【日本中1国语】7#闪耀的地平线

光る地平線(闪耀的地平线)
作者:魚住 直子(うおずみ なおこ)
ライオンがその地に初めてやって来た時、腹が減って、今にもぶっ倒れそうだった。
(狮子初次来到这地方的时候,饿到快要倒下了。)
乾いた草原がどこまでも広がっている。ここにも食い物はなさそうだ。
(干草原广阔无垠。这里似乎也没有食物。)
そう思った途端、体が崩れ落ちた。横たわり、真ん丸い月を見上げる。最後に肉を口にしたのはいつだったか、一月前だったか、二月前だったか。
(刚如此想道,身体就倒下了。他卧倒在地,仰视着圆圆的月亮。最后吃肉是什么时候?一个月前还是两个月前?)
多分死ぬのだ、と彼は思った。
(大概要死了吧,他想道。)
目を閉じると、母の姿が闇の中に浮かぶ。一瞬ひもじさを忘れる。
(他闭上眼眸,母亲的身影浮现于黑暗之中。他一瞬忘记了饥饿。)
死んだら母に会えるだろうか。美しい金色の毛並みと、甘い匂い。
(死了的话能见到母亲吗?美丽的金色毛发与香甜的气味。)
幼いうちに母が亡くなり、故郷を離れた。体が小さく、戦いに負け続けた。くじけがちな心も災いし、長い間居場所を求めて彷徨った。
(幼时母亲去世,他离开了故乡。身体弱小,打架一直输。常常受挫的心也是灾难,还长期徘徊寻求着住处。)
それも今日で終わりだ。こうやって死んでいく。横たわったまま、深い息をついた。
(这到今天也就结束了。就这样死去。他卧倒着,深深吸气。)
その時、遠くの方で何か、気配を感じた。どうにか頭を上げて目を凝らす。遠くに見える一本のアカシアの下に、何かいる。
(这时,他感觉到了远处有什么。勉强抬起头凝视。远远可见的一棵槐树下,有什么。)
ブッシュだろうか。いや、少し動いた。動物の影だ。シマウマか、ガゼルか。分からないが、確かに何かがいる。
(是灌木吗?不,稍微在动。是动物的身影。是斑马吗?还是羚羊?虽然不知道是什么,但确实是有什么。)
必死で起き上がる。つかまえることは出来ないかも知れないけれど、最後のチャンスだと思った。
(他拼命起身。或许抓不到,但这是最后的机会了。)
そろりそろりと近付いていく。
(他悄悄接近那里。)
そこにいたのはシマウマでもガゼルでもなかった。自分と同じライオンだった。それも後ろ姿だ。そのライオンの前にはチーターがいる。更にその前には豹がいる。そうやって十頭近い肉ぐらい達が、静かに並んでいる。
(在那里的既不是斑马也不是羚羊。是和自己一样的狮子。而且还是背影。在狮子的前面是猎豹。再前面的是豹。就这样将近十头的食肉动物们安静地排列着。)
オスもメスもいるし、獣の種類も違う。しかし争わず、じっと座っている。どの者も痩せており、毛艶が悪い。
(雌雄都有,兽类的种类也不一样。然而,他们不争斗,静静地坐着。大家都很瘦,毛发光泽也不好。)
一体この列は何だろう。彼は最後尾についた。列は少しずつ進んだ。先頭の者は何か受け取ると、列から離れていく。
(这到底是什么队伍呢?他排到了最后面。队伍一点点地前进。最前面的兽拿到了什么后,离开了队伍。)
まもなく彼の番になった。そこには、年を取ったオスのライオンがいた。何も言わずに赤い肉を一塊、くれる。
(很快就排到他了。年迈的雄狮子在那里。一言不发地给了他一块红色的肉。)
食い物だ!彼は、夢中でむしゃぶりついた。あぶらののっていない肉だったが、これよりもうまいものは食べたことがない。肉の汁が付いた前肢までぺろぺろと舐めてから、我に返った。
(是食物!他忘我地猛扑上去。虽然是没有油脂的肉,但从未吃过比这还美味的食物。他甚至还舔了沾上了肉汁的前肢,然后才回过神来。)
「どうして肉をくれたんだ?」
(“你为什么把肉给我?”)
年を取ったライオンは黙っている。列に並んでいた者達は食べ終わり、それぞれ静かに去っていく。
(年迈的狮子沉默着。排队的各位吃完后,都各自静静地离去了。)
不思議だった。他の者に肉をやるより、自分で食った方がいい。見ると、年を取ったライオンも、痩せている。肉をやるゆとりがあるとは思えない。
(很不可思议。比起将肉给别人,自己吃更好。一看,年迈的狮子也很瘦。没有宽裕到要把肉给别人吧。)
「いつもこんなことをしているのか。」
(“你总是这么做吗?”)
