかりにお櫃ごと持ってこさせると、しゃもじを突っ込んで豪快に食べている。
起初虽然是在膳上一起送来的碗里吃的,但是一不留神便连着桶也端过来,拿勺子大口吃起来。
いつの間にか酒まで持ち出し、客人が居るにも関わらず宴会を始める始末であった。
不知不觉将酒拿了出来,并开始了宴会,尽管有客人在场。
悪い大人の見本ではあるが、食べっぷりも豪快で、遠慮などとは無縁であるため静子が引き合いに出した。
虽然是坏大人的典型,但吃饭的样子非常豪放,毫不矜持,因此静子拿来作为例子。
本来ならば主人として叱責すべきなのだが、昌幸自身が構わないと言ったため、放置してあった。
本来应该作为主人进行训斥,但昌幸本人说不在意,所以被放置。
静子としても食事は楽しく、賑やかに取った方が美味しいと思っており、好きにさせることにしていた。
作为静子,我认为饮食应该愉悦而且热闹,因此决定让大家都可以自由地享受。
一方、信之と幸村は困惑していた。静子から勧められはしたものの、彼らは武家の男児として厳しく躾けられてきた。父親や、父親の上司たる静子の前で失礼があってはならないと、二の足を踏んでいた。
一方,信之和幸村感到困惑。尽管静子建议他们这样做,但作为武家男孩,他们接受了严格的教育。他们担心在父亲或静子父亲的上级面前失礼,因此犹豫不决。
「子供が大人の事情なんて気にしなくて良いよ。よく食べて、よく遊び、よく学ぶ。それが子供の仕事なんだから」
“孩子不需要担心成人世界的事情。 好好吃饭,好好玩耍,好好学习。 这就是孩子的工作。”
再度促され、ようやく二人は勢いよく、ご飯を食べ始めた。甘辛く煮つけられたブリの味は、子供の鋭敏な味覚をも魅了した。
再次被催促之后,两个人终于有了劲头,开始大口地吃饭。烹制成甜味和辣味的鳗鱼的味道迷住了孩子敏锐的味觉。
とは言え、二人とも未だ十にも満たない子供であり、食べられる量も知れていた。
话虽如此,两个孩子都还不到十岁,也不知道他们能吃多少。
既に食事を食べ終わり、子供たちが目を輝かせながら食事をするさまを、口元を緩めながら眺めていた昌幸が、二人が食べ終わったのを見計らって口にした。
已经吃完饭,眼睛发亮地享受着饭菜的孩子们,昌幸放松了嘴巴看着他们,等到两个孩子吃完他们的饭菜时,他开口说话了。
「素晴らしい食事をご馳走になりました。心よりお礼申し上げます」
“非常感谢您的盛情款待,您的美食让我享受了一顿美好的晚餐。”
父の口上を耳にし、信之も慌てて頭を下げ、やや遅れて幸村も続く。
听到父亲的训词,信之也慌乱地低下头,稍稍落后的幸村紧随其后。
「お粗末様でした。二人とも満腹になったかな?」
“请享用。你们俩吃饱了吗?”
食事を終えて茶を飲んでいた静子が、にこやかな笑みを浮かべて返事する。静子から声を掛けられた二人は、思わず頭を上下させていた。
结束用餐后,静子喝茶时露出了微笑并回答了问话。被静子叫住的两人下意识地点了点头。
「静子様、このように歓待して頂いた上に、厚かましいことを申しますが、一つお願いがございます」
静子小姐,蒙您如此款待,实在十分不好意思,但还有一件事想向您提出请求。
「構わないよ。出来る出来ないは別にして、いつでも聞く耳だけは持っているつもりだから」
“没关系。不管你能做还是不能做,我都愿意听。我打算时刻保持倾听的耳朵。”
「はっ。では、遠慮なく申し上げまする。噂に名高い静子様の図書室を利用させて頂きたく存じます」
“好的。那么我就毫不客气地说出来了。我想借用声名鹊起的静子女士的图书馆。”
静子の図書室とは、彼女が集めた洋の東西を問わず、古今の書物が一堂に会する建物を指す。
静子的图书馆是指她收集的西方和东方的书籍,包括现代和古代的书籍都汇聚在一起的建筑物。
最初は文字通り一室だったのだが、蔵書数が増えるに従って蔵となり、新居では独立した建物とすらなっていた。
最初是一个房间,但随着藏书的增多,它变成了一个藏书间,并在新住处成为了一个独立的建筑物。
しかし、呼び名は昔から変わることなく、誰もが図書室と呼んでいた。
然而,名称从古至今未曾改变,每个人都称之为图书室。
この図書室は静子邸で働く者には広く開陳されており、景勝や兼続のように屋敷で起居するものにも閲覧の許可を与えていた。
这个图书馆对静子宅的工作人员广泛开放,也允许像景胜和兼续这样在府邸居住的人阅览。
しかし、昌幸のように外部の者が利用するのは難しい。静子が禁じている訳ではなく、単純に静子邸へと出入りするのに必要とされる手続きが面倒なためである。
然而,像昌幸那样外部人利用起来很难。并不是因为静子禁止,而是因为要进入静子宅邸需要一些麻烦的手续。
「うーん。安全面からも、本の持ち出しは許可出来ないなあ。そうだ、7日に1日のみ図書室への立ち入りを許可しましょう。折角だから子供たちも書物に触れられるようにすると良いんじゃないかな?」
「嗯。从安全角度考虑,不能允许带走书本。那么,我们只允许在7日让人们进入图书室。既然这样,不如让孩子们也接触一下书籍,这样会更好的。」
「私のみならず、愚息達にまでご配慮頂き、ありがたく存じます」
「不仅仅是我,您还照顾了我的儿子们,非常感激。」
諜報を統べる昌幸としても垂涎の的であった図書室への出入りを、7日に1日とは言え許されたことは望外の喜びであった。
作为主持情报活动的昌幸,能够进入图书馆,这是一个令人垂涎的机会。虽然只有7天中的1天被允许进入,但这是一个意想不到的喜悦。
司書の爺(じい)へと文を認(したた)め、彩へと手渡しておいた。明日になれば早速、審査と手続きをしてくれることだろう。
把信认证给图书管理员爷爷,交给彩。明天他应该会立即审查和办理手续。
静子としては図書の貸出を考えないでもなかったが、外部へと持ち出すことは紛失や、情報の漏出の可能性が考えられるため、図書室内での閲覧に限定することとした。
尽管静子曾考虑过借出图书,但由于担心遗失或信息泄露的可能性,因此决定仅限于图书馆内阅读。
「許可証が発行されたら、追って連絡しますね」
"如果许可证发放了,我会后续与您联系的" translates to "如果许可证发放了,我会后续与您联系的" in Simplified Chinese.
「ありがたき幸せ」
"ありがたき幸せ" can be translated into Simplified Chinese as "难得的幸福" (nándé de xìngfú).
