【日本小4道德】33#和保罗一起
ポロと一緒(和保罗一起)
作者:西山 香子(にしやま きょうこ)
僕の住んでいる町はこの間、大きな地震に襲われた。家が潰れ、道が割れて、沢山の人が避難所になっている小学校の体育館に避難した。お父さんとお母さんと僕の他に、ポロも避難所に連れて行くことになった。ポロは僕んちの三才になる柴犬。ポロの避難所は校庭だ。慣れないところでポロのことが心配だった。
(我所居住的城镇前段时间发生了大地震。房屋倒塌,路面龟裂,很多人在作为避难所的小学体育馆避难。父母和我之外,保罗也被带到了避难所。保罗是我们家三岁的柴犬。保罗的避难所在操场。因为是不习惯的地方,所以我很担心保罗。)
「しょっちゅう、様子見に来るから、いい子にしてんだぞ、ポロ。」
(“我会经常来看你的,要乖乖的哦,保罗。”)
ポロは僕についてきたそうにキュンキュン鳴いた。でも、皆が我慢、こんな時は。
(保罗呜咽着想要跟着我。但这时都要忍耐。)
避難所で暮らすうち、僕にはもう一つ心配が増えた。僕達の隣の場所で寝起きしているお婆ちゃんのことだ。全然知らない人だったけど、隣にいればやっぱり気になる。最初の晩、おにぎりやパンが配られた。お婆ちゃんは口をつけようとしなかった。毛布にくるまって横になったままだった。次の日もおにぎりが配られたが、お婆ちゃんは食べようとしない。おにぎりを渡そうとすると、「口をつけたら、捨てるしかないから、もったいない。」と言って、押し戻そうとした。
(在避难所生活的时候,我又多了一件担心的事,是生活在我们旁边的奶奶。虽然是完全不认识的人,但她在旁边,果然还是会在意她。最初的晚上,分发了饭团和面包。奶奶都不吃。她一直裹着毛毯躺着。翌日也分发了饭团,然而奶奶不打算吃。将饭团递给她的时候,她说着:“吃了的话就只能扔掉了,太浪费了。”并推了回来。)
「大丈夫。残ったら、ポロにちょうだい。」
(“没关系。吃剩下的话给保罗。”)
「ポロ?」
(“保罗?”)
「うちの犬だよ。今、校庭に避難してるんだ。残りが出たら、ポロは大喜びさ。」
(“是我家的狗。现在在操场避难。有剩的话,保罗会很高兴。”)
お婆ちゃんは、ようやくおにぎりを少し口にした。そして、「ワンちゃんにあげてちょうだい。」と、残りを僕に渡してくれた。僕は、すぐにポロのところへ持っていった。
(奶奶终于稍微吃了几口饭团。然后说着:“给狗狗吧。”并将剩下的饭团递给了我。我马上拿着饭团去了保罗那里。)
それから、お婆ちゃんは少しずつ食べ物を口にするようになった。残りは「ポロにあげて。」と、いつも僕にくれた。でも、お婆ちゃんは相変わらず、横になったままだった。お婆ちゃんは、ひとり暮らしで身寄りがないらしい。地震のショックと不安ですっかり元気をなくしているようだ。いくら、周りの人が、動かないと体に悪いからと運動を勧めても、お婆ちゃんはじっとしていた。
(这之后,奶奶稍微吃点东西了。她总是说“给保罗。”然后把吃剩的给我。但是,奶奶还是一直躺着。奶奶是独居,似乎没有家属。因为地震的打击与不安,完全没了精神。周围的人再怎么劝她说不运动的话对身体不好,让她运动,她都一动不动。)
いつものように、お婆ちゃんからもらった食べ物の残りをポロにあげていた時、僕は思いついた。お婆ちゃん、ポロといたら、ちょっとは元気が出るんじゃないかな。僕だってそうだもの。お母さんに怒られたり、友達と喧嘩をしたりして、面白くない時、ポロに色々聞いてもらうと、すうっとする。ポロは黙って聞いていてくれるもの。
(我一如既往的将从奶奶那里拿到的剩饭给保罗的时候,我想到了。说到保罗的话,奶奶好像稍微提起了点精神。毕竟我也是如此。被母亲骂了,和朋友吵架了,无聊的时候,都向保罗倾诉的话,会很轻松。保罗会默默地倾听。)
「お婆ちゃん、ポロがお婆ちゃんに会いたいって。」
(“奶奶,保罗说想见你。”)
お婆ちゃんがお昼ご飯の残りを渡してくれた時、僕は言ってみた。
(奶奶将午餐的剩饭递给我的时候,我如此说道。)
「ポロがお礼を言いたいんだってさ。いつも食べ物をもらっているお礼。会いに行ってあげてよ。お婆ちゃん、犬嫌い?」
(“保罗想要道谢,谢谢你总是给它食物。你能去见见它吗?奶奶讨厌狗吗?”)
