【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 158 [千五百七十七年 四月上旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十七年 四月上旬(*原文网页序列号 - 182)
天目山とは、現在の山梨県甲州市大和町木賊(とくさ)に存在する山である。かつて室町幕府に追われた武田氏13代当主である武田信満(のぶみつ)が自害しており、一度はここで武田氏が断絶していた。
天目山是现在位于山梨县甲州市大和町木贼的一座山。曾经,武田氏13代当主武田信満(のぶみつ)在逃避室町幕府的追捕后自杀,使得武田氏一度在此中断了。
その後再興された武田家最後の当主である勝頼が、天目山を決着の場として選んだのは運命のいたずらであったのだろうか。
武田家最后一任主人勝頼重新兴起后,选择将天目山作为解决问题的地方,这是命运的嬉笑吗?
比較的標高の低い天目山の山頂付近に張られた勝頼の陣は撤去され、下草を刈った上に地面を踏み固めたであろう見晴らしの良い広場が出来上がっている。
相对较低海拔的天目山山顶附近張起的胜势营地已被撤除,取而代之的是垫平了地面并清理了草丛的开阔平台,视野广阔。
朝もやの立ち込めるなか、その広場の中央に床几(しょうぎ)(折り畳み式の腰かけ)に腕組みをして座る勝頼が待っていた。
霧氤氲的早晨,上杉谦信交叉着双臂坐在广场中央的摺叠式腰几上等待着。
そこに僅かな手勢のみを率いた信忠が山道を真っすぐに登ってくる。
带着只有少量手下的信忠直接沿着山路攀登而来。
「……来たか」
"来了"
信忠の姿をみとめた勝頼が呟(つぶや)いた。勝頼は配下を遠く下がらせ、決戦場へは誰も近づかないよう厳命している。
信忠的身影被勝頼注意到,他喃喃自语。勝頼已经将手下远远撤回,并严令不许任何人靠近决战场。
勝頼はおもむろに立ち上がると、傍に立てかけてあった朱塗りの大身槍を手に取った。勝頼のいでたちは武田の誇る赤備(あかぞな)えを身に纏(まと)い、厳めしい面頬までも装着した完全防備である。
“胜隆起身,拿起旁边放的朱漆长枪。胜隆身披武田家代表的红装甲,头戴严峻的面具,处于完全武装状态。”
これに対して決戦場へと現れた信忠はこの時代の常識にそぐわない恰好をしていた。
在决战场上出现的信忠穿着不符合这个时代常识的衣服。
「一騎打ちを申し込んだのはそちらのはず。勝敗に拠(よ)らず自刃すると伝えたゆえ、侮ったか?」
「你向我挑战进行一对一决斗,而无论胜负都要自刎。这是你说的话,难道你看不起我吗? 」
勝頼の問いに対して見届け人である長可(ながよし)を除く配下を槍や刀が届かない位置にまで下がらせつつ応える。
回答勝隆的问题时,除了担任见证人的长可之外,将部属们向枪或剑够不到的地方后退,并进行回答。
「侮るならば一騎打ちなどせずに討ち取っておる。甲斐武田の武を継ぐ漢(おとこ)と認めたがゆえに、この場を設けたのだ。見たところ、気力も体力も充分なようだ」
如果你藐视我,我会杀了你而不需要比试。因为我认为自己是继承了武田家族之武名的男子,所以才设立了这个场合。看起来他的气力和体力都足够充沛。
「施しを受けたゆえでは無いが、本当にそのような恰好で良いのか?」
"不是因为接受了施舍,但真的需要穿成那样吗?"
問われた信忠は確かに奇妙な格好をしていた。足元は織田軍標準の編み上げのブーツに現代のカーゴパンツのようなざっくりとした下履きの上から脛当(すねあて)を身に着けている。
被询问的信忠确实穿着奇怪的服装。他脚穿织田军标准的系带靴,脚踝上套着一层像现代货物裤一样松松垮垮的护腿。
胴体は流石に胴鎧を纏い、腰部をカバーする草摺(くさずり)は勝頼と変わらない。肩から肘までを覆うはずの大袖は取り外され、手首から肘までを覆う籠手がやや大型化していた。
身体穿戴着胴甲,腰部被草摺所覆盖,与胜利相似。原本应该覆盖肩膀到肘部的大袖已被取下,而手腕到肘部的护手略微变大。
頭部に至っては兜一式を一切身に着けていない無防備と言っても過言ではないいでたちであった。
头部甚至可以说是毫不防备,没有穿着任何头盔的装束。
「まさかこの期(ご)に及んで矢を射かけるような真似はせぬであろう? ならば経験で劣る側なりに工夫を凝らしたのだ」
「难道你们认为在这个时期还会冒险去射箭吗?既然是经验不足的人,那我们就要想办法了」。
信忠はそう言うと配下から自身の身長よりやや長い手槍を受け取ると下がらせた。長可は向かい合う二人の中ほどに立ち、邪魔にならぬよう後ろに下がって二人の動向を見守る。
信忠说完后,便接过手下递来的比他略长的长枪,然后退后了一步。长可站在两人之间的中央,为了不妨碍,向后退了一步,注视着两人的动向。
当世具足の完全防備に長大な大身槍を得物とする勝頼に対し、間合いで劣る手槍の他には腰に太刀を佩(は)いているのが見える明らかに軽装の信忠は如何にも不利に見えた。
面对配备完整、手持长枪的胜道,在距离上劣势明显的信忠显得很不利,他身穿明显较轻的防具,除了手枪,腰间还佩戴着太刀。
信忠の準備が整ったのを見た勝頼は手にした大身槍を頭上で大きく円を描くように回して見せると、脇に構えて信忠の方へ穂先を向けて口を開く。
看到信忠准备就绪,勝頼手持大身长枪高举过头,摆动起来如同画出了一个大圆环,随后侧身架枪,将枪尖对准信忠,张口发话。
「ならば最早何も言うまい。これより先は口先では無く己の武を以て意を示そう。いつでも掛かって参れ!」
"既然如此,我不再多说。从现在开始,不再是空口说白话,而是要用自己的武器来表达意志。随时准备好迎接挑战!"