親子揃って見事な礼を示した。通常の仕事に忙殺され、それほど図書室を利用できない昌幸とは対照的に、7日ごとに必ず訪れる信之が、景勝と並んで図書室の主(ぬし)と呼ばれるようになるまでに、それほどの時を必要とはしなかった。
亲子一起展现了出色的礼仪。昌幸因忙于日常工作无暇顾及图书馆,而信之每七天必到,不久就与景胜一起成为图书馆主人(ぬし),并不需要太长时间。 翻译为简体中文: 亲子一起展现了出色的礼仪。昌幸因忙于日常工作无暇顾及图书馆,而信之每七天必到,不久就与景胜一起成为图书馆主人(ぬし),并不需要太长时间。
3月に入り、静子の定めた新暦では春となった。日頃は人の出入りも少ない、静子邸の一角が俄(にわ)かに慌ただしくなっていた。
进入三月后,按照静子规定的新历,已经到了春天。平时人流稀少的静子府里,某个角落突然变得热闹起来。
そこは静子に仕える文官たちの仕事部屋。現代で言うところの決算報告書に相当するものを、彩を筆頭とした彼女の部下たちが総出で作成しているのだった。
那里是为静子服务的文官们的办公室。相当于现代的财务报告书,她的部下们,以彩为首,总动员制作着这项报告。
「損益計算書が仕上がりました!」
"损益计算表出来了!"
「確認する。次はこちらをお願いする」
"确认。接下来请到这边来。"
部屋には彩を含め、総勢で20名ほどが詰めていた。襖を取り払い、大部屋にしてあるが、それでも妙に手狭に感じてしまう。
房间里有20人左右,充满了色彩。尽管移除了推门,打造成了一个大房间,但感觉仍然很拥挤。
その原因は、廊下にまではみ出している書類の山にあった。全員が算盤を片手に、資料を検算したり、新たな書類を作成したりと、各々が作業に掛かり切りになっていた。
那个原因是因为走廊上堆积的文件太多,每个人手持算盘,忙于核对资料和创建新的文件,各自都专注于工作中。
毎月の締め日も、それなりに忙しいのだが、今回は全部署の通年総決算とあって、猫の手を借りたいほどの状況になっていた。
每月的结算日也相当忙碌,但这次是所有部门年度总结算,情况变得如此繁忙,以至于需要借助猫的手。
どれほど忙しくとも冷静さを失わない彩も、この時ばかりは余裕を失って奮闘していた。
无论多么忙碌,彩也始终保持冷静。但这时,她失去了镇定,正在努力奋斗。
「内容確認が終わりました。ご決裁頂ければ、清書に回します」
「内容确认已经完成。如果您能够批准的话,我们将进行书写整理。」
文官たちがそれぞれの担当分を持ち寄り、彩の席に置かれた決裁待ちの文箱に書類を重ねていく。
文官们各自负责担当的部分,将文件叠放在彩席上放置的等待批准的文件箱中。
現代のようにコピー機など存在しないため、複数部必要となる書類は今も清書班が別室で必死に書き写している。
由于现代没有像复印机这样的存在,所以需要多份文件的清单现在仍由手写组在另一个房间里拼命地抄写。
部屋には文官たちが経過を報告する声の他は、皆が算盤を弾く音や、紙や筆が擦れる音、書類を乾かしたり、墨や水を補充したりする小間使いが立ち働く音しかしない。
房间里除了文官们报告进展的声音外,只有大家敲击算盘的声音、纸笔擦动的声音,以及小仆人干活的声音,像晾干文件、加墨水或水声等。
各部署を総括する彩は、積み重なった書類を確認し、クロスチェックを繰り返して間違いがない事を確認する。
综合各部门的彩色,确认堆积的文件,重复交叉检查以确保没有错误。
彩の承認を得た書類のみが静子へと送られ、最終的には信長の手に届くことになる。
只有得到批准的文件才会被发送到静子那里,并最终送到信长手中。
静子が手掛けた事業は多く、反面文官の数は圧倒的に足りていない。
静子所经营的业务很多,但与此同时,官僚的数量明显不足。
部屋に詰める面々の表情は鬼気迫るものがあり、普段は我が物顔で歩き回るヴィットマンたちも、ここ数日は姿を見せていない。
屋里挤在一起的人们脸色阴沉,透出一种鬼魅般的气氛。平常总是扬扬得意地走来走去的维特曼们这几天也没露面。
「通期決算書が完成いたしました。ご確認をお願い致します」
「全年财报已完成,敬请确认。」
書類と格闘すること14日。ようやく仕上がった書類を手に、彩は静子の前に進み出た。
与文件搏斗了14天。最终,彩拿起完成的文件向静子走去。
余程過酷な作業だったのか、隙を見せない彩の目の下には濃いくまが浮かび、髪も色艶を失っていた。
工作太艰苦了,使彩的眼睛下面出现了浓厚的黑眼圈,头发也失去了色泽。
「はい、受け取りました。問題があれば連絡しますが、本日の仕事は終わりにして下さい。書類精査が完了したのち、5日間の特別休暇を支給します。部署内で調整し合って、各自が取れるよう取り計らって下さいね」
“是的,我收到了。如果有问题,我会联系您的。今天的工作请结束。在文件审查完成后,我们将提供5天特别休假。请在部门内协调,并确保大家都能休假。”
特別休暇とは、有給休暇とは別に適宜支給される有給の休暇である。単純に有給日数が増えたと思えば判り易い。
特别休假是指除了有薪休假外额外提供的有薪休假。简单来说就是增加了有薪假期的天数。
「ありがとうございます」
"非常感谢"
「ただ、特別休暇は3月、4月の二ヶ月間しか使えないから、難しいとは思うけど調整をお願いします」
“只是,特别休假只能在三月和四月这两个月使用,所以我认为很难,但请协调一下。”
「お任せ下さい。それでは、これにて失礼します」
“请交给我。那么,我就先告辞了。”
「はい、お疲れ様。今日はゆっくり休んでくださいね」
“嗯,辛苦了。今天请好好休息。”
他人の目があるため、事務的な態度に徹しているが、静子は疲労困憊の彩に早く休んでほしかった。
由于他人的目光,静子坚持保持着事务性的态度,但她真正需要的是早点休息,因为她已经疲惫不堪。
何かと強がることの多い彩も、流石に取り繕う余裕もないのか、若干ふらつきながら部屋を後にした。
彩经常强颜欢笑,但此时已没有掩饰的余地,略带颤抖地离开了房间。
決算書の確認と言っても、今すぐ静子が作業することは無い。静子が確認していては、書類作成者たる彩たちが休息出来ないためである。
即使要确认决算书,静子现在也不会立即进行工作。如果静子进行确认,作为文件创建者的彩等人将无法休息。
とは言え、静子の手掛ける事業はいずれも借入金の無い、いわゆる無借金経営であるため確認は容易だ。
然而,静子经营的企业没有贷款,也就是所谓的无借款经营,因此确认是容易的。
人・物・金の流れが書類だけで確実に追え、今期にどの程度の利益があり、資産状況が把握できる事さえ確認できれば良い。
只需通过文件就可以确保人员、物品和资金的流向,并确认本季度的利润和资产状况,这就足够了。
それ以外は、各書類間の数値に関する関連性チェックをすれば、信長へと提出するための要約書を添えて完成となる。
除此之外,只需进行各文档之间的数值相关性检查,附上摘要文件后即可完成提交给信长。
「さて決算書は仕舞って、先に借りていた本を返しに行こう」
“好,将财务报表整理好后,我们先去归还借了的书。”
静子は決算書を鍵のかかる引き出しにしまうと、図書室から借りてきていた本を片手に部屋を後にした。
静子把财务报表放进了上了锁的抽屉里,然后一手拿着从图书馆借来的书,离开了房间。
図書室に入ると、閲覧席に陣取って本を山と積んでいる後姿が目に飛び込んできた。小さな二つの後ろ姿は、片方が景勝、もう一人が信之であった。
当我进入图书室时,看到两个身影占据了阅读座位,他们的后背面前堆满了书。这两个身影分别是景胜和信之。
そう言えば、今日が信之の利用日だったなと思いつつ、静子はカウンターへ向かって司書に返却手続きを頼む。
顺便一提,静子想着今天是信之的借书日,向图书管理员归还书籍。
返却を終えた静子は、次に借りる本を物色するため本棚の間を巡る。
完成归还的静子,开始在书架间寻找下一本要借的书。
利用者は皆、本の価値を知っているため、大切に扱ってはいるが、人気の書籍は手汗や手油でどうしてもくたびれてきていた。
由于用户都知道书的价值,因此他们都会珍惜对待。但是,受欢迎的书籍由于手汗或手油的影响,难免会变得破旧不堪。
(『十遍読むより一遍写せ』って言うし、写本を推奨して買い取りもしようかな?)
