夢見ること　その三

    自分は数学オリンピックを選択する理由は、なんだけ？

    確かに、王先生や于先生は自分の数学能力を期待していた。入学してまだ1ヶ月しか経っていないのに、数学オリンピック地方予選に出場したこともあった。その時、自分は奮い立たせた。半学期は、毎日4時半に目覚ましをかけて、寮の２階にある大きな研修室で勉強した。今思えば、1年生を通して変なやつだと見られるでしょう。しかし、あの時はそうだった。自分が正しいと確信し、その狭い門をくぐることもできると確信していた。現在と比べれば全く別人でした。

　無知は恐れを知らない。人は知識と情報を得れば得るほど、より明確な不安感を抱くようになる。冬休みまで、数学オリンピックは大したことない話になった。一般教室の1行目の真ん中、通路を挟んで遠いか近いかの2つの席で、文学少女に出会った。

　彼女のイングリッシュネームはSakura、桜の花の紋様に綴っているカバンを持っていたので、今も覚えている。ある日、僕が気に入った歌詞をメモ用紙に書き写していると、Sakuraが声をかけてきた。

    「何を書き写したの、先からぼんやりしたみたい、珍しいね」

    「詩の練習です」

    「これで、詩の練習、冗談だよ」

    あの桜のカバンから色々な現代詩集を持ち出した。海子とか、顧城とか名前を聞いた作家もあるし、張枣とか、食指とか初耳の作家もある。

    「これを読んで、そして感想を聞きたい」

    『海子の詩』が渡たされた。

    あれから僕たちはメモ用紙で通信始めた。Sakuraさんは歴史や文学などを熱中したので、言わば文学少女です。自修の時間はほぼメモで送信したし、昼休みの時も図書室で今日の話題本を探しました。彼女の興味深いである『南渡北帰』全３巻をカバンから取り出したときの光景、今でも覚えている。寝る前におやすみメッセージしたり、自修がない夜に外に出て話をしたりするのは、生まれてから初めてしたことだ。大晦日の1時間前にも、周りで爆竹が鳴り響くのを聞きながらメッセージをしていて、そのときは自分が世界で一番幸せな人間だと思っていたに違いない。

    Sakuraさんはもちろん文系を選びましたが、数学オリンピック選手の僕は、来年の春には別のクラスに振り分けられると決まっていたし、自動的に理系に配属される。つまり、このもやもやした気持ちは、ここで終わらせねばならない。新学期を迎える数日前、僕はスマートフォンを買って、後はＳＮＳで連絡しようとSakuraさんに言った。

    黙然として答えなかった。寒夜の校庭で冷気に包まれ、街灯の冴えた彼女の表情はよく読み取れなかったが、振り返ってSakuraさんはこう言った。

    「君はそんなものを買うとは全然思わない」

    「それは違う、僕はただ連絡のために」

    僕の言葉が凍りついたように地面に落ちた。彼女のところに届けることはおろか、自分自身さえだんだん聞けなくなった。その後、僕の言葉は覚えていないが、彼女の言葉だけが、今日まで溶けずに残っている。

    「君は数学オリンピックに参加しなければならない。数学オリンピックの成功を祈りつつ、遠くから見守っているよ。」

    それから、ほとんど連絡はなくなった。１年生の夏休み、数学オリンピックを辞めた時も連絡しなかった。高校卒業のとき、僕を変えたことを申し訳なく思っているメッセージを受け取った。

    何かが変わったに違いない。あの時、僕は答えられなかった。

    あの苦い記憶は今日まで封印されてきた。今の自分は、現代詩にはほとんど無関心し、民国時代にも無愛想そうだ。精神的に彼女と話したいのなら、数学をやったほうがいいんじゃない。そういう意味で、この記事を書くまで彼女のことは忘れていた。