【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 110 [千五百七十三年 八月中旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十三年 八月中旬(*原文网页序列号 - 127)
「ひぃっ! な、何故貴様がここにいる!?」
"啊!你、你怎么在这里!?"
朝倉孫八郎景鏡(かげあきら)は恐慌を来たして叫んだ。彼の眼前には斬首されたはずの朝倉義景が立っていた。
朝仓孙八郎景镜惊恐地尖叫。他面前站着应该被斩首的朝仓义景。
義景の背後には、彼の側近である鳥居や高橋も控えており、更に後ろに高徳院、小少将を筆頭に妻たちが並ぶ。皆の表情には裏切り者に対する怒りがあった。
义景的身后站着他的得力助手鸟居和高桥,再往后是以高德院和小少将为首的妻子们站成一排。所有人的表情中都带着对叛变者的愤怒。
景鏡は先ほどまで饒舌に語っていた。自分が如何にして義景を裏切り、朝倉家を牛耳った後に高徳院なども追放し、一乗谷を手土産に織田へと降るつもりだったと。
景镜刚才一直很健谈。他说他是如何背叛义景,掌控朝仓家,驱逐高徳院等人,打算用一乘谷作为见面礼向织田投降的。
義景達はその一部始終を隣室にて聞いており、中座した光秀と入れ替わりに入室したのだ。
义景达在旁边听了整个过程,取代了离座的光秀进入了房间。
景鏡は織田家にとって無価値な人間だとして既に見限られていた。
景镜已经被认为是对织田家毫无价值的人,因此已经被放弃了。
光秀の誘導にも気付かないままに、己の裏切りを得意げに話す姿に失望し、自分達で処分する程の価値も無いとして席を立った。
他们感到失望,因为他们没有注意到光秀的引导,却得意洋洋地谈论了自己的背叛。他们认为自己没有足够的价值,无法自行处理,于是离开了座位。
「な、何じゃその目は! 貴様のせいで一乗谷がどんな運命を辿るのか判っておるのか!?」
"你、你那是什么目光!你知道因为你会发生什么事吗?一乘谷会遭遇什么命运!?"
「無論聞いておる。このいくさに限らず、終始決断できず優柔不断の誹(そし)りは甘んじて受けよう。弱肉強食の乱世に於いて芸事に熱を上げる暗愚の当主、まさにその通り」
"无论听着。这场战斗不仅如此,始终无法做出决断,优柔寡断的侮辱我们愿意接受。在弱肉强食的乱世中,将艺术事业提升到极致的愚蠢领袖,确实如此。"
「そ、そうじゃ! 貴様の優柔不断さが織田を利したのだ! いくさを嫌い、厳しい現実から目を背けた腑抜けものよ! 百年の栄華を誇った一乗谷を滅ぼしたのは、義景! 貴様じゃ!」
“是的!就是这样!你的优柔寡断为織田所利用了!你是那个讨厌战争、逃避现实、软弱无力的人!摧毁了曾经繁荣百年的一乘谷的是义景!不是你!”
義景が自らの非を認めたのを良い事に、景鏡は自分の事を棚に上げ、義景を痛烈に批難した。
义景承认自己的错误,景镜却把自己的问题放置一旁,猛烈批评义景。
「貴様の言う通り、後世に於いてわしは暗君として名を残そう」
"像你说的那样,我将作为暗君留名后世"
しかし、と呟いて義景は腰に佩いた刀を抜いた。対する景鏡は丸腰であった。少しでも光秀に良い印象を持たれようと、自ら武装解除を申し出た結果であった。
然而,义景喃喃自语着抽出了腰间佩剑。景镜则是空手而来,他主动解除武装是为了给光秀留下更好的印象。
「貴様が裏切ったのは朝倉家だけではない。我が身可愛さから守るべき民すら売り渡したのだ。愚昧なわしを見限るのは構わぬ。わしの首を手土産に、民の助命を乞うたのなら皆も貴様を赦したであろう……」
“你背叛的不仅仅是早倉家,你甚至将应该保护的人民也出卖了。你可以不理会我这个愚蠢的人,但如果你以我为代价,请求救民于天下的话,大家都会原谅你的……”
「ひ、ひっ! ま、待て! ここは織田の、明智殿の陣ぞ! ここでわしを斬れば、貴様の妻子も連座は免れまい!」
“啊,等等!这里是织田家和明智殿的阵营!如果你在这里杀了我,你的妻子孩子也会遭殃!”
「もとより皆、覚悟の上!」
"大家本来就做好准备了!"
「くっ! 血迷いおって」
"咬牙切齿,狂血上涌"
景鏡は死地を脱するべく周囲を見回すが、どこにも活路などありはしなかった。それに、これほどまで騒いでいるというのに、織田軍の兵士が駆けつける様子もない。
景镜四处张望,试图逃离这片死地,但并没有任何出路。再说了,尽管这么大的动静,织田军队的士兵似乎并没有赶来的样子。
幾ら待とうとも助けは来ない。そもそも、この場は光秀と静子が整えた景鏡断罪の場であった。
无论等多久,也没有人来帮助。本来,这个场合就是光秀和静子安排的景镜断罪之地。
「景鏡、わしもすぐに後を追う。これから苦難を受ける越前の民に地獄で詫び続けよ!!」
「景镜,我也会立刻跟上。愿我在地狱里向受苦的越前人民道歉!!」
言い切ると同時に刀が振り下ろされた。左肩から右脇にかけて袈裟懸けに斬られた景鏡は、呆然としたまま傷口を押さえ、ごぼりと血を吐くと倒れ伏した。
同时话音未落,刀便已经砍下。景镜被从左肩到右胁处斩成了袈裟,他愣愣地按住伤口,咕噜噜地吐出鲜血,倒在了地上。
朝倉家を、ひいては越前を売り渡してまで生き残りを図った景鏡の最期は、裏切り者の末路らしい哀れなものであった。
朝仓家,甚至越前都被出卖,景镜为了生存而努力,但他最后落得了叛徒的可悲命运。
「終わりましたな」
"结束了"
景鏡の首が切り落とされるのを見計らって光秀が戻ってくる。光秀が上座に座ると、義景は刀を鞘に戻し、腰から外して遠くへ放り投げた上で平伏した。
等待着景镜的头被砍下来的时候,光秀回来了。光秀坐在上座上,義景将刀重新插回鞘中,然后将其从腰间拿下来,抛向远处并俯伏下来。
「裏切り者の始末も付き申した。もはや思い残すことはありませぬ。我が首を以て、このいくさの決着と致しましょう」
「背叛者已经被处理了。现在已经没有留恋的东西了。让我们以我的头来结束这场战斗吧。」
「確(しか)と承り申した」
"我确实接受了您的请求" (Note: This translation may vary depending on the context and source material)
「正直なところ、肩の荷が下り申した。一乗谷百年の栄華を守護する朝倉家当主、非才の身には荷が勝ちすぎ申した。ままならぬ現実から目を背け、芸事に現(うつつ)を抜かしたツケが回りましたな。私に従って命を落とした者達には申し訳ないが、ようやく肩の荷が下りたと安堵してもおるのです」
“说实话,肩上的负担终于卸下了。身为保护一乘谷百年荣耀的朝倉家当主,我的无能让担子变得太重了。我逃避了无法解决的现实,沉迷于艺术,现在这些孑然一身的后果终于出现了。虽然我对那些跟随我一起牺牲的人感到抱歉,但我终于松了一口气。”
義景の言葉には何の衒(てら)いも無かった。必要以上に自分を大きく見せようと、常に虚勢を張っていた肩の力が抜け、穏やかな表情を浮かべていた。
义景的话没有任何虚饰。他不再像过去那样过度强调自己,摆出虚张声势的姿态,松懈下来,面露平和之色。
「越前の至宝、一乗谷は灰燼に帰すでしょう。越前の民は朝倉家を戴(いただ)いた罰を受け、貴方はそれを見届けた上で斬首となる。朝倉家当主最期のお勤め、見事果たされよ」
