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サザエ売り

2021-04-26 18:34 作者:ki9503  | 我要投稿

むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。

 さて、久しぶりに臼杵(うすき)の町へ出た吉四六さんは、何か変わった物はないかと大通りを歩いていました。

 すると、魚屋の前に出ました。

 店には立派なサザエが、いくつも並んでいました。

「ほほう、サザエか。・・・サザエねえ。・・・よし、一儲け出来そうだ」

 ある名案を思いついた吉四六さんは、魚屋に入って行きました。

「あの、これは、何ちゅう物かな?」

 吉四六さんは、わざと知らないふりをしてサザエを指差しました。

「ああ、これはサザエという物だ。お前さん、知らんのかい?」

 吉四六さんはサザエを手に取ると、いじってみたり、重さを計ってみたりしながら、

「これは珍しい形の貝だ。家の土産に買って帰りたいので、三つほどくれや」

「へい」

 魚屋が吉四六さんにサザエを渡すと、吉四六さんが言いました。

「すまんが、火箸の様な、固い棒を貸して下さい」

 吉四六さんは火箸を借りるとサザエのふたをこじ開けて、中身を取り出しました。

 そしてサザエの中身を、ポイと捨ててしまうと、

「こんな物が入っていると、重くてかなわん」

と、言って、そのまま帰ってしまいました。

 魚屋は吉四六さんが行ってしまうと、サザエの中身を拾って、

「何とも馬鹿な奴もいるもんだ。だが、金は払ったし、中身も残っている。こりゃ、もうかった」

と、言いました。


 それから何日かして、また吉四六さんは臼杵の町にやって来ました。

 そして魚屋によると、またサザエを三つ買って中身を捨てて、サザエの殻(から)だけを持って帰りました。

 魚屋は大喜びです。

「あいつは本当に馬鹿だな。・・・いやいや、良いお客さまだ。よし、今度は大量に仕入れるとするか。うっひひひひ」


 それから何日かして、またまた吉四六さんは臼杵の町にやって来ました。

 今日は、ウマを引いています。

 魚屋に行ってみると、サザエが店の前に山ほど積んでありました。

 魚屋は吉四六さんを見つけると、ニコニコしながら呼び止めました。

「おい、そこのばー・・・。いや、お客さま。今日はサザエを買わないんですか? 大量に仕入れたから半値で、いやいや、半値の半値で、ええい、たったの一文で、欲しいだけお売りますよ」

 魚屋にしてみれば、中身をいちいち取り出す手間はいらないし、殻を処分する手間も入りません。

 本当なら吉四六さんに、手間賃を支払ってもいいくらいです。

 すると吉四六さん、ちょっと迷惑そうな顔をして、

「そこまで言うなら、もらっていこうか。今日はちょうどウマも引いているし、みんなもらっていくよ」

「へい、商談成立だ」

 吉四六さんは一文を差し出すと、火箸を差し出す魚屋に言いました。

「いや、これだけの数だと時間もかかる。商売の邪魔をしちゃ悪いから、中身も入れたまま、もらっていくよ」

「へっ?」

 魚屋が驚いている間に、吉四六さんは店のサザエを全部ウマに積み込むと、そのまま行ってしまいました。

 そして少し歩いたところで、吉四六さんは大声で言いました。

「ええ、サザエはいらんかね。安いよ。安くてうまい、サザエだよー」


おしまい


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