日本語文法概説(54)
54. その他の連用節 54.1 形式名詞 54.2 副助詞 54.3 格助詞相当句 54.4 並立助詞 54.5 その他 連用節は以上にとりあげた以外にも数多くのものがあります。以下ではそのごく一部をかんたんに見てみます。 54.1 形式名詞 これまでにさまざまな形式名詞による従属節を見てきました。 とき・あと・まえ・うち・あいだ・かぎり・ばあい・ために・ おかげで・せいで・もので・うえに・ように・まま・とおりに 以下では、これまでに連用節としてとりあげなかった形式名詞による連用節をいくつか見ます。 こと・かわりに・わりに・くせに・うえは・なか・ほか・たびに これらの中で「こと・かわりに・わりに・くせに・たびに」は「14.形式名詞」で名詞を受ける用法を見ました。 (なお、形式名詞「の・こと・ところ」は「57. 名詞節」で扱います。) 54.1.1 こと a.~ことは~が、 同じ述語を繰り返して、そうであることを認めつつ、あとで否定的な評価を付け加えます。過去のことでは、前の述語が現在形のこともあります。 彼は、仕事をやることはやるけれども、熱意がないね。 来ることは来たが、何も仕事をしなかった。(来たことは来たが) まあ、できることはできたんだが、どうもねえ・・・。 安いことは安いが、品質がよくない。 面白いことは面白かったが、結局それだけだ。 b.~こともあって 「こともある」という形は「アスペクト」で扱ったのと同じ形ですが、ここではまったく違う用法で、「そういう事情も加わって」という意味です。「という」を入れることができます。 ちょうど状況が味方したということもあって、我々の意見が通った。 金が足りなかった(という)こともあって、うまくいかなかった。 いつもより難し いこともあって、結果はかんばしくなかった。 c.~ことで/によって 彼が頭を下げたことで、事態は解決への道を動き出した。 調査結果が明らかになったことによって、政府は苦しくなった。 これは「~こと」の名詞節に、原因を表す格助詞・格助詞相当句が続いているものと考えます。「57.名詞節」でもとりあげます。 d.~ないことには これは条件の「~なければ」に近い表現です。主節は否定的な内容です。それを、「AないことにはBない」と表すとすると、AはBが実現するための条件になります。 朝、まず顔を洗わないことには、一日が始まらない。 女優というのは、美しくないことには主役になれないんです。 まず、金がないことには、どんな計画も机上の空論です。 「机上の空論」は「計画が実現する+ない」と考えます。 54.1.2 ~かわり(に) 「Nのかわりに」では「同じような働きをするもの」というような意味でしたが、述語を受ける場合は、「Aは実現しないが、それと同等/反対のBが実現する」というような意味になります。例を見たほうが早いでしょう。 明日休むかわりに、日曜に行ってやります。 宿題をやってもらったかわりに、代返をしてあげた。 仕事が暇なかわりに、給料が安い。(大学の先生) これを見てあげるかわり、こっちをやってくれない? 54.1.3 ~わりに Aという事態に比べて、Bという事態がAから予想されるような程度に達していない、という意味を表します。AとBの主体は同じです。「~のに」に近い意味です。 彼は実力があるわりに、いい仕事をしない。 彼女はあんまり勉強しないわりには成績がいい。 よく勉強したわりに、細かいところをまちがえている。 この会社は仕事が忙しいわりに、給料が安い。 最後の例で「Nが」がそれぞれありますが、「この会社は」のような主題の「部分」と考えられます。「この会社の仕事/給料」です。 54.1.4 ~くせに 「Nくせに」と同じような意味です。「AくせにB」は、BがAから予想されることと違っていて、それを非難あるいは軽蔑する意味合いがあります。AとBの主体は同じです。これも一応「~のに」で置き換えられます。 知っていたくせに教えてくれなかった。 何も知らないくせに、偉そうな顔をするな。 体は大きいくせに、気は小さい。 54.1.5 うえ 「うえ」は後ろに来る助詞によっていろいろと用法が違う、難しい形式名詞です。「V-うえは」は「50.理由」でとりあげました。場所を表す「相対名詞」としては「56.連体節」の「56.3.4」でふれる予定です。 