【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 154 [千五百七十七年 三月下旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十七年 三月下旬(*原文网页序列号 - 178)
東国征伐の第一段階である甲州征伐は長可率いる先遣隊の快進撃によって幕を開けた。
东国征伐的第一阶段是由长可率领的先遣队的快速攻势开启的甲州征伐。
岐阜城を出発した長可は兵器廠(しょう)に無理を言って持ち出した大砲を用い、木曾義昌が籠城する木曽福島城を救うつもりであった。
岐阜城出发的长可请求武器厂借用了一门大炮,打算用来解救木曾义昌守卫的木曾福島城。
しかし先遣隊から更に先行する斥候が持ち帰る情報を聞くに、このままの進軍速度ではとても間に合わないと判断した長可は虎の子の大砲を切り捨てるという決断を下す。
但是在听取了先遣队更远的侦察员所带回来的情报后,长可判断在目前的行军速度下根本赶不上,于是做出了割爱掉珍贵大炮的决定。
とは言え織田軍にとっても戦況を左右しうる重要兵器の大砲をその辺に投棄するなど論外である。後方まで輸送しようにも隊を分けて護衛を付ける必要があるため、完全に持て余してしまうことになった。
然而,对于織田军来说,在战况中具有左右重要性的火炮在那里放弃是不可能的。即使要运回后方,也需要分队护卫,因此变得非常棘手。
そこで長可はいっそ緒戦である岩村城攻略に使用し、その後は占領した岩村城内の防衛設備としつつ回収を待てば良いのではと思い至る。
于是长可决定在首战中攻占岩村城,并在占领后维护城内的防御设施,等待收缴。
ここで日ノ本初の砲撃による攻城戦を受けることになった岩村城について触れたい。
我想谈论岩村城,在这里成为了日本历史上第一次遭受炮击攻城的城堡。
岩村城は鎌倉時代に遠山景朋(かげとも)が築城した山城に端を発する。後世に於いて日本三大山城の一つに数えられる程の威容と比類なき堅牢さを誇った。
岩村城起源于远山景朋(Kagetomo)在镰仓时代修建的山城。它展现了令人惊叹的威严和无与伦比的坚固,被誉为日本三大山城之一。
史実では元亀3年(1572年)に岩村遠山家当主であった遠山景任(かげとう)が亡くなったことを契機に、残された女城主であり織田信長の叔母に当たる『おつやの方』は暫く武田と戦いながら城を守っていたが、翌年武田方の武将秋山信友(のぶとも)と結婚し、武田方へ寝返ったため悲劇の最期を迎えた。
在史实中,元亀3年(1572年)遠山景任去世是契机,他是岩村遠山家的当主。留下来的女城主,且是织田信长的姑母『おつやの方』在与武田势力的战斗中守护城池一段时间,但次年与武田方的武将秋山信友结婚并投降武田方,因而面临悲惨的结局。
一方この時代では元亀3年末の段階で武田信玄が討ち死にし、情勢は武田から織田へと大きく傾いた。歴史を早回ししたことによる影響なのか遠山景任が史実よりも早く逝去し、信玄の西上作戦を契機にやはり織田方から武田方へとおつやの方は寝返ってしまった。
然而,在这个时代,信玄已经在元亀3年末被打败了,局势已经趋向于織田方。由于历史被加速,远山景任较史实早逝,信玄的西上作战成为契机,另一方面,也有乌合之众投向了武田方。
当然ながら親族の裏切りに信長は激怒した。それにもかかわらず五年以上も見逃されていたのは信長にとって武田方の重要性が低くなってしまったからだろう。
当然,信长对亲族的背叛感到愤怒。然而,信长已经忽视了武田方的重要性五年多,这可能是因为他们已经不再那么重要了。
とは言え此度(こたび)の第二次東国征伐に於いては、しっかり攻略目標に設定されていることから、そろそろ引導を渡してやろうと言う思惑が窺(うかが)えた。
然而,在这次东国征伐的第二阶段中,已经将其设置为攻击目标,因此可以看出现在已经打算让其作古了。
如何に難攻不落で知られた岩村城とは言え、援軍のあてが無い段階での籠城は論外だ。
尽管岩村城以其难以攻破而闻名,但在没有援军的情况下进行围城是不可行的。
城山の麓(ふもと)に建てられた物見櫓(やぐら)から織田軍接近の報が齎(もたら)されたのを契機に相手の出鼻を挫(くじ)かんと迎撃部隊が出陣していった。
建在城山山脚下的观察塔传来了织田军接近的消息,作为契机,迎击部队出发打击敌人的军心,切断其士气。
そしてその後は物見櫓からも迎撃部隊からも連絡が途絶えてしまう。この異常事態に対して城主の秋山信友は判断を下せず、徒(いたずら)に時間を浪費することになる。
随后,从了望塔和迎击部队的联系都中断了。对于这种异常情况,城主秋山信友无法作出判断,只能浪费时间。
対する長可は最も脚の遅い大砲部隊を最前列に据えるという常識外の部隊運用をしていた。この一戦だけ弾薬がもてば良いという割り切りから、大砲を使い倒すつもりなのだ。
对付长可采用了一种超出常识的部队运用方式,把最慢的大炮部队排在最前线。他们打算在这场战斗中拼尽全力使用大炮,只要有弹药就行。
戦闘では一般的に高所を取っている側が有利となるのだが、長可はこれを力業で覆(くつがえ)してみせた。自軍の物見から山門の裏に敵が集結していると聞くや否や、傍に建っている物見櫓及び山門一帯に対する砲撃を命じた。
在战斗中,通常取高处的一方会占优势,但长可则通过借助力量扭转了这一局面。听到敌人正在山门后集结的消息后,他立即命令对旁边的岗哨楼和整个山门进行炮击。
長可は大砲部隊を最前列中央に据え、周囲を奇襲に備えて鉄砲隊で固めると観測射撃もしないまま砲撃を開始する。
长可将大炮部队摆放在中央前线,并用火枪队加固周围,随即开始炮击,无需进行观测射击以应对奇袭。
当然のように初弾は狙った地点に着弾しなかった。しかし敵方は落雷のような轟音と共にどんな攻撃にも耐え得ると信頼を寄せていた石垣が大きく抉(えぐ)り取られる様を目撃することになった。
当然,第一枚弹没有命中预定目标。但是敌方目睹了能够承受任何攻击的堡垒被削弱的场景,伴随着雷鸣般的轰鸣声。
次弾は偶然にも物見櫓の中ほどに直撃すると、櫓をへし折ってしまう。これを目にした敵方は恐慌状態に陥るが、間を置かずにどんどん撃ち込まれる砲弾は容赦なく防衛施設を破壊していった。
第二发炮弹偶然直击了物见塔的中央,使其折断。看到这一幕,敌方陷入恐慌状态,然而,炮弹接连不断地袭来,毫不留情地摧毁了防御设施。
長可側からは仰角(ぎょうかく)の関係で、敵軍の配置は判らないものの、当たるを幸いに適宜目標を修正しながら撃ちまくる。
从长可侧角度来看,虽然无法了解敌军的具体部署,但能够利用仰角的关系进行修正射击。通过不断调整目标,不断攻击,取得胜利。
これを麓の防衛施設が壊滅するまで繰り返し、一兵の犠牲すら出すことなく長可軍は秋山軍を籠城させることに成功した。
长可军成功地让秋山军守城,直到山脚下的防御设施被摧毁,而且没有一名士兵牺牲。
本来であれば麓が攻略されたとしても頂上部付近まで攻めあがるのは至難の業だっただろう。
原本即使攀爬到山脚下也是困难的,攻占山顶附近更是难上加难。
なぜならば山麓(さんろく)と山頂を結ぶルートは藤坂と呼ばれる左右を林に囲まれた急な坂道のみであるからだ。守るに易く攻めるに難(かた)い天然の要害が立ちふさがる。
因为连接山麓和山顶的路线只有被称为藤坂的急坡,被左右围绕着树林,易守难攻的天然要塞挡住了道路。
防衛側は山中に兵を伏せることもでき、また高所を利用して重量物を転がすだけで敵を攻撃することが可能となる優位性を持つ。
防守方可以将士兵藏在山中,也可以利用高地滚动重物攻击敌人,具有优势。
一方の寄せ手である長可は、またしても力業でこれを突破することになる。
长可作为其中一方的进攻手,又一次凭借着强大的力量成功冲破防线。
