欢迎光临散文网 会员登陆 & 注册

7年了!蕾姆终于醒来了!【小说片段翻译-中日文分离】

2020-11-15 16:43 作者:相晴_Channel  | 我要投稿

翻译:相晴君

校对:初音潇  

润色:初音潇  相晴君


“嗯……”

脸被粗糙的触感抚摸着,菜月昴一边呻吟一边睁开了眼睑。

意识缓缓浮现。与此同时,在张开的眼皮对面,由模糊的视野,渐渐呈现出一个完整的轮廓。

在这期间,菜月昴的脸颊一直有粗糙的触感。

“啊,真罗嗦……知道了。知道了。起床了。我已经起床了……”

用力一压,舔着脸的感觉让昴发出声音。

他不知道自己到底有多累,喉咙发出的声音细得让人难以置信,也不知道自己的意图有没有很好地传达,没有表现出肌肤接触结束的样子。

“不,有多甜啊……你给我看了那么可爱的一面,想在下次的女主角比赛中跃居首位……”

啊?”

“啊,嗯……”

在空空荡荡的嘴里咽下唾沫,总算是做出了语言,得到了回答。

但是,与所期待的回答不同,菜月昴的脸很僵硬。脸颊被舔得黏糊糊的,视野慢慢模糊,浮现在眼前的是——

“啊,啊?”

——是骑在身上舔着脸的路易·阿尔纳布。

哇,啊啊啊啊啊――!?

“喂!”

菜月昴被这不可能的情景震惊了,马上就把眼前的路易撞飞了。路易被那个动作推开,发出悲鸣滚来滚去。

看着那个,菜月昴拼命地向后滑着屁股。

「什、什、什、什、什、你!?你这是干什么? !你又来找我……”

嗯,嗯。哇!

“不是啊!发生了什么……难道我死了……?”

菜月昴愕然地瞪着路易,拼命地颤抖着声音。

在菜月昴面前,路易在草丛里仰着头,手脚像孩子一样,扑哧扑哧地叫着。

不明白意图。目标同样也——不,在那之前,

“这里是哪里?”

菜月昴没有从路易身上移开视线,一边加强警戒一边确认周围的情况。

于是,映入眼帘的是一片翠绿色的平原——花草稀稀落落地在风中摇曳,宛如广阔的草原。

……

这是在奥格里亚沙丘不可能出现的景象。

正确地说,在花魁熊的群生地也有花圃那样的东西,不过,这不是不自然的产物,而是作为确实的自然的植被存在于这里。

稍微远点的地方也能看到森林,这让菜月昴的思考变得混乱。

这里不是奥格利亚沙丘。话虽如此,似乎也不是和路易对峙的“记忆的回廊”。

“草也是真实的。味道呢……呸!还真是草!”

菜月昴确认了被拔掉的草的味道,那是真的。

然后,根据自己的伤势和衣服破了的程度,确认之前的战斗——围绕着普列阿德斯监视塔的战斗留下的痕迹。

也就是说,那场战斗确实发生过,菜月昴还没有死。

袭击了“绿色房间”的庞大的黑影,被那个吞噬了还能活着——

“——对了!  蕾姆!  蕾姆……”

既然路易就在眼前,同时,同样抱着它的蕾姆也会在。

因为这样的想法,菜月昴把路易放在一边,在草原的景色中寻找蕾姆。没过多久,他就在低矮的草丛中发现了她静静地躺着的身影。

蕾姆!啊,太好了……还是好好地,好好地平安无事

菜月昴跑到蕾姆身旁,确认了她平安无事后,安心地呆在了那里。

看起来,蕾姆也没有外伤。身体的热度和安静的呼吸都一直很平稳。菜月昴从心底松了一口气,擦去额头上的汗。

“啊,我放心了。蕾姆要是出了什么事,会被她姐姐杀死的……”

即使不是这样,菜月昴自己也一定无法原谅自己而想要自裁。

一边考虑着这些,菜月昴一边抬起头说道:即便如此……”

“这里是哪里……”……塔在哪里?艾米利亚和菲尔子她们……”

环顾四周,却无法确认远处应该也能看到的监视塔的存在。

无论看哪边,那都是一样的。

“艾米莉亚——! !  碧翠丝! !   拉姆——! !”

嗯,啊!