a.V-うえで [するうえで] Aのことをする場合に、Bが重要だったり、問題となったりするということを表します。「する上でのN」という形で名詞にかかります。 彼を知る上で、このエピソードは欠かせない。 (ために) これをやるうえで、いろいろ問題が出るだろう。(場合に) 新しい販路を拡大する上でも、この合併は大きな影響があるだろう。 これと近いのが「N+上(じょう)」という形です。 実施上の問題点 実施する上での問題点 子供の教育上よくない 子供を教育する上でよくない [したうえで] 「まずAのことをして、それからBをする」という意味で、「V-てから」で置き換えることができます。「V-てから」は時間的前後関係が基本ですが、「した上で」のほうは、Aが実現しないとBに取り掛かれない、という意味合いが強く出ます。同じ主体です。 よく話し合ったうえで、ご返事します。 上司と相談した上でなければ、何も決定できない。 事実をすっかり明らかにした上で、改めてご報告します。 文と文を結ぶ「その上で」という接続表現は、この「した上で」の意味になります。 b.~うえ(に) 「~し、~」や「~だけでなく」に似た表現で、Aという事柄に、さらに同じような性質の事柄が起こることを表します。 時間に間に合わなかった上、カバンを電車に忘れてきた。 彼女は中国語ができる上に、中国の歴史や経済にも詳しい。 彼は気が優しい上に、面倒見がいい。 私は金を盗られた上、砂漠にほうり出された。 あの会社の車は、値段が高い上に壊れやすいということだ。 「その上(に)」という文と文をつなぐ接続表現があります。 54.1.6 ~なか 「相対名詞」として「56.3.4」でふれますが、ちょっと違った用法をここでとりあげておきます。 雨が激しく降る中を走り続けている。 怒号が飛び交う中を、議長団は退出した。 「節+N」という形は「連体節」ですが、「を」までを含めて、ある状況を表していると考え、連用節とみなしておきます。過去形は使いません。 次の例では抽象的なところを示しています。 その問題を検討していく中で、新たな問題が明らかになった。 もっと慣用的に固定した表現として、 お忙しい中を(わざわざいらしていただいて)どうもすみません。 や「お寒い中を」などがあります。 54.1.7 ~ほか 「そのこと以外に~も」という意味の場合と、「は」をつけて「そのこと以外に~ない」あるいは「そのことを除いて」という場合があります。 このロボットは、料理をするほか、掃除もできます。 彼が来たほかには、誰も来なかった。(彼のほかには) 用意した冗談が言えなかったほかは、うまくいった講演だった。 ちょっと値段が高いほかは、素晴らしい製品だ。 54.1.8 V-たびに 同じことの繰り返しを表します。過去形「×したたびに」は使いません。 新年がくるたびに、今年こそ、と思う。 彼女の日本語は、うちに来るたびに上手になっていた。 人間は失敗するたびに少し賢くなるものだ。 54.2 副助詞による連用節 54.2.1 など 「など」も述語を受けて連用節を作る用法があります。「~たり」とともに使われて「例示」の意味を表します。「~などして」「~たりするなど」の両方の形があります。また、軽い例示の意味から、軽蔑・非難の意味も生まれてきます。 雑誌を読んだり、テレビを見たりなどして時間を過ごした。 大病から快復して、散歩にでたり、買い物をしたりするなど、やっとふつうの生 活ができるようになった。 大きすぎたり、またちょっと小さかったりなど、なかなかうまくできない。 高校生が煙草を吸うなど、いまでは当り前のことだ。 知らないなどとうそを言ってはいけない。 あの会社がだめだなどということは、だれでも知っていることだ。 くだけた話しことばでは「なんか」ということがあります。「などと」は「なんて」とも言います。これは「58.引用」でとりあげます。 ウソ言ったりなんかして・・・ だめだなんて言わないで。 54.2.2 まで 「Nまで」は「極端な例」をしめしましたが、述語を受けても同じです。 a.V-てまで 「V-て」を受けます。ある目的のための極端な行動を表します。 そんなことまでして、勝ちたいのか。 そんなことをしてまで、勝ちたいのか。 休日を返上してまで会社のために働いた。 だのに なぜ 君は行くのか そんなにしてまで(「若者たち」) b.V-までだ 文末で「V-まで(のこと)だ」の形で使われます。