勝頼はそういうと足を止めて信忠の出方を窺った。対する信忠は間合いで劣るため、迂闊(うかつ)に踏み込むこともできずすり足でじりじりと間合いを詰める。
胜頼听到这话停住了脚步,暗自留心着信忠的出招。信忠因与胜頼的距离相比较远,便没冒险地向前迈步,而是通过小步快走的方法逐渐拉近与胜頼之间的距离。
後半歩で手槍が相手に届くというところで勝頼が動いた。脇に構えた大身槍を手の中で滑らせるようにして前方へ突き出し、予備動作が殆ど見えないと言うのに充分に威力の乗った突きを放つ。
在手枪即将击中对手的关键时刻,信长发动攻击。他把长枪从侧面推向前方,几乎看不到任何先兆,但这次突刺却具有足够的威力。
相手の動きを注視していたはずの信忠だったが、半瞬反応が遅れたため回避が間に合わず大身槍の進路上に手槍を突き立てて穂先を逸らし、反動で逆方向へと体を逃がす。
注视对手的动作的信忠本应能够躲过来势汹汹的长枪,但由于反应略微落后了一些,因此未能避让开来,只好将手中的短枪刺向长枪前进的方向,将长枪的尖端偏移开来,然后利用反冲力将自己从相反的方向转移。
勝頼の大身槍は穂先が一尺(約30センチメートル)以上もの長さがあり、その刀身とも呼ぶべき穂先が手槍の柄を削りながら突き込まれた。
胜项的大身长枪穗先有一尺长,约30厘米以上,刀身般的穗先在削减了手枪柄后被插入。
本来であれば重量のある大身槍を扱うのは難しく、威力の乗った突きを躱(かわ)されれば大きな隙が生まれる筈であった。
本来处理重量较大的长矛是十分困难的,因为如果避开了带有威力的刺击,就会产生很大的漏洞。
しかし勝頼は側面に逸らされた力の流れに逆らわず、むしろ横向きの力に自身の力と更に体の捻りをも加えて体を折りたたむようにしてコンパクトに大身槍を回転させ、斜め上方から叩きつけるような一撃を放った。
然而,Katsuie并没有反抗流向侧面的力量,相反,他斜身向上转动长矛,利用自己的力量和身体扭转,将长矛紧凑地旋转,然后从斜上方猛击下来。
逃げたところへ叩きつけるように振り下ろされる一撃を見た信忠は、手槍で受けきることは不可能と断じるや体を投げて横っ飛びに回避する。
眼见着被狠狠地挥下的一击击中,信忠断定用手枪抵挡不可能,于是身体一扭,横飞闪避。
地面を転がりながら起き上がった信忠が目にしたのは、再び脇構えに大身槍を携えた隙の無い勝頼の姿であった。
地面滚动着起身的信忠所看到的是再次拿着大身长枪并且没有任何破绽的胜须乡的姿态。
(よもやこれほどまでとは、見誤ったわ)
(没想到会错看到这种程度) translated to Simplified Chinese is "没想到会错看到这种程度".
この一騎打ちを打診する前から勝頼個人の武威については間者に探らせていた。しかし、部隊の指揮に秀でていると言う情報は得られども、勝頼本人が武芸に秀でているという情報はついぞ齎(もたら)されなかった。
在提出这个一对一战斗的建议之前,我们已经让间谍调查了勝頼个人的武力情报。虽然我们得到了他指挥部队的能力很高的情报,但是没有得到勝頼本人拥有极高武艺的信息。
名立たる武芸者が揃っている武田家に於いて、勝頼個人の強さはさほどでもないと信忠が判断したのも仕方ない面もあった。
在聚集着名闻遐迩的武术家的武田家中,信忠认为勝頼的个人实力并不强,这种判断也是有些无可奈何的。
「その鎧、見た目通りの重さではないな?」
"这套盔甲,重量似乎不像表面看起来的那样重吧?"
「ただの一合でそこまで見抜くか。前評判などあてにならぬものよな、元よりこちらは挑む立場。織田勘九郎推して参る!」
“只用了一合酒就看透了吗?那些先前的名声都是不可靠的东西,本来我们就是挑战的一方。我支持织田勘九郎!”
勝頼の指摘は正しい。信忠の甲冑は全て特別製であり、尾張の最先端の技術が惜しげもなく注ぎ込まれた逸品である。
胜应的指摘是正确的。信忠所有的盔甲都是特制的,是尾张最先端技术的杰作,注入了大量的心血。
ただの布に見えるカーゴパンツも、溶かしたガラスが綿菓子を作る機械のようなもので吹き飛ばされ、遠心力を用いて細く細く引き伸ばされたガラス繊維を表側に編み込まれている。
普通的货物裤看起来只是一条布而已,但它实际上是由像吹棉花机一样溶解了玻璃并将其吹散的机器制成的,使用离心力将细小的玻璃纤维编织在表面上。
当然そのままでは肌に触れれば細かい切り傷が出来てチクチクするため、裏側には通常の布地で裏当てが施されていると言う念の入れようだ。
当然原因是如果直接接触皮肤会引起微小切口并引起刺痛,因此在内侧通常会加上一层普通布的垫衬来加强防护。
これだけならば少し丈夫な燃えにくい布に過ぎないが、脛当や籠手部分に用いられている装甲板は更に一味違う。
这只不过是一种稍微坚固、难以燃烧的布料,但是用于胫当和护手部分的装甲板则更为独特。
尾張でしか造れない鋼を冷間(れいかん)線引(せんび)きと呼ばれる技法によって常温のまま細く引き伸ばす。
只有在尾張才能制造的钢,通过称为冷间拉丝的技术,将其冷却至常温并拉伸成细线。
これは水車や畜力では到底生み出せない、蒸気機関による巨大な力を均一に加え続けられるようになって初めて実現できる技術であった。
这项技术的实现是依靠蒸汽机产生的巨大力量,这种力量不可能通过水车或畜力实现,并且需要持续均匀地添加才能实现。
これによりピアノ線程とはいかないまでも、針金というより細いタコ糸ぐらいの鋼線が造られる。
由此制造出的钢丝,虽然不能和钢琴弦相比,但比钢丝更细,有点像章鱼线。
これをメッシュ状に編み込んだ上で赤樫の薄板に幾重にも張り付けられ、それらを樹脂で固めたものとなっている。
这些被编织成网状的部件被多次贴在红栎薄板上,并用树脂固定在一起。
鉄板と変わらない程の強度を持ちながらも、重量は五分の一程という完全にオーバーテクノロジーの防具に仕上がっていた。
这套装备拥有与钢板相当的强度,但却只有五分之一的重量,完全是一款高科技防具。
次は己が先手を取るべく信忠が駆けた。当世具足は矢を防ぐため、隙間を少なくする工夫が施されており、防御力が高い反面視界がどうしても狭くなる。
接下来,为了先发制人,信忠加快了步伐。现代的战备装备为了防止箭矢的伤害,采取了减少空隙的措施,虽然防御力很高,但视野也不可避免地变窄。
勝頼と向き合って左側に駆けることで視界から外れつつ、しかも利き手の裏側に回り込むことで追撃しにくい位置を取る作戦であった。
通过面对胜须丸向左疾驰,使其脱离视线,同时通过绕至非惯用手的后方,采取难以进行追击的位置的战术。
これに対する勝頼の応えは、信忠に完全に背を向けて屈みこむという奇妙なものであった。体を小さく丸め込む姿に、信忠は極限まで押し縮められた発条(ばね)の姿を幻視した。
对此,胜赖的回答是,完全背对着信忠屈服,这是一种奇怪的回答。看着信忠缩成一个小球,他仿佛看到了一个被压缩到极限的发条形象。
背筋に凍(い)てつく氷柱(つらら)を突き込まれたような悪寒に、信忠は咄嗟にその場で飛びあがった。
感到一股像是被冰柱插入背脊般的寒意,信忠瞬间跳了起来。
果たして信忠の足元を閃光が走り抜けた。遅れて風切り音が聞こえるほどの鋭い斬撃が走り抜け、短く刈り揃えられた下草が更に短くなった。
闪光在信忠的脚下闪过。一声锐利的斩击声迟迟传来,短而整齐的草丛被更短地削去。
どのような体勢からでも自由に槍を振るえる尋常ならざる体幹と、鋭い刺突及び斬撃を生み出す剛力。天下無双の侍大将と呼べる恐ろしいまでの腕の冴えであった。
无论处于哪种姿势,都能自由挥舞长枪的非寻常的核心力量,能够产生锐利的刺穿和砍击。他拥有令人惊恐的天下无双的武将大将的臂力和技巧。
「逃げてばかりでは勝負にならぬぞ!」
“只会逃跑是无法成为真正的胜利者!”