“(比起读十遍,写一遍更有效)所以我推荐购买写本并收购。”
この諺(ことわざ)が意味するところは、読書の要諦である。書物を何度も読み返すより、内容を一度書き写した方が、内容を良く理解できると説いている。
这个谚语的意思是,阅读的要点在于书写。它告诫我们,与其反复阅读一本书,不如把它的内容写下来以更好地理解它。
写本をするための専門部署はあるものの、蔵書の数は膨大であり、本の増える速度に到底追い付いていない。
虽然有专门的部门负责写作,但馆藏书籍数量庞大,远远跟不上书籍增长的速度。
それゆえ、一度印刷した本とは言え、気軽に再度印刷して欲しいとは言いにくかった。
因此,即使是已经印刷过的书,很难轻松地要求重新印刷。
(紙質の関係で、もう一回ガリ切り(ガリ版印刷の原版を作ること)からやり直して貰わないといけないね……)
(由于纸质关系,我们需要重新进行一次刮刻(制作凹版印刷原版)……)
硬質なパルプ紙とは違い、和紙に蝋引きしたものをガリ切りに使用しているため、耐久性にも難があり、一冊だけ印刷するなどと言う小回りが利かないと言う背景もあった。
不像硬质的纸浆纸,由于使用了在和纸上施以蜡涂层并切成齿状的材料,所以其耐久性较差,也有不便于打印仅限制于一本的背景。
静子が思い悩んでいると、横合いから声が掛かった。
当静子在苦思冥想的时候,旁边传来了一个声音。
「これは、静子様。ご挨拶が遅れて申し訳ございませぬ。すっかり書にかまけて、失礼いたしました」
"这是静子大人。由于迟到,非常抱歉。我太专注于写作,失礼了。"
その点、写本ならば紙と筆さえあれば本人の労力だけで本が増える。開架書庫にある本は機密性も低いため、内容を覚えられても問題ないし、写本自体を買い取れば流出する事も無い。
在这方面,如果是手抄本,只需要有纸和笔,本身的劳力就可以增加书本数量。开放式书库中的书本保密性较低,即使记住内容也没有问题,如果购买手抄本本身也不会泄漏。
これなら双方にメリットがあるから、写本キットでも作ろうかと思考が深みにはまりつつあったところから抜け出して、声の方を振り返った。
既然双方都有好处,所以我打算制作手抄本工具包。正在深思熟虑之际,我回头看了看声音的来源。
頬を紅潮させながら声をかけてきたのは信之であった。
面颊微红着的人,走过来跟我打招呼的是信之。
まだ幼い信之の声は高く、良く通るため利用者が何事かと注視したが、景勝は慣れているのか気にすることもなく本から目を離さなかった。
还年幼的信之的声音虽然高亢,但清晰可闻,因此用户们都注视着他。而景胜似乎已经习惯了这种情况,毫不在意地继续看书。
「私が来るたび挨拶する必要なんてないよ。それにしても随分と読み込んでいるみたいだね? 閲覧席に本が山積みだったよ、朝からずっと?」
“我来了你不需要每次都打招呼的。话说你看起来阅读了很多东西?早上到现在看书看了整个阅览室?”
静子がくすくすと笑いながら問うと、信之は目を輝かせながら返答した。
静子咯咯笑着问道,信之眼中闪耀着回答。
「は、はい。ここは想像以上でした。天下の全てがここに収まっているかと思うほどです。分野ごとに本も整理され、案内に従えば容易に目当ての本が探せるというのも驚きです!」
“是的。这里比我想象的还要好。仿佛天下所有的事物都在这里收罗一般。各个领域的书籍也都有所整理,遵循指南就能轻松找到需要的书,真是让人惊讶!”
最近似たような絶賛の台詞を聞いたなと、景勝の方へ目線を送る。同じ姿勢を続けて体がこったのか、景勝は背もたれ付きの椅子に体重を預けて伸びをしている最中だった。
最近听过类似的赞美的台词,我向景胜看去。景胜似乎一直保持着同样的姿势,身体很紧张,他此时正借助着椅子的靠背,用力伸展身体。
静子の視線に気づいた景勝は、思わず手にした本で自分の顔を隠し、閲覧席に向き直った。利発で大人びてはいるものの、彼は二十歳に満たない若者だ。
景胜注意到静子的目光,不由得手持的书遮住了自己的脸,然后转向了阅览席。虽然他很聪明,也显得成熟稳重,但他只是一个不到二十岁的年轻人。
好きな事に没頭していれば、隙も出来ようというものだった。彼は山積みになった本を整理し、少しでも雑然とした印象を払拭しようと努力していた。
沉迷于自己喜欢的事情中,就算是有缝隙也可以被填补。他整理了堆积如山的书籍,努力摆脱一点点混乱的感觉。
まるで母親に片づけを言いつけられた子供のようだと、静子は微笑ましく見守る。
就像一个被母亲要求整理房间的孩子一样,静子微笑着守望着。
「随分と色々な分野に興味があるんだね?」
"你对很多不同领域都很感兴趣吧?"
信之が手にしている本は、実用書から娯楽本まであり、ジャンルに一貫性が見えなかった。武士の子が好む戦記もあれば、農業や園芸に関する本にも手を出していた。
信之手中拿着的书籍种类繁杂,从实用书到娱乐读物不一而足,分类不太清晰。有武士子弟喜欢的战记,也有涉及农业和园艺的书籍。
「はい。某は、これを究(きわ)めると定める程に本を読んではおりませぬ。まずは目録を見て、興味のある本を全て読んでから決めようと思っておりまする」
“是的。我认为阅读这些书籍是非常重要的,我已经阅读了许多书籍,以达到对它们的深入了解。首先我会看书目,读完所有感兴趣的书籍之后再做出决定。”
「色んな事に興味を持つのは良いことだよ。でも読むだけで終わるんじゃ勿体ないね。読んだ内容をしっかり自分の物に出来るよう見分を広めなさい」
"对各种事物感兴趣是好事。但仅仅阅读而不深入理解是不够的。要扩展眼界,使所读内容成为自己的知识。"
「はい、肝に銘じます」
“是的,我会铭记在心。”
「よろしい。あ、そう言えばもうすぐ昼時だけど、一緒に昼餉でもどうかな? 喜平次君も一緒に来るよね?」
“好的。哦,说起来快到午餐时间了,一起吃午餐怎么样?喜平次也会一起来吧?”
「ご相伴に与(あずか)ります」
"我将陪伴您" (wǒ jiāng péi bàn nín) in Simplified Chinese.
