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舞い散るサクラに重ねる覚悟、良い流れを次代につなぐ——京都橘高校(下)

2022-04-29 10:27 作者:雀到今生打已迟  | 我要投稿

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「正解に一番近いところに導くのが部長の仕事」


 春は別れの季節であると同時に、新しい始まりの季節でもある。

 京都市にある私立京都橘高校吹奏楽部3年の竹内望咲(みさき)は、新部長として2022年度を迎えた。望咲の担当楽器はフルート、入部のときに部員一人ひとりがもらうあだ名は「レンピー」だ。

 校内の桜並木から無数の花びらが舞い落ちているのが音楽室の窓から見えた。レンピーはその景色を、3月27・28日に大津市の滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで開かれた定期演奏会のラストシーンに重ねていた。

 クライマックスのステージでは、スイングジャズの名曲《シング・シング・シング》などを演奏しながら激しい動きを繰り出すマーチングが続いていた。これを最後に卒部した当時の3年生たちは、桜の花びらのように華麗に舞っていたのだ。

     

京都橘高校吹奏楽部3年で部長の竹内望咲さん(前列中央)はフルートとピッコロを担当する=京都橘高校提供

 レンピーは小学4年で金管バンドに入り、中学校の吹奏楽部でフルートを吹き始めた。高校の志望校選びのため意中の公立校吹奏楽部の演奏を動画共有サイトで探していたとき、偶然巡り合ったのが京都橘高校のマーチング動画だった。

 マーチングは演奏しながら行進やパフォーマンスをする。京都橘はマーチングの名門で、全国大会である全日本マーチングコンテストの「常連」と言ってよい存在だ。鮮やかなオレンジ色の衣装や激しい振り付け、大会での強さから「オレンジの悪魔」とも呼ばれる。

 レンピーはこうした情報が頭に入っていたわけではない。オレンジの衣装、手足を大きく動かして激しく動き回るパフォーマンス、迫力ある演奏……。そのすべてに目が釘付けになった。

 「これは運命の出会いやな! 私、絶対ここに入るんや!」

 必死に両親を説得し、京都橘への進学を認めてもらった。

定期演奏会でステージマーチングを披露する京都橘高校吹奏楽部。最前列右が竹内望咲さん=京都橘高校提供

 入学した2020年は新型コロナウイルスの影響で授業や部活がずっとストップし、部活に参加できたのは6月からだった。レンピーはやっと京都橘高校吹奏楽部の一員になれたことを喜んだが、厳しい練習が始まることへの不安もあった。

 「これから毎日、泣きながら帰るようになるんやろか」

 新入部員同士でそんな会話をしたことを覚えている。

 実際には先輩たちは一生懸命教えてくれたし、優しかった。顧問の兼城裕に対しては「部員一人ひとりを大切にしてくれるし、指導が熱い先生やな」という印象を持った。

 京都橘の代名詞のような《シング・シング・シング》の振り付けを教わる段階では、レンピーは中学時代にマーチングの経験がなかったため、体力的にきつくなった。それでも、「自分がやりたかったことができている」という充実感が大きな支えになり、厳しい練習を乗り切っていった。

 初めてオレンジの衣装をもらったときはうれしくてたまらなかった。自宅の鏡の前で着てみて、「私、ホンマに『オレンジの悪魔』になったんやな」と喜びをかみ締めた。何度も家族に見せにいき、「もうええわ」とあきれられた。

     

全日本マーチングコンテストで金賞を受賞した京都橘高校吹奏楽部の演奏・演技=2021年11月、大阪城ホール、天田充佳撮影

 2021年、高2となったレンピーは、前年は中止となったマーチングコンテストに出場できることになった。フルートパートの中でただひとり、フルートより1オクターブ上の音が出るピッコロを担当することになった。マーチングの広いフロアでもよく響く高音楽器だけに、ミスはできない。プレッシャーが大きかったが、練習を重ね、自信をつけていった。