「流石に今のは胆が冷えたわ。甲斐の武士(もののふ)は皆これほどまでの力を持っておるというのか……」
「这真是让人毛骨悚然啊。难道甲斐武士都拥有如此强大的力量吗……」
中距離では勝負にならないと判断した信忠は、先ほどのように勝頼の攻撃が届きにくい方向へ駆けつつも距離を詰める。
判断中距离无法取胜的信忠,朝着难以袭击的方向奔跑并缩短距离,如同刚才一样。
大身槍のような長柄の武器は、密着間合いに入られてしまえばリーチが災いして攻撃が当たらなくなってしまう。
长柄武器像大身枪一样,一旦进入密集距离,其攻击范围就会受到限制,无法命中目标。
当然その程度のことは知悉(ちしつ)している勝頼は槍を支える左腕を内側に折り畳み、柄を押し出す右手を大きく外側に回すことでコンパクトな斬撃を放ってきた。
当然,知悉此事的胜庆将其手中的长枪折叠向内,用右手将柄大幅向外扭转,以释放精准而迅猛的短斩。
間一髪でこれを躱した信忠は、勝頼の目前にまで肉薄していた。大身槍の穂先は勝頼の遥か後方へと回っており、今が好機とばかりに信忠が大きく踏み込んだ。
趁机避开,信忠逼近了胜贼的面前。他的重枪顶端已经拐过了胜贼远在后方的身影,正是攻击的绝佳时机。信忠猛地跨出一步。
バシン! という奇妙な音が響いて信忠が大きく後退した。信忠の胴は側面が歪み、よく見ると蜘蛛の巣状の亀裂が走っている。
"巴士!传出奇怪的声音,信忠往后退了几步。信忠的身体侧面扭曲,仔细看有蜘蛛网状的裂缝。"
「なんなのだそれは!? 岩でも叩いたかのようじゃ」
"那是什么啊!?简直就像是用石头砸的一样"
果たして勝頼が放ったのは、槍の石突による打突であった。横薙ぎの斬撃から直線の打突へと繋ぐ隙の無い連携に、信忠は虎の子の胴鎧を凹まされた上に、間合いの外へと弾き出されてしまった。
终于,胜赖发出的是靠矛头打击的攻击,信忠无法从横扫攻击转入直线攻击,由于缺乏默契,他的胸甲被凹陷,同时被弹出武器有效距离之外。
「静子特製の甲冑よ! そう易々とは貫けぬと心得よ!」
「这是静子特制的铠甲!记住,不要以为这么容易就能穿透它!」
そう吼(ほ)えると信忠は三度目の突撃を敢行した。互いの命を懸けた戦いという極度のストレス状況下では、予想以上に気力及び体力を消耗する。
咆哮着,信忠进行了第三次突击。在彼此的生命悬于一线的极度紧张状态下作战,会超出预期地耗费力量和精力。
有効打にはなっていないものの、手痛い一撃を食らった信忠よりも、都度カウンターを放って体力を温存しているように見えた勝頼の方が疲労していた。
虽然没有成功进攻,但是看起来疲劳的是勝頼,他每次都放出反击来保存体力,比起被重击打中的信忠。
視界の外からちくちくと厭らしい攻めをしてくる信忠の行動は、想像以上に勝頼の体力を削り取っていたのだ。勝頼の疲労は発汗を促し、吸水の限界を超えた汗の玉が片目を塞いだ。
信忠从视野之外刺痛地攻击着,这种恼人的行为比想象中更削弱了信忠的体力。勝頼的疲劳导致汗水流出,一颗汗珠超过了吸水的限制,遮住了一只眼睛。
その一瞬の隙とも言えない空隙が運命を分けた。大きく踏み込んだ信忠は手槍を勝頼の眼前の地面に突き立てると、腰の太刀を抜いて転がるように勝頼の脇の下を駆け抜けた。
那一瞬间几乎不能称之为漏洞,却分散了命运。信忠大踏步向前,用长枪插进了眼前的地面,然后拔出了腰间的大刀,从胜卫门的侧身疾奔而过。
手槍が邪魔となって槍を繰り出せなかった勝頼の右腕が宙を舞った。勝頼の右腕の付け根から鮮血が噴き出すが、構わず槍を捨てて左手で腰の太刀を抜かんと手を伸ばした。
扳手枪阻碍了胜道舞动长矛的右臂,它在空中摆动着。虽然从胜道的右臂上沾染了鲜血,但他毫不在意,扔掉了长矛,用左手伸出去拔出腰间的太刀。
再び背後からの斬撃が走り、今度は左腕の肘から先が斬り飛ばされた。両腕を失った勝頼は敗北を悟り、その場に膝を突くと背筋を伸ばして叫んだ。
再次从背后斩击而来,这次左臂的肘部以下也被砍掉了。失去了双臂的胜须,意识到了自己的失败,跪在地上并挺直了脊梁发出了一声惊叫。
「見事だ! この傷ではまもなく某(それがし)の命も潰(つい)えよう。自刃しようにも腕がない。介錯(かいしゃく)を願えまいか?」
"好极了!这个伤口很快就能够结束某人的生命。即使想自杀也没有手臂可用。你不想请个人来斩么?"