即使看不见,但菜月昴期待着能有答复,呼唤着艾米莉亚她们。

但是,声音空洞地回响着,回答的只有躺在草丛中的路易。虽然对这个事实很生气,但不能无视存在也是真心话。

在毫无办法的情况下,但保护蕾姆的只有自己,菜月昴为了对付路易而站了起来——

“……”

——想要靠手臂站起来,却不知道被谁悄悄地拉了起来。

“——嗯”

单膝跪地,正要站起来的菜月昴发出嘶哑的喘息声。

手臂拉袖子的力量并没有那么强。但是,我不能动弹了。

“……”

突然,他的膝盖颤抖起来,菜月昴的全身开始莫名其妙地出汗。

真的,那是莫名其妙的冲动。内脏一起开始活动,所有的叫做菜月昴的人都被这种现象所打动,开始暴走。

那是无法用语言表达的冲击。

那是无法形容的激动。 

这是在这个世界上所体验到的惊愕之中,最强烈的巨浪。

“……”

慢慢地,眼皮颤抖,开始微微张开。

而关在那眼睑内的,是如同湖水般清澈的淡蓝色双眸。

那个快乐的、又美丽的眼神,我好喜欢。

那个时而恶作剧、又闪耀的眼神,我好喜欢。

那个如同勒紧自己胸口一般恳求的眼神,我好喜欢。

——一直,一直,一直,都渴望着那光辉。

这……

心脏跳动,喉咙颤抖,就像被什么东西噎住了一样,发不出声音。

泣不成声。对了。即使是那样。这颗心,充满了多少思念呢?

想要传达的话语,想说的话题,想交换的愿望,都积累了很多。

为了寻求答案,菜月昴——

蕾姆。”

他颤抖着嘴唇,呼唤着那个名字。

可悲的是,为了这么简单的事情,我失败了很多次。

能清楚地告诉她吗?也许,我觉得能说的这只是菜月昴的幻想,重要的事情还没有传达给她。

因为害怕,菜月昴一边喘着粗气,一边不停地重复着。

蕾姆蕾姆……蕾姆蕾姆…………蕾姆……!”

每次菜月昴呼唤着她的名字时,眼泪都止不住地、簌簌落下。

而且每当眼泪夺眶而出的时候,她的身影就会变得模糊。而且,如果她的样子看不清的话,又会害怕这只手会再次滑下来。

所以,菜月昴的脸上不停地流着眼泪和鼻涕,还拼命地用袖子擦着自己的脸,拼命地不让自己的视线离开她的脸。

“……”

她安静地眨着眼,在那朦胧的瞳孔中有明确的光芒在里面。

到了这个地步,菜月昴明白了这不是迎合自己的愿望而展现出来的假象。

不会错,在这里的她――就是蕾姆。

“——啊”

虚弱地动了动嘴唇,蕾姆想开口说些什么。

仅仅只是听见那嘶哑的一声,菜月昴的胸口就像快要裂开一样。

一直以来,昴都是通过对着她的睡颜轻语,听着她浅浅的呼吸声,来确认她还和生命紧紧相连。

下定决心一定要找回来,迎来了无数个清晨和夜晚。

但是,在这期间,一次也没能听到她的声音。

闭上眼睛,让菜月昴想起了她对他说过的话,叫他名字的各种各样的场面。——但是,那都是过去的事了。

不论是今天,还是明天,都好想听到她新的声音。

这个心愿,现在终于实现了

“嗯……没事的,慢慢来就好了……”

“嗯……”

她焦急地动着嘴唇。

如果是真的,应该为她舀一杯水吧。但是,附近看不到水源,无法将目光从她身上移开。

一句话也可以,如果她能再一次,叫我一声昴。

听到这句话,菜月昴——

“嗯……”

……蕾姆?”

静静地,蕾姆将嘴唇的动作积蓄起来,在干渴的口里寻求微微的滋润。

用分泌的唾液湿润舌头,总算恢复了微弱的力量,蕾姆开口了。

然后,蓝色的瞳孔映出菜月昴的身影——

您是...哪位呢

“……”

从她嘴唇编织出的声音,这就是声音和意义的结合,渗透到菜月昴的脑中。

――你是谁

“……”

双膝跪地,注视着蕾姆的脸的菜月昴屏住了呼吸。

然后,吐出在肺深处积存的苦涩的气,用力拍了拍自己的胸。

用力、用力地拍两三下,然后告诉自己。

——这种可能性是预料之中的。

醒来的蕾姆,不记得昴的事,这种可能性也是考虑过的。

考虑到“暴食”的权能,这是自然的趋势。虽然她失去了自己的“记忆”或“名字”,但完全有可能醒来。

是的,完全有这个可能,并不是没想过蕾姆会失去记忆

当然,菜月昴所受到的冲击并不是为零。

即便如此,我也不再因诅咒命运而绝望,不再因不合理的行为而愤怒,不再像悲剧的主人公那样怜悯自己。

最重要的是,菜月昴早已被人们所熟知。

让我看看你帅气的一面吧,昴君。

“我的名字叫菜月昴。”

