来自白深夜宵的感想(转自https://t.co/gdfG7z8OnF)
8/18発売の千年くんはラムネ瓶のなか 7巻ネタバレあり感想です。
読了済み、またはネタバレOKの方以外はご遠慮ください。
7巻あとがきも含みますのでご了承ください。
「人名」は「役職」である、とありますがこれは語呂が良かったというのが理由で、某人気コンテンツが連想されるかと思いますが本感想では特にその作品の要素はありません。
早速感想に入っていきます。
停滯
第一章から第二章の7巻前半では、夏休みが明けたチーム千歳達の様子や応援団の結成、明日風や表紙を務めた望紅葉も交えたお泊まり合宿などが描かれている。
その中で夕湖が髪を切ったことや文化祭で白雪姫をやることが決まったり、合宿では夏休みを経たチーム千歳に上記2名を加えたやり取りなど複数のイベントがあった。
しかし、ここまでを読んでいて私が感じたのは『停滞』だ。
これはあくまで悪く言えば…という話であり、7巻の前半部分でしかないことを考えると『溜め』に近いものであり実際読んでいるときにはこちらに近い考えだった。
後半に当たる第三章を読めば実際にこの部分が『溜め』として機能していたというのも間違いなく、むしろこちらのほうが表現としては正しい。
しかし合宿等のイベントを重ねながら話は進むが、致命的に『停滞』しているものがあった。
それは彼らの『関係性』だ。
あとがきにも実際に『登場人物たちが動きたがっていない』という言葉、そして『停滞』しているという実感・苦悩を赤裸々に記されてた。
青春の中で生じる心の動き、関係性の変化、進む時間、これらは一貫してチラムネにおいて描かれてきたストロングポイントだと私は思っている。
しかし彼らは緩やかな時間の中、歩みを止め『停滞』してしまう。
読み進めている時の私は、正直に言えばかなり楽観視していた。
『停滞』していると感じこそしたが紡がれる物語からチラムネらしさというものは確かに感じられていたし、紙面も半分以上残っていたので「ここからどうなるのだろう」というワクワク感さえ感じていたのだ。
だからこそあとがきで実際の苦悩を知った時は驚いた。
このワクワク感は受け取り手、読者であるが故の無邪気な期待から生じたもの。
この『停滞』にぶち当たってしまったときの、作品一番のファンは自分であるとあとがきに記した作者の苦しさは想像すらできなかったからだ。
もっとも、こうしてチラムネ7巻が世に出た以上読者としての一番の努めは作品を楽しむことであり、その苦悩まで汲み取ろうとするのは傲慢なのかもしれない。
さて、話を戻そう。
第二章までは『停滞』の物語だった。
朔達の関係性という意味でも、物語の構造というメタ視点においても、二重の『停滞』に囚われていたと言えるだろう。
では、第二章を超えた先にある第三章はどうなっていったのだろうか
風雲急を告げる
『停滞』してしまった第二章までの物語、そして彼らの関係性。
それらを打破しうるとすれば一体誰なのか。
――――――それはもちろん、『望紅葉』以外にありえなかった。
朔と彼女達を結びつけるもの。
明日風にとっては河川敷であり、陽にとっては相棒としてのポジションであり、優空にとっては料理だった。
でもそれは、特別な関係ではあっても、特別な要素ではなかった。
望紅葉という少女は、『停滞』する彼女達を撃ち抜くように、切り裂くようにその事実を突きつける。
ボタンの掛け違え一つでそこに立っていたのは貴女じゃないかもしれない、と。
一人、また一人とその事実に撃ち抜かれていく中、立ち上がったのは『七瀬悠月』だった。
私たちをどうするつもりなのだと、一対一で彼女と対峙したのだ。
ここまでを読んで私は『望紅葉』という少女は『停滞』を打ち破るために生み出された都合の良い存在、言わばデウス・エクス・マキナのようなものではないかと思った。
しかし違った。彼女はその様な都合の良い存在ではなかったし、物語のためだなんて殊勝さなどなく、自分自身のためにそうしていたのだから。
だから私はこの場面、悠月とのやり取りで彼女をどう呼ぶべきか思い至ったのである。
望紅葉は魔王である
――――――望紅葉は魔王である、と。
『七瀬悠月』は友人を、そして自分自身を守るために彼女に立ち向かった。
そんな彼女をボスに立ち向かう『勇者』のようなポジションだとするのなら。
望紅葉は『魔王』ではないかと、そう思い至ったのだ。
そして『魔王』に挑んだ『勇者』は、完敗した。
突きつけた刃は通らず、返す刀でバッサリと切り捨てられる。
今まで築き上げてきた関係、居場所なんて思い込みにすぎない、と。
手を繋ぎ合い、仲良く停滞しているだけである、と。
そんなものは偽物の恋なのだ、と。
『勇者』と『魔王』の一騎打ちは、どうしようもないくらい『勇者』の完敗だった。
七瀬悠月は
『七瀬悠月』はチラムネという作品において屈指の人気ヒロインである。
非公式の人気投票で圧倒的な人気を誇り、誰を推すか非常に悩ましいヒロイン達の中であえて一番の推しを選ぶのであれば私も彼女を選ぶだろう。
そんな彼女は、致命的なまでの敗北を喫してしまった。
本物の恋を覚悟する『望紅葉』という少女の前に、悔しく、情けなく、恥ずべき敗北を。
だからこそ彼女は決めた。
『停滞』を打破し、『月を撃ち落とす覚悟』を。
動き出した彼女は、陽のライバルである東堂舞に「1 on 1」を挑む。
結果は、勝利だった。
どこまで食い下がれるのか知りたいだなんて、そんなことを考える陽を嘲笑うように。
彼女はたがを外し、鍵を開け、『停滞』を打破した。
『月を撃ち落とす覚悟』を決めた彼女は
――――――誰よりも、『魔王』らしかった。
―――は勇者である
こうして『勇者』と『魔王』の構図は反転する。
きっと『七瀬悠月』は、停滞に沈むこの状況に風穴を空け、混沌をもたらすだろう。
あくまで外側からかき乱しただけの、『望紅葉』とは比べ物にならないくらいに。
『望紅葉』との一騎打ちを経て彼女は大きく変貌した。
それは朔や他の仲間達と築き上げてきたものを失うかもしれない程の変化であり、メタ的に考えれば6.5巻に到るまでに『七瀬悠月』というヒロインが築き上げてきた人気を失うかもしれないほどの変化でもある。
けれど今の『七瀬悠月』に何かを失うかもしれないなんて恐れは無い。
あるのは本物の自分を魅せつけること、『月を撃ち落とす覚悟』なのだから。
では、『七瀬悠月』が『魔王』であるならば『望紅葉』は『勇者』なのか?