それに信忠が応えて叫ぶ。
"信忠随即回应大声喊叫。"
「薄氷の勝利であった。及ばずながら介錯仕(つかまつ)る」
“这是一场惊险的胜利。虽然不及完美,但我们勉强完成了任务。”
信忠はそう言うと、背筋を伸ばし首が見えるよう頭(こうべ)を垂れる勝頼の背後に立ち、高々と太刀を振りかぶった。
信忠一边说着,一边挺着胸膛站在背后低头的胜頼身后,高高举起大刀。
「やれい!」
"「やれい!」" translates to "干了!" in Simplified Chinese.
勝頼の言葉と共に刃が振り下ろされ、一刀の下に勝頼の首が落とされた。遅れて体が前のめりに倒れ、武田家最後の当主は逝った。
随着胜头的话语,刃下落,胜头的头颅被一刀斩下。稍稍迟到的身体前倾,武田家最后的家主去世了。
「この鎧が無くば、泉下に向かうは己であったであろう。武田四郎、まことの武士(もののふ)であった」
"如果没有这件铠甲,你也许自己走向泉下了。武田四郎是一个真正的武士。"
武田勝頼の討ち死に、この一報は織田家の手によって広められ、瞬く間に日ノ本全土に伝わった。痩せても枯れても戦国最強と呼ばれた武田家の滅亡は、日ノ本中の国人を震撼させた。
武田胜赖的战死,这一消息由织田家传播,瞬间传遍了整个日本。被誉为战国最强的武田家的覆灭,震惊了日本各地的国民。
これによって織田家が武家の頭領たる征夷大将軍となることに異を唱える者は居なくなった。厳密に言えば北条は認めないであろうが、事実上黙認するしかないというのが実情である。
通过此举,没有人反对織田家成为武家领袖征夷大将军。严格来说,北条不会承认,但实际上只能默认这种局面。
不倶(ふぐ)戴天(たいてん)の仇とされた武田家の滅亡にも信長は一言「そうか」と応えたのみであった。
信长对于被称为不共戴天之仇的武田家的灭亡,只是简单地回答了一句“是吗”。
今まで打倒することに心血を注いできた武田家だが、いざ滅亡したと聞いて胸に去来したのは埋め難い空虚感であった。
武田家曾经为打倒对手倾注了心血,但听到他们已经灭亡后,心中涌起的是一种无法填补的空虚感。
利に聡く気の早い堺の商人たちは、後に信長に対して祝いを贈り、口々に武田家を貶して織田家を誉めそやした。そんな佞言(ねいげん)(おべっか等、媚びへつらう言葉)を吐く輩の悉(ことごと)くを無言で威圧した。
精明敏捷的堺商人们在利益驱使下向信长献上贺礼,并口若悬河地贬低武田家族,称赞織田家族。面对他们这种奉承之辞,无言以对地施加了压迫。
信長の放つ底冷えするような視線と、物理的圧力を伴うような沈黙に耐えられなくなった商人たちは早々にその場を辞すこととなった。
受不了信长散发出的冷酷眼神和伴随着物理压力的寂静,商人们很快就离开了那里。
時は戻って信長と信忠軍、及び徳川・穴山連合軍が集結できる場所として新府城が選ばれ、関係者が揃って戦後処理を話し合うこととなった。
时机回到信长和信忠军,以及德川·穴山联合军能够集结的地方,新府城被选为地点,与会者齐聚一堂商讨战后处理事宜。
勝頼を討った信忠軍がまず入城して準備を整え、南部から進軍してきていた徳川・穴山連合軍が合流した。彼らは無血開城ではあったものの、略奪があったのか荒れ果てた城内を清掃し、表面を取り繕った。
击败了信忠军的信忠军率先进城并做好准备,此时德川和穴山联合部队从南部前进加入。虽然这是一次无血开城,但城内被掠夺,变得一片混乱。他们打扫了城内,修复了表面。
そうした影働きの末、遅れて駆けつけてきた信長及び近衛前久を迎え入れることとなる。信長は到着するや否や、その場で論功行賞を行うと宣言し、関係者を集めた。
经过这样的影响,信长和近卫前久赶来之后受到了欢迎。信长一到达,便宣布立即进行功劳和奖励的讨论,并召集有关人员。
「此度(こたび)の勝利は長きに亘(わた)って武田の侵攻に抗い続けた三河守(みかわのかみ)殿の奮闘あってのことである」
“这次的胜利,要归功于三河守大人持续抵抗武田的入侵而奋斗不息。”
信長が第一功として賞したのは家康であった。彼が武田の侵攻に対して踏ん張ったからこそ今日(こんにち)の勝利があるという訳だ。
信长所奖励的第一功臣是家康。因为他坚守对武田的防御,所以今天的胜利才得以实现。
第二次東国征伐に於いては大きな戦功を立てていないが、過去分の成果を勘案しての評価であった。信長は家康に対し、駿河国(するがのくに)を与えている。
在第二次东国征伐中,虽然并没有取得巨大的战功,但是考虑到过去的成绩进行评价。信长给予家康骏河国。
次に武田氏の本国でもある甲斐国(かいのくに)は、黒母衣(ほろ)衆筆頭であり東国征伐に於いて信忠に付き従った河尻(かわじり)秀隆(ひでたか)に与えられた。
接下来,武田氏的本国甲斐国是由黒母衣衆的领袖河尻秀隆领导东国征伐并跟随信忠而被授予的。
次いで伊那国(いなのくに)は信忠の直臣である毛利(もうり)長秀(ながひで)に、上野国(こうずけのくに)と信濃国(しなののくに)の一部は滝川一益に与えられることとなった。
其次,信忠的亲信毛利长秀被赋予了上野国和信濃国的一部分,而伊那国则归属信忠。
滝川に与えられた領土には、かつての真田領も含まれていたが、当の真田昌幸は既に尾張に骨を埋めるつもりでいるため、特に口をはさむこともなかった。
滝川所拥有的领土曾经包括了真田一族的领地,但是真田昌幸已经打算埋葬自己在尾张,因此并没有特别介入此事。
そして武田氏が亡んだことで内戦状態に陥っている領土については、今回の東国征伐に於いて出色の手柄を立てた長可に与えられることとなる。
随着武田家的灭亡,领土陷入内战状态。在本次东国征讨中表现出色的长可将获得这些领土。
見るからに貧乏くじを引いた形となっている長可だが、信長は長可ならばそれらを鎮圧しつつ上手く治められると判断していた。
看起来就像是被命运玩弄的长可,但信长认为可以通过平定其叛乱并善治来掌控长可。
最後に第二次東国征伐の総大将であり、勝頼を直接討ち取った立役者でもある信忠に対しては何の褒章も与えられることが無かった。
最终未能授予第二次东国征讨总大将以及直接击败织田信长的功臣信忠任何奖励。
「総大将でありながら言いつけに背き、軍全体を危険に晒す一騎打ちを行った罰だ!」
“他作为总大将,不听命令,进行了一场使整个军队处于危险中的单挑,这是他应得的惩罚!”