度重なる砲撃を受けてあちこちが崩壊したとは言え、流石に石垣造りの山城は堅固であり、大砲を山頂に向けて並べると山なり弾道での砲撃を命じた。
尽管承受了多次炮击,四处都出现了崩塌,但石垣建造的山城确实很坚固,命令将大炮摆放在山顶,进行弧形射击。
足満の手によって魔改造を施された大砲は構造的にアームストロング砲に近く、砲身に刻まれたライフリングと密着するよう弾体にも溝を刻んだ椎の実型の砲弾、所謂(いわゆる)ミニエー砲弾を用いて改良された褐色火薬で撃ちだす仕組みだ。
通过足满的手进行魔改造的大炮,在结构上与阿姆斯特朗炮相似,炮管上刻有的螺旋槽与弹体贴合,弹体上也刻有榧树种实状的炮弹,使用所谓的小麦炮弹经过改良的褐色火药发射。
余談だが工業化が進んだことにより、硫酸や硝酸を使用できる関係から火薬を無煙火薬へとシフトさせようと言う流れになっているが、現場では未だに在庫が潤沢にある褐色火薬が使われている。
然而,尽管工业化的推动,可以使用硫酸和硝酸将火药转化为无烟火药,但实际现场仍然在使用存货充足的棕色火药。
こうした地道な技術改良の結果、長可の用いる大砲は少し旧型となるがそれでも最大射程で2000メートルを誇るまでになっていた。対する岩村城は標高700メートル少々であることから、わざわざ危険な登坂ルートをゆかずとも麓から曲射することが出来るのだ。
由于这种切实可行的技术改进,尽管长可使用的大炮略显陈旧,但射程最大可以达到2000米。而相比之下,岩村城的海拔只有略高于700米,因此无需冒险攀登陡峭的山路,直接从山脚下进行曲射便可实现。
完全に隔絶した技術水準の兵器を使われた側は大混乱に陥っていた。山麓からの連絡が途絶えたため、偵察を出すか否かを思案していたら、麓から絶え間なく雷鳴の如き砲声が響き渡る。
被使用完全封闭技术水平武器的一方陷入了大混乱。由于来自山麓的联系中断,因此在考虑是否发送侦察员时,持续不断的雷鸣般的炮声从麓下响彻。
傾斜と高低差があるため着弾点を観測できず、砲撃の命中精度は散々なものだったのだが的がデカいのでそこそこ当たった。高く積み上げられた堅固な石垣も、高所という地理的優位性すら物ともしない長可の攻撃に秋山の心は折れてしまった。
倾斜和高低差使得无法观测到着弹点,炮击命中精度很差,但是由于目标很大,因此命中率还是相当不错。即使高高堆起的坚固石墙,也无法抵挡长可在地势上取得的优势,秋山的心灵也被击垮了。
仮に当主が抗戦を命じたとしても、我先にと逃げ出し始めた群衆には響かなかったであろうことは疑いようもない。地獄のような半刻(約一時間)が過ぎたところで、長可より投降を呼びかける使者が遣わされ、無条件での降伏を受け入れた。
就算当主下令对抗,人群开始想先逃离的事情也不会有影响,这是毫无疑问的。在类似地狱的半小时后,派遣了使者呼吁长可投降,最终接受了无条件投降。
こうして城主である秋山信友は、その妻おつやの方共々捕らえられ、合流してくるであろう後続の部隊へと託されることとなった。難攻不落と謳われた岩村城が、わずか半日足らずで陥落したのだ。
秋山信友作为城主,和妻子おつや一同被捕,并被托付给接下来将会到来的部队。被誉为攻不破的岩村城在不到半天的时间里就陷落了。
長可の率いた先遣隊の快勝は、電信によって要点のみを速報として伝えられた。追って送られた詳報は、静子邸に常駐している通信手部隊が受け取り、事務方が清書することによって静子の手元に届けられる。
长可率领的先遣队取得了胜利,仅通过电报传递要点进行了速报。详细报告随后被发送到常驻在静子府邸的通信部队接收,由办事人员整理后,才能递送给静子。
自邸に居ながらにして、信濃国での戦況を手に取るように把握する静子の姿を見た信長は内心唸っていた。開明的であると自負している信長をして、電信が齎す革新性は見通せていなかった。
在自己的住所里,静子轻松地掌握了信濃地区的战况,这让信长暗自惊叹。信长自认为是一个开明的人,但他却没能预见到电报所带来的革新性。
臨時の速報や定時連絡を通じて、適宜更新されていく立体地図上の戦況図と物資の残量を見て信長はいくさのやり方が根本的に変わった瞬間に立ち会っていると自覚した。
通过临时快报和定时联系,信长看到立体地图上不断更新的战况和物资存量图,意识到战争的方式已经根本性地改变了。
信長は甲州討伐の先遣隊及び本隊からの連絡を受け、立体地図上に矢印型のコマとして配置されている予想進路上に存在する攻略目標を見やる。
信长接到了甲州讨伐的先遣队和主力军的联络,并观察位于立体地图箭头形状方块上的攻略目标,以预测进路。
長可ら先遣隊は岩村城を出て北上しながら木曾福島城を目指す。
长可先遣队离开岩村城,向北前进,目标是木曾福岛城。
籠城している木曾義昌が耐えきれれば、合流した上で武田軍を蹴散らし、鳥居峠を抜けて桔梗(ききょう)ヶ原(がはら)(長野県塩尻市)を経由して諏訪湖へ至る進路を取る。
如果籠城的木曾義昌能夠忍耐下去,那麼在會合之後,他們就能夠擊退武田軍,穿過鳥居峠,經過桔梗原(日本長野縣塩尻市),抵達諏訪湖的道路。
一方で信忠が率いる本隊は岩村城を出発し、天竜川に沿って南下しつつ滝沢城を落とす。
一方面,由信忠率领的主力部队从岩村城出发,沿着天竜川向南进发,并攻克了滝沢城。
ここから北上しつつ新府城を目指しながら途上にある松尾城、飯田城、大島城を攻略、高遠城にて先遣隊と合流しこれを攻め落とし、諏訪湖沿岸の上原城を経て、新府城へと向かう進路となる。
从这里向北方前进,攻占松尾城、飯田城和大岛城,同时前往新府城。在高遠城与先遣队会合,攻占该城后,沿着諏訪湖岸攻占上原城,然后前往新府城。
以上から解るようにどちらのルートにとっても避けては通れない武田軍防衛の要となるのが高遠城だ。高遠城は武田にとって諏訪から伊那へと向かう交通の要衝であり、駿府(すんぷ)や遠江(とおとうみ)を睨む前線基地となる。
无论从哪条路线来看,都无法回避高遠城成为武田军的防御要塞。高遠城对武田而言是从諏訪通向伊那的重要交通要冲,也是监视駿府和遠江的前线基地。
高遠城は武田信玄の手によって、大島城や飯田城と共に大規模な拡張を施されており、武田を守る最後の防衛ラインを形成していた。
高远城是由武田信玄亲手扩建的,与大岛城和飯田城一起形成了一个庞大的防御体系,是保护武田的最后一道防线。
言い替えれば高遠城が落ちるということは武田の滅亡を意味する。何しろ新府城は未だに完成しておらず、高遠城以東には高遠城をも陥落させるような軍を受け持てる城が存在しないからだ。
换句话说,高远城的陷落意味着武田家的灭亡。毕竟新府城尚未完成,而在高远城以东并没有可以抵抗攻陷高远城的军队的城池存在。
「間者の報告によれば武田は北条から不足している軍備を融通して貰っています。ゆえに北条からの援軍は無いと断言しても良いでしょう」
据间谍报告称,武田得到了北条家提供的缺乏军备的援助,所以可以断言北条家不会派援军。
眉を寄せた表情で立体地図を覗き込んでいる信長に静子が現状を説明した。当初の手はずでは信長は安土城にて連絡を受けることになっていたのだが、何故か単身尾張までやってきてしまっている。
信长皱眉看着立体地图,静子用一脸严肃的表情向他解释了当前情况。按照最初的计划,信长应该在安土城等待联络,但不知为何他独自前往了尾张。
信長の行動を予測していたであろう濃姫は、面白そうだからというだけでその可能性を静子に告げなかった。静子の目が死んだ魚のように淀んで見えるのは、決して気のせいなどではない。
据推测,居住在信长身边的濃姬可能已经预测了他的行动,但仅仅因为觉得有意思并没有告诉静子相关可能性。静子的眼神像死鱼般的呆滞,并非错觉。
「ほう! 援軍ではなく軍備を望むか」
“哦!不是援军,而是希望武装装备吗?”
