06あなたの愛が正しいわ~
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06 僕たちは夫婦なのに【デイヴィス視点】
月に一度行われる会合から戻るとジョンが出迎えた。いつも出迎えているローザの姿はそこにない。
「お帰りなさいませ。旦那様」
「ローザは?」
そう尋ねるとジョンは「お時間も遅いので、奥様はお部屋でお休みになられています」と微笑む。
「まったく……」
僕の妻は、まだすねているようだ。夜会のあの日から、彼女は僕を避け続けている。愛している僕に『うっとうしい』と言われたことに、よほど傷ついたのだろう。
「あーもう、わかった、わかった。今回は僕が折れるよ」
「は、はぁ? 旦那様、どちらへ?」
「ローザの元に行く」
「あ、いえ、ですから、奥様はお休みに……」
止めようとするジョンを無視して、僕はローザの寝室へと向かった。
ローザはいつだって僕に愛されることを望んでいる。今は少しすれ違ってしまっているが、優しく抱いてやればすぐに機嫌が直るはずだ。
ノックをしないでローザの寝室のドアノブに手をかけると、扉はあいかわらず鍵がかかっていた。前はこれを幼稚な嫌がらせだと怒ってしまったが、これは彼女の精一杯の『怒っています』のアピールなのかもしれない。
「ローザ」
扉を叩き何度か名前を呼ぶと、ようやく開けてくれる。
「デイヴィス? こんな時間にどうしたの?」
驚いているローザは、胸元が大きく開いた部屋着を着ていた。その姿を見て、やっぱり彼女は僕が来ることを待っていたんだとわかり嬉しくなる。
ローザは僕の視線に気がついたようで頬を赤らめた。
「今までと違っていて驚いたでしょう?」
たしかに今までのローザは、大人しい服装を好んで着ていた。でも、今のほうが前のローザより何倍も魅力的に見える。
「ああ、でも、その姿も素敵だよ」
嬉しそうに微笑むローザを抱きしめたくて仕方がない。ローザはいたずらっ子のように微笑んだ。
「実はね、私、本当はこういう服装が好きなの。でも、あなたが大人しくて清楚な女性が好きだと言っていたから、あなたに好かれたい一心で無理をしていたの」
「本当に馬鹿よねぇ」とローザはため息をつく。
「デイヴィス、安心してね。私はもうあなたに好かれたいなんて思わないから」
晴れやかな表情で言い切られて、僕の頭は真っ白になった。
「あっ、でも今まで通り月に一回は寝室を共にしましょうね。それは伯爵夫人の務めですもの」
「月に一回、だけ?」
「あら、多かったかしら? でも、あなたがそう決めたじゃない」
そうだった。ローザの寝室に行くのが億劫で、仕事で忙しいと理由をつけてローザにそう伝えていた。
胸騒ぎがする。僕は慌ててローザの肩を抱き寄せようとした。いつもならすぐに僕の腕の中でうっとりするローザの眉間にシワがよる。
「デイビィス、今日じゃないわ」
「いいじゃないか」
ローザは迷惑そうに僕の手を払った。
「私、眠いの。こんな時間に急におしかけてくるなんて非常識よ」
「そんな、僕たちは夫婦だろう?」
必死にローザに微笑みかけると、ローザは「そうね、私たちは夫婦だわ」と言ってくれた。
「なら……」
「でも、私たちはデイヴィスの理想の『爽やかで程よい距離の夫婦』でしょう? 私の理想の『お互いを大切にして愛し合っている夫婦』じゃないもの」
ローザに『愛し合っている夫婦じゃない』と言われて、僕は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