信長はそう吐き捨てるように言った。確かに織田家の嫡子でありながら、命の危険がある一騎打ちを行ったのは軽率であっただろう。
信长这样说,确实是織田家的嫡子,却冒着生命危险进行一对一的决斗,实在是轻率。
しかし東国征伐の半分を成し遂げた功績と相殺し得るものだろうかと皆が首を傾げるなか、信長が続けて言った。
然而,在所有人都感到疑惑,不确定是否能够抵消东国征伐的一半成就时,信长接着说道。
「あ奴には武田の遺児である松姫を娶(めと)る許可を与えた。武田の復権は許さぬが、血の存続を許したことを以て褒美とする」
“那个人已经被允许娶武田家后代松姬。虽然不会恢复武田家的权势,但允许其血脉存续,视为赏赐。”
ここまで聞けば信長の裁定に口を挟むものはいなかった。
听到这里,没有人敢插话干涉信长的裁决。
続いて信長は、最期まで勝頼に従って戦い抜いた忠臣五十余人に対し「敵ながら天晴(あっぱれ)」と評し、本人を含む一族郎党に咎を課さないことを確約し、生活を安堵させた。
继而,信长对于坚守到最后与勝势力并肩作战的忠臣50人以上赞誉为“敌人中的佼佼者”,并承诺不追究他们及其家族的罪责,安抚他们的生活。
逆に武田家が劣勢に追い込まれたのちに離反し、さりとて織田家に与(くみ)しなかった者については、その優柔不断さを責めて厳罰に処している。
相反地,对于在武田家处于劣势并被追逼后叛变的人,以及不投靠織田家的人,都受到了严厉的指责和惩罚,主要是因为他们的犹豫不决。
家の存続を求めての裏切りは戦国の習いであり、それだけを理由にお家断絶に追い込むような真似はしないが、虐殺を含む略奪を行ったものは斬首された。
为了家族的存续而背叛是战国的惯例,但不会仅以此为理由断绝家族血脉,而那些从事掠夺,甚至屠杀的人会被斩首。
その苛烈な対応を見た木曾義昌は、真っ先に寝返ったことを責められるかと恐怖したが、領地の加増及び安堵が言い渡されると腰が抜けそうになっていた。
看到那种残酷的态度,木曾义昌害怕自己会被指责第一个投降,但当被宣布增加他的领地和安抚时,他感到无力支撑,几乎站不稳。
逆に微妙な時期に寝返りを打診してきた穴山については扱いが難しい。既に徳川の臣下となっており、信長といえどその人事に口を出すことは出来ない。
相反,对于在微妙时刻提出“寝返り”建议的穴山而言,处理起来很困难。他已经成为德川的臣民,就算是信长也不能插手这些人事问题。
「甲州には『泥かぶれ』なる病がある。穴山殿はこれに対する陣頭指揮を執っていただきたい。詳細については織田家相談役より追って知らせるゆえ、この病の根絶に向けて尽力されよ」
「甲州有一种名为“泥长”的疾病。望穴山大人能够担任起对此的领军指挥。关于详情,会由织田家的咨询官通知您,敬请为了消灭该病而努力奋斗。」
信長の言葉を耳にした穴山は安堵から胸を撫でおろした。『泥かぶれ』という死病に対し、一から指揮系統を構築しなおすよりも、地元の住民と繋がりがある領主を頭に据える方が効果的だと判断されたのだ。
听到信长的话,穴山松了口气。他们认为,在对抗名为“泥浸”的疾病时,建立与当地居民联系的领主比重新建立指挥系统更有效。
これによって穴山の領土は安堵され、徳川家配下の臣として仕えつつ、甲州全域を蝕(むしば)む死病と永い戦いを始めることになる。
通过这一系列事件,穴山的领土得以安宁,成为德川家臣,开始了长期与甲州各地死亡之病的抗争。
「はっ! この穴山、己が一命を賭して取り組みまする」
“哈!这个洞穴山,我将不惜一命去争取”
信長の裁定とそれを受け入れた穴山を見て、家康もホッと一息ついた。南部から侵攻していた徳川軍は、甲府盆地付近の流行地にて『泥かぶれ』の罹患者を直接目にしていたからだ。
看着信长的裁定和接受它的穴山,家康也松了一口气。德川军队从南部侵入,在甲府盆地附近的传染区直接看到了患有“泥爬病”的病人。
第二次東国征伐に於いて南部から北上するルートを取る徳川軍に対して、静子は家康に『泥かぶれ』の詳細を伝えていた。
在第二次东国征伐期间,静子向家康传达了“泥浆覆盖”的详细信息,这场战役中德川军采取了从南部向北部前进的路线。
水の中に棲む目に見えない虫が腹に巣くい、人を死に至らしめる等と言う当時からすれば荒唐(こうとう)無稽(むけい)な話も、他ならぬ静子からの情報であることと、詳細な病理について記された資料及び写真という説得力のある視覚情報が決定打となった。
隐身在水中的看不见的虫子在人的肚子里筑巢,让人死亡等话题,对于当时来说似乎是无稽之谈,但这个信息却正是从静子那里传来的。详细的病理学资料和图片提供了有力的视觉信息,令人信服。
そうした事もあってか、家康は穴山を受け入れた後に現地を案内させた。そこで彼は地獄絵図にある餓鬼のように腹を膨らませ、手足が棒のように痩せ細った住民を見ることになる。
可能因为这个原因,家康在接受了穴山之后展开了一次当地的导览。他看到了画的像地狱的鬼畜一样鼓胀的腹部和瘦弱得像根棍子的四肢的居民。
そこから家康は『泥かぶれ』に対して万全の注意を払うこととなった。朝露を含んだ草から感染することを恐れ、静子から貸与された生石灰を撒いたり、防備を固めた兵に下草を刈らせたりなどして安全を確保しつつ進軍した。
从那时起,家康开始对“泥爆”保持高度注意。他为了避免从沾有早露的草丛中感染,散布了静子提供的生石灰,让兵士割掉低矮的植被,以确保安全前进。
その結果、進軍速度は大幅に落ちて新府城落城までに合流できなかったが、実際に防疫をしつつ進軍するという得難い経験を積むことが出来た。
由于这个原因,他们的进军速度大大降低,无法在新府城被攻占之前加入其他队伍,但他们成功地得到了难得的经验,在进行军事行动的同时确保疫情防控。
この『泥かぶれ』が人から人へと伝染することはない。中間宿主であるミヤイリガイを経由しなければ、感染能力を持つセルカリアに成長できない為である。ただし、糞便や尿に含まれる虫卵が河川に流れ込み、ミヤイリガイを経由して間接的に感染することはある。
这种“沾泥虫”不会在人与人之间传播。这是因为只有通过中间宿主——宫泉螺——才能成长为具有感染能力的毛细管蚴。但是,尽管如此,仍然有可能通过包含在粪便或尿中的虫卵经河流传播,间接地通过宫泉螺而感染。
未知の恐ろしい死病の現状を知った家康は、穴山が『泥かぶれ』撲滅に注力することにもろ手を挙げて賛成した。