菜月昴使劲地咬着牙,叹了口气,脸颊也扭曲了。

菜月昴用力擦拭着脸,竭尽全力虚张声势地对蕾姆微笑。

如菜月昴的风格的,毫无根据的爽朗笑容展现了出来。

“现在可能还想不起来。但是,我……”

“你……”

面对雷姆嘶哑的提问,昴的喉咙哽咽了一下,然后紧紧闭上了眼睛。

然后,用漆黑的双瞳回望着那对蓝色的眼眸,继续说道。

“我是你的英雄。——蕾姆,我想见你”

语毕,为了曾与之立下誓言的少女,菜月·昴重新以英雄自居

背负着伤痕累累的英雄形象,少年为了少女,再次这样自报姓名。

——再一次,在这里发誓。为了从零开始,开始和她的故事。

————————————————————————————————————————

 

是的。至此,花了很长时间写的《Re:从零开始的异世界生活》第六章结束了。哈!?不是完全才一半吗!带着这样的想法,章节会明确地从这里开始改变,这是正确的道路。留下了各种各样的谜团的监视塔、不知被扔到哪个角落的菜月昴,事态会怎么样呢。请期待最近开始的第七章。25卷的书籍工作结束后,开始放松。那么,以后也请多关照!


日文原文

「う……」

ざらついた感触に顔を撫でられ、スバルは呻きながら瞼を開けた。

 意識が、ゆっくりと浮上してくる。それに合わせ、開いた瞼の向こうでぼやけた視界、それが徐々にまともな輪郭を帯びてくる。

 その間も、なおもスバルの頬にはざらついた感触がずっとあって。

「ぱと、らっしゅ……わか、った。わかった、から。起きた。もう、起きたよ……」

 

 ぐいぐいと圧し掛かり、顔を舐める感触にスバルは声を絞り出す。

 どれだけ疲れ切っているのか、喉から漏れる声は信じられないほどか細くて、うまく意図が伝わらないのか、そのスキンシップが終わる様子を見せない。

「いや、どんだけ甘えんだ……お前、そんな可愛いとこ見せて、次のヒロインレースでトップに躍り出る気……」

「あーぅ?」

「あー、う……?」

 カラカラの口の中で唾を呑み込み、どうにか言葉を作ったところへ返答があった。

 だが、その返答が予期したものと異なり、スバルは頬を硬くする。べろべろと舐められた頬、ゆっくりと視界のぼやけが取れ、そこに浮かび上がるのは――、

「う、ぁー?」

 ――スバルに馬乗りになり、顔を舐めているルイ・アルネブだった。

「う、おわあああ――っ!?」

「うあんっ!」

 そのありえない光景に驚愕し、スバルはとっさに目の前のルイを突き飛ばした。その動作に押され、悲鳴を上げたルイがゴロゴロと転がる。

 それを見ながら、スバルは必死に後ろに尻を滑らせ、

「な、な、な、なんだ、てめぇ!? 何のつもりだ!? また、俺をおちょくって……」

「うー、うー? うあー」

「うあーじゃねぇ! 何が、何があった……俺は、死んで……?」

 愕然と、ルイを睨みつけながら、スバルは必死に声を震わせる。 

そのスバルの前で、ルイは草むらで仰向けになったまま、手足を子どものようにバタつかせて唸っている。

 意図がわからない。狙いも――否、それ以前に、

「ここ、どこだ……?」

 ルイから視線を外さず、スバルは警戒を強めながら周囲の様子を確認する。

 すると、目に飛び込んでくるのは鮮やかな緑の平原――草花がちらほらと風に揺れているそれは、広い草原のような場所だった。

「――――」

 アウグリア砂丘にはありえない光景。

 正確には、花魁熊の群生地には花畑のようなものもあったが、これはそういった不自然の産物ではなく、確かな自然の植生としてここにあるものだ。 

遠く、少し離れた場所には森があるのも見えて、スバルの思考を混乱させる。

 ここは、アウグリア砂丘ではない。かといって、ルイと対峙した『記憶の回廊』というわけでもなさそうだった。

 