「越前的至宝一乘谷将化为灰烬。越前人受到朝仓家的惩罚,您将在确认后被斩首。请履行您作为朝仓家当主的最后任务,并取得辉煌的成果。」
かつて主君と仰いだからか、光秀の声には哀切があった。しかし、義景の死を以たずして、このいくさの決着は望めない。如何に手を尽くそうとも、彼の死は避け得なかった。
曾经因为视为主君而传达的声音中,有着光秀悲伤的哀切。但是,在没有以义景之死为先决条件的情况下,这场战斗的结束是无法期望的。不论尽了多少努力,他的死亡都是无法避免的。
「最期に一つ願いを聞いては貰えぬか? 我が首を一乗谷が見える場所に葬って貰いたい。たとえ灰になろうとも、一乗谷を見守るのが我が役目」
"最后能不能帮我实现一个愿望?让我的头骨安放在能看到一乘谷的地方。即使已化为灰烬,也要守护着一乘谷,这是我的使命。"
「それは……」
那个是……
光秀は迷っていた。一乗谷の焼き討ち後、その引き金となった義景の墓所が近くにあれば、民たちの憎悪は何処へ向かうのか、少し考えれば誰にでも判る。
光秀犹豫不决。在一乘谷被攻击后,如果义景的墓地就在附近,那么民众的仇恨将会转向何方,对于任何人来说都能够明白。
どれほどの罪を犯そうとも死ねば皆仏とは言うが、苦境にある民たちにそのような綺麗ごとが通用するのか、墓を暴かれ死した後まで辱められるのではないかと光秀は考えた。
无论犯了怎样的罪,只要死去就是佛,但在苦境中的人们是否能接受这种美好话语呢?光秀想到,他们即使死后也可能遭到掘墓和侮辱。
「死した後、一乗谷を見守ることすら許さぬと民が思うのなら、それは甘んじて受け容れよう。一乗谷の滅亡を招いた私こそが、その罰を受けるに相応しい」
如果人们认为即使死后也不能注视着一乘谷,那么我甘愿接受。我是导致一乘谷灭亡应该受到惩罚的人。
「そこまでの覚悟がおありか、ならば何も申しませぬ」
"如果你已经做好了那样的决心,那我就什么也不说了"
「かたじけない。よしなにお頼み申す」
"不胜感激。请多关照。"
光秀が願いを受け入れた事を以て、朝倉家の行く末が決まった。義景は一乗谷の滅亡後に斬首、鳥居と高橋は義景の菩提を弔うという。
以光秀接受了他的愿望作为基础,朝仓家的命运得以决定。义景在一乘谷灭亡后被斩首,鸟居和高桥为义景祷告菩提。
「見事な覚悟でありました。母は誇りに思います」
“你有出色的决心。母亲感到骄傲。”
義景の背に高徳院が声を掛ける。死に向かう息子を見送る母の心中は如何なものか、表情は隠せても震える声までは隠しきれなかった。
义景的背后,高德院呼唤着。母亲目送着走向死亡的儿子,内心无法言语,尽管表情坚定,但颤抖的声音却难以掩饰。
その後、高徳院は俗世を離れ、終生を義景の菩提を弔って過ごすこととなる。
之后,高德院离开了世俗,一生都在念诵义景的菩提而度过。
小少将や四葩も出家して尼となり、同じく菩提を弔うことを選んだ。他の者についても希望すれば、希望の場所へと帰参が許された。
小少将和四葩也出家成为尼,选择为菩提祈福。其他人如果愿意,就被允许回到他们所期望的地方。
秀吉などに言わせれば、ぬる過ぎる対応となるが、光秀は決着がついた今、無用の血を流す必要はないと考えた。
如果听从秀吉等人的话,这种应对将变得太过温和,但是光秀认为现在已经有了决定结果,没有必要流一滴无用的血。
「刑の日取りが決まるまで、最期の別離を惜しまれよ」
「在被定罪执行之日前,珍惜最后的离别吧。」
光秀の宣言を以って、かつての主従は決別した。義景達は兵に囲まれ、朝倉家の菩提寺たる心月寺にて沙汰を待つ。
以光秀的宣言为基础,以前的主従关系已经结束。义景等被军队包围,在朝倉家的菩提寺——心月寺等待消息。
一乗谷の外縁に設けられた仮の陣にて光秀から経緯を知らされた静子は、暮れ行く落日を眺めながら大きく息を吐いた。
在一乘谷外围临时设置的营地中,静子得知了光秀的经历,并一边望着落日西下,一边深深地叹了口气。
(残すは浅井家だけ……浅井家が滅べば、戦国の世は終焉に向かって舵を切る)
(只剩下浅井家了……如果浅井家灭亡了,战国时代将朝着终结的方向转舵)
朝倉は滅亡し、浅井も間もなく後を追う、武田は最早時間の問題であり、上杉は信長の臣となった。
朝仓覆亡,浅井不久后追随,武田已经是时间问题,上杉成为信长的臣子。
残る大国は安芸(現在の広島県西部)の毛利と、九州を割拠する龍造寺、島津、大友の三氏の名が挙がる。
剩下的大国有安芸(现在的广岛县西部)的毛利,以及分据九州的龙造寺、岛津、大友三氏的名字。
四国の雄、長宗我部(ちょうそかべ)は光秀を通じて信長と同盟を結び、四国統一に王手を掛けていた。事実上、長宗我部も信長に服従することになる。
四国的雄主,长宗我部通过光秀与信长结盟,对四国统一形成了威胁。事实上,长宗我部也成为信长的属下。
東国の北条は旗幟を明らかにしていないが、武田が衰退し、上杉も取り込まれた以上、去就の判断を迫られ内部が荒れていた。
东国的北条虽然没有明确的旗帜,但随着武田的衰退和上杉的吞并,他们不得不面临去留的抉择,内部变得动荡不安。
(もう少し……あと数年で織田家による天下統一が成し遂げられる)
(再过几年,織田家统一天下就将完成)
不測の事態が起こらなければ、という条件付きではあるが、静子は戦国時代の終焉を予感していた。
如果没有突发情况发生的话,尽管有条件,静子也预感到了战国时代的结束。
一乗谷が光秀の手により陥落し、朝倉家滅亡の報は浅井を攻略中の秀吉の陣へも届いた。
一乘谷在光秀的指挥下被攻陷,朝仓家灭亡的消息也传到了攻打浅井家的秀吉军中。
「今が好機よ! 調略と進軍を推し進めよ! 大博打じゃが、ここが勝負の分かれ目よ!」
「现在是好机会!推动调略和军队前进!虽然是博一把,但这里是胜负的分界线!」
朝倉家滅亡の報に、敵味方ともが動揺するなか、秀吉だけは機会を逃さなかった。信長に判断を仰ぐことなく、独断で小谷城へと一気に攻め上がった。
朝仓家灭亡的消息传来,敌我双方都感到不安,只有秀吉没有错过机会。他不经信长同意,就自作主张一口气攻上了小谷城。
後に『小谷城一夜落とし』と称される、秀吉の躍進を決めたいくさが始まろうとしていた。
后来被称为“小谷城一夜落”,决定了秀吉的进攻即将开始。
一方、浅井側はいくさどころではなかった。もはや浅井に味方するものは居らず、頼みの綱であった朝倉家も潰えた。浅井は既に沈み行く船となっていた。
一方,浅井方面已经不是在战场上了。浅井早已经没有支持者了,最后的希望朝倉家也灭亡了。浅井已经成为了正在下沉的船。
その証拠に小谷城を守る防衛施設から兵が逃げ出し、秀吉の快進撃を阻むものは居なかった。
那些逃离小谷城的士兵是证据,没有阻止秀吉快速推进的设施存在。
秀吉は小谷城の本丸へ通じる道を確保すると、秀長が率いる調略組と、秀吉自らと竹中半兵衛が率いる城攻め組に軍を分けた。
当稳固了通往小谷城本丸的道路后,秀吉分出由秀长率领的谋略组和由秀吉本人和竹中半平太率领的攻城组组成的部队。
「一気呵成に攻めあがれ! 時を置けば他のものも続こう、今ならば手柄は独り占めよ!」
一口气攻上去!稍事休息,其他人也会跟上来,现在是独立获得功劳的时候!