静子の誘いに景勝は迷わず応じた。折角の誘いを断る理由もないし、自身の小姓である兼続が慶次と連れ立って街へと繰り出しているというのも大きかった。
景胜毫不犹豫地接受了静子的邀请。毕竟没有拒绝这份邀请的理由,而自己的小姓兼续和慶次一起去城镇也是很重要的原因。
小姓が主人を放置して遊びに出かけるなど言語道断だと思われそうだが、景勝自身は気にしていなかった。
小姓放任主人出门游玩等行为可能会被视为不负责任,但景勝本人并未在意。
親元から遠く離れての人質生活であり、たまの自由ぐらい許されるべきだと彼は考えていた。
在远离亲元的人质生活中,他认为自己应该被允许享受偶尔的自由。
「そ、某もご一緒致します!」
“那、我也跟你们一起去!”
即応した景勝とは対照的に、少し躊躇った信之は、それでも景勝に触発されたのか、張り合うように応じた。
与景胜的即时应对相反,信之有些犹豫,但他仍然受到景胜的激励,迎头与其竞争。
「よしよし。それじゃあ、後で迎えを送るよ。それまで自由に読書していてね」
“好了好了。那么,我会在晚些时候来接你的。在那之前自由地阅读吧。”
これ以上の長居は読書の邪魔になる。特に信之は7日に1度の貴重な機会である。そう考えた静子は、話を切り上げると、二人に手を振って図書室から去っていった。
再继续待下去会妨碍阅读。尤其是信之每周只有一次珍贵的机会。静子这样想着,打断话题,向两人挥手,离开了图书馆。
昼餉はひつまぶしだった。文字通り鱈腹(たらふく)になった二人は、午後の睡魔と戦うのに苦労した。
午餐是银鳕鱼飞饭。两个人吃得饱饱的,下午时很辛苦地与瞌睡作斗争。
静子達が穏やかに過ごしている中、近衛前久は京での勢力拡大に余念が無かった。とは言え、強権を振るうでもなく、賄賂を渡す訳でもない。
在静子和她的伙伴们平静地度过时,近卫前久却在京城里不断扩大自己的势力。但他并不使用强权,也不给贿赂。
積極的に文化を発信し、芸術や遊興を振興した。彼は頻繁に公家達を招いては、尾張由来の珍しい文物を振る舞った。
积极地传播文化,促进艺术和娱乐。他经常邀请官员们来参观,展示尾张罕见的文物。
それは治安が悪化した京を捨て、地方の荘園へと移り住んでいた者にとって、再び京へと舞い戻るに十分な理由となった。
对于放弃治安恶化的京都并搬到乡下庄园居住的人来说,这成为足以让他们再次飞回京都的充分理由。
信長の上洛以降、徹底した取り締まりにより治安が安定し、荒廃していた京が、かつての輝きを取り戻した事も大きい。
信长上洛后,彻底的取缔使京城治安稳定下来,也使曾经荒芜的京城重现光彩。
更に前久の邸宅には他所とは違う工夫が凝らしてあった。京都は盆地であり、冬ともなれば冷たい空気が停滞し、いわゆる底冷えと呼ばれる現象が発生する。
此外,前久的住宅还有与众不同的设计。京都是一个盆地,在冬天,寒冷的空气停留,产生所谓的底部冷却现象。
気密など望むべくもない当時の建築様式では、夏は快適であっても、冬は火鉢を抱えて我慢するより他に無かった。
当时的建筑风格并没有考虑到密闭性,因此虽然夏天很舒适,但冬天只能抱着炉子忍耐。
そうは言っても寒ければ人の活動性は下がってしまう。現代では断熱性に優れる衣服が多くあり、野外に於いても重ね着などをすれば相当の寒さに耐えることが出来る。
即使这样说,如果太冷,人的活动性也会下降。现代有很多绝缘性能优秀的服装,在户外即使面对相当寒冷的天气也可以通过穿多层衣服等方法承受住。
戦国時代ではそういった衣服は存在しないし、ただ衣類を重ねるだけでは雅が無いと前久は考えた。優雅であり、それでいて寒さを凌げる手段を講じる必要があった。
战国时代并不存在这样的服装,前久认为仅仅将衣服叠在一起并不雅致。需要采取优雅、同时又能够抵御寒冷的措施。
そこで前久が取った対策とは、尾張から職人を招いて、自宅の敷地内に気密性の高い別邸を築くことだった。
因此,前久采取的措施是邀请尾張的工匠,在自己的住宅内建造一个具有高密封性的别墅。
外壁を漆喰塗りの白壁に仕上げ、内部を中空構造とし、間に断熱材としてフェルトを仕込んだ。
将外墙涂成石灰泥白色涂层,内部采用中空结构,并在中间填充了毡作为隔热材料。
目端の利く者が見れば、別邸の外観と内部の空間に差があることに気が付けるかも知れない。しかし、その意図までをも見抜ける者はいない。
看得出眼前有洞察力的人可能会觉察到別墅内外的差异,但找得出其中的意图者却寥寥无几。
前久の工夫は、これだけに留まらない。静子の知識を元に、体感温度に湿度が大きく影響することを知り、加湿器をも仕込んでいた。
早期的构思不仅止于此。基于静子的知识,知道湿度对体感温度有很大的影响,还安装了加湿器。
無論、電気式の加湿器などではなく、水を入れた容器を下部から熱して蒸気を送る、原始的な加湿器だ。しかし、乾燥した冬の空気とは比べ物にならない環境を提供してくれる。
无论、电力加湿器都不是,这是一种简单的加湿器,使用下部加热水的容器产生蒸汽。它提供的环境无法与干燥的冬季空气相比。
難点は優雅であることにあった。露骨に対策をしていることが見えては雅ではない。
难点在于要优雅。明显地采取对策会显得不雅。
そのため加湿器は床下の空間に設置され、フェルトで巻かれた断熱パイプを通って、密かに空気を送り込む。
因此,加湿器安装在地下空间,并通过包裹着毡的隔热管道悄然地送入空气。
送風口は欄間(らんま)で蓋をされ、一見して穴が見えないようになっていた。
送风口被装上栏板,看不到空洞的样子。
床下からせり上がってくる冷気を遮断するため、畳の下にもフェルトを敷き、別邸の室内は驚くほど快適な環境となっていた。
为了隔绝从床底下冒出来的冷气,他们铺了毡在榻榻米下面。别墅室内成为了令人惊喜的舒适环境。
「流石は近衛様。玻璃(はり)(ガラス)の障子とは美しい。温かい室内から、冬景色を臨めるとは格別ですな」
「真不愧是近卫大人。玻璃障子太美了。从温暖的室内欣赏冬天的景色实在是格外特别啊。」
「いえいえ、私ではこの離れを用意するので精一杯。京を追われた鄙(ひな)もの(田舎者の意味)が、皆様を十分におもてなし出来ているのかと内心恐れております」
“哪里哪里,我已经尽力准备了这间小别墅。因为我是被京都赶出来的乡下人,所以内心其实有点担心是否能够好好地招待大家。”
静子直伝の茶碗蒸しに舌鼓を打ちつつ、招かれた公家達が口々に前久を褒め称えた。前久は謙遜しながらも、公家達の様子を観察していた。
在享受静子传授的茶碗蒸的美味后,受邀的贵族们纷纷称赞着前久。前久虽然谦虚,但注意到了贵族们的表情。
今日は前久が主催した歌会があり、その後に調度良い頃合いという事で夕餉を振る舞っているところだった。
今天前久主办了一个歌会,然后正好是用餐的时间,所以我们正在享受晚餐。
