《铃芽之旅》第二章第三节小说中日双语翻译

あなたのせいで魔法使いに
因为你,我成了魔法使
『——愛媛におると?』
電話口で、環さんの絶句したような声が言った。
『ちょっと——ちょっとちょっと、鈴芽、あんた!』
信じられない、という口調の環さん。その声の後ろには、かすかに電話の音や低い話し声が混じっている。もう夜の九時に近いけれど、環さんはまだ漁協のオフィスにいるのだ。
“——你在爱媛?”
电话这头,环阿姨有些无语的说道。
“等会——等会等会,铃芽,你!”
环阿姨用不敢相信的语气说着。这个声音的背后隐约混杂着其他的电话和小声说话的声音。虽然已经晚上九点了,但环阿姨还在渔协的办公室里。
『あんた昨日、絢ちゃんに泊まるって言ちょたよね?』
「ええとね、ちょっと思い立ちましてミニ旅行に……」
私は努めて明るい声を出し、と笑ってみる。それぜんぜん笑えないんやけど、と冷めた声で環さんが言う。——私には見える。以前に社会科見学で訪れたことのある、漁業協同組合の昭和感溢れる古いビル。その灰色のデスクに座って、スマホを片手に眉にしわを寄せ、頭を抱えている環さんの姿が。
“你昨天不是说了住在绚家里吗?”
“嗯,那个啊,就是突然想来个小旅行了……”
我努力的发出欢快的声音,想笑着回答。但得到的只有环阿姨冷冷的声音“我可一点也笑不出来。”——我都能想象到,因为之前社会实践而到访过渔业协会组那充满昭和气息的大楼,环阿姨坐在灰色的桌子前,单手拿着手机,皱着眉头抱着头的姿态。
『あんた、明日こそちゃんと帰ってくるっちゃろうな?今夜はどこに泊まると?』
「あ、心配しないで!ちゃんと自分の貯金で泊まれるから!」
『そんげな話しとらん!』
稔ー、飲み会やぞおと、電話の奥で小さく声がする。さき行っとってください、俺、環さんに声かけていきますんで。稔さんの声だ。私には見える。漁協の男たちが電話口で怒る環さんを眺めつつ、「鈴芽ちゃんも反抗期かね」とかなんとか無責任に面白いがっている姿が。
『とにかく、今夜泊まる場所を教えなさい。ホテル?それとも旅館?だいたいあんた、本当に一人やっちゃろうね?まさか、誰か私の知らん人と一緒におるっちゃないやろう——』
“你明天肯定会好好的回来吧?今晚你住哪?”
“啊,不用担心了!我还有存款能让自己找地方住呀!”
“你说话给我放尊重点!”
“稔——要酒会咯”电话那边传来了细小的声音。
“你先去吧,我去跟环姐打声招呼”是稔叔的声音。
我都能想象到,渔协的男人们远远的看着在那生气的环阿姨,“铃芽酱也到反抗期了呀”这种看热闹,嬉皮笑脸调侃的语气。
“总而言之。告诉我你今晚住哪,酒店?还是旅馆?而且你真的是一个人吗?不会是跟哪个我不认识的人在一起吧——”
ピッ。私は反射的に通話を切ってしまう。——ああ、私には見える。デスクに飾った小さな頃の私の写真を眺め、大きな溜息をつく環さんの姿が。私も盛大に溜息をつく。いやしかし、このままあの人を放置しておいたら最悪警察に連絡しかねない。なぜ昨日のうちに、もうちょっとちゃんとした言い訳をしておかなかったなのか。今日の私に面倒を押しつけたのはどこの誰だ。昨日の私だ。やれやれ、保護者のメンタルケアも子供の役目だわと自身に言い聞かせつつ、私はLINEにメッセージを打った。
電話切っちゃってごめんなさい!送信。
すぐにちゃんと帰りますから!送信。
心配しなくても大丈夫です!送信。
猫がペコリと頭を下げている可愛い謝罪スタンプ。送信。