秀吉は兵たちを鼓舞しながら小谷城を攻略する。その際、静子より借り受けた鉄砲衆250がひときわ異彩を放っていた。
丰臣秀吉攻占小谷城,激励士气,此时从静子那借来的250名火枪手显得格外引人注目。
浅井側の鉄砲部隊が射程外から銃撃を受けて次々に倒れる。
浅井方的铁炮部队受到远程射击,接连倒下。
火縄銃など比較にならない直進性が齎す長射程と、予め部隊が伏せている場所を知っているかのような位置取りからの狙撃が猛威を振るった。
火绳枪等无法比拟的直线性所带来的远程射击以及仿佛预先知道部队隐藏位置一般的瞄准,使狙击手大显身手。
鉄砲衆による先制の一撃で浮き足立ったところへ、横合いから秀吉の先駈けが痛撃して蹴散らしていく。
铁炮手先发制人地发动攻击,让对方措手不及。接着,秀吉的先锋从侧面发动猛烈攻击,将对方击溃。
浅井側も数多くの『国友筒』と呼ばれる火縄銃を揃えていたが、発砲する前に討ち取られるため意味を成さなかった。
浅井一方虽然配备了许多称为“国友筒”的火枪,但由于在开火前被击败而没有发挥作用。
史実では秀吉の軍勢が清水谷の急傾斜より京極丸を急襲して陥落させたが、このいくさでは山王丸、小丸と立て続けに二つの曲輪を正面から突破し、僅か半日で京極丸へと迫った。
在历史上,秀吉的军队从清水谷陡峭的斜坡袭击了京极丸并使其陷落。而在这场战争中,山王丸和小丸接连突破了两个曲輪的正面防线,仅用了半天时间就靠近了京极丸。
「恐らく当主の浅井久政は本丸にいる! 先に京極丸を落として本丸を孤立させ、その後攻め上ぼる!」
“很有可能浅井久政当主在本丸里面!先攻下京極丸让本丸孤立,然后再攻打!”
秀吉の言葉を耳にした長政は、反射的に否定しそうになった。
听到秀吉的话,长政本能地想要否定。
(違う、父上は京極丸に駆け付けている。あの人はそういう人だ)
(不对,父上正在赶往京極丸的方向。他就是这样的人。)
説明し辛い親子ゆえの直感から、長政は父である久政が京極丸に居ると確信していた。
由于难以解释的亲子直觉,长政确信他的父亲久政就在京極丸身边。
ここで調略組の秀長が中丸から合流してきた。
在这里,策略组的秀长从中丸那里加入了。
中丸を守る浅井家重臣の浅井七郎井規、三田村左衛門尉、大野木茂俊が寝返り、秀長の部隊を招き入れたため、無血のまま京極丸へと至った。
由于守护中丸的浅井家重臣浅井七郎井规、三田村左卫门尉、大野木茂俊叛变,招致秀长部队加入,因此毫无战斗就到达了京极丸。
秀吉の軍勢は京極丸の出入り口である防衛設備、虎口(こぐち)を攻めていた。その狭さから数の有利を生かせず、秀吉側にも多くの犠牲者を出していた。
秀吉的军队在京机丸的出入口处攻击防御设施-虎口。由于狭窄无法利用优势的数量,秀吉方面也付出了许多牺牲。
合流した秀長は調略の首尾報告を兼ねて、知り得た情報を秀吉に耳打ちする。
合流的秀长向秀吉耳语,报告他的策略成功,并透露了他所获得的情报。
「兄上、赤尾(あかお)美作守(みまさかのかみ)は本丸詰めだそうです」
「兄长,赤尾美作守好像留在本丸里了。」
赤尾美作守清綱(きよつな)は浅井家重臣中の重臣だ。
赤尾美作守清纲是浅井家中最重要的重臣之一。
赤尾に海北(かいほう)綱親(つなちか)、雨森(あめのもり)清貞(きよさだ)(雨森弥兵衛(やへえ)の名でも知られている)を加えた三人は、浅井三将(あざいさんしょう)と呼ばれていた。
赤尾和海北绳亲、雨森清贞(也以雨森弥兵卫之名闻名)组成的三人被称为浅井三将。
秀吉は赤尾が京極丸のような重要拠点を守らず、本丸に引き篭もっている理由を考える。
丰臣秀吉没有保卫像京極丸这样重要的占领地,而是躲在了本丸内,这是需要考虑的原因。
「恐らく浅井(あざい)長政(ながまさ)殿が嫡男、万福丸(まんぷくまる)を守っているのだろう」
「恐怕浅井长政大人正在保护他的长子万福丸。」
「なるほど……久政からすれば直系の跡取り、長政殿がこちらについたとて殺すような真似はしますまい。確か齢十ほどの幼子、次期浅井家当主として育てていると考えれば筋が通りますな」
“原来如此……从久政的角度来看,长政殿是直系继承人,就算他支持这边也不会做出杀他的事情。考虑到他们正在抚养一名大约十岁的幼童作为下一任浅井家当主,这一切就更加真实了。”
ここで京極丸を落としてしまえば、残る本丸は丸裸となる。しかし、京極丸と本丸の間には幅が約二十五メートルもある大堀切が横たわっている。
在这里失掉了京極丸,剩下的本丸将会被完全暴露。不过,京極丸和本丸之间横跨着约二十五米宽的大堀切。
秀吉の進撃を阻む障害でもあるが、本丸からの援軍が駆けつける事をも不可能にしていた。
虽然是阻碍秀吉进攻的障碍,但也使得从本丸派出援军也变得不可能。
秀吉は顎に手をやって今後の方針を考えた。一つ名案が浮かんだので秀長に命じる。
丰臣秀吉把手放在下巴上思考未来的方针。他想出了一个好主意并命令给了丰臣秀长。
「赤尾に万福丸を連れて投降すれば、小谷城の城主にすると打診せよ」
如果带着万福丸向赤尾投降,可以提议成为小谷城城主。
「上様に断りなく城主の約束は、流石に勝手が過ぎませぬか?」
"没有征得上位者的同意,城主的诺言是不是过分自作主张了?"
「構わぬ! 小谷城さえ落とせれば上様もお許しになられる! わしが出世できるかの瀬戸際じゃ、急ぎ調略に取り掛かれ!」
"无所谓! 只要能攻下小谷城,上大人也会原谅我的! 我现在正处于升官发财的关键时刻,需要赶快进行谋略!"
「はいはい、人使いの荒い兄上だ」
“嗯嗯,这是一个粗鲁对待人的哥哥。”
秀吉の剣幕に秀長は肩をすくめた。彼らが話をしている間に京極丸は陥落した。
秀长听到秀吉的剑招,不禁耸了耸肩。在他们谈话的同时,京极丸已经被攻陷了。
兵たちに調べさせてはいるが、久政発見の報は上がってこなかった。しびれを切らした秀吉は、先に本丸を落とすことにした。
士兵们已经开始调查,但久政的发现并没有出现。秀吉感到不安并决定先攻占本丸。
「首魁たる久政は本丸にあり! 京極丸を拠点とし、本丸へ攻めあがる!」
"领袖久政在本丸!以京极丸为据点,向本丸发起攻击!"
秀吉の号令に兵たちが鬨の声で応じた。
丰臣秀吉一声令下,士兵们发出了欢呼声。
史実では京極丸の北側に位置する小丸にて、浅井久政は自刃したと伝えられている。
据历史记载,在京极丸北侧的小丸地区,据传浅井久政自杀身亡。
小丸は久政の隠居後の住まいであり、長政から家督を取り戻した久政は、京極丸が攻められていると聞くや、小丸から出陣し京極丸に駆けつけていた。
小丸是久政隐居后的住处,久政夺回家督后听说京極丸正遭受攻击,便从小丸出征去支援京極丸。
それにも関わらず、京極丸で久政が発見されなかったのには理由があった。
然而,虽然没有在京極丸上发现久政,但这其中有原因。
「父上、ご無沙汰をしております」
"父亲,好久不见了"
長政と遠藤、三田村は京極丸の隠し部屋にて久政を発見していたが、隠し部屋自体が見つかっていないことを良いことに、彼の存在を隠匿した。
长政、远藤和三田村在京極丸的秘密房间里发现了久政,但是他们利用这个秘密房间还没有被发现的事实,隐瞒了他的存在。
「……どうした、わしの首を取らぬのか」
"你为什么不掐死我?" (Note: The translation may differ depending on the context and tone of the original text. This translation assumes a confrontational and aggressive tone.)
久政は、この期に及んで言葉を交わそうとする息子を訝しげに見上げる。
久政看着试图说话的儿子,感到疑惑不解。
この場には彼の他に浅井(あざい)惟安(これやす)(福寿庵という庵号を持つ)と舞楽師の森本鶴松大夫(つるまつたいふ)の二人がいた。
在这个场合上,除了他之外还有浅井惟安(持有福寿庵庵号)和舞乐师森本鶴松大夫这两个人。
もはやこれまでと覚悟した久政は、最期に二人と杯を交わし、自害して果てようとしていた。その直前になって、長政が隠し部屋へと踏み込んだのだ。
久政已经做好准备,准备结束一切,并与两个人交杯,准备自杀。就在那时,长政走进了一个秘密房间。
「ことここに至っては、もはや父上の斬首は免れぬでしょう。ならばこそ、私は父上の真意を伺いたい。何ゆえ父上は、頑なに義兄上に逆らい続けたのですか? 武田が敗れた折に、これからは織田の世になると思われませなんだか!?」
「在这个地步,父亲无法逃脱斩首的命运。因此,我想了解父亲的真实意图。为什么父亲会固执地反抗义兄?在武田败北之际,难道不应该是織田时代到来吗?」
「然り。武田が敗れたと聞いて、我々の時世(じせい)は終わったと悟った。時代に取り残された浅井に与(くみ)し、共に滅ぶのは朝倉ぐらいであろうとも理解しておった」
“是的。听说武田败北后,我们意识到我们的时代已经结束。我们加入了被时代遗弃的浅井,理解即使和朝倉一起灭亡也没有什么不同。”
「なればこそ! その折に織田へと降れば……」
只有成为这样的人才行!那时候,就开始向織田进攻……
「それは出来ぬ!」
"那是不可能的!"