年を取ったライオンは、ぼそりと言った。「満月の晩だけだ。」
(年迈的狮子轻声道:“仅限满月之夜。”)
「自分で食った方がいいじゃないか。どうして他の者にあげるんだ。」
(“自己吃不是更好吗?为什么给别人?”)
あっという間に平らげたことは棚に上げ、彼は尋ねた。年を取ったライオンは、少しめんどくさそうな表情を浮かべ、それから答えた。
(他将很快吃光的事束之高阁,询问道。年迈的狮子露出了些许嫌麻烦的表情,回答道。)
「死にそうに腹を空かせた者がいるからだ。」
(“因为有快要饿死的人。”)
無愛想だが、優しい気持ちなのだ。ライオンは嬉しくなった。誰かに食べ物を分けてもらったのは、母が死んで以来だ。
(虽然很冷淡,但感觉很亲切。狮子很高兴。自从母亲去世以来,第一次从别人那里分到了食物。)
肉をもらった他の者達の姿はもうない。でも彼だけは、年を取ったライオンのそばに寄った。何か、話したかった。遠い故郷のこと。優しかった母のこと。母が死んだこと。辛い日が続いたこと。
(分到肉的其他兽已不见了踪影。但是只有他来到了年迈的狮子旁边。想说些什么。关于遥远的故乡的事。温柔的母亲的事。母亲去世的事。艰辛的日子不断的事。)
優しい者はきっと慰めてくれるはず。しなだれかかるように、年を取ったライオンを見つめる。
(亲切的人一定会安慰自己的。他依偎般地注视着年迈的狮子。)
が、年を取ったライオンは、こちらを見ることはなかった。黙ったまま草原を歩いて行ってしまった。
(然而,年迈的狮子没有看向自己。沉默地走在草原上离去了。)
肉の塊を一つ食べたことで、少し元気が出た。命がいくらか延びた気がした。
(吃了一块肉,他稍微有点精神了。感觉生命延续了一些。)
他のライオンがいない所まで歩き続けることが出来たし、次の日、久しぶりに食い物を—小さな猪だったが、捕まえることも出来た。
(他能够一直走到没有其他狮子的地方,翌日,还久违地抓到了食物,虽说是一只小野猪。)
その上、大きな岩穴まで見つけた。ライオンは思いついた。夫婦の鼠を捕まえてこの岩穴で増やすのだ。そうすれば、食い物に困らない。早速捕まえた鼠を岩穴に入れ、入り口を石で塞いだ。これが面白い程うまくいった。しかし鼠は何匹食ったところで、腹は膨れない。
(并且,他甚至还发现了很大的洞穴。狮子想道要抓住一对老鼠夫妇放进这个洞穴繁殖。这样的话就不会为食物困扰了。他赶紧将抓住的老鼠放入洞穴,并用石头堵住了入口。一切都无比顺利。然而就算吃再多的老鼠,也无法饱腹。)
更に良い方法はないか。すぐに閃いた。この岩穴にもっと食べ甲斐のあるものを閉じ込めよう。そうすれば、いつでも好きなだけ、食べたいものが食べられる。
(有没有更好的方法了?他马上想出了一个主意。将更值得吃的东西关进这个洞穴吧。这样的话,就可以在任何时候吃到想吃的食物,想吃多少就吃多少。)
でたらめな思い付きだったが、勢いがある時は何でも上手くいくものらしい。次の日、ライオンはインパラの群れを見つけ、うまい具合に岩穴に追い込むことが出来たのだ。十数頭のインパラだ。急いで、入り口を大きな石で塞ぐ。
(虽然是很荒唐的想法,不过有气势的时候,似乎做什么都很顺利。翌日,狮子发现了一群飞羚,并顺利地将他们赶进了洞穴中。有十多头飞羚。他赶紧用大石头堵住了入口。)
これで当分、食い物に困らない。ライオンは踊り出したい気分だった。草や木の葉を岩穴に放り込んでおけば、インパラは生きているだろう。腹が減った時、いつでも新しい肉が食べられる。若いライオンは、自分の頭の良さに痺れた。
(这样暂且就不用为食物困扰了。狮子高兴地手舞足蹈。只要往洞穴里放入草和树叶,飞羚就能生存吧。肚子饿的时候,就能吃到新鲜的肉。年轻的狮子陶醉于自己的聪明头脑。)
彼が素晴らしい食べ物を沢山持っていることを、どうやって知ったのか、まもなくメスのライオンが何頭もやって来た。「一緒に暮らしたいんです。」と言う。子分にしてくださいと、頼み込むオスのライオンまでやって来た。
(不知道是从哪得知他拥有着众多美味的食物,很快来了几头雌狮说:“我想和你一起生活。”甚至还来了拜托他收他们为小弟的雄狮。)
ライオンは喜んでメスを迎えた。子分のオスは、自分よりも小さくて弱そうなことを注意深く確かめた。
(狮子高兴地迎接了雌狮。然后谨慎地确认了比自己弱小的雄狮,将他们收为小弟。)