哔。我条件反射般把电话挂了。——啊啊,我都能看到,一边叹着气,一边望着放在桌子上我的照片的环阿姨。我也长叹了一口气。啊,但是我就这么把她放在一边最坏的结果可能是会和警察联系了,为什么我昨天没有好好的找个借口呢,把麻烦事儿推给今天的我是谁呢,哦,是昨天的我。哎呀,我一边劝说自己,监护人的心理关照也是我们孩子的义务,一边在LINE上留言。
挂了你的电话真对不起!发送
我很快就会回来的!发送
你不用担心!发送
猫猫低头谢罪的可爱表情包。发送
すると間髪を容れず、パパパッと既読が五つ付く。その早さが重い。はあ、とまたげんなりと溜息が出た。
コンコン!と前触れなく、すぐ横のドアがノックされた。
「はい!」私は反射的に背筋を伸ばして、ガチャリと薄い木のドアを開ける。と、
「ご夕食お持ちいたしましたぁっ!」
と言いながら、仲居さん姿の千果が、にっこりとお膳を差し出した。
没有片刻停顿,啪啪啪的出现了五条已读。这个速度太令人沉重了,哎,我再一次长叹一口气。
咚咚咚!毫无预兆,旁边的门被敲响了。
“来了! ”我条件反射般挺直腰板,哐当一声打开了薄薄的木门,然后,
“您的晚饭到啦!”
说完,打扮成服务员的千果笑着端来了饭菜。
子供椅子を抱え泥だらけで集落の出口に現れた私に、千果は多くを訊かずにいてくれた。今夜泊まる場所はあるのかと問われ、探していると正直に答えると、あんたラッキーねえと千果は笑った。
「うち、民宿なんよ。今夜はうちに泊まる運命じゃったんやねえ、鈴芽は」
当我抱着椅子,还满身是泥的出现村子出口时,千果没有过多询问我原由。她问了我今晚有没有住宿的地方,当我老实的告诉她我还在找后,千果笑着说“你很幸运啊”。
“我家是做民宿的,看来你今晚是命中注定要住我家了,铃芽。”
ジャージが汚れてしまうのも厭わずに、もっとちゃんと摑まりんさいと言ってバイクを走らせる千果の背筋を眺めながら、あんたに暗い場所で一人で待ち続けてくれていた彼女の不安に思い至り、ごめんね、と繰り返し言うことしか私は出来なかった。そうして千果は、今夜こそお風呂をという私の宿願も叶えてくれたのだった。民宿の広い浴場で体中の泥とか汗とかを洗い流し、たっぷりのお湯に体を沈めると、案の定あちこちがめちゃくちゃに沁みた。それが日焼けによるものなのか擦り傷のせいなのか、もはや区別がつかなかった。浴室の端っこで制服を洗わせてもらい、パリッとした薄桃色の浴衣もで貸してもらって、民宿の部屋まで用意してもらってしまった。そのうえ、お膳の夕食まで千果は運んでくれたのだ。
骑着电动车的千果不仅不嫌弃我那满身是泥的衣服,还让我再抱紧点,我看着千果的后颈,想到她一个人一直在那么昏暗的地方等着我肯定很害怕吧,但对此我只能做到反复的说着对不起,然后千果甚至还满足了我想洗澡的夙愿。在民宿宽敞的浴场里,我冲掉了身上的泥和汗水后,把身体充分的浸泡在了热水里,正如我所期望的那样沁人心脾,都分不清那到底是晒伤还是擦伤了。经过同意后,我在浴室的角落洗了制服,借了件淡粉色的浴衣,甚至还给了我一间民宿的房间。到现在,千果竟然还端来了晚饭。
「うわぁ——ありがとう!」
まぶたの奥が熱くなる。同時に痛いくらいの空腹に、私は気づく。
「ねえ鈴芽、うちもこの部屋で一緒に食べてもええ?」
「え、わっ、もちろん!」嬉しい!あ、でも。「でもごめん、ええと、あの、一瞬、ちょっとだけ待ってて!」
私はドアを閉め、小さな洗面台の置かれた前室を一またぎし、ガラガラと居間のき戸を開けた。畳の上にちょこんと立っていた草太さんが、私を見上げる。
“哇啊——谢谢你!”