「武田とて武家の頭領たらんとした矜持(きょうじ)があります。また北条にも武田の支援に割(さ)ける余裕がなかったのでしょう。ともあれ武具や糧食、矢に鉄砲と弾薬が届けられたそうですが、それだけでは戦局は動かないでしょうね」
“武田有着想要成为武士领袖的自尊心,而北条或许也没有足够的余力来支持武田。总之,据说他们给予了武具、粮食、箭矢、火枪和弹药的援助,但光靠这些是无法改变战局的。”
「我が方の軍備はどうなっておる?」
"我们方面的军备怎么样了?"
「万事滞りなく支度できております。先日羽柴様ら西国を制圧しておられる方々に向けて、食料の追加発送も済ませております」
“我们已经准备好了一切,并已经向最近制霸西国的羽柴阁下等人追加了食物补给。”
「ふむ。完璧というわけか」
"嗯,所以这就是完美的意思吧。"
「いいえ上様。兵站に於いて完璧というものは存在しません」
“在后勤领域,没有所谓的完美。”
静子の言葉を受けて信長の眉が神経質そうに顰(ひそ)められる。高まる緊張感を受けて周囲の者は押し黙るが、静子はいつもと変わらぬ様子で続けた。
听了静子的话,信长的眉头皱得很紧张。周围的人感受到紧张气氛的增加,静静地等待着。静子则毫不在意地继续说下去。
「戦況というのは常に流動的に推移します。これで完璧として手を止めれば、その時点から情報の陳腐化が始まり、現場と後方での齟齬(そご)が生まれます。これを避けるには常に完璧であろう(・・・・・・)と目指し続ける(・・・・・・)ほかありません」
「战况永远在不断变化,如果满足于此刻的完美,信息就会开始陈旧化,前线和后方之间会产生分歧。为避免这种情况,唯有一直追求完美,别无他途。」
「では、いつになれば準備が整ったと言えるのだ?」
那么,我们何时才能说准备工作已经做好了呢?
「それは後の世に於いて、歴史を紐解く学者達が判断することになるでしょう」
“这将由解读历史的学者在后世进行评判。”
判断するのは自分たちではないと静子が断言する。これを耳にした信長は目尻を下げて微笑むと、静子の頭に手を置いてわしゃわしゃと掻き乱した。
静子断言说,判断不应由我们自己作出。信长听到后垂下眼角微笑着,把手放在静子的头上,轻轻地揉了揉。
「その意気やよし! しかし常に気負っていては遠からず大失敗をやらかすぞ。ここは素直に褒められておけ」
“干得好!但是如果一直心急,很快就会犯大错误。现在应该诚实地接受赞扬。”
そう言いながら信長はぐちゃぐちゃになった静子の頭をポンポンと撫でた。
这时信长一边说着,一边轻拍着一脸懊悔的静子的头。
「は、はあ……」
"啊,啊……"
「よし。そうじゃ、わしは喉が渇いたぞ。何やら皆が絶賛した飲み物があると聞いたぞ? ここでもわしだけ仲間外れにすると言うのか?」
“好的。这样啊,我口渴了。听说有一种备受赞誉的饮料,大家都很喜欢,这里是不是也要把我排除在外?”
少し迷惑そうに手櫛で髪を整えながら静子は頷くが、続く信長の言葉で彼がわざわざ尾張まで出張ってくる理由の一つに見当がついた。
静子稍微有些困扰地用手梳理着头发点了点头,但随着信长继续讲话,她开始明白他特意出差到尾张的原因之一了。
(誰からはちみつレモンの話を聞いたんだろう?)
(从谁那里听说了蜂蜜柠檬的故事呢?)
東国征伐を前に長可が特訓に励んでいるのを見て、静子が運動部の練習を思い出してレモンのはちみつ漬けを作らせたのが事の発端だ。
在东国征伐之前,静子看到长可正在特训,回忆起运动部的训练,于是让长可做蜂蜜柠檬腌制品,这就是事情的起源。
肉体疲労時のビタミン補給と速やかな栄養摂取に適しているレモンのはちみつ漬けを作り、余った漬け汁を捨てるのも勿体ないと考え、少量の塩を加えて水で割ったはちみつレモンドリンクへと加工した。
适用于身体疲劳时的维生素补充和快速营养摄入的柠檬蜂蜜腌制品,考虑到剩余的腌汁浪费不可取,添加少量盐并加水制成蜂蜜柠檬饮品。
これをやはり特訓後の兵士たちに冷やして届けたところ絶賛され、その爽やかな甘酸っぱさと体に染み渡るような味わいが口コミで瞬く間に広まってしまった。
这被训练过后的士兵们冷却下来的饮料备受赞誉,因为它有一种爽口微酸并渗透到身体的味道,通过口碑传播得很快。
(同じものを出しても芸がないし……うーん、炭酸水で割ってはちみつレモンソーダにするかな? これなら日ノ本初と言えるだろうし)
(就算拿出同样的东西也没有意思啊……嗯,是把它加入碳酸水削成蜂蜜柠檬苏打水吧?这样就可以说是日本第一了)
独特の刺激はあるものの、炭酸入りジュースを初めて飲んだことになると言えば信長のご機嫌も良くなるだろう。そう思った静子は、信長に提供する飲み物を作るために厨房へ向かった。
虽然有独特的刺激感,但如果说是第一次喝碳酸饮料的话,信长的心情也会变好吧。静子这样想着,就前往厨房制作能供应信长的饮料了。
しかし静子は濃姫の存在を失念してしまっている。真に日ノ本初を名乗ろうと思うのならば、彼女がいない時でなければならないという事に思い至らなかった。
然而静子忘记了浓姬的存在。如果她真的想要自称日本第一的话,她必须意识到这件事只有在没有浓姬在场的时候才能实现。
信忠が率いる本隊の進軍速度は誰しもが予想しえない程のものであった。長可の出発から遅れること4日で後を追い始めた本隊だが、長可が大砲を持ち出したこともあって岩村城に着いた時にはその差が1日まで縮まっていた。
信忠率领的主队前进速度之快,超出了所有人的预期。主队在长可出发后追了整整四天,不过由于长可带了大砲,最终在到达岩村城时只落后一天。
しかし長可が大砲を岩村城に残していったことにより、再び差が開くこととなる。信忠の率いる本隊が占領下にある岩村城に到着し、戦後処理や中継拠点としての整備をしている間にも先遣隊は木曾福島城を目指して行軍していた。
然而,由于长可把大炮留在岩村城,差距再次拉大。由信忠率领的主队到达被占领的岩村城,并在处理战后事务和作为中转站的同时,先遣队正在朝向木曾福岛城行军。
そうして押っ取り刀で木曾福島城へと到達した先遣隊だが、城は包囲されるどころか離れた地点に陣を張った武田軍と睨み合っており、時折小競り合いが発生する程度という状況に拍子抜けすることとなる。
然后,先遣队带着押刀到达了木曾福岛城,但城不仅没有被包围,反而与远离该地点的武田军对峙,只有偶尔的小冲突发生,情况出乎意料地平静。
木曾福島城に入った先遣隊は城主の木曾義昌と合流して部隊の再編制を行い、籠城から一転して武田軍へと急襲を掛ける策に出た。元より地の利は木曾側にあり、周辺の土地を知り尽くしていることを利用し、派手に歩兵部隊を並べると武田軍を威圧するように進軍を開始する。
进入木曾福岛城的先锋队与城主木曾义昌会合,重新组建部队,采取突袭武田军的策略。木曾一方充分利用地利之便,熟知周边地形,派出大规模步兵队伍,威慑武田军,并开始行进。
予想以上の規模となった長可・木曾の連合部隊を目にした武田軍が慌てている間に、山を知り尽くしている木曾軍の案内を受けた長可軍の新式銃部隊と、木曾軍の鉄砲隊や弓隊が山々の峯に隠れつつ配置についた。
