2018年10月18日に公開された動画「#01」でYouTubeデビューを果たしてから、花譜は濃密な1年を過ごしてきた。アニバーサリーに届けられた花譜1周年記念特別番組『花と椿と君。』(期間限定放送・終了済)の中で、花譜は楽しそうにファンとの一問一答を行い、またクリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」の発足を通じて、今後多くの仲間たちと活動してゆくことが発表された。rockin'on.comでは、独自にメールインタビューを行い、花譜に歌声のこと、楽曲のこと、彼女自身のことなどを質問させてもらった。彼女のリアルな視界を共有してほしい。
インタビュー=小池宏和
──初めてのアルバム『観測』を聴かせていただきました。ご自身でも「現時点での私のすべてが詰め込まれているアルバム」と動画内で語っていましたが、今この作品に寄せる思い入れや、作品との距離感というのはどのようなものですか。
聴いていただきありがとうございます。自分の歌の入ったアルバムが出るということで、ずっと不思議な気持ちでいます。そしてアルバムに入っている曲は、全てカンザキイオリさんに作っていただいたのですが、本当に素敵でとても好きな曲ばかりで。とにかく必死に歌いました。
先日、活動1周年を迎えたのですが、活動初期にレコーディングしたものと今年に入ってレコーディングしたものでは、声もちょっとずつ変わってきている気がします。
花譜の成長?(してるだろうか……)歴史?が垣間見えるアルバムだと思います、きっと。
──歌うことが好きになったのは、振り返ってみるといつ頃からでしたか。思い出に残る楽曲や、エピソードがあれば教えてください。
うーん……気づいたら好きだった、という感じなんですけど。この前思い出したのは、家族のウォークマンを借りて(家族にアイドルがすごく好きな人がいて)元AKBの小野恵令奈さんの“えれぴょん”を一時期狂ったように聴いて歌っていました。その時初めて歌詞を覚えようとしたり、いい歌だなって感じたりとかして。その頃かなと思います。
──リスナーとしては、どのようなアーティストを好んで聴いてきましたか。
HoneyWorksが初めて自分から好きになったアーティストで、それからボカロを聴き出したり。次に『君の名は。』でRADWIMPSに心を揉みくちゃにされ、そこから邦ロックへと徐々にハマっていきました。あとはアイドルも好きです。雑食です。最近はCRYAMYというバンドに出会い、むちゃくちゃいいのでずっとCRYAMYを聴いています。
──プロのシンガーを志すようになったのは、いつ頃でしたか。きっかけになったエピソードがあれば、教えてください。
全然プロのシンガーを目指していたわけではなくて、でも自分が将来何したいんだって言われた時に、いちばんはやっぱり音楽に関わりたくて。でもそれってやりたいって気持ちだけじゃおそらく食べていけないじゃないですか。だから不安もあって。でも無理だって周りに言われるのも嫌で、人に音楽をやりたい!とはずっと誰にも言えないでいて……。
そんな中で音楽アプリで歌い始めて。いろんな声や歌い方の人がいて、そこで学ぶこともたくさんありました。
今となっては私の財産で思い出です。あと私、自分がこの世でいちばん歌が上手いと思っていた時期があったんですけど、それも呆気なく壊されました。とんだ思い上がりでした。
そのアプリを始めたおかげで今、運営さんに見つけていただいて、こうして歌を歌えているわけなので、本当に運命というか。今でも不思議です。選んでいただいたことを後悔させないよう、食らいついていきたいと思っています。
──花譜さんの歌声の、繊細なビブラートがとても魅力的なのですが、ご自身の歌声について、どのような印象を抱いていますか。
魅力的なんて! ありがとうございます。歌ってる声はなんか、自分でも面白いと思います。上手くできないことがたくさんあって、声を張るのとか苦手なんですけど、最近どうにか声量を上げることができるようになってきました。
なんでこの人はこういう風に歌えるのかとか、どっから出るんだろうこんな声!とか、この声があったら歌うの絶対楽しいなとか、嫉妬したり、ないものねだりしてしまうこともたくさんあるので、全然満足はできていませんが、嫌いじゃないです。