体を芯から温める食事と、絶品と名高い尾張の清酒を口にした公家達は、前久の財力と最先端の文化に酔いしれた。
贵族们品尝着温暖身体的餐点和以尾张清酒著名的美食,陶醉于前久家的财富和最先进的文化。
余談だが天皇が催しする歌会は歌御会(うたごかい)と言い、年の初めの歌会を歌御会始(うたごかいはじめ)(大正に歌会始(うたかいはじめ)に改称される)と呼ぶ。
另外说一句,由天皇主持的歌会称为“歌御会”,年初举行的歌会称为“歌御会始”(在大正时改名为“歌会始”)。
こうした朝廷内の権力闘争は、一見信長たちに何の利益も齎さないように思えるが、投資をするに十分な利点があった。
这种朝廷内的权力斗争,乍一看似乎没有为信长等人带来任何好处,但是却有足够的投资利益。
世の中は武家の社会になっているとはいえ、建前上は何をするにも朝廷の権威が必要となる。
尽管社会已经成为武家的社会,但无论做什么事情,正式上仍需要依靠朝廷的权威。
こうして前久を中心に派閥を作り上げれば、何かと融通が利くようになる。公家達に軍事力など存在しないが、彼らが営々と紡いできた歴史と権威は利用価値が高かった。
这样以前久为中心形成派别,便能更灵活地解决各种问题。虽然公家们没有军事力量,但他们长期以来编织的历史和权威具有很高的利用价值。
そして今は多くの公家が荘園からの収入を失い、土地や財産を担保に商人たちから金を都合する公家もいる。
而现在许多公家失去了来自庄园的收入,有些公家则拿土地和财产作抵押向商人筹措资金。
中には日常生活すらままならず、先祖伝来の土地や屋敷すらも奪われ、粗末な空き家に移り住み、生活資金を借りながら爪に火を点すような暮らしぶりの公家すら居た。
其中有些公家甚至连日常生活都无法维持,被剥夺了祖传的土地和住所,搬到简陋的空房子里居住,借生活费用来度日,他们的生活就像是生活在火葬场一样。
前久が多くの公家達を招いて宴を開けば、そうした公家達の経済状況などを知ることが出来る。
前久邀请了许多朝廷官员参加宴会,从中可以了解这些官员的经济状况等信息。
『溺れる者は藁をもつかむ』の言葉通り、僅かな経済援助で前久の派閥へ転び、一層朝廷への発言力が高まっていく。
“像『溺水之人抓住稻草』所说的那样,在经济援助的帮助下,前久的派系得以转变,并且他们在朝廷的发言权越来越高。”
とは言え、こういった搦め手を信長がやれば公家達の矜持を傷つける。貴族たちの機微を知る、前久を通して工作する方が、成功率も高かった。
然而,如果信长使用这样的策略,将会伤害到公家们的自尊心。通过了解贵族们的微妙之处并通过前久进行操作,成功的几率更高。
「ご謙遜を。そうそう、ご息女のお噂。麻呂の耳にも届いておりますぞ」
“请谦虚一点。对了,听说您的女儿的传闻已经传到了我麻罗的耳朵里。”
「これはお耳汚しを。私は京を離れて以来、長らく武家の者たちと懇意にして参りました。お陰で娘も女だてらに、あれやこれやと手を広げ、未だに嫁ぐ気配もございませぬ」
"这是污辱你的耳朵。我离开京都以来,一直与武士们亲密接触。多亏了他们,我的女儿也能自由地展开手脚,现在还没有结婚的迹象。"
「しかし、ご息女のお力添えあって、皆が京へと戻ることが出来たのです。我ら公家と武家との架け橋として、稀有な才を示しておいでだとか」
"但是,在女儿的帮助下,大家成功地回到了京都。她被认为是公家和武家之间的桥梁,展现出了难得的才华。"
扇子で口元を隠しつつも公家は笑う。ここからの腹の探り合いは前久の腕の見せどころとなる。前久は愛想笑いを返しつつも、虎視眈々と機会を窺っていた。
用扇子遮住嘴唇,但公家却在笑。从这开始的腹背之争将成为前久展示他的能力的地方。尽管前久在礼节上微笑着,但他却在密切注视着机会。
三月に入ると、信長は多くの令を発布した。暦法(れきほう)、度量衡(どりょうこう)、新貨幣などを始め、内容は多岐に亘った。
三月进入后,信长发布了许多政令,包括开始实行新的历法、度量衡和货币,内容十分广泛。
中には前久を通して帝を動かし、公家の土地に対する徳政令をも出した。徳政令は借金の踏み倒しであり、債権者には無論歓迎されない。
其中有些人通过前久而影响了天皇,颁布了针对公家土地的德政令。德政令是一种拖欠债务的措施,債权人当然不会欢迎。
商人たちの組合を通して信長へと陳情が届いたが、彼は「苦境に付けこんで法外な利子を取り、先祖伝来の土地屋敷を騙し取った悪辣な者にしか適用されていない」として取り合わなかった。
经过商人们的行会向信长陈情,但他认为只适用于利用困境收取过高利息并欺骗祖传土地宅邸的恶棍,未予理睬。
一部の商人たちは不満を抱いたが、この徳政令は概ね好意的に受け入れられた。
一些商人持有不满,但这项德政令总体上受到了好评。
復興しつつある京の土地を抱え続けて恨みを買うよりも、さっさと返して公家に取り入った方が儲けも期待できるからだ。
抱持着正在复兴的京都土地并不会带来好处,不如迅速地将其归还公家,以期望获得更多的利益。
暦法や度量衡を制定する事は支配者の証。日ノ本に住むほぼ全ての人間が、信長の時代が来たと否応なく理解させられた。
历法和度量衡的制定是统治者的证明。几乎所有居住在日本的人都无法否认,信长时代已经到来。
時を同じくして信長は朝廷より従三位(じゅさんみ)参議(さんぎ)に任ぜられた。参議とは大臣や納言(なごん)に次ぐ、重要な役職であり、朝廷の最高機関たる太政官の官職の一つだ。
同时,信长被任命为従三位参议,这是一个重要的职位,比大臣或贵族更高,是朝廷最高机构太政官的官职之一。
名前通り、朝廷の政務に関する議事に参与できる役職である。国政に携わる高官ゆえに、就任するに当たって条件が存在する。
与其名相符,它是一个能够参与朝廷政务会议的职位。由于是涉及国政的高官,就任时存在一些条件。
信長の場合は、同時に従三位を賜っているため、参議に列せられた。
信长同时被授予従三位的称号,因此被列为参议员。
「とんとん拍子で物事が進むね」
“事情顺顺当当地进行着呢”
信長が京に滞在中の警備は、少数でも有事への即応力が高い静子の軍が担う事となった。主力は才蔵が率いて従軍しており、慶次と長可は遊撃隊とされた。
信长在京都逗留期间的警卫由少数但随时准备应对危急情况的静子的军队负责。主力由才藏率领,慶次和长可分别组成游击队。
慶次は待ちの姿勢を良しとせず、京へと着いた途端に隊を残して一人でふらりと消えた。
庆次并不满足于等待状态,刚一到京城就抛开队伍一个人闲逛了起来。
長可は部隊こそ率いてはいるものの、慶次と大差なく、警邏(けいら)と称して京の街へと繰り出していた。
尽管长可率领着部队,但与景次并无太大差别,只是以“警卫”之名出现在京城街头。
詰所に残っているのは静子直卒の竜騎兵部隊(銃騎兵)と、才蔵軍だけとなっていた。