了解到可怕的未知病状后,家康全力支持穴山消灭“泥疮”问题。
「これを以て論功行賞を終わりとする。わしはこれより安土へ戻るゆえ、子細については追って連絡があろう」
“以此作为功劳奖励的结束。我现在将返回安土,有关详细事项稍后再联系。”
「お待ちくだされ、織田殿」
请等一下,织田大人。
言うべきことを言い終えた信長は席を立ち、大股で室内から去ろうとしたところを家康が呼び止めた。信長が鋭い視線を投げかけるが、彼は柔和な笑みを浮かべて言葉を継いだ。
说完应该说的话后,信长站起身来,大步向室外走去,这时家康喊住了他。信长投来了锐利的目光,但他露出了温和的笑容,继续说话。
「何やら富士の山を見物されると耳にし申した。そうであるならば是非に我が領をお使いくだされ。富士の山を望む景勝地をご案内いたしましょうぞ」
听说您要去富士山观光。如果是这样,请务必使用我们的服务。我将带您参观欣赏富士山的美景。
「……確かに富士の山は難所と聞く。ならばお言葉に甘えるとしよう」
“确实听说富士山是难登之处。那么我就依言行事。”
「お任せくだされ」
"请委托给我吧"
流石の信長も直接富士登山できるとは思っていなかった。精々が見晴らしの良い丘から日の出を反射して輝く富士を写真に収めて帰るつもりであった。
连信长也没想到自己能直接登上富士山。他最多只是想从风景优美的山丘上拍下反射着朝阳熠熠生辉的富士山照片,然后回家。
しかし、そうした景色を一望できる場所についての見当はついておらず、行き当たりばったりの感は否めない。
然而,对于能够一览这样景色的地方,我并没有明确的想法,只能漫无目的地走。
そこで家康の提案はまさに渡りに船であった。そしてここからが家康の腕の見せどころとなる。信長一行の案内を務めるという事は、その露払いをも含まれる。
于是,家康的提议正好是在渡河的时候。从这里开始,家康展示了他的才华。担任信长一行的向导不仅仅包括引路,还包括处理许多琐碎的细节。
つまり道中でならず者に遭遇するなどと言うハプニングが万に一つでも起こってはならないのだ。家康は家臣に指示を出し、信長一行が通行するルートを定めると、その整備を命じた。
换言之,不得发生任何意外事件,如在途中遭遇不良分子等。家康指示自己的家臣们确定信长一行的通行路线,并下达整修路线的命令。
道行(みちゆき)に山があれば山狩りを行い、増水して橋が落ちた川があれば突貫工事で再建させた。更に宿所となる寺社に関しては、先触れを出して総出で清掃を行わせ、金銀を寄進して宿坊はおろか、信長に従う兵士たちの寝床まで作り上げさせた。
如果道路中有山,就会进行山猎,如果河流因水位上涨而桥梁被毁,就会进行突击工程以重新建造。此外,对于作为寄宿处的寺庙和神社,将提前清扫并全体捐赠金银,不仅建立了寄宿处,还为信长的士兵建立了宿舍。
そうして家康が張り切っているなか、信忠と長可は僅かな休息を満喫していた。
就这样,当家康精神饱满地忙碌着时,信忠和长可却在享受着短暂的休息。
「此度のいくさは概ね落ち着くところへ落ち着きましたな」
“这场战争总体上已经结束了。”
「まあ総大将が功なしというケチはついたがな」
“虽然有人说大当家没有功劳,但还是有点吝啬啊。”
熱い茶をすすりながら混ぜっ返す信忠の様子に長可は意地の悪い笑みを浮かべる。
长可看着信忠一边喝着热茶一边来回搅动,心中不屑地露出了坏笑。
「そう言いながらちゃっかりと本命の婚姻を勝ち取っておられる辺りは、ぬかりありませぬな」
“这么说着,却暗中成功获取了真正的婚姻,无疑是无懈可击的表现。”
「武田の当主を討ち取ったという名声と、東国征伐を成功に導いたという実績。これが揃えば松を娶ることに異を唱えることは出来ぬよ」
“如果你能够获得夺取武田家家主的声名和成功领导东国征服的成就,那么就没有人能够阻止你迎娶松了。”
「流石に勝手が過ぎると上様はおかんむりでしたぞ?」
「这么过分的行为,难道上小姐不生气吗?」
「信賞必罰を徹底するため表面上は怒っているように見せておられるが、結局のところお咎めなしで赦されておる。終わり良ければ総て良しだ」
“为了彻底实行奖罚分明的原则,表面上看起来像是生气,但实际上最终却没有受到处罚而获得宽恕。最后一切都以好的结局收场。”
「あの怒気は本物に思えましたが、まあ良いでしょう。それよりも信勝は如何でした?」
“那股愤怒看起来是真的,但也无所谓了。比起这个,信胜怎么样了?” translated to Simplified Chinese is: “那股愤怒看起来是真的,但也无所谓了。比起这个,信胜怎么样了?”。
「長じれば恐るべき使い手になったやも知れぬ」
"如果长大了,可能会成为可怕的熟练者。"
勝頼が討ち死にした後、自刃して後を追うかと思われた信勝だが、予想に反して信忠に一騎打ちを申し込んだのだ。
在胜贼战败之后,信胜被认为会选择切腹跟随胜贼,但出人意料的是,他向信忠发起了一场对决。
元より父を打ち負かした信忠に勝てる道理は無いのだが、それでも座して死を待つよりは最期に一矢報いんと挑んだのであろう。
从一开始就没有打败父亲的信忠,自然没有赢他的理由。但即使如此,他也挑战最后的战役来进行他最后的攻击,而不是坐以待死。
結果は、まともに打ち合うこともなく一刀の下に切り伏せられた。一騎打ちを前に信勝は家臣に後を追うことを禁じたため、彼らは武装を捨てて織田軍に下った。
结果是,没能真正打一场正面战斗,就在一刀之下被斩杀了。在单挑前,信胜禁止家臣们跟随自己,因此他们放下武装投降给了织田军。
見分が終わった勝頼の首と、信勝の遺体を返された北条夫人は、出家して終生彼らを弔って過ごすということだった。
被返还了已经结束了分别仪式的胜贼的首级和信胜的遗体的北条夫人,决定削发为僧,终生祭奠他们。
「それよりも問題は『泥かぶれ』だな。何やら静子が計画を立てているらしいが、詳しいところはまだ上がってきていない。方針としては流行地から住民を隔離するところから始めると言っていたが」
“比起这个问题,还有一个叫做‘泥淖病’的问题。听说静子正在制定计划,但具体情况还没有公布。她的方针是从将居民隔离在流行区域开始。”
「え!? 病魔に蝕まれた奴を動かしても大丈夫なのか?」
“什么!?让被病魔侵蚀的人动弹,这样安全吗?”