「するまで」と「したまで」で違いがあります。 [するまでだ] あるせっぱ詰まった状況で、「まだこの方法がある、これでやるんだ」という決意を表します。条件表現と共に使われることも多いです。 会社が倒産したが、不安はない。一からやり直すまでのことだ。 そんなことを言うなら、こちらはこの話から手を引くまでだ。 こうなったら、断固戦うまでだ。 [したまでだ] 自分のしたことが、それほど深い考えによる行動ではない、という意味を表します。「だけ」に近くなりますが、より硬い言い方です。(→ 53.3.1) 面白そうだからちょっとやってみたまでです。 頼まれたから少し手伝ったまでで、感謝されるほどのことじゃない。 c.V-までに 「ほど」に近く、特別な段階まで変化が起こったことを表します。 その木は、見上げるまでに成長した。 練習のかいあって、私と対等に戦えるまでに上達した。 d.~ないまでも そんなに極端な程度ではないけれども、という意味合いです。 空前絶後、ではないまでも、前代未聞、ではある。 豚に真珠、とは言わないまでも、猫に真珠、ぐらいのムダだよ。 金持ちでないまでも、一応の収入がある人じゃないと見合いしたくないなあ、な どとうちの娘は言うんですよ。 54.3 格助詞相当句 以下のものは「8.格助詞相当句」の中で述語を受けるものです。「の/こと」を必要とするものは「名詞節」ですが、ここで例文をあげておきます。 [V-にあたって/あたり] ある特別な事柄が起きるとき、そのことを十分考慮して、意思・行動などがとられることを述べます。 最終的な実験を行うにあたって、より一層の安全が求められている。 国会を開設するにあたり、先進国に調査団を派遣した。 [~ことに関し(て)] 「Nに関して」のNのところに「~こと」が入ります。 監査があることに関して、何か質問がありますか。 調査が進んでいないことに関して、担当者の責任を追及した。 [V-に際し(て)] あることが起きるとき、それに関連して別のことがなされることを表します。上の「にあたって」にかなり近い表現です。 新型のスパコンを購入するに際して、外から圧力があったらしい。 新年度を迎えるに際し、新たな気持で仕事に取りかかりたい。 [V-にしたがって/したがい] 同じくAが変化するとBも変化するという関係を表します。Aが中心的だという意味合いもあります。 気温が上がるにしたがって、虫たちの動きが活発になる。 奥に進むに従って、穴が狭くなってきた。 [~の/こと に対し(て)] 「Nに対して」は「Nについて/向かって」に近い意味でした。「Aのに対してB」は対立する二つの事柄を表す場合と、Aに応じてBのことが起こったことを表す場合があります。 兄がのんきなのに対して、妹はかなり心配性だ。 女性がほとんど参加したのに対し、男性は逃げ腰だった。 我々が右側を攻めたのに対して、相手は左側に陣を取った。 「こと」を使うと「名詞節」であることがはっきりします。「Nに対して」と同じ意味になります。「対立」のほうの用法はないようです。 上司は、私がその集会に参加することに対して批判しているらしい。 [~について/つき] 「こと」を使うのが基本ですが、動詞の基本形にそのまま付くこともあります。否定を受けるには「こと」が必要です。 彼が留学することについては、上司の許可が下りている。 彼が留学するについては、上司の許可が下りている。 協定を継続しないことについて、相手側に再度確認した。 (×継続しないについて) [V-につれ(て)] 「Nにつれ(て)」と同じ意味で、Aが変化するとBも変化するということを表します。 台風が近付くにつれて、雨が強くなって来た。(台風の接近に~) 会場がにぎやかになるのにつれて、皆の気持ちもほぐれてきた。 [V-のにともなって/ともない] これも同じです。「の」を使います。 人口が増えるのに伴って、町が大きくなってきた。 時代が変わっていくのに伴い、人々の心も変化した。 次の例は、「いっしょに」移動するという元々の意味です。 代表団が来日するのに伴って、多くの報道関係者がやってきた。 [V-ことによって/より] 原因・手段を表します。「こと」が必要です。 円が高くなることによって(円高によって) 彼が代表を降りたことにより、話は振り出しに戻った。 退路をふさぐことにより、一網打尽にしようとした。 電圧を上げることによって、推進力を増した。 [~と同時に] 動詞以外の述語も受けられます。 泥棒がドアを開けると同時に、彼女はスプレーを吹きかけた。 チャンスが増えるのと同時に、危険もまた増えるのである。 会社は、よい職場であると同時に、結婚相手を捜す場でもある。 [V-とともに] AによってBが起こる場合と、A・B両方が同時に起こる場合があります。 鉄道が敷かれるとともに、多くの人々が移ってきた。 勉学に励むと共に、多くの出会いの機会を持ってほしい。 以下のものは「5.9 並列助詞」で名詞を受ける例をあげました。 [とか] あることの例として、いくつかの事柄をあげます。「か」の選択の意味が生きていて、一つ一つをとりあげる感じです。「~たり」は並べ上げた全部が実現しますし、反対語や否定とも組み合わせられる点が違います。 あいさつをするとか、お礼を言うとか、基本的なことが大切だ。 辞典を見るとか、参考書を調べるとか、何かしたら? 色がきれいだとか、形がいいとか、いろいろセールスポイントがある。(色がき れいだったり、形がよかったり~) ?手を上げるとか、下げるとかしている。(上げたり下げたり~) ×やるとか、やらないとか、その日によって違います。 やったり、やらなかったり、その日によって違います。 やるとか、やらないとか、その日によって言うことが違います。 [やら] 同じように、いくつかのことを例としてあげるのですが、多少何か特別なことが起こり、大変だなあ、という感じです。 宝くじに当たるやら、役員に選ばれるやら、今年は当たり年です。 酒は飲むやらタバコは吸うやら、しょうがない小学生だ。 [なり] 類似の行動の中から、どれか一つを選ばなくてはならない、という意味合いです。 買うなり借りるなりして、とにかくよく見てみないとわからない。 煮るなり焼くなり好きにしてくれ。 「~したとたん」や「~したまま」の意味の「V-なり」は別の用法で、次の「その他」の中で扱います。 以上、連用節となるものをその形式的な特徴によって分けて見てきました。文型を分ける際に、形式によって分けるか、意味別にするかは難しい問題です。連用節を「時」「条件」「理由」などとしたのは意味別です。意味別は分類が恣意的になりやすいところが欠点です。また、形式別は、説によって形式の分析・位置づけが違ってきます。 54.5 その他 「その他の連用節」のさらに「その他」です。大まかに、意味の近いものをまとめておきます。再考・再分類が必要なところです。 ①並列・並行動作など [V-かたわら] ある中心的な仕事の他に、別のことをすることを表します。 家族の世話をするかたわら、暇を見つけて語学を勉強した。 店を経営するかたわら、地域活動にも積極的に参加した。 「そのそばで」という場所を表す用法もあります。これは連体節の中の「相対名詞」です。 病気の父が眠るかたわらで、母は内職をしていた。 [V-いっぽう] 「Aいっぽうだ」で、何か悪い傾向が進むことを表します。 難しくなる一方だ。 「Aいっぽう(で)、B」の形で、Aが起こるのと別に、もう一つのことBが起こっていることを表します。 試験が難しくなる一方で、受験技術も進歩した。 [~反面] あることの反対の側面を述べます。 相手側との交渉がうまくいった反面、我々の内部で問題が生じた。 値段が安価な反面、電池の寿命が短い。 ②逆接・対比など [~どころか] Aを強く否定し、反対のBであることを言う場合と、Aよりはるかにいい、あるいは悪いということを言う場合があります。文末で「~どころではない」になります。 買うどころか、借りるのも大変だ。 彼女は、夫が死んで寂しいどころか、毎日遊び回っている。 漢字が書けるどころか、ひらがなもきちんと書けない。 人のめんどうを見るどころではない。助けてほしいくらいだ。 [V-にはVが] 一応そのことが実現するが、内容が伴わず、あとに否定的な表現が来ます。 まあ、やるにはやるが、誠意が感じられない。 呼ばれたので、一応来るには来たが、まるで様子が分からない。 過去のことの場合、前の動詞は現在形でも言えます。 [~にしては] Aから予想されることと、Bが違うことを表します。「~わりに」に近い表現です。 雨が降るにしては空が明るいね。 よく準備したにしては、うまくない発表だったね。 まだ初心者にしては、よくやっているよ。 [~というより] あることを描写する表現として、AよりBのほうが適切な言い方だという意味です。 