留在堡垒里的只有静子直毕业的龙骑兵部队(枪骑兵)和才藏军队。
静子自身も慶次と長可の動向を把握していないため、敵からすればいつ慶次や長可と遭遇するか判らず、緊張を強いられる状況を期せずして生み出していた。
静子本身也不了解慶次和长可的动向,因此对于敌人来说,他们不知道何时会遇到慶次和长可,这种紧张的情况自然而然地产生。
「与吉君は、単独で安土周辺の環境調査。足満おじさんは尾張で私の名代。なんか、私って軍を留めるための置物になっている気がするよ」
「我和吉君单独进行了安土周边的环境调查。足满大叔则代表我在尾张。感觉自己好像成为了保持军队的摆设一样。」
「それだけ静子様に求心力があるという事です。静子様が居られるだけで、京の民は安心するというものでしょう。どうか、軽挙妄動は謹んで頂き、こちらでどっしりと構えていて下され」
“这就是说明静子女士有多么大的凝聚力。只要静子女士在,京都的民众就会感到安心。请您谨慎行动,稳定立场。”
静子の呟きに才蔵が窘(たしな)める。信長の影響か、静子にも突然単騎で突っ走る癖がついてしまっていた。
静子的小声喃喃自语让才藏感到尴尬。可能是受到信长的影响,静子也养成了突然单独行动的习惯。
ただし、現在の静子は公家筆頭である近衛家の娘であり、織田家でも重鎮と呼ばれる地位を占めていた。
然而,现在的静子是公家笔头的近卫家之女,在織田家中担任重臣职位。
肩書とは対照的に、肉体的にはか弱い女性であり、一人で厄介ごとに巻き込まれようものなら、命を落とす危険すらあり、部下たちは生きた心地がしないのだ。
与其职位相反,她在身体上却十分脆弱,如果卷入麻烦中就可能丧命,让部下们感到很不安。
「いやあ……あの時はご迷惑をおかけしました。まあ愚痴は出るかもしれないけど、流石にあんな真似はもうしないよ」
"嗯……那时候给您添麻烦了。可能会抱怨一些,但再也不会做那种事了。"
あわや責任問題となり、警備の責任者である才蔵が腹を切ると言い出したため、静子一人でのお忍びはなくなった。
几乎成为责任问题,保安负责人才藏说要自杀,静子一个人不能潜行了。
なお、天下人に最も近い信長は、立場が変わっても一人でお忍びと称して動いている。
然而,即使地位发生变化,最靠近天下人的信长也仍然独自行动,信称为“潜行”。
「愚痴程度ならば、この才蔵がいくらでもお付き合い致します」
「如果只是抱怨的话,我才蔵可以陪你聊上一整天」
「従四位(じゅしい)下(げ)に叙任されちゃったしね。流石に軽率な行動は出来ません」
「被任命为從四位下确实让人感到责任重大,不能轻率行动。」
芸事の守護を朝廷より任された静子は、併せて従四位下の位を賜っていた。ただし、官職は与えられず無官となっている。
静子被朝廷委托守护文艺事业,同时被赐予从四品下的官衔。但是,她没有被授予任何官职,因此是无官之人。
元々は位階を任ずる予定では無かったが、朝廷側から依頼した形式をとる以上、何も与えないのでは具合が悪い。
原本并不打算担任位阶,但既然朝廷这样请求,不给点什么就显得不合适。
さりとて、いきなり高位に任ずるわけにもいかないため、いわゆる名誉職として従四位下に任ずることとなった。
虽然不能无条件地任命到高官职位,但为了名誉,被任命为从四位下。
余談ではあるが、公式には知られていない静子の別名『仁比売(ニヒメ)』は、時の帝より従四位上(じょう)を賜っている。
顺带一提,虽然官方没有公开,但静子的另一个别名“仁比売(ニヒメ)”曾被时任天皇赐予从四位上的官衔。
朝廷を紛糾させた静子の叙任だが、当の静子は完全に蚊帳の外におり、彼女の許には信長が静子に代わって引き受けたという通知のみが齎され、彼女には選択肢すら与えられなかった。
静子的任命引起朝廷混乱,但静子完全被排除在外。她只收到了由信长代替她接受职位的通知,甚至没有给她选择的机会。
信長としては朝廷内に、自分の勢力が増えて発言力が大きくなるため、断る理由はない。既に静子は天下に名の知れた女傑となっており、今更隠し立てする意味は薄かった。
作为信长,他在朝廷内增加自己的势力和话语权方面没有拒绝的理由。静子已经成为全国知名的女将军,现在再隐瞒也没有意义。
「まあ、官位を貰ったところでやることに変わりはないんだし、明日の準備をしておかないとね」
“不过,即使得了官位,我们要做的事情也没有变,还是得准备好明天的事情。”
手にした紙の山を叩きながら静子は口を開いた。
手中的一堆纸张被敲打着,静子开口说话了。
官位を得て、昇殿を許される殿上人(でんじょうびと)となろうとも、静子のやることは変わらない。
即使得到官职,成为能够登殿的殿上人,静子的所作所为也不会改变。
高位を利用して政治をするのは信長であり、腹芸の出来ない自分が政治などやれるはずもないと考えていた。
利用高位来施行政治的是信长,我认为我自己不具备这样的才能,不能去从事政治等工作。
今は信長の日ノ本統一に向けて雌伏の時と考え、静子は大人しく置物としての役割を果たすことにした。
现在静子认为是潜伏的时候,为了信长统一日本,她决定安静地扮演一个摆设的角色。
そうは言っても日ノ本の玄関口たる堺にほど近い、京まで来たのだ。少しぐらい趣味に走っても罰は当たらないと考え、彼女は精力的に外部との交流を持っていた。
即便如此,她已经来到了代表日本门户的堺城,距离京都也很近。她认为稍微放纵一下自己的兴趣也不会受到惩罚,因此积极与外界保持着交流。
出自や背景などは問わず、京の民であったり、遠方から訪れた行商だったり、普段関りの無い寺社関係の人間だったりと、この時代の歴史や風土を知る情報源を求めていた。
不论是京城的居民、远道而来的商人、平时与寺庙社团没有关系的人们,都在寻求了解这个时代历史与风土的信息来源。
特に静子が好んだのが、イエズス会が連れてきた奴隷たちだった。黒人だけに限らず、実に様々な人種が奴隷として扱われていた。
尤其是静子喜欢耶稣会带来的奴隶们。不仅仅是黑人,很多不同种族的人都被当作奴隶对待。
恐らくスペイン人から得たのであろう、アステカ人やインディアン。アラブ系、アジア系の人種もおり、外見だけでも混沌とした様相を見せていた。
很可能是从西班牙人那里得到的,阿兹特克人或印第安人。还有阿拉伯人和亚洲人种,即使只是外表也表现出混乱。
奴隷と言えば、真っ先に黒人奴隷が挙げられるが、どんな人種であろうとも奴隷となった人々はいたという生きた証拠でもあった。
虽然说说到奴隶,黑人奴隶往往会名列前茅,但是这也证明了不论是哪个种族,都曾经存在过被奴役的人们这一事实。
静子は奴隷商に金を払い、奴隷たちから直接話を聞いていた。奴隷たちの生い立ちや、奴隷になる前の生活習慣、文化、風習に宗教や思想などについても時間が許す限り聞き出した。