驚いたのか、咄嗟に元の口調に戻った長可が信忠に訊ねる。
“长可惊讶地问信忠,他立即恢复了原来的口吻。”
「ああ、何でも腹の中に虫が溜まる病らしい。病人の腹に詰まっている虫は、滅多なことでは他の人間に悪さしないそうだ」
“啊,好像有一种病叫做肚子里堆满虫子的病。似乎患有此病的人的肚子里面的虫子不会随便害其他人。”
「ああ、写真で散々見せられたアレだな。小指の爪の先にも満たない大きさらしいが、そんな目に見えない虫がうじゃうじゃいるってのはゾっとする話だ」
“啊,好像在照片里一直看到那么小的东西。听说有那么多看不见的小虫子,真是让人毛骨悚然的故事。”
「何でも寄生虫という生き物らしい。他人の生き血を吸って肥え太る蛭みたいな生き物だな」
“听说寄生虫是一种会吸取他人的生命力并因此变得肥胖的像水蛭一样的生物。”
「なるほどな。目に見えないというのは厄介だが、あの何とか言う貝を根絶やしにすれば良いんだろ?」
“原来如此。虽然看不见有点麻烦,但只要根除那个叫什么东西的蜗牛就好了,对吧?”
「ああ。しかし、それが途方もなく難しいと聞く。貝の数が途方もない上に、水場だけでなく陸にも居て、少しでも残せばあっと言う間に増えるらしい……」
“啊。但是听说那非常困难。贝壳的数量非常庞大,它们不仅存在于水中,还存在于陆地上,甚至只要留下一点点就会迅速增加……"
『泥かぶれ』の根絶という壮大な難事の一端を垣間見た二人は、その穴の開いた柄杓で水を掬うが如き所業に暗澹(あんたん)たる気持ちになった。
垣间一瞥到消灭“沾泥症”的伟大难事的两个人,看着挖好了洞的铲子似地舀水的场景,感到黯然失色。
『泥かぶれ』撲滅の第一歩は史実通り病理解剖で幕を明けた。いくら病理の機序を知っていても、実際に開腹して肝臓の状態を確認し、間違いなく『日本住血吸虫』の仕業であると確定せねばならない。
“消除‘泥漆病’的第一步是历史事实上的病理解剖。即使知道病理机制,也必须实际进行开腹手术,确认肝脏状况并确定其为‘日本血吸虫'的作用。”
幸いにして戦時であったため、検体には事欠かなかった。戦死した遺体のうち、身長が低く痩せ細り、腹が膨らんでいる者を選んで腹を開いた。
幸运的是,在战争期间无需担心获取样本。我们选择那些死亡身体中个子矮、身体瘦弱、肚子胀大的人进行解剖。
従軍していた防疫部隊である金瘡(きんそう)医衆は、水を通さない樹脂製の手袋や前掛けに身を包み、遺体の腹を切り開いて肝臓を露出させ、その門脈に刃を入れた。
曾参加防疫队伍的金疮医生,穿戴着不透水的树脂手套和围裙,将遗体腹部切开,露出肝脏,并在门脉处进行切割。
切開された門脈内部は虫卵が詰まって炎症を起こし、それを盛り上がった肉が包み込むという肉芽腫(にくげしゅ)を形成していた。ここで初めて『泥かぶれ』の病変とその原因が確認された。
切开的门静脉内部充满虫卵,引起了炎症,被肿起的肉包围并形成了肉芽肿。这里首次确认了"泥浆皮炎"的病变及其起因。
これらの作業と並行して中間宿主であるミヤイリガイの回収、村人への聞き取り調査が行われ、急速に研究拠点が構築されていった。
与这些工作同时进行的是,中间宿主宫轮贝的收集和对村民的调查,研究基地得到了快速建设。
『泥かぶれ』を究明する金瘡医衆たちは静子から史実通りの実験を行うよう指示されており、決められた手順に従って着々とデータを積み重ねている。
掌握「泥溅病」病情的外科医师们受到静子的指示,按照史实进行实验,并按照规定的步骤稳妥地积累数据。
こうした研究体制が整うのを見届けた信長は、川沿いを避けて徳川軍と共に南下しつつ富士山を目指していた。
看到这样的研究体制建立起来,信长便带着德川军南下,避开河岸,一路向富士山进发。
「これが日ノ本一と名高い霊峰、富士か!」
这就是闻名日本第一的神山富士啊!