久しぶりの学校で、学ぶと言うより楽しんでいます。 あの食べ方は、食べると言うより詰め込んでいる感じだね。 彼女は美しいと言うより知的だ。 これじゃあ、研究会と言うより放談会だね。 [~といっても] あることの描写する表現として、Aは大げさで、実際はもっと程度の低いものだという意味です、 お金を貸してくれるといっても、わずかなものでとても足りません。 手術で切ると言ってもほんの2、3センチだ。麻酔もするし。 研究会と言っても名ばかりで、好きなことをしているだけです。 ③機会 [V-おり(に)] 「その時に・機会に」という意味を表します。改まった表現です。 この前、お会いした折りにそのこともお伝えしました。 先日、故郷に戻りました折りに、そのことを調べて参りました。 この次いらっしゃる折りには、奥様もご一緒にどうぞ。 [V-際(に)] これも同じような表現です。 私の研究を発表した際に、彼の研究にも触れておきました。 お近くにお出での際は、是非お立ち寄り下さい。 [V-ついでに] あることをするときに、他のことを付け加えてすることを表します。 郵便局へ行くついでにたばこを買ってきて。 文法の間違いを直す/した ついでに、漢字もチェックした。 ④直後 (→「48.9(時の連用節)その他」) [V-しだい] 「Aが起きたらすぐBする(つもりだ)」ということを表します。動詞は中立形を使います。 詳しいことがわかり次第、お知らせします。 品物が着き次第、電話を入れます。 「~しだいだ」の形で、状況・事情の説明などをする場合に使われます。 すべて決着が付きましたので、ここにご報告する次第です。 [V-なり] AをしてすぐBをすることを表します。過去のことでも基本形です。 彼女は、部屋に入るなり、私に向かってどなった。「出て行け!」 私の顔を見るなり、飛び起きて抱きついてきた。 「V-たなり」の形で、「したまま」に近い意味を表すこともあります。古い感じの書きことばです。 そう言って出ていったなり、何の連絡もない。 [V-たと思うと/思ったら/思えば] AとBが続いて起こることを表します。話し手の観察に基づき、驚き・意外だという気持が示されます。「か」が付けられることもよくあります。 事務所に顔を出したと思ったら、もう現場に出かけていった。 かちっと音がしたかと思うと、突然ドアが開いた。 [VかVないかのうちに] ほとんど同時という気持です。 鐘が鳴るかならないかのうちに、子供たちは教室を飛び出した。 手紙を読むか読まないかのうちに、彼は電話に飛びついた。 ⑤結果など [V-た あげく(に)/すえに] 「V-た結果」は外の関係の中でとりあげましたが、それに近い意味のもの。 好ましくない悪い結果を表します。過去形を受けます。 品物をいちいち手にとってさんざんケチをつけたあげく/末に、何 も買わないで帰っていった。 [V-たきり] それが最後で、その後そのままであること、あるいはその事柄が起こらないということを表します。「V-たまま」に近いものです。 彼女とは、3年前に別れたきり、一度も会っていません。 数学なんて、高校で習ったきり、すっかり忘れていたよ。 「V-たきり だ/で/になる/の」の形で使えます。 ⑥繰り返し [V-ては] 同じ(ような)ことが繰り返されることを表します。 一口飲んでは話し、一口食べてはまた何か言う。 たまに遊びに来ては、言いたいことを言って帰る。 寄せては返す波の音 [V-ごとに] 「Nごとに」と同じです。 人が一人通るごとにボタンを押す。 人が死ぬごとに、お寺がもうかる。 [参考文献] 森田良行・松木正恵1989『日本語表現文型』アルク出版 グループ・ジャマシイ編著1998『日本語文型辞典』くろしお出版 益岡隆志・田窪行則1992『基礎日本語文法 改訂版』くろしお出版 高橋太郎他2000『日本語の文法』(講義テキスト) 森山卓郎1995「並列述語構文考-「たり」「とか」「か」「なり」の意味・用法を めぐって-」『複文上』 関正昭1989「評価述定の誘導成分となる複合助詞について」『日本語教育』66 塩入すみ1994「「トハ」文の主節の述語について」『現代日本語研究』1大阪大学 近藤純子1998「複合辞としての「ということで」」『日本語教育』99 戴宝玉1987「複合助辞「にしても・にしろ・にしたところで」-接続助詞と限定助詞 との関連-」『日本語教育』62