静子向奴隶商支付了金钱,直接与奴隶们交谈。她尽可能地询问他们的出身、成为奴隶之前的生活方式、文化、习惯、宗教和思想等。
聞かれる方にとっては昔話をするだけで労役を免除され、更には少しばかりの報酬さえも得られる。皆が嬉々として己の知識を開陳してくれた。
对被问者来说,只要讲些古话就能免除劳役,甚至还能获得一些小报酬。每个人都欣然展示自己的知识。
勿論日本人以外の奴隷については、奴隷商の通訳を付けて貰う必要があり、それなりの費用が嵩んだが、書物では知り得ない生の情報に触れられた静子は満足していた。
当然,对于日本人以外的奴隶,需要请奴隶商提供翻译,这会增加一定的费用,但静子很满意,因为她能接触到一些书本上没有的真实信息。
静子はそれらの話を要約して書き取り、後で当時の風物を知る書物として編纂するつもりでいた。
静子打算把这些故事整理成摘要,并将其作为当时情况的历史著作编辑出来。
現在静子がご執心なのは、インディアンの奴隷が話す先住民の文化についてだった。
现在静子关注的是印第安奴隶所说的土著文化。
アステカ人奴隷には会話すら拒絶されたが、インディアンの奴隷とは友好な関係を構築出来ていた。
阿兹特克人奴隶甚至拒绝交流,但印第安奴隶则建立了友好关系。
この差が生まれた理由は単純であり、インディアンの価値観にあった。インディアン奴隷の属する部族は、ワシを神聖な動物として崇めており、手なずけた者には一定の敬意が払われる。
这种差异的原因很简单,因为这符合印第安人的价值观。印第安奴隶所属的部落崇拜鹰为神圣动物,为驯服它的人提供一定的尊敬。
静子が持っていたワシの羽根も重要なアイテムであり、彼らが被る羽根飾りは『ウォー・ボンネット』と呼ばれ、戦闘で勇敢に戦って手柄を立てた者への勲章として、一本ずつ与えられるものだった。
静子所拥有的我的羽毛也是重要的物品,他们戴的羽毛装饰品被称为“战争帽”,是颁发给在战斗中勇敢战斗并立下功勋的人的勋章,每人只能获得一枚。
無論、最初は警戒されていた。しかし、彼らが交渉時に行うパイプ煙草の回し飲みの際に「勇敢な者になら答える」と彼が宣言したため、静子はオウギワシのシロガネをインディアン奴隷に引き合わせた。
无论,最初是警戒的。然而,当他们在交谈时抽烟时,他宣布“勇敢的人会回答”时,静子将奥亚瓜希的银引导到了印第安奴隶的身上。
彼らインディアンにとって煙草は重要な意味を持つ。パイプで煙草を吸うという行為は、パイプから立ち上る煙によって、天上に住まう大いなる存在と会話することとされた。
对于印第安人来说,烟草具有重要的意义。用烟管吸烟,被认为是通过从烟管中升起的烟与居住在天上的伟大存在交谈。
このことから和平交渉や取引の際には、パイプ煙草を回し飲みし、約束を大いなる存在に誓った。大いなる存在が証人となって誓った内容は、絶対に破ることを許されない。
在和平谈判或交易时,他们会传递烟管,喝一口酒,向伟大的存在宣誓诺言。向伟大的存在宣誓的内容是不容违背的,因为伟大的存在是他们的证人。
「人が死んだらどうなると思う?」
"如果一个人死了,你觉得会怎么样?"
「勇敢なる者よ。我らは死を特別な事とは考えない。肉の体を捨て、魂だけとなるだけだ。魂は不滅であり、命は続いていく」
「勇敢者啊,我们不认为死亡是一件特殊的事情。我们只是抛弃肉体,只留下灵魂。灵魂是不朽的,生命会继续下去。」
「どんな物を食べていたの?」
“你吃了什么?”
「バイソンやカリブーなどを狩猟する事もあったが、多くは穀物だ。豆やトウモロコシ、カボチャも食べた。豆やトウモロコシは乾して乾燥させて貯蔵した」
有时会狩猎野牛和驯鹿等动物,但多数吃谷物,比如豆子、玉米和南瓜。豆子和玉米干燥后储存。
通訳を通しているため、短いセンテンスに集約されてしまっていたが、静子は気にしなかった。インディアン奴隷の言葉を書き取り、次の質問をすると言う事を繰り返した。
通过翻译,虽然句子变得很短,但静子并不在意。她一遍又一遍地记录着印第安奴隶的话语,然后问下一个问题。
昼時を迎え、彼らの食生活にあったトウモロコシのポリッジを、夏に収穫して保存しておいたスイートコーンで作り、一緒に昼餉を取ることにした。
在午间时分,他们选择用存放了夏季收获的甜玉米来做玉米粥作为午餐,并一起享用。
茹で戻しただけでも甘いスイートコーンにインディアン奴隷は驚いていたが、彼の思うポリッジの味とは違っていたようだった。
煮熟了的甜玉米,即使只是重新煮一遍,印第安奴隶也感到惊讶,但味道似乎与他所想象的粥不同。
次に機会があれば、彼自身が腕を振るってくれると言っていた。
如果有下一次机会,他说他自己会动手的。
「勇敢なる者よ、また会おう」
「勇敢者啊,我们再见」
別れの際も、インディアン奴隷の態度はあっさりとしたものだった。何時誰に売られるともわからない身の上だと言うのに、彼はそれを悲観している様子すらなかった。
分别时,印第安奴隶的态度非常平静。尽管他不知道自己将被卖给谁,但他甚至没有表现出悲观的迹象。
そこには彼なりの哲学があり、あるがままに生きるその姿を羨ましいとさえ思った。
那里有他独特的哲学,我甚至羡慕他能够以其本来面貌生活的模样。
「随分とたまったね」
"积攒了不少啊" (jī zǎn le bù shǎo ā)
自宅の倉庫に文字通り山積みにされている紙を見て、静子は呟いた。紙の原料には楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)、麻(アサ)の4種類を使っている。
看着堆积如山的纸张被存放在家里的仓库里,静子喃喃自语。这些纸张的原材料包括楮、三椏、雁皮和麻四种。
今までは自生しているものを収穫したり、商人から買い求めたりしていたが、静子は紙を大量生産するため、大々的な原材料生産に乗り出すことにした。
过去我们是靠收获野生物或从商人处购买来获取原料,但静子决定为了大规模生产纸张而开始了大规模的原材料生产。
出来上がる紙の品質を考えれば、雁皮を栽培するのが理想なのだが、雁皮は生育が遅く、更に栽培が困難であった。
考虑到成品纸的质量,鹅皮栽培是理想的选择,但鹅皮生长缓慢,而且栽培困难。
そこで栽培が容易であり、毎年安定した収穫が期待できる楮を主とし、三椏を副材料として育てることにした。
因此,我们决定以楮为主要培育物,并将三椏作为辅助材料,因为在那里栽培容易,每年都可以期待稳定的收成。
「しかし、流石は越前和紙。良いものを作るね。美濃和紙も負けていないけど、やっぱり障子とか包み紙用だね」
"然而,确实是越前和纸。做的东西真的很好。虽然美浓和纸也不错,但障子和包装用纸还是越前和纸更合适。"
清書用に用意した越前和紙の、滑らかな表面を撫でながら静子は呟く。
抚摸着为了抄写而准备的越前和纸的光滑表面,静子喃喃自语。
越前制圧後、静子は越前の職人たちを抱え込んだ。その中には当然、和紙職人もいた。