──2018年10月にYouTubeでの動画公開がスタートして、現在は15歳の高校生ということですが、バーチャルシンガーとして活動することになったいきさつを教えてください。
ある日DMが今の運営さんから突然きて、色々あったんですけど会うことになりました。その時にこんな界隈があるんだけど、試しにやってみませんか?という運営さんからの提案を受けて、挑戦したいと思いやらせていただいています。
──生身のリアルな花譜と、表情豊かな CGアバターの花譜とでは、どのような共通点があると思いますか。また、アバターの花譜を羨ましいと思うような点があれば、教えてください。
むずかしい……共通点はあまり真顔にならない所とかでしょうか。運営さんからは雰囲気とか空気が似てると言われたりするんですが自分ではわからない……。
羨ましいのは食べても太ったり体型が変わったように見えないことですね(笑)。
──動画を通じて多くのリスナーと触れ合ってきたと思いますが、バーチャルシンガーとしての活動の中で特に嬉しかったことは、どんなことでしょう。
たくさん人に自分の声を褒めてもらえて、すごく嬉しいです。
もっと聴いて、もっと聴いて!って思うんですけど、いざたくさん聴かれると、すごく恥ずかしい気持ちになったり。
私の初めてのワンマンライブ「不可解」の時にお手紙や絵をいただいたのですが、これを私のために、私のことを考えてお家とか新幹線とかで書いてくれたのかと思ったら涙が出ました。その人たちの中にちょっとでも私の歌が存在することができてすごく嬉しい!とも思いました。
15歳のバーチャルシンガー・花譜に急接近。彼女は今、何を思うのか。17の質問で迫る特別メールインタビュー!
2019.11.05 18:00 [PR]
──8月の初めてのワンマンライブでは、新鮮な気づきや驚きなどがありましたか。
こんなにたくさんの人が来てくれたのか……と思いました。Twitterトレンド世界1位にも「#花譜不可解」が入ったりして。こんなに注目されているのか!と驚きました。あとは、ずっとライブに行く側だったので、今までは自分の好きなアーティストのことしか頭にないままライブに行って帰ってきてたんですけど、本当にいろんな人たちの能力や協力が積み上がってひとつの素敵なライブとなるんだなあと身に染みて感じました。
──当初は【歌ってみた】動画からスタートして、“糸”以降はオリジナル楽曲のMVと並行して多くの音楽動画を公開してきましたが、カバー曲とオリジナル曲とでは、思い入れが違うものですか。
カバー曲は、自分の好きな曲を歌わせていただいてるんですけど、好きゆえに悩むことがたくさんあって。オリジナル曲は、自分の曲なので自分で1から考えて解釈して積み上げていかないといけないので、もっと悩むことがたくさんあります。どちらにせよたくさん悩むし、たくさん考えるし、たくさん好きなのであまり変わらないです。
でも、オリジナル曲は「これはカンザキイオリさんが私のために作ってくれた曲なのかー」と思うと、感謝の土下座をしたい気持ちになります。でもカバー曲もこんなに素敵な曲をこの世に生み落としてくれありがとう、と土下座をしたくなるので結局変わらないですね(笑)。
──受験のための一時活動休止が明けて、最初に披露されたオリジナル曲が“雛鳥”でした。初の投稿時からメロディの断片が公開されていた曲ですが、この曲に対する思い入れを教えてください。
まさかそこに伏線!って感じですよね。“雛鳥”はめちゃくちゃ最初のほうに1度レコーディングしていて、“糸”と同じタイミングだった気がします。本当にこれ私が歌っていいの?ってくらい素敵な曲しか書かないカンザキイオリさんは本当に最高です。
“雛鳥”には恋しい気持ちとか愛しい気持ちとかそういうのも入ってると思うのですが、なんせ15年しか生きていないもので実際の経験がなく。ほぼ妄想で歌ってるんですが、妄想癖もすごいので止まらないんです。それをどう表現するかっていうのも考えながら歌いました。
──カンザキイオリさんの手がける楽曲には、高度な音楽性だけでなく、とても生々しく入り組んだ心模様が込められていると思います。楽曲を通じて、人の感情の彩りを学んでいる感覚はありますか。