看到超出预期规模的长可・木曾联合部队,武田军惊慌失措。在此期间,熟知山地地形的木曾军提供了引路,长可军的新式枪部队、木曾军的火枪部队和弓箭手已藏在山峰之间,做好了布阵。
開戦の合図は新式銃による一斉射撃の音で始まった。正面から迫る大軍に目を奪われていたところへ横合いから強烈な一撃を受けたのだ。
开战的信号是来自新式枪支的齐射声。正当面对迫近的大军,突然遭到了侧面的强烈攻击。
距離があったことと、木々に遮られて狙いが逸れたこともあり、それほどの犠牲者は出なかったのだが、意識の外から攻撃を受けた武田軍は浮足立った。
由于距离太远,再加上被树木遮挡射击偏了,所以并没有造成太多伤亡。然而,受到意识之外的攻击后,武田军的士气却受到了影响。
その間にも長可・木曾連合部隊は正面から距離を詰めており、更に周囲から矢や鉄砲の弾が降り注ぐ状況に武田軍は竹や木を束ねた盾で防御しつつ、むしろ前に打って出ることで混戦に持ち込み、矢や鉄砲の雨を無効化しようとした。
与此同时,长可和木曾联合部队正在逐渐靠近正面,而武田军队则在竹木盾的保护下,积极向前进攻,试图引起混乱,并使箭和炮弹失效。同时,他们也要应对从周围不断降落的箭矢和炮弹。
一方、長可・木曾連合部隊は武田軍の行動を予測していたように後退をはじめ、武田軍は銃弾と矢に追い立てられるようにして鳥居峠へと誘い込まれてしまい、ここで両軍が本格的に激突することになった。
一方,长可・木曾联合部队似乎已经预测到了武田军的行动并开始后退。而武田军却被追击着用枪弹和箭矢追逐到了鸟居峠,导致双方在这里发生了激烈交战。
鳥居峠は険しい一本道であるため大軍がぶつかるには不向きであり、どうしても部隊が長細く伸びてしまう。前方は長可・木曾連合部隊に塞がれ、後ろは味方の部隊が詰まっており身動きの取れない状況で更に側面から銃撃を受けるという死地に武田軍は誘い込まれてしまった。
鸟居峠是一条陡峭的单行道,不适合大军对决,部队只能沿着一条长长的线路延伸。前方被长可和木曾联合部队堵塞,后方则是友军部队拥挤在一起,无法动弹。武田军正被引诱进入一个从侧面遭受枪火攻击的死亡陷阱。
こうして武田軍は少なくない犠牲を出しながら這(ほ)う這(ほ)うの体(てい)で敗走し、これを長可・木曾連合部隊は伏兵としていた鉄砲及び弓部隊と合流して追撃することになる。
这样,武田军受到了相当大的伤亡,并在逃跑中艰难前进。长可·木曾联合部队利用设下的伏击,与持有火枪和弓箭的部队会合并进行追击。
撤退を続けた武田軍は奈良井川とその支流である田川に挟まれた桔梗ヶ原で陣を立て直す。奈良井川の扇状地であり、原野の広がる台地となっている桔梗ヶ原は大軍同士がぶつかり合うのに申し分のない立地であった。
继续撤退的武田军在奈良井川和其支流田川之间的桔梗原地设置阵地。桔梗原地是奈良井川扇形平原和广阔原野的台地,是两大军队展开对抗的理想地点。
しかし、悲しいかな武田軍はそれまでに犠牲を払いすぎ、すでに数の優位性を失ってしまっていた。勝ちいくさで勢いに乗った長可・木曾連合軍と、数で劣る上に士気の下がった武田軍がぶつかり合えば、結果は火を見るよりも明らかであった。
然而,可悲的是,武田军在此之前付出了太多的代价,已经失去了数量的优势。如果长可·木曾联合军在战斗中保持胜势,而士气低落且数量不足的武田军相对抗,结果显然是不言自明的。
終始織田方優勢で状況が推移し、またしても武田軍は散り散りに敗走することとなる。敗走する敵を追撃して刈り取るのが戦国の習いだが、ここにきて長可・木曾連合軍に問題が持ち上がった。
始终织田方势大力沉,局势进展,武田军再次溃逃。 追击并收割溃逃的敌人是战国的惯例,但此时长可·木曾联合军出现了问题。
「これ以上の追撃は許可できぬ! 南回りで侵攻しておられる勘九郎様(信忠のこと)と足並みを揃えるためにも、ここ桔梗ヶ原に陣を敷いて上原城を攻める足掛かりとすべきであろう!」
“不可再允许进一步追击!为了与南回线入侵之勘九郎大人(信忠之事)步调一致,我们应该在此桔梗原设阵,并将攻击上原城作为起始点!”
「敵の大部分は北の深志(ふかし)城(後の松本城)を目指して落ち延びた。これを放置しておいたら上原城を攻める際に背後を突かれるって言ってんだよ!」
“敌军大部分已逃往北方的深志城(后来的松本城),如果不对其进行应对,将在攻打上原城时遭到背后袭击。”
長可はあくまでも追撃を主張するのに対し、先遣隊の軍目付(いくさめつけ)として同行している織田長益(ながます)は足場固めをすべきだと主張したため意見が分かれた。
长可坚持要进行追击,而作为先遣队的军目付参加的織田长益认为应该稳固立足点,因此意见分歧。
長益は信長の弟に当たり、流石の長可であってもこれを無視することは出来ない。しかし長可は自分の主張に理があると考えており、長益の意見に従うつもりは毛頭なかった。
长益是信长的弟弟,即使是长可也无法忽略他的存在。 但长可认为自己的观点是有道理的,所以他无意听从长益的意见。
当初の先遣隊を任されていた団(だん)平八(へいはち)もまた長可に同調したため、完全に意見が分かれ平行線となり、互いに妥協することなくぶつかり合った。
当初的先遣队被委托给团平八,但他也同意了长可的观点,因此意见完全分歧,成为平行线,彼此不妥协地相互冲突。
「俺は上様から好きにして良いと仰せつかっている! それに深志城には馬場昌房(まさふさ)が詰めているって言うじゃないか、ここに武田の残党が合流したら無視できない勢力になっちまうぞ!」
“大家都知道我可以自由地做我想做的事,而且深志城里驻守的是马场昌房,如果加入武田残党,我们的力量将无法忽视!”
長可は軍議の場に置かれていた長机へ思いきり拳を叩きつけて叫んだ。長可の剛力に長机の脚が耐えきれずにへし折れ、上に載せられていた戦況を示す略図などが散乱する。
长可一拳猛击放在放置在军议场上的长几案上,大声喊叫。因为长可的强力,长几案的腿不堪重负,断成了两截,上面显示战况的略图等东西散落一地。
「それとも何か? 絶好の機会を見逃して敵が態勢を立て直すのを指咥えて見守った結果、まんまと背後を突かれて負けましたって、お前は上様の前で言えるのか!?」
“还是想说什么?你能在主上面前说你错过了一个绝佳的机会,让敌人重新站起来,然后在被背后偷袭后被打败了吗?”
長可は激情に駆られるまま、脚の折れた長机の残骸を掴んで投げ捨てる。決して軽くはない長机が軽々と宙を舞い、陣幕を支える幕串にぶつかると盛大になぎ倒しながら砕け散った。
长可被激情所驱使,抓住断腿的长凳残骸并扔掉。这长凳绝不轻巧,轻盈地飞转中撞到支撑帐篷的幕桩,摇摇欲坠并最终碎裂倒下。
「これ以上腑抜けには付き合ってられん! 俺は俺で勝手にやらせて貰う。残りたいやつらはこの陣に引きこもっておれば良い! アレ(・・)は深志城を攻める俺たちが持っていくからな!」
"我不能再和这些软弱无力的人在一起了!我自己会做我想做的事。想留下来的人可以呆在这个阵营里!那个东西(・・)我们会带去攻击深志城!"