こうして思いがけなく、自分の群れを初めて持つことになった。ライオンはすっかり浮かれた。彼の群れは狩りに行く必要がないからのんびりとしている。腹が空けば岩穴からインパラを一頭ずつ引っ張り出して食うだけだ。
(就这样,意想不到的,他初次拥有了自己的狮群。他已经高兴地飘飘然了。他的狮群不用去狩猎,所以很悠闲。饥饿时只要从洞穴里将飞羚一头头地拉出来吃。)
毎日、麗らかな草原で喋った。ライオンは自分の話をするのが何よりも好きだった。母が早く死んだこと。そしてその後の苦労。群れの者達は口々にリーダーを慰めてくれる。
(他每天在晴朗的草原上说话。狮子最喜欢讲自己的事。母亲早早去世的事。以及此后的辛劳。狮群们会异口同声地安慰首领。)
「苦労を乗り越えて、よく頑張りましたね。」
(“克服了辛劳,你很努力了啊。”)
「これからはゆっくりと過ごしてください。あなたはもう十分、頑張りましたから。」
(“从今以后请悠闲地度过。你已经十分努力了。”)
「どうか無理をしないでくださいね。そのままのあなたでいいんです。」
(“请不要负担过重。你一直这样就可以了。”)
ライオンはこう言った言葉が大好きだった。
(狮子最喜欢听这些话了。)
しかし、この暮らしは長く続かなかった。ある日、岩穴のインパラが一頭残らず消えたのだ。なんのことはない、全て食い尽くしただけのこと。
(然而,这样的生活没有长久持续。某日,洞穴里的飞羚一头都不剩地消失了。没什么大不了的,只是全部吃光了而已。)
瞬きするよりも早くメスがいなくなった。子分のオスは牙を剥き出し、彼を威嚇した。
(雌狮眨眼间就不见了。小弟雄狮露出獠牙,威吓他。)
体をくるんでいた柔らかなものが、いきなり剥ぎ取られた。空をふわふわ飛んでいたのが、固い地面に突き落とされた。
(包裹在身上的柔软之物突然被剥掉。原本在天上轻飘飘地飞翔,却被推落到了坚硬的地面。)
長い間狩りに行かなかった体は重かった。コオロギ一匹、捕まえられない。何日も歩き続けた。時々、慰めの言葉を思い出した。
(长期没有去狩猎的身体很重。一只蟋蟀都抓不到。他连续走了数日。时常想起安慰的话语。)
「頑張りすぎないで。」
(“请不要太努力了。”)
「そのままのあなたでいいんです。」
(“你一直这样就可以了。”)
虚しくて、のた打ち回った。もうだめだ。死にそうだ。
(很空虚,痛苦到满地打滚。已经不行了。要死了。)
倒れそうになった時、草原の遠くに一本のアカシアが見えた。そして、その下に、獣の影をみとめた。
(快要倒下的时候,他看到了远处草原上的一棵槐树。以及,树下的兽类的身影。)
もしかして……。あれは半年前だったか、一年前だったか。
(或许……那是半年前?还是一年前?)
空を見上げると、真ん丸い月。そうだ、満月の晩だ。必死で歩き始めた。
(他仰望天空,只见一轮圆圆的月亮。对了,是满月之夜。他开始拼命地走去。)
前に見たのと同じように、痩せたライオンやチーターが並んでいる。
(与之前看到的一样,瘦弱的狮子和猎豹在排队。)
彼はまた最後尾についた。見覚えのある年を取ったライオンが、一番前にいた。並んでいる者達に肉を配っている。
(他又排到了最后面。眼熟的年迈的狮子在最前面,给排队的兽们分肉。)
彼の番になった。肉を一塊、もらう。むしゃぶりついた。うまい。あっという間に食べ終わると、年を取ったライオンを見た。
(排到他了。他分到了一块肉。猛扑了上去。很美味。他不一会儿就吃完了,然后看向年迈的狮子。)
こちらを覚えているかどうか、分からない。年を取ったライオンは相変わらず無愛想で、黙っている。
(不知道他还记不记得自己。年迈的狮子依旧很冷淡地沉默着。)
だが、今はそれが嬉しい。何も聞かれたくないし、何も言われたくない。心地良い言葉は、聞いた一瞬は元気になれるが、すぐに消えていく。
(但是,现在这很令他高兴。他不想被问任何问题,也不想被说什么。令人愉快的话语在听到的一瞬间会恢复精神,不过很快就没精神了。)
肉をもらった者達は、前と同じように、すぐに散っていなくなっていた。彼は、行かなかった。
(分到肉的各位和之前一样,马上就散去了。他没有走。)
年を取ったライオンが余裕があるわけではないことは、痩せたその姿からもよく分かる。それなのになぜ満月の晩になるたび、少ない食べ物を分け続けているのか。
(从年迈的狮子那瘦弱的样子,便可以清楚地知道他并不宽裕。然而为何一到满月之夜,他要持续将很少的食物分给别人呢?)