 京都橘は京都府大会、関西大会を突破し、6年ぶり16回目の全国大会に出場することになった。全国大会の会場は大阪城ホール。グリーンのシートが敷かれたフロアは、マーチングに打ち込む中高生の憧れの舞台だ。

 11月21日。25団体が出場する高校以上の部の11番目が京都橘だった。フロアへのドアが開き、目の前に「緑の床」が広がった。オレンジの衣装を着た部員たちが楽器を手に元気よく飛び出し、「緑の床」で「オレンジの悪魔」が鮮やかに舞った。

 最後は《シング・シング・シング》だ。顔を上げて楽器を吹いたとき、レンピーは天井の照明が自分たちに降り注いでくるように感じた。

 「橘の一員としてここに立てるなんてホンマ幸せや。みんなで最後まで楽しめて最高やったな!」

 審査結果は金賞。京都橘にとっても、レンピーにとっても、大きな自信を得た大会だった。

     

大阪城ホールの「緑の床」で演奏・演技をする京都橘高校吹奏楽部=2021年11月、大阪城ホール、天田充佳撮影

 時間は少しさかのぼるが、レンピーは全国大会前に次期部長に選ばれていた。

 部長になることが決まってから、21年度部長の「スーチ」こと中村希星(きらら)と一緒に行動し、部長の役割を観察したり、「ここはこうやるんだよ」と教えてもらったりした。

 「部長って、部員たちが知らないところでこんなにいろんなことを考えたり、動き回ったりしてくださっていたんやな……」

 レンピーは、スーチやその前の代の部長に感謝した。と同時に、責任の重さを感じた。

 「私の言葉ひとつで約90人の部員が動くんや。自分の発言や行動が京都橘全体に影響を与える。大変な役割や」

 それでも、スーチの姿を見つめ、たくさんのアドバイスをもらううちに、部長としてやっていく覚悟は自然とできていった。

 「やりたいことと実際にできること、理想と現実が必ずしも一致するわけやない。何がいちばん正解に近いのか、そこへ導いていくのが部長の仕事やな」

 ぼんやりとではあるが、レンピーには進むべき道が見え始めてきた。

     

定期演奏会のリハーサルに臨む京都橘高校吹奏楽部=3月、大津市、オザワ部長撮影

 3月28日の定期演奏会。最後のステージマーチングで、スーチたち3年生と《シング・シング・シング》を演奏した。自分たちと比べて、やはり3年生はパフォーマンスのキレも演奏も数段上に見えた。オーラも違う。

 「すべての面で、私たちにとっての憧れや……」

 先輩たちの目に涙が光るのが見え、レンピーの目も思わず潤んだ。

 新年度を迎えた。もう先輩たちの姿はどこにもない。レンピーたちが最上級生となり、吹奏楽部を引っ張らなければならない。

 全日本マーチングコンテスト金賞という昨年度の輝かしい実績は、レンピーたちにとって大きなプレッシャーだ。

 「最高の結果を私たちに続く後輩たちにつないでいけるように。良い流れを作っていくのが私たちの代の役割なんや」

 レンピーは目にぐっと力を込め、音楽室の前で舞う桜の花びらを見つめた。華やかに舞う無数の花びらに重ねたのは、1年後の自分たちの姿だ。(敬称略)

   ×   ×   ×

 高校や中学校の吹奏楽部には、季節ごとのイベントや出来事があり、そのときどきの思いやストーリーが生まれます。吹奏楽作家・オザワ部長が全国を巡り、部員の心に寄り添い、エールを送る新シリーズです。

     ◇

 オザワ部長 吹奏楽作家。神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部文芸専修卒。自らの経験をいかして「みんなのあるある吹奏楽部」シリーズ(新紀元社)を執筆。ペンネームの由来は「架空の吹奏楽部の部長」という設定から。2017年から22年3月まで朝日新聞デジタルで、吹奏楽に取り組む中高生を支える言葉とそれにまつわる物語をつづる「奏でるコトバ、響くココロ」を連載。「吹奏楽部アナザーストーリー」(上・下巻、KKベストセラーズ)として刊行。


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