長政の言葉を遮って、久政が言葉を発した。
长政的话被打断,久政发表了自己的看法。
「それだけは出来ぬのだ。この近江は、わしが六角の侵攻を防ぎ、どれほど挫折と苦渋を舐めようとも守り抜いた国よ。それをどうして赤の他人に明け渡せようか」
“这我做不到。这个近江,是我防止六角侵略,不管遭受多少挫折和苦难,守护到底的国家。怎么能把它交给完全不相干的人呢。”
長政の問いに対して、久政は絞りだすように答えた。彼は一所懸命の言葉通り、正に命懸けで近江に執着した。それ故に近江を明け渡して織田に臣従するという選択肢を選べなかった。
长政问道,久政的回答紧锁着。他真诚地执着于追求近江,足以以此为代价。因此,他无法选择放弃近江,而归附于織田。
「無論、この結末は予想できた。わしは勇猛だった亡き父や、いくさ上手のお前とは対照的にいくさの才に恵まれなかった。赤尾には『天下泰平の世ならば、殿は名君となられたことでしょう』と言われたわ。裏を返せば乱世を生き抜く才覚は無かったのだ」
"无论如何,这个结局都是可以预料的。我与勇猛的已故父亲和擅长战争的你形成了鲜明对比,因为我没有受到战争天赋的恩惠。赤尾曾对我说:“如果世间太平,你将成为一个著名的君主。”可反过来说,我没有应对乱世的才能。"
久政は最初から理解していた。自分は乱世に適応できず、それが出来るのは息子の長政であると言う事を。
久政从一开始就明白,他无法适应动荡的时代,而他的儿子长政才有这个能力。
久政は長政に先祖より受け継いだ近江を譲りたかった。しかし、長政は近江よりも広い世界を夢見て飛び出してしまった。
久政想要将祖传下来的近江让给长政。但是,长政心怀更广阔的世界,离开了近江。
旧弊と化した自分は、それを認めることが出来なかった。父祖が愛した近江を諦めることが出来なかった。
沉迷于过去的我,不能承认自己已经陷入了传统的陈腐中。我无法放弃祖辈所钟爱的近江。
「この小谷城へ攻め込んだ武将……確か羽柴と申したか。彼奴の猛進撃を見て悟った、この城はもたぬと。故に、わしの我儘に最期まで付き従わんとした家臣たちに自由を命じた。命を惜しんで逃げるも良し、わしと共に戦って散るも良し、生き残りを賭して敵に寝返るも良し、思うようにせよとな。赤尾には彼奴より調略があれば、応じよと命じてある。赤尾にはお前の嫡男、万福丸を託しておる」
“攻打这座小谷城的武将……好像是叫羽柴吧。看到他猛烈的进攻,我意识到这个城池难以守住。因此,我命令那些一直跟随我的忠臣们自由选择到底要不要继续跟随我到最后。他们可以选择逃跑保命,或是和我一起战斗殉死,或是冒险变成敌人的内应,随他们意愿。我已经命令赤尾,如果他有比羽柴更好的谋略,就要听从他的命令。我已经将你的长子万福丸托付给赤尾了。”
「万福丸が生きているのですか!」
"万福丸还活着吗!"
「戯け! 理由もなく孫を殺すものはおらぬ。万福丸には浅井家を託すつもりであった……」
“胡说!没有理由杀孙子。我本意是想把万福丸托付给浅井家的……”
久政は長政を一喝した。激しく対立こそしたものの、長政憎しで孫を殺すほど耄碌(もうろく)してはいなかった。
久政怒斥长政。尽管两人激烈对立,但久政并没有因憎恨长政而失去理智,到了杀孙子的地步。
むしろ万福丸に次代の浅井家を託すべく、当主として育てようとさえしていた。
倒不如把浅井家的未来托付给“万福丸”,甚至打算将其培养成为当家者。
「しかし、それも終わりよ。浅井家は織田が紡ぐ世で裏切り者として名を遺す。お前も最早、浅井を名乗れまい。ゆえに、浅井の亡霊であるわしが全ての汚名を引き受ける!」
“但是,这也就结束了。浅井家族将作为織田家崛起的反逆者留名于世。你也不再能使用浅井家的名字了。所以,作为浅井家的亡灵,我接受所有的污名!”
そう声高に叫ぶと、久政は長政を突き飛ばした。突然のことに受け身も取れず、長政は背中から壁に叩き付けられた。
这时,久政高声喊叫,把长政推了出去。长政没有做好接受这突然攻击的准备,被狠狠地撞到了墙上。
肺の空気を押し出され、咳込む長政に目もくれず、久政は短刀を握ると横一文字に腹を掻っ捌いた。
被迫呼出肺部的空气,长政不顾嗳咳,而久政握住短刀,横插腹部。
「猿夜叉丸よ……お前は浅井に縛られずに生きよ……」
「猿夜叉丸啊......你应该自由地生活,不受浅井的束缚......」
「ち……、父上!!」
"父亲!!" (Note: This is the Simplified Chinese translation of "ち……、父上!!" which means "Father!!" in English)
「浅井の罪と汚名はわしが背負う。お前は我が首を以て浅井の終焉を見届けよ。しかし、死ぬことは許さぬ。誰から何と言われようとも、お前は生きよ」
“浅井的罪过和污名,我来承担。你必须亲眼见证浅井的终结,但你不能死。不管是谁说什么,你都要活下去。”
「父上……」
"父上……" in Simplified Chinese is "父亲……".
長政が駆け寄る前に、浅井惟安が介錯として久政の首を落とした。久政の首が床に落ちる。長政は震えながら久政の首を大事に胸に抱いた。
在长政冲过来之前,浅井惟安作为照顾人,斩下了久政的头颅。久政的头滚落在地上。长政颤抖着将久政的头颅紧紧地抱在胸口。
「父上……私は愚かでした。近江に固執する父上を、時世を読めぬ頑迷な老人と蔑んですらいました」
"父亲……我很愚蠢。曾经看不起坚持在近江的父亲,甚至嘲讽他是一个不明事理的顽固老人。"
長政は溢れ出る涙を拭おうともせず、滂沱と流れるままに任せた。
长政不擦拭流淌的眼泪,任其涌出如滔滔江水般地流淌。
「近江は祖父上、父上が家臣達と血みどろになって手に入れた地。六角を相手に大勝したことで天狗になり、近江一国で収まる器ではないと自惚れておりました。今にして思えば、あの勝利も父上が営々と準備をしてこられたからこそ……。私はまこと親不孝者でござる」
「近江是我祖父和父亲与家臣们鲜血浸染的得来的领土。因为在与六角家的战斗中获得了大胜而变得狂妄,认为自己已经不仅仅只是掌握近江一国的能力。现在想来,也正是因为父亲们日复一日的努力准备才取得了那场胜利......我真是个不孝之人。」
長政は久政の首に語り掛ける。
长政向久政的首颈讲话。
「私は所詮井の中の蛙。少しばかりいくさが上手いだけの凡百の将、偉大な義兄上に目を掛けて頂いたことで、自分まで特別になった気でいたのです。私自身は何も変わっておらず、何も成していないというのに……」
“我只是一个井底之蛙而已。只是稍微懂得一些战斗技巧的普通将领,因为受到了伟大的义兄的青睐,以为自己也变得特别起来。虽然我本人并没有做过什么成就,也没有什么改变......”