カンザキイオリさんは本当にすごいんですよ! 頭の中を少し覗かせて頂きたいくらい。
人の感情の彩り……むずかしい(笑)。
でも人が考えてることって、本当にちゃんと100パーセント理解するのはなかなかむずかしいと思うんです。
現実では漫画のように心の声が見えたりはしないし、私は人の表情から読み取ることもあまりできないタイプの人間なので、人のこと考えるのがめんどくさいなと思ってたりしたんですけど、歌を歌う時に、これはどんな気持ちなんだろう?とかわからないことがよくあって、自分で感じることだけじゃ限度があるなと悟りました。
周りの人だけじゃなくて、Twitterとか、本とか、映画とか、自分が観たもの聴いたもの全てを思い起こしてどう歌うか考えるのすごく楽しい!ってなって、他人は何を思ってるのか? どんな気持ちがあるのか? たくさん知りたい!と思うようになりました。
──アルバムのタイトル『観測』に込めた意図を教えてください。
たくさんの人に観測してもらったから花譜は花譜になったので、いちばん最初のアルバムはこの言葉以外あり得ないと、運営さんやカンザキさんとお話しして決めました。
ファンの方々を指す名称も観測者というんです。
──『観測』からは、戸惑い苦しみながらも、生きる道を探ろうとする歌の主人公=花譜の姿がより立体的に見えてくる気がしました。シンガーとして楽曲に命を吹き込むとき、どのような苦しみや喜びを経験してきましたか。
苦しい程のことはまだないですが前まではYouTubeのコメントとか見ててひとつ嫌い、ってコメントがあるだけでもそれだけがずっと心に残って気になってしまったり。
でも感性は人それぞれなのでしょうがないなと思って、今は気にならなくなったし、いいとか好き!って言って認めてくれる方がいるのが本当に救いだし、本当に嬉しくてたまらないです。あと、私がこだわって歌ってみたところに気づいてくれたりするのがとても嬉しいです。
──“不可解”の語り部分、《仮想世界とか、妄想だとか、そういうものこそ美しくなる。/ああなんだこの感情は、人間らしくない私だ。》という箇所は、バーチャルシンガーとしての存在意義を強く感じさせます。あなた自身、人の想像力の産物に惹かれる経験はありますか。
音楽だったり本だったり映画だったりお笑いだったりたくさんあります。たくさんの凄い人たちが生み出した歌や物語に影響を受けて今の自分があると思います。
──この質問表を作成しているときに、“エリカ”のMVが公開されました。個人的には『観測』の中でもとりわけ好きな1曲なのですが、この歌詞に綴られているように、人が成長することは痛みを知ることだとするなら、その痛みには価値があると思いますか。
私も“エリカ”好きです。痛みに価値があると思わないと、なんのために傷ついたかわからないし、報われないのでその痛みには意味があってほしいです。できるだけなくしたいものだけど。
──最後に花譜としての表現活動を続けていく中で、現時点での具体的な目標や夢は、どのようなものですか。
まずもっと歌が上手くなりたいです。目標は、どんな歌も自在に歌いこなせる人! あと楽器を弾きたいし、いつか自分でも曲を作れるようになりたいです。
もっとたくさんの人に私の歌を届けたいですね。夢は、憧れのラジオ番組に出ることです。
あとは私を好きって言ってくれる皆さんとお話をすることです。いつか叶えたいですね。
<収録曲>
1. 確信 -Instrumental-
2. 糸
3. 忘れてしまえ
4. 心臓と絡繰
5. quiz
6. Re:HEROINES
7. 夜行バスにて
8. 未確認少女進行形
9. 過去を喰らう
10. エリカ
11. 雛鳥
12. 夜が降り止む前に
13. 不可解
14. そして花になる
15. The end of prologue -Instrumental-
*収録曲は共通です。
提供:KAMITSUBAKI RECORD
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部
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