眼睛的深处开始发热的同时,我意识到我的肚子已经饿到痛起来了。
“讷,铃芽,我能在屋里和你一起吃吗?”
“诶,啊,当然!” 好开心啊!啊,但是。“但是抱歉,呃,那个,一下下,稍微等一下!”
我关上了门,跨过放着一个小洗脸台的前厅,拉开了卧室的门。在榻榻米上略显孤独的草太正抬头看着我。
「どうしよう?」
「二人で食べて」優しい笑みを含ませた声で、草太さんが言う。「腹が減らないみたいなんだ、この体」
そう言いながら八畳ほどの部屋の隅までカタカタと歩き、草太さんは壁を向く。
「大丈夫だよ、遠慮しないで」
笑って言うその声に安心して、私は千果を部屋に招いた。
“怎么办啊?”
“你们俩吃吧。”草太用充满笑意和温柔的声音说道。“这副身体肚子好像是不会饿的。”
这么说着,他咔哒咔哒的向八张榻榻米的房屋角落走去,面向了墙壁。
“没事的,不用在意我。”
听他这么笑着说后,我安心了不少,把千果叫进了屋。
お皿からはみでそうなくらいの大きなお魚は、太刀魚の塩焼きだそうだ。お箸を入れると皮がパリンと裂ける香ばしい音がして、ふっくらとした白身が湯気を立てた。大きくつまんでお茶碗の上に乗せ、お米と一緒に口に入れる。
「おいっしいぃ......!」
这条大到连盘子都要装不下的鱼好像是叫盐烤太刀鱼。用筷子戳进鱼皮后表面啪的一声就裂开了,发出了香脆的声音,热气从饱满的鱼肉上冒出。我夹了一大块鱼肉放在了碗里,配合着米饭放入口中。
“太好吃啦……!”
口が勝手に言う。それは本当に、心底おいしい。さっぱりと甘い脂が口いっぱいに広がり、私のすみずみが歓喜していくのが分かる。何を考える間もなく、熱い塊がまた目頭に込み上げる。
「ええっ、鈴芽あんたちょっと、泣いとらん……⁈」
「だって、おいしいすぎて……」
我不由得叫出声,这可真是打心底的好吃。一股清甜充满脂肪香气的滋味在我的口中升出,我身体的每个角落都在因此而激动。还没来得及去细想,一股热潮又涌上了我的眼角。
“啊,铃芽,你是在哭吗……?
“因为这实在是太好吃了……”
あははっと、面白そうに千果は笑う。私たちは二つのお膳をくっつけて、向かい合って食事をしている。そんなにお腹がすいとったんじゃねえ——感心したように彼女は言う。
「今日はなんか急にお客さんが増えてしもて、ご飯持ってくるの遅なって、ごめんな?」
「ええっ⁉︎いや、もう、とんでもないっす!」千果のあまりの神対応に、思わず敬語が出してまう。「こっちこそごめんね、泊めてもらっちゃった上に、お風呂に浴衣にご飯まで……!」
「もうええって。これが我が家の通常営業じゃ」
啊哈哈哈,千果笑了起来。我们俩面对着面吃饭,饭碗挨得很近。“你这么饿啊。”她吃惊的说。
“今天不知怎的客人变多了起来,所以晚饭来的迟了点,抱歉啊。”
“诶!不不不,你可别这么说!”面对千果这番回答,我不禁说话都带出了敬语。“我才该说抱歉的,你不仅让我住这儿,甚至连浴衣和饭都送来了……!”