そう言い捨てた長可は、まさに怒り心頭といった様子で陣を出て行った。慎重派を纏める長益は、長可の嵐のような暴れっぷりに呆然としていたが、それでも彼を引き留めよとは言わなかった。
那个说完这番话的长可气得满头大汗,愤怒地离开了阵地。负责组织谨慎派的长益惊愕地看着长可暴躁的行为,但仍然没有说服他留下来。
軍目付の意見に従わないというのは明らかな軍規違反なのだが、荒ぶる長可を相手にそれを咎められる者はいない。長可に同調する団なども、彼に続いて陣を退出し、寒々しい空気の中それでも軍議は続けられた。
不从军目付的意见,明显就是违反军规,但是没有人能指摘狂暴的长可。支持长可的团队也随着他一起撤离,虽然气氛阴沉,但军议仍在继续。
「森様、本当によろしいのですか?」
"森先生,您真的确定吗?"
「丸一日も足止めを食ったんだ、これ以上遅れるわけにはいかん」
"我已经被阻止了一整天,不能再继续拖延了。"
長可の後を追いながら側近の一人が訊ねる。長可は何でもないとでも言うように手をひらひらと振って応じた。
一名亲信跟随在长可的身后问道。长可摆手表示一切都没事,轻松地回答了他。
長可の対応に嘆息しながらも、側近は慌ただしく出立の準備をしている兵士たちへ視線を向ける。彼が見つめる先には新式銃を装備した銃兵100名が、各自の装備と荷物の確認を行っていた。
尽管长可让人叹息,但他的助手急忙注视着准备出发的士兵们。他注视的方向有一百名装备了新式枪支的士兵正在检查他们各自的装备和行李。
織田家と武田家の運命が交錯し、その後の盛衰を決定づけた『三方ヶ原の戦い』でいくさに関する一大パラダイムシフトが発生する。
在织田家和武田家的命运交汇之后,"三方原之战"决定了之后的兴衰,引发了有关战争的重大范式转变。
今では静子の配下として間者を取り纏めている真田昌幸の兄である、亡き真田信綱が悟ったように単純に兵士の多寡(たか)がいくさの趨勢(すうせい)を決定する時代は終わりを告げた。
现在已经结束了决定战争趋势的简单士兵数量时代,就像真田信綱已经意识到的那样,作为静子手下的代理人,真田昌幸的兄弟。
鉄砲の伝来以降、その傾向はあったものの新式銃の登場によって決定的となる。即ちどれだけ鉄砲と銃弾の数を用意できるかが、勝敗を左右する大きな要因となったのだ。
自从火枪出现以来,虽然这种趋势一直存在,但是随着新式步枪的出现,它变得决定性了。换句话说,准备多少火枪和子弹已经成为左右胜负的一个重要因素。
一口に同じ鉄砲と言っても、従来の火縄銃と静子軍が制式採用している新式銃とでは、隔絶した性能差が存在することを三方ヶ原の戦いが証明してしまった。
“即使口中说出的是相同的火器,但是传统的火绳枪和被静子军采用的新式枪支之间存在着明显的性能差距,三方原之战已经证明了这点。”
その後も新式銃の拡充が図られた結果、新式銃を装備した銃兵は正規兵3000名を数え、訓練中や予備役(よびえき)となっている予備兵が500名、更に銃兵の観測手も務める支援兵が3500名を定員とする大部隊になっている。
随后,新式武器的增加导致装备新式武器的士兵数量增至正规士兵3000人,此外还有500名正在接受培训或担任预备役的预备士兵,以及担任瞄准员等支援职务的支援士兵,总规模达到3500人的大队伍。
約7000名という大所帯を統括するのは初期から変わらず静興(しずおき)(玄朗のこと)だが、流石に直轄で管理できる限界を超えているため正規銃兵500名、支援兵500名を合わせた1000名で7つの大隊を構成し、それぞれに大隊長を置いて統括する。
约7000名大批人员的统领者从一开始就是静兴(玄朗的事情),但是由于超越了能够直接管理的极限,因此将正规枪兵500名和支援兵500名组合在一起,共同组成了7个大队,并在每个大队中设置了大队长来负责统领。
更に大隊の下に定員250名の中隊を4つ配置し、その下に定員50名の小隊を5つという編制を取っている。新式銃兵の需要が高いため、基本的に小隊単位での派遣が行われる。
此外,他们将4个由250名士兵组成的连分配到一个营下面,并采取了一个由5个50名士兵组成的小队构成的编制。由于对新型步兵的需求很高,因此基本上是以小队为单位进行派遣。
「本当に銃兵2小隊100名全員を連れていかれるのですか? 彼らは先遣隊全てに対して割り振られたはずでは……」
“您真的要带走步兵2队的全部100名成员吗?他们应该都已经分配给了先遣队的任务……"
「アレ(・・)を扱えるのは支援兵だけだからな、全員連れて行くのが当然だ。それにここに置いていったら、また自分の陣営に取り込もうと引き抜きを始めやがるからな。実働部隊を権威付けのお飾りにするような馬鹿には勿体ないだろう?」
“只有支援兵能够操作那个(・・),所以带上全部人员是当然的。而且如果把它放在这里,自己的阵营会试图招募回来。对于把实际执行部队用作权威装饰的傻瓜来说,这太可惜了吧?”
「誰も引き抜きに応じないので、どんどん勧誘の手口が強引になっているとの苦情がありました。仮に引き抜いたところで装備と練度の維持すらできないでしょうに」
“由于没有人响应挖角,越来越多的投诉声称招募手段变得强制性。即使挖角成功,他们也无法维护装备和训练水平。”
「それに熱狂的な静子信者がそれなりの人数いるからな」
“而且静子有热情的信徒,人数相当可观。”
「森様もお仲間ですよね」
"森先生也是我们的伙伴,对吧"
「何か言ったか?」
“你说什么了?”
「いえ、何も」
不,什么都没有。
長可が睨みを利かせるが、側近は素知らぬ顔でとぼけて見せる。側近の態度に舌打ちを一つした長可だが、意外にもそんな側近を彼は気に入っていた。
长可瞪眼示威,但亲信却装作毫不知情的样子。长可嘴里哼了一声,但出乎意料地,他却很喜欢这种亲信的态度。
「ところで森様、深志城を攻略された後は再びこちらに戻られるのですか?」
"顺便问一下,森先生攻陷深志城后会回到这里吗?"