「そんなことないよ。犬は大好き。去年までずっと、飼ってた。」
(“不讨厌。我最喜欢狗了,直到去年还养着狗。”)
「じゃあ、来てよ。」
(“那么,来吧。”)
僕が手を引っ張ると、お婆ちゃんは、つられるようにしてゆっくり立ち上がった。
(奶奶被我拉着手,缓缓站起来了。)
二人で校庭に向かうと、ポロが僕の姿を見つけて、ワンワン吠えた。
(我们俩朝操场走去,保罗看到我的身影后,汪汪地叫了起来。)
「ああ、柴犬だね。うちのドンちゃんによく似てる。」
(“啊,是柴犬。和我家的小东好像。”)
お婆ちゃんの顔が初めてほころんだ。
(奶奶第一次露出笑容。)
「ポロ、いつもご飯をもらっているお婆ちゃんだよ。」
(“保罗,这是总是给你饭的奶奶。”)
ポロは尻尾を振りながら、「お座り」をした。
(保罗摇着尾巴,“坐下了”。)
「あらあ、いい子だねえ。」
(“哎呀,真乖。”)
お婆ちゃんはご飯の残りを左手にのせて差し出した。ポロは食べ終わると、その手をぺろぺろ舐めた。お婆ちゃんは右手でゆっくりポロの頭を撫でていた。そのうち、笑顔がゆがんだかと思うと、その目から涙が盛り上がってこぼれた。
(奶奶将剩饭放在左手上递了出去。保罗吃完后,舔起了奶奶的手。奶奶用右手缓缓抚摸着保罗的脑袋。我还以为奶奶要笑了,但是她的眼中溢出了泪水。)
僕はそっとお婆ちゃんのそばを離れた。何だか、いてはいけないような気がしたんだ。お婆ちゃんは、ポロにだけ聞いてほしいことがあるんじゃないかって、何となく思った。あちこち地割れの出来た校庭で、ボールを投げる真似をしながら、お婆ちゃんの小さい背中を眺めていた。ポロは、黒いくりっとした目でお婆ちゃんを見つめているんだろうな。僕といる時みたいに。
(我悄悄离开了奶奶身边。总觉得我不能待在那里。我总觉得奶奶似乎有只想说给保罗听的话。我一边在到处都是龟裂地面的操场上模仿着投球的动作,一边眺望着奶奶小小的背影。保罗正用又黑又圆的眼睛注视着奶奶吧?就像和我在一起的时候那样。)
その日の午後、お婆ちゃんは横にならなかった。夕食が終わると、残ったものを持って立ち上がった。
(这日午后,奶奶不再躺着了。吃完晚饭后,她拿着剩饭站起来了。)
「ポロにご飯をやりに行こうかね。」
(“我去给保罗喂饭吧。”)
「よっしゃあ!」
(“太好了!”)
その晩、星の瞬き始めた校庭を僕はポロと一緒に走った。明日のポロの散歩は、お婆ちゃんも誘っていこうと思いながら。
(当晚,我和保罗一起奔跑于星星开始闪烁的操场上。想着明天邀请奶奶一起和保罗散步。)