“哎呀没事的呀,我家平时都是这样的。”
この民宿は家族経営で、お手伝いさんの出入リもあるけれど、基本はご両親と千果と小学生の弟さんの四人だけでまかなっているという。だから今日みたいにお客の多い日は、千果も仲井姿で接客なのだ。午後十時前のこの時間はお客の夕食を一段落して、ようやく一息つけるタイミングなのだという。
这间民宿是家庭经营的,平时可能偶尔会有来帮忙的,但基本上全靠千果,她的父母和弟弟营业。所以就像今天这种客人很多的日子里,千果就会换上服务员的服装去接待客人。客人的晚餐时间终于在晚上十点前结束了,她总算是可以休息了。
お刺身はハマチ。サイドディッシュは里芋のいもたき。具だくさんの白いおみそ汁をすすると上品な甘さがあって、知っている味とずいぶん違う。この味始めてと感動して伝えると、ああ、こっちは麦味噌じゃからね、と千果。ああ私は違う土地に来たんだと、今になってしみじみと実感する。
做刺身的鱼是小鲥鱼,配菜是芋头烩。放了很多配料的白色味增汤喝起来味道非常鲜美,和我以前喝过的完全不一样。当我把这份激动传达给千果后,她告诉我这边的味增汤是用麦味噌做的。直到现在我才深刻体会到自己来到了一个完全不同的土地上。
ぴろりん。脇に置いたスマホが鳴った。
「うわ」
手に取って通知の差出人を見て、思わず声が出てしまう。
「誰?」
「叔母さん。ちょっとごめんね」
断って、私はメッセージを開く。げ。環さんからの長文が画面を埋め尽くしている。鈴芽、口うるさいと思われたくはないけれどいろいろ考えた末やっぱり鈴芽にはわかってもらいたいと思いこれを書いてます/最後まで読んでもらえると嬉しいです/まず鈴芽に理解してほしいのはあなたはまだ子供、未成年だということです/鈴芽はちゃんとしっかりした子だとは思うけれど一般的にも経済的にも身体的にも十七歳というのはやはりまだ子供です/あなたは未成年であり、色々な考え方はあると思うけれど私はあなたの保護者であり—ぴろりん。
叮铃。放在一旁的手机响了。
“啊。”
我拿过来看了眼发信人后不由得叫出声。
“谁呀?”
“是我姨妈,我先看一下啊。”
我挂了电话,打开了信息一看,啪,环姨发来的的文字直接充满了整个画面。
铃芽,虽然不想让你嫌我啰嗦,但是在我认真考虑后,还是想让你明白我的想法才发了这些。/你要是读到最后我会很高兴的!/首先我想让你明白的是你还是个孩子,也就是未成年的意思。/虽然你是一个踏实的孩子,但无论是经济还是身体上你都只是一个十七岁的孩子。/虽然你有很多你自己的想法,但你还只是未成年,而且我是你的监护人——
叮铃
「うわ!」
追伸、私は怒っているわけではありません/ただ混乱して心配しているんです/なぜあなたはそんなそぶりもないままに急に旅行行こうなんて考えたのですか/なぜ愛媛なのでしょうか/そんな話一度だってしたことはないし私の知っているあなたは必ずしも——。
「はあぁぁ」
“啊!”又来了。
附,我不是生气的意思。/我只是现在有点混乱,很担心你。/为什么你莫名其妙就要去旅行啊?/为什么一定是爱媛呢。/你一次也没有和我提过这事儿,而且据我了解你——。
“啊啊啊——”
私はスマホを裏返しにし、封印するみたいにして畳に置いた。明日読むう。
「もおー、早く恋人とか作ってくれないかな、この人」と思わずこぼす。
「え、叔母さんって独身?いくつなん?」
「四十歳くらいかな——」先々月にお誕生日会をやったっけ、と思い出しつつ私は言う。私がハッピーバースディを歌うと、毎年必ず泣くんだよなー環さん。
我把手机倒扣了过来,就好像要封印在榻榻米上一样。明天再看吧我。
“哎,这个人就不能赶紧找个男朋友吗。”我不禁发起了牢骚。
“诶,姨妈还是单身吗,多大了?”