長政は歯を食いしばり、流れた涙を乱暴に拭うと頬を叩いて顔を上げた。
长政咬紧牙关,粗暴地擦去流下的泪水,拍打着自己的脸颊抬起头来。
「父上の最期の言葉、必ずや果たして見せましょう。泥を啜り、石に齧りついてでも生き抜いて、乱世の果てを見届け、あの世で父上にお聞かせ致しましょう」
“一定要实现父亲临终前的遗言。即使要舔泥吃土,咬石头熬过乱世,也要目睹混乱的终结,将这一切告诉父亲天堂中的耳朵。”
長政は久政の首に誓願すると、その首を大事に布で包み込んだ。
长政发誓在久政的首上,并将其用布仔细地包裹起来。
浅井久政の切腹後、浅井惟安と森本鶴松大夫も主君に殉じて割腹して果てた。主君たる久政と同じ場所では畏れ多いと、庭に降りて同じく腹を切った。
在浅井久政切腹之后,浅井惟安和森本鹤松大夫也割腹殉主,就在和久政同一地点下了腹。他们认为在主君久政同样的地方割腹是不敬畏的,于是下到庭院也割腹了。
長政自ら二人の介錯を務め、彼らの首を遠藤と三田村に託した。久政の首は自身が運び、秀吉の許へと報告に上がった。
长政亲自为两个介错的人服务,将他们的头颅交给了远藤和三田村。久政的头被他自己运送,报告给秀吉。
「久政は自害したか。本丸もまもなく落ちよう。長政殿はその首を上様に届けて参られよ」
“久政是否自杀了?本丸也将很快被攻陷。请把长政殿的首级送到上方。”
久政の首級が上がったことで秀吉は上機嫌だった。自らが首級を上げる必要はないが、浅井の滅亡を示すために久政の首は絶対に必要であった。
久政的首级被砍下后,秀吉非常高兴。他不必亲自斩获,但为了展示浅井一族的灭亡,久政的首级绝对是必需的。
「承りましてございます。それでは、これにて」
"谨受您的委托。那么,就这样。"
長政は秀吉の命を受け、信長のおわす本陣へと向かった。道中は誰も口を開こうとはしなかった。死者も生者も黙して語らず、ただ前へ前へと歩んで本陣へ辿り着いた。
长政受秀吉之命前往信长设在的本阵。路途中无人开口。死者与生者都默默无言,只是向前走,直到抵达本阵。
「皆の者、席を外せ」
“大家,请离席” (dà jiā, qǐng lí xí)
信長は長政が掲げ持つ久政の首を見て、家臣たちに命じた。家臣たちは大将首に湧くことなく、粛々と陣から出ていった。
信长看着长政举着的久政的首级,向家臣们下令。家臣们默默地离开军营,没有表现出对首级的兴奋。
「久政の最期はどうであった?」
“久政的最后是怎样的?”
「近江の国主に相応しい最期でありました。父上と最期に話して、己の未熟さと不明を知りました。私は義兄上が語る壮大な夢に中(あ)てられ、その覇道の中身を見ておりませなんだ」
「这是适合近江国主的最后。我与父亲谈话时,认识到了自己的不成熟和无知。我沉迷于兄弟的壮志雄心之中,却未看到其霸道的本质。」
「……」
「……」 translates to 「……」 in Simplified Chinese. It is a series of ellipsis marks commonly used to indicate the omission of words or a pause in speech or writing.
「私では、到底義兄上に並び立てませぬ。父上は、物事の表面だけを見て判ったつもりになっていた私の目を開いてくれました。私があのまま近江の国主に収まっていれば、ここに首を並べていたことでありましょう」
「我绝对不能与义兄并列。父亲教我不要只看事物的外表。如果我一直做近江国主,我也不可能与义兄平起平坐。」
自嘲を浮かべて長政は話す。信長はその全てを黙って聞いていた。口を挟まず、長政が全てを吐き出すまで待った。
自嘲地,长政讲述着。信长默默地听着,没有插嘴,一直等到长政把一切都说出来。
「私は結局、何者にもなれませんでした。浅井は父上が終わらせ申した。私は唯の長政として、この乱世の行く末を見とうございます」
"最终,我成为了无人。浅井已经结束了父亲的工作。作为长政,我只能看着这个混乱的世界走向未来。"
「人は誰しも天命を持つ、貴様の天命は覇道の見届け人であったまでよ。わしも久政と同じく、自分の生き方を変えられぬ。自分を見つめ直し、これから何者にもなれる貴様を羨ましくさえ思う」
“每个人都有自己的天命,而你的天命是成为统治者的见证人。我也像久政一样,无法改变自己的生活方式。我甚至嫉妒你能够重新审视自己,并成为未来任何一个人的榜样。”
「まさか! 義兄上が私如きを羨むなど……」
“竟然!大舅哥居然嫉妒像我这样的人……”
信長の言葉に長政は驚愕した。信長は天下に王手を掛けている。天下統一を目前に控え、武家に生まれた者ならば、誰もが羨む立場にいる。その信長をして、長政を羨ましいと語ったのだ。
信长的话让长政感到惊讶。信长已经掌握了天下的大权。他即将统一天下,而任何出生在武家之中的人都会羡慕这种地位。信长说长政是令人羡慕的。
「長政よ。天下の覇道を征(ゆ)く者は孤独だ。誰にも弱みを見せず、誰にも心を許さぬ。数多(あまた)の塵芥(ちりあくた)からの憎悪を一身に背負い、時として共に歩む家臣に死を命じる必要がある。皆の命と想いを託された以上、わしは止まることが出来ぬ。突き進む道の先が崖であろうと止まれぬのだ。立ち止まり、振り返って、新たな道を歩み出せる貴様が羨ましい」
"长政啊,称霸天下的人必然是孤独的。他不会向任何人展示弱点,也不会向任何人敞开心扉。他必须承受着来自无数琐事的仇恨,有时还必须命令跟随他的家臣去死。既然众人都将命运和情感寄托在他身上,那么他就不能停下脚步。无论前方是悬崖绝壁,他也不得退缩。我实在是羡慕那些能够停下来,回过头来,重新走上新路的人啊。"
それは長政には持ち得ぬ視点からの言葉だった。信長は長政の視線に気づくと、自嘲気味に言葉を続けた。
那是从长政无法抱持的视角说的话。信长注意到长政的目光后,带着自嘲继续说道。
「貴様はわしの覇道の中身が見えぬと言うたが、それはわしとて同じこと。わしは貴様の主人である静子が語る未来が理解できぬことがある。あ奴は、わしよりさらに先を見ておる」
“你说我看不到我的霸道的实质,但我也是一样。我作为你的主人,无法理解静子所说的未来。她比我更能看得更远。”
「義兄上、それは……」
“兄长,那个……”
「しかし、静子が如何なる高みを目指していようが、わしの歩みは止まらぬ。わしは、手始めに日ノ本を手に入れる。静子の思い描く、見果てぬ夢の先が何処にあろうとも、わしはわしの歩調で進む。貴様も貴様の歩み方で追って参れ。わしは、先に夢の果てで貴様を待っていよう」
“然而,无论静子朝着何种高峰努力,我的步伐都不会停止。我将首先获得日本。无论静子梦想的终点在哪里,我都会按自己的步伐前进。你们也要按照自己的步伐跟随我。我会在梦想的终点等你们。”
婉曲的ではあるが、信長は長政を気遣っていた。いくさに明け暮れる乱世の終わりを目指し、同じ道を歩む信長が自分を待つと言ったのだ。
委婉地来说,信长是在关心长政。他们共同走向追求结束纷乱的战乱时代的道路,信长说他会等待走在相同路上的长政。
「義兄上、私は愚か者の上に腑抜けてまでいたようです。義兄上の覇道を共に歩むのではなく、道を外れて傍観者となるつもりでおりました。私はまたしても逃げるところだったのです。義兄上の言葉で腹が据わり申した。どれ程みっとも無かろうが、この命果てるまで足掻き続け、義兄上の足跡を追って参りましょう」
「义兄,我似乎比愚蠢的人还要软弱无力。本来想着不与义兄同行,而是站在旁观者的角度看待事物。我又一次想要逃避困难。但义兄的话让我重新振作。不管多么丑陋,我将继续奋斗直至生命垂危,紧随义兄的脚步。」
「そうか……長政よ。一人前の武士(もののふ)の面構えになっておるな。わしの進む道は険しいぞ、心して付いて参れ」
“这样啊……长政啊。成为了一名合格的武士的气质啊。我要走的路很艰难,你要认真地跟随我。”
決然と顔を上げた長政に、信長は言い放った。
信长对着挺起胸膛的长政说:「你果敢地抬起头来。」
「貴様にはわしと共に夢を見届け、市を幸せにする責務があることを忘れるなよ」
“不要忘记你有一个责任,和我一起见证梦想,并让城市幸福起来。”
浅井・朝倉両家を滅亡へと追いやった信長は、ついに越前と近江をも掌握した。
终于将浅井和朝倉家族逼向灭亡的信长,最终掌控了越前和近江。