その答えはプロローグとあとがき、この二箇所に存在する。
プロローグ、ヒーロー見参と題された『望紅葉』の独白の中で最後にこう記されている。
―――今度は私が私のヒーローだ。
望紅葉が魔王であるというのは、物語を読む読者視点での話だ。
チーム千歳に心情的に寄りそってしまうからこそ、そう感じてしまう。
けれど彼女は徹頭徹尾自分のために動いた。
本物の恋を掴むために、自分自身のヒーロー
勇者
になるために。
そして同時に、『千年くんはラムネ瓶のなか』という作品に訪れた停滞を打ち破った彼女のことを作者はあとがきで『7巻における僕にとってのヒーロー』であると記している。
7巻が世に出るに当たっての立役者であるのならば、当然読者である我々にとっても、紛れもないヒーロー
勇者
に違いない。
最後に
この感想とも考察とも呼べないような駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
チラムネ7巻を読んで突発的に感想を書きたくなってしまい、突貫で書き上げたのが本記事になります。
内容としては読んでいる時に感じたことをあとがきから得た情報で肉付けしたものであり、正直なところ答えを見てから書いたようなものなんですよね。
例えば第二章までで感じていた、とした『停滞』もあとがきで明確に提示されたことで言語化できたもので、嘘ではないのですが自分の中では後出しっぽいなと思ったり……。
とは言え自分の書きたいことをどうにかぶつけられたのではなかいと思います。
まぁ『勇者』と『魔王』という作中どこにもない構造を持ってきてしまったことで半ば妄想に近いものとなってしまっており、申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが。
チラムネはターン制バトル、とはちょっと違うかもしれませんが今まではある程度担当巻という区切りがあったと思います。
基本的に表紙のヒロインを軸に物語が進んでいきますよね。
そして7巻の表紙は『望紅葉』であり、内容も彼女の担当巻と言っても良いものでした。
それでも彼女の担当と呼べるのは7巻において第三章以降だったでしょうし、その一部も悠月がかなり存在感を示していました。
言うなれば紅葉と悠月両者の担当とも言えるでしょう。
シンプルに考えれば次は悠月担当の巻になりそうですが、一人のヒロインにスポットを当てる構図から変えてくるのか、それとも悠月単独の真っ向勝負なのか。
物語の本筋にあたらない部分ではありますが地味に楽しみにしている部分でもあります。
この後はおまけとして何人か短めにキャラクターごとの感想を追記していきます。
記事本文としてはここまでで区切らせていただきます。ありがとうございました!
……それにしても、7巻最後の悠月の挿絵めちゃくちゃエおまけラムネ瓶のなかの月
7巻において主人公である千歳朔は停滞の中心だった。
きっとこの停滞は、誰よりも彼が欲したものなのだろう。
けれどその停滞は打ち破られ、動き出すのは避けられない。
停滞に甘んじることはもはや許されない、ラムネ瓶のなかに転がるビー玉を、月を撃ち落とす覚悟を決めた少女がいるのだから。
二度撃ち抜かれた停滞
青海陽は二度撃ち抜かれた。
一度目は紅葉に、二度目は悠月に。
7巻を通じて一番散々な目にあっていると言えるだろう。
陽は朔との間にある相棒という関係性と同時に、バスケットに向き合う自分という柱がある。
そのどちらもが、撃ち抜かれてしまった。
置き去りのままでは、いられない。
真反対の停滞
西野明日風は、先輩である。
後輩である望紅葉とは、2年生である朔達を間に挟んだ真反対の立ち位置だ。
きっと同じ時間を過ごせない煩わしさは、二人の間に違いはなかっただろう。
けれど明日風は『明日姉』のまま停滞し、紅葉は停滞を打破し春を巻き戻すことを選んだ。
真反対な中で、残された時間だけが真反対じゃない。
わがままになれない停滞
内田優空は停滞をもたらした。
やさしくて甘く、けれどそれがなければバラバラになっていたかもしれない停滞を。
その停滞の中でわがままになれずにいた彼女は撃ち抜かれた。
自分が望む普通は、特別にならないと手に入らないと知っているのに。
彼女だけが、撃ち抜かれなかった
柊夕湖だけが、撃ち抜かれなかった。
紅葉が撃ち抜いたのは、明日風、陽、優空の三人で、その後に悠月との一騎打ちがあった。
撃ち抜かなかったのか、撃ち抜けなかったのか。
単に悠月の後に回していただけかもしれない。
それでもきっと彼女が一番、停滞から遠かった。