“四十岁左右吧——”我记得好像是上上个月才举行的生日会,每年我只要一唱生日歌,环姨必哭。
「綺麗な人なんだけどね、うん、すごく」
あの涙もろさと、長く美しい環さんの睫毛を私は思い出す。お箸で里芋つまみ、お茶碗に置く。
「うち、二人暮らしでさ。叔母さんが私の保護者で」ご飯一緒に里芋を口に入れる。
「え、なんか複雑なん?」
「ううん!」ごくん、と味のしみた里芋を飲み込む。「でももしかしたら、私が叔母さんの大事な時間を奪っちゃってるんじゃないかって、最近ちょっと思うんだよね」
“她明明是个很漂亮的人啊,嗯,非常。”
我想到了爱哭的环姨,和她又长又美的睫毛。我用筷子夹起了一块芋头放在了碗里。
“诶,感觉情况有点复杂?”
“嗯!”我咽下了嘴中的芋头,“但是说不定是因为我把她最好的年华给夺走了,这也是我最近才想起的。”
「ええー?」千果がくすくすと笑う。「そりゃ元カレが言うセリフじゃろ!」
「えっ、ほんとだっ!」そうだ、言われてみれば本当にそうだ。気持ちが、なんだかふわっと軽くなる。私も笑って言う。
「いいかげん子離れしてほしいよ!」
「ほんまそれな!」
あ、しまった、草太さんにぜんぶ聞かれてた——私が今さらにそう気づいて汗ばんでしまったのは、デザートのみかんゼリーを食べ終えたときだった。
“诶诶?”千果笑了起来。“这不是前男友的台词嘛!”
“啊,真的诶!”是啊,这么一说好像也确实是,我的心情好像突然放松了,笑着说。
“差不多也该让孩子独立了!”
“就是说啊!”
啊,糟糕,全被草太听去了——当我意识到这个事情的时候我都吃完饭后甜点橘子果冻了,我的汗一下子冒了出来。
夕食後は千果と一緒に台所に行き、泊めていただくお礼をご家族に伝えた(これが我が家の通常営業じゃけんと、千果とよく似たご両親は笑った)。私は千果の仕事を手伝って大量のお皿を洗い、浴場をデッキブラシでごしごしとこすった。作業中に「鈴芽は男の子と付き合うたことある?」と千果に訊かれ、一度もないと素直に答えると、それがええそれがええ、男子なんかろくなもんじゃないけんのぉと千果は嬉しそうに愚痴を言った。千果には付き合う始めたばかりの彼氏がいて、自分はLINEの返信もろくにしないくせに焼きもちばかり焼いてくるのだとか、何かと言えば二人きりになれる場所に行きたいと主張し実際このあたりは人目のない場所ばかりだから困っちゃうのだとか、そんな悩みを千果は楽しそうに話すのだった。仕事を終えるとお母さんが入れてくれたアイスハーブティーを皆で飲み、私たちはそこでもたくさん笑って、部屋に並べて敷いた布団に入った頃には深夜の二時に近かった。
吃完饭后,我和千果一起去了厨房,感谢他们让我住在这儿。(她父母笑着说“咱家就是干这行的呀”,我得到了和千果相似的回复。)我帮着千果洗了大量的碗筷,还用清洗刷卖力的洗刷了浴场。干活儿的时候,千果问我“铃芽有跟男生交往过吗?”在我老实的回答她一次都没有后,千果笑着抱怨道“那就好,那就好,男的就没有一个好东西。”千果有一个刚刚开始交往的男朋友,这个人明明连LINE上的回信都不能及时回复,还老吃这醋吃那醋的。还有就是老说想去一个能两个人相处的地方,但实际上不过是一个人都没有的地方罢了,这让她很困扰。千果和我开心的说了这些烦恼。干完活后,我们一起喝着千果妈妈送来的冰香草茶,我们又在一起笑着聊了很多,待我们钻进并排铺着的被褥时,已经是半夜两点了。
「今日は鈴芽のおかげで、久しぶりに行ったわ、あの場所」
息が多めに含まれた声で、ふと思い出したように千果が言った。
「え?」
「うちの通ってた中学校、あの場所にあったの」
あの廃墟の学校のことだ。鼓動がとくんと勝手に跳ねた。静かの声で千果が続ける。
「何年が前の土砂崩れで、集落ごと棄てられてしもたけど」
「……」
“今天多亏了铃芽,久违的去那个地方。”
就好像突然想起来一样,千果有些沉重的说道。
“嗯?”