「その予定だ」
"那是计划中的事情"
「承知しました。それでは私も出立の準備をして参ります」
"我知道了。那我也开始准备出发了。"
平城(ひらじろ)とは言え、本丸・二の丸・三の丸ともに水堀で隔てられているため守りが堅いことで知られた深志城を、当たり前のように攻略できる前提で話す主を頼もしく思う側近であった。
虽然平城被称为“平津”,但身为近臣的他仍然认为深志城因本丸、二之丸和三之丸都被水堀隔开而防御坚固。因此,他对那位将深志城攻陷视为理所当然的人充满了信赖。
長可が率いる部隊が桔梗ヶ原を出発し、一路深志城を目指して北上するも敵の影は見受けられなかった。
长可率领的队伍离开桔梗之原,一路向北前往深志城,但没有发现敌人的踪影。
敵の後を追うには時間が経過してしまっていることもあるが、深志城は実に16もの城が周囲に存在するという要塞地帯を形成しているため、その何処に残党が逃げ込んでいても不思議ではない。
追敌有时可能已经耗费了一定的时间,但深志城周围有16座城市形成了要塞地带,逃亡者可能藏匿在任何地方。
誰にも邪魔されることなく北上を続けていた長可軍だが、進路沿いの最も南に位置する赤木城が見えるところまで進んだ辺りで足を止めた。
长可军毫不受任何干扰地向北前进,但在接近位于航线最南端的赤木城可见范围时,他停了下来。
何があった訳でもなく、唐突に長可が全軍停止を告げたためだ。そして長可の命令で周囲の山を望遠鏡で見まわすと、ちょうど道が細くなっている箇所の崖上に数名の兵士が伏せているのを見つけた。
突然间,长可下令全军停止,原因不明。在长可的命令下,他用望远镜查看周围的山脉,发现在一些狭窄的道路上有几名士兵藏匿在崖上。
「良くお気づきになりましたね」
“您很敏锐地注意到了”
「いや、俺だって見えちゃいなかったさ。ただ、俺ならここに兵を伏せるだろうなって言う好立地だったからな、念のため探らせたまでだ。敵はこちらに気付かれているとは思うまい、小休止のふりをしながらアレ(・・)を準備しろ」
“ 不,我也没看到。只不过这是个我觉得很适合在这里隐藏军队的地处,为了保险起见就搜查了一下。敌人应该不会发现我们,只是装作休息的样子准备好那个东西。”
そうして長可の指示したように部隊全体が小休止を始めると、対する赤木城の伏兵は少しでも敵の情報を得ようと物陰から身を乗り出してきた。長可軍の兵士は携帯している水筒から水を飲んだり、携行食を口にしたりしながらも周囲を警戒し続ける。
随着长可的指示,全体部队开始小休息。对应的赤木城伏兵则从隐蔽处探出身体,尽可能地获取敌军情报。长可军士兵们一边喝水、吃口食物,一边继续保持着周围的警戒。
赤木城の兵士たちは身振りで誰かに合図しているようで、見えていない場所にも兵士が伏せているであろうことが判る。しばらく休憩を取ったのち、長可の号令に従って再び行軍を開始するように見えた長可軍だが、行軍にしては妙な形に陣形を組んでいた。
赤木城的士兵们身振着向某人发出信号,可以看出即使在看不见的地方也有士兵隐蔽。在休息了一段时间后,听从长可的号令,长可军似乎再次开始行军,但他们的阵形却很奇怪。
そして武器を持たずに大きな荷物を背負っている兵士が前方に進み出ると、背嚢から革袋に包まれた棒状のものを取り出して何やら作業を開始する。
当一位没有武器的士兵背着沉重的行囊向前走时,他从背包里拿出了一个包裹在皮袋中的棒状物品,开始进行某种操作。
それは光を反射しないようマットな黒に塗装された鋼鉄製と思わしき筒状の物体に、一本足が生えたような奇妙な外見をしていた。彼らはそれを斜め45度ぐらいに傾けて地面に設置すると、両膝で挟むようにして固定し、筒の先端から拳大の物体を滑り込ませる。
它是一个似乎是钢铁制成的圆筒形物体,被涂成了无光泽的黑色,并具有类似于长着一条腿的奇怪外观。他们将其倾斜约45度地放置在地面上,并用双膝夹紧以固定,然后从筒的末端滑入一个拳头大小的物体。
最初に起こったのはズドンという腹に響くような重低音、次いで奇妙な筒状の部品が火を噴いた。謎の攻撃は崖上に伏せていた赤木城の部隊を軽々飛び越え、遥か後方に風切り音とともに死の雨を振りまいた。
最初发生的是一声深沉的巨响,仿佛在肚子里回响;接着,一个奇怪的筒状部件喷出了火焰。神秘的攻击轻松地越过了躺在悬崖上的赤木城部队,并在远处伴随着风声播撒死亡之雨。
長可が用いたのは一般に擲弾筒(てきだんとう)と呼ばれる兵器であった。足満謹製のそれは墜発(ついはつ)式(落とし込み式)と呼ばれる構造をしており、砲口の先端から砲弾を落とし込み、その砲弾底部のファイアリングピンに激突することで発火する。
长可使用的是一种通常称为榴弹枪的武器。足满纪念品的枪是自由投弹方式的结构,炮弹从炮口顶端投入,通过撞击炮弹底部的点火销来点燃炸药。
砲弾底部には発射用の爆薬が込められ、これが起爆することで砲弾底部を膨張させつつ背後に燃焼ガスを叩きつけることで撃ちだされる。爆圧によって膨張した砲弾底部は、砲身に設けられたライフリングに噛み込むことで回転して直進力を得る。
炮弹底部装有发射用的爆药,当其起爆时,会使炮弹底部膨胀并将燃烧气体向后推进并发射出去。炮弹底部受爆压膨胀后,会咬合在枪膛上的膛线并旋转,以获得直进力。
撃ちだされた砲弾は安定翼と呼ばれる羽状の部品によって高い確率で先端から着弾し、その衝撃で更に砲弾内の爆薬が起爆すると爆風と共に金属片をまき散らして周辺を攻撃するのだ。
炮弹被射出后,靠着称为稳定翼的羽状部件,以高概率从顶端击中目标并使弹内炸药爆发,产生爆炸和金属碎片散布的冲击波,对周围造成攻击。
要するに手榴弾を撃ちだすグレネードランチャーを設置式にした迫撃砲に近い武器であった。撃ちだされた砲弾は、森の中という事もあり木々に遮られて直撃したものは少なかった。
简而言之,它是一种类似于迫击炮的武器,其设计思想是将手榴弹发射器改成固定式。发射的炮弹很少直接击中,因为森林中有很多树木挡住了它。
しかし、上空から猛烈な勢いで降り注ぐ鉄片を受けた方は堪らない。広範囲にわたって無差別に振りまかれる破片によって、赤木城の多くの兵士が負傷し恐慌に陥ったのか、または砲撃を止めるべく突撃をしようとしたのか。
然而,从空中猛烈降落的铁片无情地袭击着人们。由于被散布在广泛区域的碎片所导致的严重后果,许多赤木城的士兵受伤并陷入恐慌,他们是想停止炮击还是要发起冲锋呢?
とにもかくにも隠れていた場所から飛び出すと、一部の者が長可軍に向けて攻撃を加えようとした。しかし、それを待ち構えていた長可軍がみすみす攻撃されるのを待つはずもなく、新式銃の銃撃や弓での射撃によって次々と討ち取られていった。
从躲藏的地方跳出来后,一些人试图对着长可军发起攻击。然而,等待他们的长可军没有坐以待毙,而是用新式枪支和弓箭一一击败了他们。
「ふん、さては岩村城から落ち延びた奴が情報を伝えたな。大砲を前に籠城は無意味と悟って、野戦を挑むべく待ち伏せに出たってところだろう」
哼,看来是从岩村城逃出来的人带来了情报。他们已经认识到在大炮面前守城已经没有意义了,现在应该已经出击埋伏等待野战了。
「この先には小屋城がありますが、そちらも打って出てきますでしょうか?」
“这里前方有一个小屋城,你们也会前来攻打吗?”