「どうして、他の者に肉をやるんだ。」
(“你为什么把肉分给别人?”)
年を取ったライオンがぼそりと答えた。「死にそうに腹を空かせた者がいるからだ。」
(年迈的狮子轻声回答道:“因为有快要饿死的人。”)
前とそっくり、同じ答えだ。
(与之前一模一样的回答。)
年を取ったライオンは歩き出す。ライオンは、年を取ったライオンの後をついていった。まだ聞き足りない。
(年迈的狮子踏出了步伐。狮子跟在了年迈的狮子的后面。还没问够。)
年を取ったライオンは振り返り、若いライオンがついてくるのを見たが、追い払うことはしなかった。
(年迈的狮子回过头来看到跟来的年轻的狮子,不过并没有赶跑他。)
月が傾いてきた。
(月亮开始落下。)
二頭のライオンは一列になり、草原を黙って歩き続けた。
(两头狮子并排一列,沉默地继续走在草原上。)
やがて小高い丘に、年を取ったライオンは上って行った。そこにねぐらがあるのだろうか。
(最终,年迈的狮子爬上稍高的山丘上。那里有他的巢穴吗?)
丘の上まで上ると、草原が遠くまで見渡せた。
(爬上山丘后,能眺望到远处的草原。)
そろそろ夜明けだ。地平線が、一本の金色の線のように輝きだした。
(天快要亮了。地平线如同一道金线般闪耀。)
太陽の頭が地平線から出てくる。まるで金の皿に割った黄金の卵だ。
(太阳从地平线处露出了头。就仿佛被金盘打碎的金色的蛋。)
ライオンは思わず見とれた。
(狮子不禁看得入迷了。)
「なんて綺麗なんだろう。」
(“多美啊。”)
年を取ったライオンも立ち止まった。同じように太陽を眺めてから振り返る。
(年迈的狮子也停下了脚步。同样眺望着太阳然后回过头来。)
「どうして綺麗なのか、分かるか。」
(“你知道为什么美吗?”)
突然の問だった。ライオンは慌てて考える。空気が澄んでいるからか?太陽が大きいからか?
(很突然的问题。狮子赶紧考虑。是因为空气清澈吗?是因为太阳大吗?)
答え惑っていると、年を取ったライオンが言った。「生きているからだ。」
(他困惑着不知道怎么回答,于是年迈的狮子说道:“因为我们活着。”)
若いライオンは、はっとした。
(年轻的狮子怔住了。)
もう一度、金の卵のような太陽を見つめる。
(他再一次注视着金蛋般的太阳。)
やっぱり綺麗だ。見ることが出来て良かったと思うほど綺麗だ。
(果然很美。美到感慨能看到太好了。)
なるほど。ライオンは素直にそう頷いた。
(原来如此。狮子老实地点了点头。)
年を取ったライオンが再び歩き出す。彼はもうついていかなかった。年を取ったライオンの背に向かって言う。「ありがとう。」
(年迈的狮子再次踏出步伐。他不再跟上去了。他对着年迈的狮子的背影说道:“谢谢。”)
丘を下り始めた。
(他开始走下山丘。)
まず、体を休める場所を探そうと思った。それから食い物を探しに行こう。
(首先,要找一个能休息的地方。然后去找食物。)
そうやって、死ぬまでは確かに生きよう。
(就这样,在死前要确确实实地活着。)
当たり前のことだったが、そんな風にライオンが考えたのは、初めてだった。
(狮子是第一次理所当然般地如此考虑。)

词汇
ひもじい:饿、饥饿
むしゃぶりつく:猛扑上去、猛劲儿抱住、紧紧抓住
しなだれかかる:娇媚地依偎、依靠
閃く(ひらめく):闪耀、闪烁;(旗帜等)飘动、飘扬;闪现、忽然想出

作业
1.读课文