「江北浅井跡一職進退、羽柴筑前守に一任する」
「姜北浅井迹一职进退、羽柴筑前守に一任する」翻译为简体中文为:「江北浅井迹一职进退,委托给羽柴筑前守决定」。
「一乗谷が采配、明智惟任日向守に一任する」
"一乘谷委任,明智惟任任命为日向守"
北近江は秀吉が治め、越前の一部は光秀が統治することとなった。
北近江由秀吉治理,越前的一部分由光秀统治。
光秀は既に坂本一帯を治めており、それもあってか越前の支配地はやや少なくなったが、これで両名ともに十万石を超える国人となった。
光秀已经管理着坂本一带,因此越前的领地稍微减少了一些,但两个人现在都成为了超过十万石的国人。
秀吉と光秀は共に新参者ながら、織田家に代々仕えた譜代の臣と肩を並べるに至った。
秀吉和光秀虽然都是新来的人,但已经和代代仕奉织田家的旧臣并肩作战了。
一方静子は支配地こそないものの、莫大な財貨に加えて、古書や芸術品と言った文物が与えられた。
尽管一方静子没有支配领土,但她获得了巨额财富,还赠予了一些古书和艺术品等文物。
浅井・朝倉が遺した文物に加え、越前や近江の職人たちなどの人材をも報酬として下賜された。
除了浅井和朝倉留下的文物外,也赏赐了越前和近江的工匠等人才作为报酬。
論功行賞も大過(たいか)なく済み、後は帰国するだけとなるはずであった。
论功行赏也没有出什么大过失,后来只剩下回国的事情了。
(なんだ、この状況は……)
(这是什么情况……)
静子は自分の置かれた状況を見て、そう思わずには居られなかった。静子は自分の陣にて右側を光秀と彼の家臣が固め、左側には秀吉と彼の家臣に押さえられていた。
静子看着自己所处的情况,不能不这么想。静子在自己的阵营里,右边是光秀和他的家臣,左边被秀吉和他的家臣压制着。
両雄から文字通り板挟みにされ、静子は嘆息する。彼らは黒鍬衆を、ひいては静子の後方支援部隊に協力を要請しようとした。
被两个强者置于夹缝中,静子叹息不已。他们试图请求黑鍬衆的支援,以及静子的后方部队的合作。
この時代、自らの支配地には拠点となる城を建てる。これはその地を治める支配者を明確にし、内外に織田家の勢力圏内であることを知らしめる示威行為でもあった。
在这个时代,他们建造了作为自己统治地区基地的城堡。这既是为了明确这个地区的统治者,也是为了向内外展示織田家的势力范围。
「実は前々からお前様を気に入らぬと思っておったのよ」
“其实我早就对你不感冒了”
「はっはっは、奇遇ですな。私もです」
“哈哈哈,真是巧合啊。我也是。”
静子を挟んで秀吉と光秀は互いに牽制し合う。このところ黒鍬衆は石工集団である穴太(あのう)衆をも取り込み、城郭建築に於いて他の追随を許さぬ存在となっていた。
静子在中间,秀吉和光秀互相制衡。最近黑鍬衆还吸纳了石工集团穴太(あのう)衆,成为在城堡建设中无人能敌的存在。
これまでは良く言えば無骨な、悪く言えば実用一辺倒の城を建てていた。しかし、坂本城の築城にあたり、実用性は維持しつつ、美観をも併せ持つようになった。
过去建造的城堡好说就是粗犷,说不好就是只注重实用。但是,在坂本城的修建过程中,保持实用性的同时,也变得拥有美观性。
熟練した技術が昇華した結果だが、坂本城は美しい城として一躍天下の耳目を集めた。それ以来、支配地に建てる城は、支配者の顔として美しさをも求められるようになった。
熟练的技术昇华的结果是,坂本城一下子成为了天下公认的美丽城堡。从那时起,在统治区域建造的城堡也开始被要求美观,成为统治者脸上的符号。
秀吉も光秀も共に自らの力を誇示する必要がある。特に秀吉にとっては初の城となる。築城に掛ける意気込みは光秀よりも強い。とはいえ、光秀も越前には並々ならぬ執着があった。
秀吉和光秀都需要展示他们自己的力量。特别是对秀吉来说,这是他的第一个城池。他对建筑城池的决心比光秀更加坚定。不过,光秀也对越前有着不同寻常的执着。
光秀にとって越前は朝倉義景を頼って10年を過ごした地でもある。
对于光秀来说,越前也是他依靠朝仓义景度过了十年的地方。
地政学的な優位性を述べるのなら、日本海に面した越前は敦賀港(つるがこう)を持ち、日本海回りの海運の要として注目されていた。
如果谈论地缘政治的优势,那么面向日本海的越前拥有敦贺港,作为日本海航运的重要节点备受关注。
敦賀港の権益自体は信長が押さえるとしても、海路から陸路へとつなぐ街道を押さえれば、得られる権益は莫大となる。光秀にとって越前は経済的にも重要な土地となる。
敦贺港的权益自身即使由信长把握,但如果控制连接海路与陆路的街道,则获得的权益将是巨大的。对光秀而言,越前成为了经济上重要的领土。
(困ったなあ……)
(为难啊……)
秀吉と光秀、互いに一歩も退く気配が無い。如何な黒鍬衆とて一挙に二つの城は建てられない。
秀吉和光秀彼此都没有退缩的迹象。就像黑鍬衆一样,两个城池也无法同时建立。
無理に人員を割ったところで、そこには優劣が発生し、劣った組の築城を許容できる二人では無かった。
强行分配人力,会导致优劣出现,两个人无法容忍建造城堡的较差团队。
(せめて後一月時間が貰えればなあ……)
(要是能再多给一个月的时间就好了……)
一月経てば、街道整備に当たっている黒鍬衆の大半が仕事を終えて戻ってくる。しかし、どちらも一月待つなどという悠長な事を飲んではくれない。
一月过去后,负责道路整修的黑锄军的大部分工作已经完成并返回。然而,他们都不会容忍等待一个月这样的悠闲事情。
「静子! まだ陣に居ったのか、丁度良い」
「静子!你还在阵地里啊,正好」 -> "静子!你还在阵地里啊,正好"
静子が頭を悩ませていると、足音も荒々しく信長が陣へ入ってきた。彼はぐるりと周囲を見回して状況を把握すると、そのまま静子に声を掛けた。
当静子烦恼不已时,信长的脚步声也异常沉重地走进了营帐。他环顾四周,了解了形势,然后直接对静子说道。
「北伊勢が騒がしい。奇妙を鎮圧に向かわせることにした。静子は、あ奴の補佐を任せる」
「北伊势很吵闹。我们决定派遣奇妙压制这种局面。静子将让他协助我们。」
「はっ」
"「はっ」" translates to "啊" in Simplified Chinese.
静子は渡りに船とばかりに飛びついた。
静子跳上了船,仿佛在渡河。
「そこな二人。城は逃げはせぬ、黒鍬衆がおらずとも進められる準備はあろう。人手を回すゆえ、準備をして黒鍬衆を待て」
“那两个人在那里。城池不会逃掉,即使没有黑鍬衆也可以行动。由于需要调遣人手,所以要做好准备等待黑鍬衆的到来。”
「は、ははっ」
"哈,哈哈"
言うだけ言うと信長は去っていった。トップの意思決定が為されれば、後はそれに従って粛々と進めるのみ。静子は北伊勢を鎮圧すれば、そのまま帰国できると喜んでいた。
说完后,信长离开了。一旦做出了最高层的决定,就只能遵循它认真地执行。静子非常高兴,如果能平定北伊势,就能立刻回国。
築城に必要となる建材の手配で、二人が再びいがみ合うまでは。
在安排所需的建筑材料以建造城堡时,直到两人再次产生分歧。
秀吉と光秀の対立に巻き込まれて気疲れしながらも、静子は双方を上手く宥めることに成功した。二人が新たな火種を見つけないうちに、静子はさっさと信忠に従って北伊勢を目指した。
在秀吉和光秀的对立中被卷入,尽管感到疲惫不堪,但静子成功地巧妙地安抚了双方。在两人找到新的火种之前,静子就匆匆跟随信忠前往北伊势。
「北伊勢の跳ねっ返りどもめ、まとめて捻り潰してくれる」
"将北伊势的反弹者,一起扭曲粉碎掉"
信忠(奇妙丸)は上機嫌だった。朝倉攻めも、浅井攻めも前線に立てたのは序盤だけで、それ以降は後方で指を咥えて眺めているしかなかった。
信忠(奇妙丸)心情愉悦。早期的朝倉攻势和浅井攻势只在前线发起,之后只能咬着手指坐在后方眺望。
溜まりに溜まった鬱憤を北伊勢で発散しようと言う腹積もりであった。年若く、功を焦るあまりに成果を残せていないが、信忠には先見の明があった。
他积累了很多郁闷,向北伊势发泄。虽然年轻,非常渴望成就,但他的信忠有着卓越的先见之明,知道什么是该做的。
不測の事態に対する機転も優れており、名将の陰に隠れがちだが徐々にその頭角を現しつつあった。
对于不可预料的情况,他的应变能力也很出色,虽然常常被大将遮盖,但他逐渐展现出自己的才能。
「口ほどにもない連中め。己の尻も満足に拭けぬのか」
"口是心非的家伙们。连自己的屁股都擦不干净吗?”