家康に案内された場所から眺める富士山はまさに絶景であった。折よく雲一つない青空は晴れ渡り、裾野から麓までを染め上げる緑が鮮やかに見え、途中から白く残雪の残った山頂部が輝くようであった。
从家康带领的地方眺望富士山确实是绝佳的景象。恰好没有丝毫云彩的湛蓝色天空晴朗无比,丰茂的绿色沿着山脚到山谷显得特别生动,从中间开始,残留雪的山顶部分闪烁着白色的光芒。
絶景に見惚れていた信長は我に帰ると、即座に技術者たちへこの眺望を写真に収めるよう命じた。望遠レンズや高感度フィルムなど望めない中での撮影は難航したが、それでも何とか美しい富士山を閉じ込めた写真を残すことが出来た。
赞叹着绝景的信长回到现实后,立刻命令技术人员将这景色拍摄下来。虽然在无法使用长焦镜头和高感度胶卷的情况下,拍摄变得困难,但终究还是留下了美丽富士山的照片。
終始上機嫌の信長であったが、家康は水上の白鳥の如く優雅な笑みを浮かべつつも、水面下では必死の努力を続けていた。
始终心情愉悦的信长,而家康则像水上的白鹤一样,虽然浮现出优雅的笑容,但水下却在拼命努力。
無理を押してまで信長を招いて接待を続けている理由は、今後の織田家に対して徳川家が持ちうる影響力を示す必要があったからであった。
无理地邀请信长前来招待并继续接待的原因是,为了展示德川家对織田家未来可能产生的影响力必要性。
今までは武田の侵攻を阻む最前線としての存在価値が認められていた徳川家である。その武田家が亡んだ以上、今後はその利用価値の低下に伴って徳川家の地位が下落する恐れがあった。
目前以德川家族作为阻止武田入侵的前线存在被认可。但是,随着武田家族的衰亡,德川家族的地位可能会下降,因为其利用价值减低。
北条を攻め滅ぼすに当たって是が非でも徳川家の協力が必要と楽観視できるような状況ではもはやない。今回の甲州征伐に於いて大活躍した長可の戦果を見るに、織田家のみでも充分攻略できると見る方が自然だ。
在攻打北条一事上,已经不再有必要乐观地认为德川家的协助是必须的。从长可在这次甲州征伐中的表现来看,仅凭织田家已经足以攻占北条了,这是自然而然的事。
「かねてよりの約定から駿河を得たが、この先については見当がつかぬ」
“通过早前的约定获得了骏河,但目前还不清楚接下来的情况。”
現在の徳川家は三河、遠江(とおとうみ)、駿河の三か国を擁するが、このまま織田家が躍進を続けた場合に自主独立を貫けるかは疑わしい。少なくとも今後十年を見据えて行動を決定する必要があると家康は考えていた。
现在的德川家族拥有三个国家,即三河,远江和骏河,但如果织田家持续前进,他们是否能够坚持自主独立是值得怀疑的。家康认为,至少要考虑未来十年的行动决策。
しかし勝ちいくさに沸きたつ徳川家に於いて、このひりつくような緊張感を抱いているのは家康のみであった。他の家臣たちは今日と変わらぬ明日が続くと信じて疑わない。
然而,在充满胜利气息的德川家中,只有家康感受到了这种令人窒息的紧张感。其他家臣们则相信今天与明天将一如既往,毫无疑问。
それでも同盟の重要人物である信長をもてなすことが国の行く末を左右しうる重大事であると言う認識は共通していた。そんな彼らに立ち塞がったのが天竜川の渡河であった。
然而,他们共同意识到,招待同盟重要人物信长的举措可能会左右国家的未来走向。然而,他们的前路被天竜川渡河所堵截。
「暴れ天竜(天竜川のこと)に橋を渡すなど古今(ここん)未曾有(みぞう)(古くから今まで一度もあったためしがない様)の大仕事ですぞ!」
「让桥梁横跨暴乱的天竜(指天竜川)等任务,是前所未有的大工程啊!」
「小天竜は渡せども、大天竜は叶いませぬ」
"小天龙可过,大天龙无法实现"
「ここは安全を取って船便で渡しましょうぞ」
这里为了安全起见,我们建议乘坐船只过河。
現在の天竜川は流域が一本化されているが、この時代では東に一本、西に二本の川が流れていた。東を大天竜、西を小天竜と呼び、諏訪湖を水源地とした膨大な水量を誇る河川であった。
现在的天竜川河流已经统一,但在那个时代,东边有一条,西边有两条河流。它们被称为大天竜和小天竜,都是以諏訪湖为水源的强大河流,拥有庞大的水量。
そのため、ひとたび大雨が降れば頻繁に洪水を起こすことから『暴れ天竜』とさえ呼ばれていた。記録によれば元禄から明治初期にかけての約百七十年間で、大小四十回の洪水が発生している。
因此,一旦有大雨,由于频繁发生洪水,因此甚至被称为“狂暴的天竜”。根据记录,在约170年的元禄和明治初期期间,发生了40次大小洪水。
単純計算でも五年に一回は洪水が発生する計算となり、橋を架けるなど夢物語であり、架けたはしから流されるのが落ちだと考えられていた。
简单的计算就显示每五年会发生一次洪水,修建桥梁等就成了幻想,人们认为修建的桥梁会被冲走而成为抛物线下落。
しかし、家康はその『暴れ天竜』を制して船を浮かべて連結し、その上に木板を渡した船橋を架けると言い出した。通常では出来ないことを為すから人は感動するのだと説き、どれ程資金が掛かろうとも成し遂げよと厳命した。
然而,家康说要控制那个“暴躁的天竜”,将船浮起并连接起来,在其上搭建木板桥。他解释说,人们感动的是能够做到通常不可能完成的事情,他严令要求无论花费多少资金都要完成任务。
かくして信長一行がゆるりと歩みを進める裏で、周辺一帯から船を根こそぎかき集め、大工を誘拐まがいに連れてきて工事に従事させた。
如此一来,信长一行人缓慢前进,而在背后,周边地区的船只被彻底搜刮,并且抓来大量木工强行参与修建。
こうした決死の努力が実り、信長が天竜川へと到着する頃には見事に一列に繋がった船橋が架かり、一行が渡り終えるまで崩れることもなかった。
经过这样不屈不挠的努力,当信长到达天竜川时,精美的一排排船桥已经架起来了,直到队伍全部通过,它们仍然稳如泰山,没有一点动摇。
突貫工事を行ったためか、船の大きさがまちまちであり、橋板がいたるところで傾いていたり、歩くのに難儀するほどの段差が生まれていたりもした。
由于采取了突袭式施工,船只的大小不一,桥板到处倾斜,造成了难以行走的高低落差。
しかし、信長はそれらを見ても何も言うことなく終始上機嫌で旅を楽しんだ。
然而,信长见到这些事情也没有说什么,一直心情愉快地享受旅行。
「お帰りなさいませ」
"欢迎回家"
そんなご機嫌な信長を待ち受けていたのは、未だかつて一度として目にしたことのない程の怒りを湛(たた)えた静子の姿であった。
等待着处于那种愉悦心情的信长,迎接她的是一个从未见过一次的满腔怒火的静子。
普段温厚な人間であるほど、豹変した際の落差が大きいと言う。身を以てそれを知った信長は、己に降りかかる災厄を思って身震いするのであった。
通常善良和温和的人在发生变化时可能会有很大的落差。信长通过亲身体验了解到这一点,因此为了避免降临在他身上的灾难而感到不安。