越前制压后,静子招募了越前的工匠们。其中当然也包括和纸匠。
和紙の生産量を増やす為、静子は和紙生産の拠点を立ち上げ、和紙職人たちをそこに放り込んだ。
为了增加和纸的生产量,静子设立了和纸生产基地,将和纸职人们集中在那里。
環境の違いに戸惑った越前の和紙職人たちも、使い慣れた道具や設備がない事に目を瞑れば好待遇であると知ると、せっせと和紙を作り始めた。
越前的和纸职人们对于环境的差异感到困惑,但当他们意识到尽管缺乏熟悉的工具和设备,这仍是一个很好的待遇时,他们开始辛勤制作和纸。
彼らが意欲的に取り組むようになったところで、静子は美濃和紙の職人たちと同じく、腕の良い職人を選んで『名人』や『達人』などの称号を与えた。
当他们开始积极地致力于这个领域时,静子像美濃和纸的工匠一样,选择了技术高超的工匠,并授予了“名人”和“达人”等称号。
しかし称号を与えられた職人からすれば、自分が漉いた紙を他の職人のものとは別扱いにされるのと、若干報酬に色が付く以外には待遇も変わらない。
然而对于被授予称号的工匠来说,他们制作的纸张就会与其他工匠制作的纸张有所不同,虽然报酬略有提高,但待遇并没有太大改变。
職人たちが判らないのも当然であり、これは売る側にとっての品質保証という意味合いを持っている。
这也是理所当然的,因为对于销售方来说,这意味着品质保证。
『名人』や『達人』が漉いた紙が上質なのは当然であり、従ってその商品価値も自然と違うものとなる。
“‘名人’或‘达人’制作的纸张质量出色是理所当然的,因此其商品价值自然也会不同。”
良い物を安く提供するという考え方は、大量生産大量消費が当たり前の時代の価値観であり、工業化の為されていない戦国時代では良い物には相応の値が付いた。
提供良好物品并附带低廉价格的理念是大量生产、大量消费常态化的时代观念,而在没有工业化的战国时代,优质物品都有相应的价格。
出来上がった商品の売価が異なるため、徐々に『名人』や『達人』の称号を持つ職人に還元される報酬は増えていく。
由于制成的产品销售价格不同,因此逐渐增加了被授予“名人”或“达人”称号的工匠所获得的报酬。
成果に見合った報酬が約束されるとなれば、職人たちは互いに切磋琢磨をしあい、より良い物を作り出そうと取り組みはじめ、総体として美濃和紙の品質も底上げされる。
如果能够承诺符合成果的报酬,工匠们便会相互竞争,努力创作出更好的作品,并提高美濃和纸的整体品质。
ただ、品質が良ければ売れるというものではない。より良い物には然るべき装いがあり、値段に見合った宣伝が必要となる。
然而,仅有良好的品质并不能保证销售。更好的商品需要相应的包装,并需要与其价值相符的宣传。
たとえ一般人の手に届かない値段であろうとも、高いが良い製品であるならば、値が張ろうとも買い求める人はおり、使用者の周辺にその商品価値が広まっていく。
即使价格对普通人来说太高,但如果是优质的产品,仍然有人愿意花高价购买,并且商品价值会在使用者周围广为传播。
無論、宣伝だけに留まらず価格設定にも工夫を凝らす。心理的(しんりてき)価格設定(かかくせってい)と呼ばれる値付けを行った。
不仅仅是宣传,价格的设定也要进行创新。进行了心理定价,即所谓的价格设定。
購買者は価格が高いものには価値があり、低いものには価値がないと考える。これを名声価格と呼ぶ。
购买者认为价格高的产品有价值,而价格低的产品则没有价值。这种现象被称为名声价格。
また複数の選択肢が提示され、高級品、中級品、普及品と並べると、多くの人々は中級品を選択し易い。これを段階価格と呼ぶ。
另外,当需要选择多项选择时,当高档、中档和普及品并列在一起时,许多人更容易选择中档商品。这被称为分阶段定价。
これらの購買者心理を突いた値段を提示し、静子は購買者層の棲み分けを行った。
展示符合这些购买者心理的价格,静子进行了购买者定位。
即ち、越前和紙を高級ブランド商品とし、美濃和紙の中でも上質なものを中級品、一般的な品質のものを普及品として扱った。
即越前和纸被定位为高级品牌商品,美浓和纸中的优质产品被定位为中档产品,一般品质的产品则被定位为普及品。
こうした工夫の甲斐もあって、それぞれの和紙は徐々に浸透していった。
经过这些努力,每一种和纸逐渐被人们所接受。
「覚えている内に、はやく清書しちゃおうっと」
"趁还记得,赶快把它清楚地写下来"
静子は鼻歌を歌いながら、昼間に収集した話の内容を越前和紙へと清書していく。
静子一边哼着小曲,一边把白天收集到的话题内容抄写在越前和纸上。
硬筆に慣れていた静子は、当初毛筆に苦労したものだが、今となっては筆の方が早く書けるほどになっていた。
习惯了硬笔的静子最初使用毛笔感到困难,但现在笔写得更快了。
「静子様、明智様の使いがお越しになりました」
「静子小姐,明智先生的使者来了。」
もう少しで整理が終わろうかと言う時になって、小姓が使者の来訪を告げた。重要な部分は終わっているとはいえ、静子としてははやく片付けたい気持ちがあった。
正当快收拾完毕时,小姓报告有使者前来。虽然已经整理完了重要的部分,但作为静子,她还是想尽快收拾完毕。
「もうすぐ日も沈むし、明日にして欲しいって伝えて」
「太阳快要落山了,请转达明天再做」
部屋に入る日の光から、おおよその時刻を推測する。もうすぐ日が暮れると思った静子は、現状は手が離せないから、また日を改めて欲しい旨を伝えるように命じた。
从进入房间时的阳光,推测大致的时间。认为太阳马上就要落山的静子,因为现在状况很忙,所以命令传达她希望改日再约的意思。
小姓は短く返事をした後、言づてをするために去る。小姓が立ち去るのを待たず、静子は作業を再開した。
小姓简短地回答后,便离去准备传话。而静子并没有等待小姓离开,继续工作。
「大変申し訳ありません、静子様。何やら火急のご用と仰せで、本日中に話を通したいと……」
“非常抱歉,静子女士。听说有紧急的公务需要处理,希望今天能够尽快交流……”
残り数枚というところで、小姓が戻ってきた。顔を見ずとも、彼が困惑の表情を浮かべている事はすぐに分かった。静子は小さくため息を吐くと、下書きの書き付けの枚数を数えた。
小太监在剩下几张的时候回来了。不用看他的脸就知道他正在困惑。静子轻声叹了口气,数了一下草稿纸上的字数。
「……少し待って頂く事になると伝えて。先に部屋へ案内し、お茶とお茶請けを出しておいてね。それから慶次さん……は多分いないね。才蔵さんとかを呼んでおいて」
"告诉他们稍等一下。先带他们到房间里,招待他们茶和点心。然后请才藏等人来。恐怕惠次不在。"
「承知しました」
"我明白了"
10分ほどで片付ける、そう決意して静子は再度筆を手に取った。
静子下定决心,在大约十分钟内收拾好了,然后又拿起笔来。