瞬く間に北伊勢を鎮圧し、岐阜へと戻る途上で信忠が愚痴を零す。伊勢については信長の次男、信雄と三男、信孝が支配していた。
信忠瞬间平定了北伊势,在返回岐阜的途中抱怨。伊势由信长的次子信雄和三子信孝掌控。
しかし、先だって信長より街道整備の不始末を追及され、他の全てを放り出して整備を推し進めた結果、一向宗の暗躍によって暴動を扇動されてしまっていた。
然而,最近被信长追究关于道路整修不力的问题,并放下了其他一切推动整修,结果却被一向宗教派的暗中操纵所煽动而引发了暴动。
またしても失態を晒した二人に信長は鎮圧を命じず、信忠を派遣するに至った。
信长没有命令镇压这两个再次犯错的人,而派遣了信忠。
「大将自身が突撃するのは、どうかと思うけどね」
“虽然我觉得将军亲自冲锋有些不妥。”
「何事も最初が肝要だ」
"任何事情都必须抓住开头"
静子の苦言に渋面を浮かべながら信忠は言い返す。北伊勢に着いた信忠は、戦況を把握すると騎馬の部隊のみを率い、敵の中枢と目される集団を一息に蹴散らした。
信忠闻言脸色不悦地回应静子的抱怨。抵达北伊势后,他了解了战局,只带领骑兵部队,一举摧毁了被视为敌人核心的集团。
信忠の読みは正鵠を射ており、反乱は主導者を失って崩壊した。しかし、一歩間違えば敵軍の中で孤立し、討ち死にした可能性もあるため、家臣達は生きた心地がしなかった。
信忠读书准确无误,反叛军失去领袖后开始崩溃。然而,一错步可能被敌人孤立,并冒着被击杀的危险,因此家臣们生活在不安中。
家臣達が口を酸っぱくして信忠に苦言を重ねたため、信忠も意固地になって聞く耳を持たない態度となり、お目付け役の静子にお鉢が回ってきたのだ。
由于家臣们一再对信忠提出批评意见,信忠也变得固执己见,不再听取意见。因此责任转嫁给了静子作为他的监护人。
「ま、良いけどね」
"嗯,还行吧"
静子にまで窘められ、さしもの信忠も反省が見えたところに伝令が駆けつけた。信長からの命令かと考えた静子は、信忠に声を掛けて全軍を停止させる。
在静子的压力下,信忠表现出了反省之色,就在这个时候,一个使者奔来报道。静子以为是信长的命令,便让信忠下令全军停止行动。
伝令から文を受け取ると、信忠と共に中身を検めた。
当接到传令的信后,信忠和我检查了信的内容。
「今度は越後か……」
"这次是越后吗......" -> Simplified Chinese
「む、なんだ? 上杉が裏切ったとでもいうのか?」
"嗯,什么?上杉背叛了吗?"
「違うよ。上杉に技術供与をするから、その話し合いに加われって依頼。うーん、君には関係ないかな? うん、直接的には関係ないね。ともかく一度尾張に戻って、軍を再編成しないと駄目だね」
“不是这样的。上杉方面请求我们提供技术支持,让我们参与谈判。嗯,你可能跟这没什么关系。总之,我们需要先回到尾张,重新组织军队。”
「このまま岐阜から向かえば良いではないか」
“直接从岐阜出发不就好了吗?”
「軍事行動は計画に基づいて動くから、勝手に城の物資は使えないの。改めて越後行きの計画を練らないとね。それに数日ぐらい休みたい……」
"军事行动必须按计划行动,不能擅自使用城内物资。我们需要重新制定越后行动的计划。此外,我想休息几天……"
「そういう訳なら仕方ないな。しかし、北伊勢鎮圧を祝う宴には顔を出せよ」
如果是那样的话,就没办法了。不过,你应该去参加庆祝北伊势镇压的宴会。
「余裕があればね」
如果有余裕的话
その後は特に何事もなく、彼らは岐阜に到着した。翌日早朝から信忠が静子邸を襲撃し、無理やり祝賀の席に引っ張りだしたのは言うまでも無い。
之后没有什么特别的事情发生,他们到达了岐阜。第二天清早,信忠袭击了静子的住所,把她硬拉到了庆祝宴会上,这不用说了。
いくさは始めるよりも、終わらせた後がしんどい。そう思わずにはいられない静子であった。彼女は尾張に帰着すると軍を解散し、風呂に浸かって旅の疲れを癒した。
战争结束后比开始更艰难。静子这样想着。回到尾张后,她解散了军队,泡了个澡以康复旅途的劳累。
風呂を出たところで蕭に出くわした。渡りに船とばかりに、越後の上杉を訪ねる際の土産を手配して欲しいと依頼する。
刚从浴室出来,就遇上了萧。他趁机请求我为访问越后上杉家的土产准备,此时正如同找到了一条遂心如意之船。
礼儀作法については信長に叩き込まれはしたものの、所詮は付け焼刃であり、生まれついての武家の娘である蕭に任せた方が良いと静子は考えた。
礼仪作法方面虽然信长曾经打磨过,但终归只是些肤浅的应酬技巧,静子认为还是应该交由出身武家家族的蕭姑娘来处理。
「お役目、承りました。お任せ下さいませ」
"我接受了任务,请放心交给我"
蕭が土産を渡す相手と、贈る品を見定める間、静子は束の間の自由を満喫する。幾ら上杉家が臣下に収まったとは言え、未だ織田に臣従するのを由としない者は多い。
肖递给土特产的对象,并决定要送的礼物时,静子享受了片刻的自由。尽管上杉家已成为臣下,但仍有许多人不愿臣服于织田家。
それを承知で静子を越後へ向かわせる理由は何か、答えは単純にして明快だった。
让静子去越后的理由很简单,答案既简单又明显。
上杉が請い招いた賓客である静子に対して不手際があれば、それは上杉にとって大きな過失となる。上杉家内の人事について介入されても、謙信としては甘んじて受けるしかなくなるのだ。
如果在接待上杉招待的贵宾静子时出现了差错,那将对上杉来说是一大过失。即使介入了上杉家内的人事,作为谦信,也只能甘愿接受。
餌として考えるなら静子は適任であった。第一に上杉側が招聘(しょうへい)する程の技術力を持ち、信長の名代として恥じない身分があり、家柄も実績も申し分ないと言うのに女である。
如果把她视为饵料,静子是一个合适的人选。首先,她有像上杉势力那样的高水平技术,有资格代表信长,拥有无可挑剔的家族背景和成就,但却是个女人。
相手にとっては侮り易く、敵意を向けやすい。その上で不測の事態に即応し、無事に帰ってこられる人材となれば静子以外にはあり得ない。
对于对方来说,他们很容易被看作是轻视的对象,并且容易产生敌意。在这种情况下,只有静子拥有能够应对意外事件并安全返回的能力。
(やれやれ、相手を萎縮させない範囲で、なおかつ不測の事態に対応できる人数か)
(呼,能够在不让对方感到沮丧的情况下应对意外情况的人数,能做到吗?)