「草にも、実体がある。味も……ぺっぺっ! 草だ!」

 毟った草の匂いと味を確かめ、スバルはそれが本物であるのを確かめた。

 それから、自分の負傷や服の破れ具合から、直前の戦闘――プレアデス監視塔を取り巻く戦いの痕跡、それが残っているのを確認する。

 つまり、あの戦いは確かにあったことで、スバルはまだ死んでいない。

『緑部屋』を襲った膨大な黒い影、あれに呑まれながらも生き残って――、

「――そうだ! レム! レムは……」

 目の前にルイがいるのなら、あの瞬間、同じように抱えていたレムもいるはず。

 その思いからルイを放置し、スバルは草原の景色にレムを探した。そして、程なく、背の低い草むらの中、静かに横たわる彼女の姿を発見する。

「レム! ああ、よかった……ちゃんと、ちゃんと無事だ……」

 レムに駆け寄り、スバルはその無事を確かめ、安堵でその場にへたり込む。

 見たところ、レムにも外傷はない。体の熱も、静かな呼吸もずっと見てきたままだ。そのことに心の底から安堵して、スバルは額の汗を拭った。

「はぁ、安心した。レムに何かあったら、姉様に殺されるからな……」

 それでなくても、スバル自身が自分を許せなくて自裁したくなる。

 そんなことを考えながら、スバルは「それにしても……」と顔を上げ、

「ここはどこで……塔はどこにいったんだ? エミリアとベア子たちは……」

 ぐるりと周囲を見回すが、遠目にも見えるはずの監視塔の存在が確認できない。

 四方どちらを見ても、それは同じことだった。

「エミリア――!! ベア子!! ラム――!!」

「うー、あーっ!」

 見えないまでも、返事があることを期待してスバルがエミリアたちを呼ぶ。

 しかし、声は空しく響き渡り、返事をしたのは草むらに寝そべるルイだけだった。その事実にも腹が立つが、彼女の存在を無視できないのも本音だ。

 何を企んでいるのか、間違いなく持て余す状況下、しかし、レムを守れるのは自分しかいないと、スバルはルイに対処するべく立ち上がり――、

「――――」

 ――立ち上がろうとする腕を、そっと誰かに引かれた。

「――え」

 片膝をついて、立とうとしていたスバルは掠れた息をこぼした。

 腕を、服の袖を引く力はそれほど強くはない。しかし、動けなくなった。

「――――」

 ガクガクと膝が震え、スバルの全身がわけのわからない汗を掻き始める。

 本当に、それはわけのわからない衝動だった。内臓が一斉に動き始め、ナツキ・スバルという人間の全部が、その現象に打たれ、暴れ出している。

 それは、言葉にならない衝撃だった。

 それは、たとえようもないほどの激情だった。

それは、この世で味わった驚愕の中でも飛び切り強い大波だった。

「――ぁ」

 ゆっくりと、瞼が震えて、薄く開き始める。

その向こうに閉ざされていたのは、湖のように澄んだ薄青の瞳。

 楽しげに華やぐそれが、好きだった。

 

 時に悪戯っぽく輝くそれが、好きだった。

 胸を締め付けるほどに懇願するそれが、好きだった。

 ――ずっと、ずっと、ずっと、その輝きに焦がれていた。

「れ……」

 心臓が弾み、喉が震え、まるで何かを詰まらせたみたいに声が出ない。

 詰まらせた。そうだ。そうだとも。この胸、どれほどの想いが詰まっていたことか。

 伝えたい言葉も、話したい話題も、交わしたい願いも、積もるほどにあった。

 それを求めて、ナツキ・スバルは――、

「――レム」

 唇を震わせ、名前を呼んだ。

 情けないことに、たったそれだけのことをするために、何度も失敗してしまった。

 はっきりと、彼女に伝わるように言えただろうか。もしかしたら、言えたと思ったのはスバルの幻想に過ぎなくて、大切なことは伝わっていないのでは。

それが怖くて、喘ぐように呼吸しながら、スバルは何度も繰り返す。

「レム、レム……レムっ、レムぅ……れ、む……れむぅ……!」

 ボロボロと、彼女の名前を一度呼ぶたびに、滂沱と涙が溢れ出した。

 そうして涙が溢れるたびに、彼女の姿がぼやけてしまう。そうして、彼女の姿が曖昧になったら、またしてもこの手を滑り落ちてしまいそうで、それが怖い。

 だから、スバルは顔面を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら、必死で自分の顔を袖で拭って、彼女の顔を見失わないように必死になった。