「どうだかな? 今の攻撃を受けて逃げた奴が知らせれば、籠城するかもしれないな。それならそれで攻めようはある」
“这样如何?如果那些逃跑以躲避当前攻击的人发出通知,那么可能会试图困守城池。如果发生这种情况,我们就可以发动攻势。”
果たして長可の言葉通り、次の小屋城では城門を閉ざして籠城された。長期戦になると補給の受けられない長可軍が不利となるため、擲弾筒で今度は徹甲弾を打ち込んで城門を破砕し、同じ要領で防壁を無効化して瞬く間に制圧した。
果真如长可所说,下一座小屋城被守城围困,并关闭城门。由于长期战争无法得到供应,长可的军队处于不利地位,因此他们使用榴弹筒发射穿甲弹摧毁了城门,并以同样的方式使防御墙失效,最终迅速制服了敌人。
ここまで容易く城を攻略できたのには運の要素も影響している。この一帯は数年前に焼岳(やけだけ)の噴火被害を被っており、未だに復旧しきれていなかった。何にしても動員できる兵力が少ないため、少数部隊の長可軍に良いように蹂躙(じゅうりん)されてしまう。
攻陷这座城市如此容易,也受到了运气因素的影响。这个地区在几年前曾受到焼岳火山爆发的灾害影响,至今仍未完全恢复。由于可以动员的军队数量很少,因此少数部队被敌军所蹂躏。
次に立ちふさがった井川城に至っては、砲弾が撃ち込まれた途端に兵士が身に着けた笠を振り(・・・・)(当時の投降する際に行う合図)、次々に投降してしまった。その様子を見て城主も降伏し、ほぼ無血開城と相成った。
随后来到挡路的井川城,一旦炮弹落下,士兵们就摇动着戴在身上的帽子(当时投降的信号),接着一个接一个地投降了。看到这种情况,城主也投降了,城池便几乎毫不战斗地被攻陷了。
実際には擲弾筒の砲弾は静子軍にとってもコストが重く、それほど大量に準備できていないのだが、轟音と共に天から降り注ぎ着弾と同時に広範囲に被害をばら撒く未知の兵器に武田軍は心底震えあがっていた。
实际上,榴弹炮的炮弹对于静子军来说成本很高,而且他们并没有准备那么多,但是武田军听到这震耳欲聋的轰鸣声以及降落和爆炸的同时,他们真的感到未知的武器对他们造成了广泛的损害而心底颤抖。
最終的に深志城に辿り着いた時には、残りの砲弾が十数発というところまで消耗していたにもかかわらず、最初の一斉射を受けただけで敵軍が降伏し、それを受けて周辺の城も武装解除に応じることになる。
最后抵达深志城时,尽管剩余弹药只有十数发,但仅受到一轮齐射就使敌军投降,随后周边的城池也纷纷解除武装。
一方西国では秀吉の播磨平定が佳境を迎えていた。信長より足場固めを命じられていた秀吉は、小寺政職(まさもと)から奪った姫路城の改築に着手した。
一方西国,秀吉的播磨平定进入佳境。秀吉接受信长的差遣,开始加固据点。他从小寺政职手中夺得姬路城,并开始着手重建。
これは毛利征伐の前線拠点とする名目だったのだが、ちゃっかり本丸に天守を増築するよう指示を出しており、防衛機能よりも見た目の豪華さを優先しているところから、秀吉が光秀を意識していることが窺えた。
这个据点原本是为了攻打毛利家而设立的,但实际上却指示增建天守楼,从它的防御功能转向优先考虑豪华外观。这显示出秀吉对光秀的意识。
「皆の尽力によって、もう一息で播磨平定が成る。ここが踏ん張りどころぞ!」
「在大家的共同努力下,播磨很快就能够平定了。现在是我们集中力量的时候!」
秀吉は部下の働きぶりを褒めつつも発破をかける。播磨と但馬が平定されれば、本格的に毛利攻めが始まるため、秀吉は毛利戦での主導権を握ろうと画策していた。
秀吉表扬手下的工作表现,同时强调加强施压。一旦平定了播磨和但馬,就会正式开始攻击毛利家,秀吉计划在毛利战争中牢牢掌握主导权。
ここを逃せば光秀との差が決定的になると考えた秀吉は、少しでも早く播磨を平定してその後の戦役に対する準備が整っていることを信長にアピールしたいという狙いがあった。
丰臣秀吉认为如果此时逃走,与光秀的差距将是决定性的,他想尽快稳定播磨,并向信长表明他已准备好应对随后的战役。
当然秀吉のこの動きは光秀も承知しており、二人は互いに競うようにして任地の平定を急いでいる。
当然,秀吉的这个举动光秀也知道,他们互相竞争,加快了平定他们的任地的步伐。
「竹中殿、播磨は昨年不作の地域が多く、民は勿論のこと将兵に至るまで満足に食えておりませぬ。食い扶持(ぶち)を保証してやれば取り込めるかと」
「竹中殿,播磨地区去年收成不好,民众和士兵连基本口粮都吃不饱。如果能保证他们的生活费用,或许可以争取到他们的支持。」
秀吉が播磨征伐で手に入れたものの内、彼自身が自分には過ぎたるものと評した黒田孝高(よしたか)(通称として黒田官兵衛、以降は良く知られている官兵衛とする)が竹中半兵衛に意見を述べる。
在豐臣秀吉的播磨征伐中所獲得的東西之中,被他自己評價為過於優秀的黑田孝高(俗稱黑田官兵衛,以下簡稱官兵衛)向竹中半兵衛表達了自己的想法。
信長が播磨侵攻に着手した頃から官兵衛は、信長の将来性に着目していた。官兵衛は元々前述の小寺政職に仕えていたのだが、荒木村重が謀反の兆しを見せたことに呼応しようとしたため、主君を諫めたところ逆に土牢に幽閉される。
自从信长开始侵略播磨之后,官兵卫就开始注重信长的未来性。官兵卫原本是侍奉于前述的小寺政职之下,但因为想响应荒木村重叛变的迹象,主君遭到谏言后反而被囚禁在土狱里。
最終的に荒木は謀反に至らなかったものの、小寺は秀吉の調略に応じなかったため討ち取られることとなり、その際に幽閉されていた官兵衛は救い出されたことから秀吉に仕えるようになった。
最终荒木没有发动叛乱,但因为小寺拒绝了秀吉的诱惑而被杀,被幽禁的官兵卫在救出后开始为秀吉效力。
しかし最後まで信長に反抗していた小寺の家臣であったため、人質として息子の松寿丸(しょうじゅまる)を差し出したものの信用されず、人質の待遇も決して良いものではなかった。
然而,由于小寺家臣始终反抗信长,因此即使作为人质提供了他的儿子松寿丸,也没有得到信任,人质的待遇也并不好。
この状況を打開したのが竹中半兵衛である。半兵衛は早い段階で官兵衛の能力を見出し、秀吉に彼の待遇を改善するように訴えたのだ。
竹中半兵卫解决了这种局面。半兵卫在早期就看出官兵卫的才能,并向秀吉请求改善他的待遇。
それを知った官兵衛は半兵衛の取りなしに甚(いた)く感謝し、彼への感謝を子々孫々に至るまで忘れぬよう石餅(こくもち)という竹中家の家紋を使うようにしている。
得知此事,官兵卫非常感激半兵卫的帮忙,并使用竹中家族徽章「石餅」以表达对他的感激之情,直到子孙后代。
「ふむ。食い扶持を与えたとて喉元過ぎれば……となるのでは?」
“嗯。就算给了口粮,但过了喉咙后又能怎么样呢?”
「そこは飢えぬ最低限に加減し、これに感謝するか不満を募らせるかで篩(ふるい)にかけるのです。不満を抱く輩を監視し、謀反の兆しあらばこれを討てば良いでしょう。少なくとも扶持を保証したという大義はございます」
"在那里,必须控制到不至于挨饿的最低限度,并选择是感激还是不满。对持怨言者进行监视,如有叛变的迹象就应该镇压。至少我们保证了提供扶助的大义。"
「なるほど。噂に違(たが)わぬ辣腕(らつわん)を振るわれる」
"原来如此。果然不虚传,您的能力非常强大。"
半兵衛は官兵衛の策に感心する。官兵衛は半兵衛の取りなしを受ける前から、信用されないことに腐らず積極的に播磨平定の献策を続けた。
半兵衛对官兵衛的计策感到赞赏。尽管半兵衛未曾替官兵衛介入过事务,但官兵衛依然积极地提出了平定播磨的建议,从未被怀疑。
秀吉の播磨征伐が滞りなく進むようになったのは半兵衛と官兵衛が互いに影響し合うようになったお陰であろう。何より官兵衛は播磨に通じており、彼の立てる策はそれと判っていても回避できずに見事にはまった。
丰臣秀吉的播磨征伐能够顺利进行,这要归功于半兵卫和官兵卫之间相互影响的结果。最重要的是,官兵卫熟悉播磨,即使意识到他的计划,也无法避免成功地执行了。
官兵衛も半兵衛という自身に伍する知恵者の意見を受け、一層研ぎ澄まされた献策をできるようになっている。勿論、彼らの策を受け入れる秀吉の度量と、その策を実行できる実働部隊の働きあってのことではある。
官兵卫也接受了半兵卫等智者的意见,使自己能够提出更加精炼的建议。当然,这需要秀吉接受他们的策略,并有执行该策略的实际行动部队。
「おお、このような場所におられましたか」
"哦,您在这样的地方吗"
官兵衛と半兵衛が互いに策に関して意見を交わし合っていると、ふらりと秀長がやってくる。彼はいつも通りの飄々(ひょうひょう)とした態度で薄く笑みを浮かべていた。
当官兵卫和半兵卫彼此交换策略意见时,秀长突然出现了。他像往常一样轻松自在地微笑着。
秀長の姿を目にした官兵衛の表情が引き締まる。官兵衛は秀吉に仕え始めた当初から彼のことを胡散臭(うさんくさ)く思っていた。彼と接するようになり、人となりが解るようになると、まごう事なき要注意人物だと確信するに至る。
看到秀长的身影,官兵卫的表情变得紧绷。自从开始为秀吉效力,官兵卫就一直觉得他可疑。但是当与他接触之后,他才了解了秀吉的真实面貌,确认他是一个不可忽视的人物。
「準備が整いました。近く神戸港に移動し、その後船で尾張へと向かいます。軍議も良いのですが、此度の尾張行きは重大事です。そちらにも意識を割いて頂きたい」
"准备工作已经完成。我们将前往附近的神户港口,然后通过船只前往尾张。虽然军事会议也很重要,但此次前往尾张涉及重大事项。请您也关注此事。"
「……有馬の再建でしたな。しかし、秀長殿の仰る静子殿とやらが本当に資金を投じて下さるのですか?」
“那是有马家的重建。但是,秀长大人所说的静子殿打算真的投入资金吗?”