中々に厄介な仕事だと静子はため息をついた。
静子叹了口气,“这是个相当棘手的工作。”
しかし、静子としては断るどころか望むところであった。問題の芽は大きくなる前に摘んでしまうに限る。これは農業に携わる静子の持論でもあった。
然而,对于静子来说,她不仅拒绝不了,还非常希望得到这份工作。最好是在问题变得严重之前解决它,这也是静子作为一名从事农业的人持有的理念。
静子はすっかり乗り気になっていたが、使節の陣容を知った信長が待ったを掛けた。
静子已经完全变得兴致勃勃,但是当信长了解了使节的阵容后,他打起了停顿。
『政治が絡む交渉の場に、駆け引きの出来ないお前が行くな。足満を名代として送り出せ』との指示であった。
“指示是『在涉及政治谈判的场合,不能协商的人不要去。派遣Fumitsuru作为代表』。”
意気込んだだけに肩透かしを食らった気分になった静子だが、自分が出向かずとも足満が特有の嗅覚で悪い芽を摘んでくれると思い直した。
静子本怀着雄心壮志,但最终却感到失望和沮丧,不过她意识到,即使她不在现场,足满凭借自己特有的嗅觉也能够发现并且摘掉那些不良因素,于是她重新振作了起来。
足満を交えて協議した結果、越後には足満が兵士3000を率いて向かうことになった。
在与足满交涉后,结果是足满将率领3000名士兵前往越后。
ただし、技術指導をする士官以外の鉄砲衆は全て置いていく。鉄砲衆は少人数でも脅威となり、徒(いたずら)に越後の不安を煽ることになるのを防ぐための判断だ。
然而,除了技术指导军官之外的枪手都将留下。为了防止枪手即使人数很少也会成为威胁,并煽动越后的不安,做出了这样的判断。
謙信が動員できる兵は1万程度であり、謙信以外の家臣が独断で動かせる兵数は、多くとも1000を僅かに超える程度であろう。
谦信能动员的士兵数量大约只有一万人左右,除了谦信以外的家臣能自主动员的士兵数量最多也只有略超过一千人。
謙信が裏切れば、いかな足満とて一巻の終わりだが、その場合は越後に粛清の嵐が吹き荒れる。老若男女を問わず、反乱に加担した一族は全て根切りに処される。
若是謙信背叛的話,即便拥有众位武将,也会是一幕结束的结局。而在这种情况下,越后将掀起一股清洗的风暴。无论男女老幼,但凡参与叛乱的一族都将被全面根除。
信長は面従腹背からの裏切りを殊の外嫌う。次の支配者が誰になろうとも、愚かな支配者を戴いた越後の民は、長く苦しい試練を強いられる。
信长非常讨厌背叛他的人。无论下一个统治者是谁,如果越后的民众支持一个愚蠢的统治者,他们将长期遭受痛苦的考验。
「こういう訳だから、申し訳ないけど私の名代として越後に行って貰えないかな?」
"因为这种情况,很抱歉,你可否代表我前往越后地区呢?"
「静子の頼みとあっては断れまい、お役目確と承った」
"既然是静子的要求,我不能拒绝,我已确认了我的任务" in Simplified Chinese.
静子たっての頼みとあらば、足満に否やは無い。謙信が静子を気に掛けていた事を知る彼は、静子が越後に向かうような事態は回避したかった。
如果静子有请求的话,足满是不会拒绝的。他知道謙信一直担心着静子,因此希望避免她前往越後的情况。
表立っては言わないが、信長も同意見であり、足満は彼の思惑を正確に掴んでいた。
表面上虽然没有说出来,但信长也持有同样的意见,而阿倍满则准确地把他的想法掌握在手中。
唯一、何の反応も見せなかった前久だが、彼の場合は静子が越後に向かうのならば、自分も同行するつもりでいた。
前久一直没有表现出任何反应,但是如果静子前往越后,他打算同行。
「技術供与をするにあたって、人や物の交流が無いと始まらない。まずは街道が整備されて初めて具体的な計画について話ができると思うの。それを中心に話をしてきて貰えるかな? いずれは領内で通用する貨幣のお話もしたいけど、流石に時期尚早だよね」
进行技术合作时,缺乏人员和物资交流是无法启动的。我认为首先必须确保道路完善,才能对具体计划进行讨论。你们能否以此为中心进行讨论呢?虽然我还想讨论通用的领内货币问题,但现在时机还不成熟。
「街道整備だけで問題なかろう。除雪道具や融雪剤の話だけでも、上杉からすれば喉から手が出る程であろう」
「只要整治道路就不成问题了。就算只是谈论除雪工具和融雪剂,对于上杉来说也会是喜闻乐见的。」
「ガラス製品の素材としてカレットを造る際に、塩化カルシウムが副産物として山ほど併産されるからね。大丈夫だとは思うけど、充分に気を付けてね。謙信自身は信用できても、家臣たちが野心を抱いてないとは限らないから」
“在制作玻璃制品的原料中,因为作为制造珂罗材料的氯化钙会大量地同时制造,所以需要十分小心。虽然信用可靠,但臣下们未必不怀野心。”
「十分に注意を払おう。わしが留守にする間、静子は真田家の動向に気を付けよ。奴ら、いよいよ内輪もめに拍車が掛かってきておる。遠からず内乱となる可能性すらある」
要十分注意,当我不在时,静子要留意真田家的动向。他们的内部矛盾已越来越激烈,很快可能会引发内乱。
「一応間者を通して聞いてはいるけど、親武田派と、織田への鞍替え派が対立しているみたいだね。引き続き様子を見るけど、そっちを頼っていった場合は保護をお願いするね。敵対するなら容赦は要らないよ」
“我已经通过间者打探过了,似乎有親武田派和转向织田派的派别对立。我会继续观察情况,如果你要依靠那边,就请向他们求保护。如果他们是敌对的,那就毫不留情地对付他们。”
「今更敵対するようでは、先が知れると言うものよ」
「现在才敌对起来,未来的结局可想而知。」
真田家は完全に二つに割れていた。今や飛ぶ鳥落とす勢いの織田家に鞍替えする革新派と、信玄からの恩を仇で返すべからずと考える親武田の保守派に分かれていた。
真田家已经分裂成了两派。一方面是翻新派,他们转投了如今势头蒸蒸日上的織田家;另一方面是保守派,他们是信玄的亲戚,认为不应该恩将仇报。
革新派が勢いづいた理由として、諏訪勝頼の強引な徴税によるところが大きかった。
革新派势力壮大的原因在于,諏訪勝頼过度强制征税所致。
信玄の時代でも市場に対する貨幣の供給不足から貨幣価値の上昇を招き、結果として物価の下落に歯止めがかからなくなっていた。
在信玄时代,由于市场上货币的供应不足,货币价值上升,导致物价持续下降,无法控制。
そこに来て、更に勝頼が徴税の際の貨幣基準を締め上げたため、急激なデフレを招いてしまった。
因此,当他在征税时收紧了货币标准,导致了急剧的通货紧缩。
信長の支配地以外では一定の基準を設け、それをクリアした鐚銭(びたせん)であれば納税に使用できるとしていた。しかし、勝頼は信玄の方針を引き継ぎ、精銭以外での納税を認めなかった。
除了信长的统治领土外,设立一定的标准,只有通过了这些标准的铁钱(“鐚銭”)才能用于纳税。然而,胜须与继承了信玄的政策,不允许使用除纯银钱外的其他货币进行纳税。
この為、急激に市場から貨幣が枯渇し、これまでに倍する勢いでデフレが進行した。
因此,市场上货币急剧枯竭,通货紧缩的速度比以往高出一倍。
勝頼の許には規制緩和を求める嘆願書がひっきりなしに届いているのだが、彼はその全てを黙殺していた。
胜颓的处处都有不停地送上寻求规制缓解的请愿书,然而他却默不作声。
「先にしびれを切らすのは、親武田派であろう。仮に上杉獅子身中の虫と手を組んだとて、真田家当主がいくさ場に出ることはあるまい」
「率先失去耐性的可能是父亲武田派。即使暂且与上杉狮子身中的虫合作,真田家当主也不可能在战场上出现。」
「今は武藤喜兵衛じゃなくて真田昌幸(まさゆき)だっけ? 彼は勝算があると判れば、こちらの策をすぐに採用する程に柔軟だから、もしかすると何か度肝を抜く行動に出るかもね。私としては早くこっちに来て欲しいところではあるんだけどね。もしもの時はよろしくね」
“现在不是武藤喜兵衛了,是真田昌幸吧?他非常灵活,如果认为有胜算,会立即采纳我们的策略,也许会采取一些让人惊讶的行动。虽然我希望他能尽快过来这边,但如果有需要的话请您好好照顾。”
「まあ、果報は寝て待てと言うだろう? 期待せずに待っていてくれ」
“嗯,好事多磨吧?不要抱有期望,耐心等待。”
あまり気乗りしない態度を示しつつ、足満は去っていった。
表现出不太积极的态度,足满离开了。