「――――」

 パチパチと、静かに瞬きして、薄ぼんやりとしていた瞳に確かな光が宿る。

 ここまでくれば、これはスバルの願望が見せたまやかしなんかではないとわかる。

 間違いなく、ここに彼女が――レムが、いる。

「――ぁ」

 弱々しく唇を動かし、レムが何事か口にしようとする。

 その声の、掠れた一音が聞けただけで、スバルは胸がはち切れそうな思いだった。

 ずっと、彼女の寝顔に語りかけ、寝息を立てるその命が繋がっているのを確かめた。

 必ず取り戻すと心に誓い、幾度も幾度も朝と夜を迎えてきた。

 だが、その間、ただの一度も、彼女の声は聞けなかった。

 

 目をつむれば、彼女がかけてくれた言葉が、名前を呼んでくれたことが、様々な場面でのことが思い出された。――でも、それは全て過去のことだ。

 今を、明日を、新しい彼女の声が聞きたかった。

 それが今、ようやく叶う。果たされる。

「れ、む……大丈夫、だ。ゆっくりでいいから……」

「――ぅ」

 もごもごと、もどかしげに彼女は唇を動かす。

 本当なら、彼女のために水の一杯でも汲んでくるべきなのだろう。しかし、近くに水場は見当たらないし、彼女から目を離せない。

 

 一言でいい。彼女がもう一度、スバルを呼んでくれたら。

 その一言が聞けたら、スバルは――、

「――たは」

「……レム?」

 静かに、レムが唇の動きを溜め、渇いた口内に微かな潤いを求める。

 分泌される唾液で舌を湿らせ、何とかささやかな力を取り戻し、レムは口を開いた。

 そして、その青い瞳にスバルを大きく映しながら――、

「――あなたは、だれ、ですか?」

「――――」

 唇から紡がれる声、それが確かな音と意味を結び、スバルの脳に浸透する。

 ――アナタハダレ、と。

「――――」

 膝をついて、レムの顔を覗き込んでいたスバルは息を詰めた。

 それから、肺の奥に苦々しく溜まった息を吐いて、自分の胸を強く叩く。

 強く、強く、二度三度と叩いて、己に訴えかける。

 ――この可能性は、予期していたはずだ。

 目覚めたレムが、スバルのことを覚えていない可能性は考えていた。

『暴食』の権能のことを考えれば、それは自然な成り行きだ。彼女が自分の『記憶』か『名前』を失い、目を覚ますことは十分にありえた話だった。

 そう、十分ありえた話だ。だから、考えないわけではなかった。

 もちろん、それでスバルの受ける衝撃が、痛みがゼロになるわけではない。

 

 それでも、運命を呪って絶望したり、不条理に怒りをぶつけて悲劇の主人公ぶるほどに自分を憐れまなくて済んだ。

 何より、ナツキ・スバルはすでに言われている。

 

『かっこいいところを、見せてください。スバルくん』

「――俺の名前はナツキ・スバル」

 ぐっと、強く奥歯を噛みしめて、スバルは嘆きかけた顔を下ろし、頬を歪めた。

 ぐしぐしと顔を拭い、精一杯虚勢を張って、スバルはレムに笑いかける。

 ナツキ・スバルらしい、晴れ晴れしいほどに根拠のない笑みで。

「今はまだ、思い出せないかもしれねぇ。でも、俺は……」

「あなた、は……」

 レムの掠れた問いかけに、スバルは一度言葉を切り、ぎゅっと目をつむった。

 それから、その青い瞳を黒瞳で見つめ返し、続ける。

「俺は、お前の英雄だ。――レム、会いたかった」

 そう言って、誓いを立てた少女のために、今一度、ナツキ・スバルは英雄を名乗った。

 傷だらけの英雄像を背負い、少年は少女のため、再びそう名乗った。

 

 ――もう一度、誓いをここに。ゼロから、彼女との物語を始めるために。

 

————————————————————————————————————————

 

はい。これにて、長らくかかりました『Re:ゼロから始める異世界生活』六章終了です。

はあ!? めちゃめちゃ途中じゃねぇか!?

と思われるかもしれませんが、明確にここから章が変わるので、これで正道です。

様々な謎を残した監視塔、どこぞへ飛ばされたスバルたち、事態はどうなるのか。

どうぞ、近日開始の七章を楽しみにお待ちください。

25巻の書籍作業が終わったら、ゆるゆる始めます。では、以降もよろしく!

 

 

小说原文来自网络。



7年了!蕾姆终于醒来了!【小说片段翻译-中日文分离】的评论 (共 条)

分享到微博请遵守国家法律