「ええ、間違いなく出資されます。それだけに留まらず、彼女が投資する事業には必ずや他の者も競い合うように金を出すでしょう」
“是的,无疑会投资。而且不止如此,她投资的企业一定会吸引其他人竞相投资。”
噂はいくつも耳にしておれど、詳しく静子を知らない官兵衛からすれば信じがたい話であった。
传闻听了好些,但官兵卫并不了解静子的具体情况,因此对此信以为真令人难以置信。
「静子様が投資される事業は例外なく大きく成長しております。利に聡(さと)い商人がこれを見逃すことはありますまい。新たに開発されている神戸港の様子はご存じでしょう? あの様に飛躍的な成長を遂げるのです」
「静子小姐所投资的企业无一例外地实现了巨大的增长。精明的商人不可能会错过这个机会。您是否了解神户港正在新开发的情况? 它将实现飞跃式的成长。」
静子を良く知る半兵衛が実例を挙げて論拠を補足する。官兵衛も信を置く半兵衛の言葉に考えを改める。
半兵衛通过举例和补充论据来展示他对静子的了解。官兵衛也因为信任半兵衛的话而改变了想法。
「確かに寂れた寒村だった神戸が、今や多くの商人で賑わい、付近一帯が活気づいております」
“确实曾经是荒凉的寒村的神户,现在因为许多商人的繁荣而热闹起来,周边地区变得充满活力。”
神戸は官兵衛の言うように、元々これと言った特徴の無い寂れた寒村でしかなかった。そこに静子の開発を受けて簡易的な軍港が整備されるや否や、怒涛(どとう)の勢いで商人たちが雪崩れ込んできた。
神户原本只是一个没有任何特色的萧条的寒村,正如官兵卫所说。然而,在静子的发展下,一旦建立了简易的军港,商人们便以惊人的势头涌入神户。
現地の様子を良く知る官兵衛からすれば、整備されたばかりの未だ小さい神戸港周囲の寂れた土地を我先に買い求め、土地が足りなくなれば原野を切り開いてまで整備をする様に困惑するばかりだ。
从官兵卫了解现场情况的角度来看,他们急于购买刚整修过但规模较小、周围荒芜的神户港附近的土地,而且一旦土地不够用,就会感到困惑,不得不开垦荒地以维持建设。
いち早く己の店を整えた商人は、他所から持ち込まれる荷を買い付けたり、船員相手の商売を始めたりと活発に商業活動を始めている。この成長の連鎖はますます加速し、今や港町と言っても遜色のない様相を呈していた。
最早整理自己店铺的商人开始积极开展商业活动,购买从其他地方运来的货物,开始与船员展开生意。这种发展链条越来越加速,现在已经呈现出与港口城镇不相上下的面貌。
更には自前で船を用意し、廻船問屋の走りといった商売を始めるものも出始めている。堺のような大規模港の場合、既得権益でがっちりと囲いこまれていて新規参入が難しいのだが、ここ神戸港ならば西から届いた荷を尾張まで運ぶだけで一攫千金が狙えるのだ。
此外,还有一些人准备自备船只,开始从事类似回旋船业务的商业活动。像堺这样的大型港口存在着既得利益的壁垒,对新进人员来说很难进入市场。但在这里神户港,只要将从西方运来的货物运送到尾张地区,就有可能一夜暴富。
神戸港を起点として熾烈な争いを繰り広げているのは何も海に関するものばかりではない。その身一つで西へ東へと荷を運ぶ棒手振(ぼてふり)が数多く流れてきていた。
在神户港作为起点,展开了激烈的竞争,并不仅限于涉及海洋的事项。许多手提货物(棒手振)也随着他们的身影不断地往东往西流动。
天秤棒一つを肩に担ぎ、前後に荷の入った桶をぶら下げて行商する彼らは、近距離の運搬と販売を担う自分たちの活躍の場が多くあると理解していたのだ。
他们肩扛一根天秤杆,挂着装着货物的桶,走街串巷做生意。他们知道在短距离内运输和销售方面有很多机会来发挥自己的作用。
そして彼らの読み通り、神戸港の拡張工事は順調に進められ、それに伴って港湾関係者や商人たち、更にはその商品を買い求める一般の者たちまでもが彼らの顧客となった。
然后按照他们的计划,神户港的扩建工程顺利进行,随之港口和商人们,甚至购买他们商品的普通人也成为了他们的客户。
あまりに急な繁栄ぶりに海産物はともかく、青物などの供給が追い付かなくなり、港町の更に外側に衛星都市のように農地が広がるようにまでなった。
海产品无论如何也赶不上过于突然的繁荣,蔬菜等青物的供应量也因此跟不上,港口城市更向外扩散,形成了卫星城市般的农田范围。
利水に優れた河川沿いの耕地は人気が高く、大商人と呼ばれる者たちまでもが私財を投じて開墾を始める始末。一等地はすでに静子が押さえているため、外へ外へと開発が広がっていく。
水利优良的河岸耕地备受欢迎,甚至被称为大商人的人们也投入私人资金开始开垦。由于一等地已被静子占据,因此开发范围不断扩大。
「港を中心とした大きな需要を満たすため、周囲にどんどん人が集まって既に港町と呼べる規模に成長しております」
“为满足以港口为中心的巨大需求,周围的人们不断聚集,已经发展成为可以称之为港口城镇的规模。”
「静子殿は計画段階の時点で米と酒米、大豆、蕎麦及び野菜を平地で栽培し、傾斜地では果実の栽培も行うと伝えてきておられました」
“在计划阶段,静子殿表示他们将在平地上种植大米、酿酒大米、大豆、荞麦和蔬菜,并在倾斜的土地上种植水果。”
「随分と手広く扱われるのですな」
"你被相当广泛地处理了呢"
「いえいえ、これは農業だけに過ぎず事業全体のほんの一端に過ぎません。農業の他にも林業、水産業に土木工事から流通に至るまで本当に多くの事業を手掛けられるだけの人材を抱えておられるのです」
“不,这只是农业领域的一部分,只是整个业务的一小部分。除了农业之外,他们还拥有足够的人力资源来处理林业、水产业以及土木工程到流通等各种行业。”
「なんと……」
"「なんと……」" can be translated to "“竟然……”" in Simplified Chinese.
正直なところ、大恩ある半兵衛の言でなければ官兵衛は「そんな万能の存在などあり得ない」と一笑に付していたことだろう。秀長も半兵衛の言葉に対して何の反応も示さない処を見るに、本当のことなのだろうと理解できた。
说实话,如果不是有着巨大恩情的半兵卫这样说,官兵卫可能会一笑置之,认为万能的存在是不可能存在的。看秀长对半兵卫的话没有任何反应,可以理解为这是真实的事实。
(この機会に是非見定めてみたいものだ)
(我一定要趁此机会好好看看。)
百聞は一見に如(し)かずとも言う、これ以上情報を得たところで人物像はあやふやになる一方だ。官兵衛は静子に会うのが楽しみになっていた。
百闻不如一见,即使获取更多信息,人物形象也会变得模糊不清。官兵卫已经期待着见到静子了。