“我初中在那个地方。”
她在说那个废墟的学校,我的心突然咯噔了一下,千果平静的继续说道。
“但是因为几年前的泥石流,整个村落都被废弃了。”
“……”
「なあ、鈴芽」優しい声。でも、思い切ったような決心を含んだ声。
「あないに泥だらけになって、あそこで何しとったの?あんたが持っとるあの椅子は、なあに?——なあ」
天井を見ていた千果が、私を見る。
「あんたって、なにもん?」
「あ……」
“呐,铃芽。”她的声音很温柔,但是里面听起来像是下了很大的决心。
“你浑身是泥的在那里做什么了?你一直都拿着的那把椅子是干嘛的?——呐。”
本来还盯着天花板的千果突然看向了我。
“你到底是什么人?”
“啊……”
部屋の電気は消えている。枕元に置かれた行燈の和紙を透かした弱い光が、千果の大きな瞳に黄色へ映っている。私の後ろの壁には、草太さんが子供椅子としてじっと立っている。その存在を背中で感じながら、私は言葉を探す。
「あの椅子は——お母さんの形見なんだ。でも今は……」
何を言えばいいのだろう。何が言えるのだろう。嘘はつきたくない。でも。
「……ごめん、うまく言えない」
たっぷり考えて、それでも言葉は出てこないのだった。黙って私を見ていた千果の表情が、ふいにゆるむ。ふうっと息を吐く。
房间里的灯已经关了,枕边放着的纸灯发出微弱的灯光,把千果那双大大的眼睛映照成了黄色,在我后面的墙边,作为椅子的草太正一动不动的站着,因为知道他在我后面所以我在思考怎么回答千果。
“那把椅子是妈妈留给我的遗物,但是现在……”
我该说些什么好,我又能说些什么呢。我不想撒谎,但是。
“抱歉,我说不清。”
我想了很多,但还是什么都没说出来。一直默默注视着我的千果突然放松下来,长吁一口气。
「……鈴芽は魔法使いじゃけんのう、秘密ばっかじゃ」
冗談めかしてそう言って、千果はまた仰向けに寝転ぶ。目をつむり、優しい口元で言う。
「でもなぜじゃろか——あんたはなんか、大事なことをしとるような気がするよ」
「……!」
私はふいに泣きそうになる。じっとしていられなくて、布団から体を起こす。
「ありがとう、千果。うん、そうだ、きっと大事なことをしてる。私もそう思うよ!」
“.……铃芽你不会是魔法使吧,秘密也太多了吧。”
她开玩笑的说道,然后脸朝上躺着,闭上了眼睛,用温柔的语气说道。
“但是不知道为什么,我觉得你在做一件重要的事情。”
我突然有一种想哭的感觉,再也坐不住了,我从被子里坐了起来。
“谢谢你!千果,嗯,没错,我一定是在做一件重要的事情,我也这么觉得!”
後ろ壁にいる草太さんに、私はそう伝える。あなたは大事なことをしてる。確にも知られぬまま、誰にも見えないものと戦っている。あの廃墟でドアを閉めようと孤独に戦っていたあの姿を、私は思い出す。たった一日前のことなのに、もうずっと昔のことのよう。あれから私は海を渡り、あなたのせいで魔法使いに間違えられて、でもあなたのおかげで、私にもとても大事なことが出来たのだ。
なあに、自画自賛しとる!と千果が可笑しいそうに笑い、私たちは今日出会ってからずっとそうしてきたように、また一緒になって笑った。
这也是在对后面墙旁边的草太说的,你是在做一件重要的事情,在和一个谁也不知道,谁也看不见的东西战斗。我脑海中浮现出了他为了关门而在废墟中孤军奋战的身影,明明只是前一天才发生的事情,我却感觉已经是很久以前的事了。在这之后我跨海而来,因为你而被当成了魔法使,不过也正因为你,我也能做这么重要的事情了。
“什么呀!你这不是在自卖自夸嘛!”千果笑着说道。我们自从相遇后就一直是这么欢乐,我们再一次大笑了起来。
