4月の食品値上げ5100品目超 物価上昇で新生活準備に影響も
新年度の4月、値上げする食品や飲料は5100品目を超えることが信用調査会社の調査でわかりました。ことし2月に次ぐ「値上げラッシュ」になるということで、調査会社は「頻繁で断続的な値上げの動きは10月ごろまで長引く可能性がある」と話しています。
また、物価の上昇は食品だけにとどまらず、進学や就職などで新生活を始める人にも影響を与えています。
「帝国データバンク」は国内の主な食品や飲料メーカー、195社を対象に先月31日時点の値上げの動きをまとめました。
それによりますと、4月に値上げされる食品や飲料は「再値上げ」や価格を変えずに内容量を減らす「実質値上げ」を含めて、5106品目となっています。
品目別で最も多いのは「加工食品」で、全体のおよそ4割を占めていて、具体的にはハムやソーセージのほか牛乳やバターといった乳製品などが値上げされます。
また、5月に値上げされる品目数は700余りですが、6月はカップめんやのりなど2390品目が値上げされる見通しだということです。
値上げのペースは、去年よりも加速しているということで、調査会社では、「原材料価格の高騰に加えて、輸入小麦の価格改定で今後、パンや麺製品の価格が上がる可能性もある。また、電気代の高騰も価格の上昇圧力の要素となり、頻繁で断続的な値上げの動きは10月ごろまで長引く可能性もある」と話しています。
2人以上の世帯 平均で年間約2万6000円負担増
4月以降の食品や飲料の値上げによって、2人以上の世帯では平均で年間およそ2万6000円負担が増えるという試算を民間の調査会社がまとめました。
信用調査会社「帝国データバンク」は、食品や飲料の値上げによる家計の負担額について、総務省の家計調査などをもとに調べました。
それによりますと、新年度=2023年度に値上げされる食品や飲料はおよそ9000品目に上る見込みで、2人以上の世帯では、前の年度に比べて1か月当たり平均でおよそ2140円、年間では平均およそ2万6000円負担が増えると試算しています。
値上げの動きが本格化した2021年度と比較すると、1か月当たり平均でおよそ3110円、年間では平均およそ3万7000円負担が増すと試算しています。
1か月当たりの増加額を品目別に見ますと、
▽購入頻度が高いソーセージやハムなどの値上がりによって、「加工食品」が723円と、最も大きくなっています。
続いて、
▽「酒類・飲料」が498円
▽「乳製品」が300円などとなっています。
試算をまとめた信用調査会社の担当者は「原材料価格の高騰や電気代の上昇で、今後、パンや冷凍食品といった購入頻度の高い食品が値上がりする可能性もあり、家計への負担がさらに増えるおそれがある」と話しています。
4月の主な値上げ食品
4月はハム・ソーセージや乳製品、酒類などが相次いで値上げされます。
主な家庭用の食品などをまとめました。
ハム・ソーセージなど
【日本ハム】
4月1日の納品分から順次、ハム・ソーセージなど283品目を値上げや内容量を減らす実質値上げ。
値上げ率は平均でおよそ10%、内容量を変更する商品では平均でおよそ11%減量となる見通し。
【伊藤ハム】
4月1日の納品分からハム・ソーセージなど161品目を値上げ。
値上げ率はおよそ5%から20%になる見通し。
【プリマハム】
4月1日の納品分からハム・ソーセージなどおよそ200品を値上げ。
値上げ率は5%から15%になる見通し。
【東洋水産】
4月1日の納品分や出荷分から生めんや魚肉ソーセージなどの302品を税抜きの希望小売価格などで5%から21%値上げ。
【マルハニチロ】
4月1日の納品分からさばの缶詰26品を値上げ。
値上げ率は参考小売価格でおよそ11%から23%になる見通し。
【尾西食品】
4月1日の納品分から順次、アルファ化米商品など53品を税抜きの希望小売価格や出荷価格で7.1%から18%値上げ。
乳製品など
【明治】
4月1日の出荷分や受注分から順次、ヨーグルトやプロテイン飲料、チーズなど201品を税抜きの希望小売価格や出荷価格で1.8%から13%値上げ。
【森永乳業】
4月1日の出荷分からヨーグルトやチーズなど107品を値上げ。
税抜きの希望小売価格がある商品は3.6%から28.9%の価格引き上げ。
また、ほかのチーズ6品で内容量を減らし、実質値上げ。
【雪印メグミルク】
4月1日の出荷分などからチーズやバターなどあわせて137品を税抜きの希望小売価格などで3.1%から19%値上げ。
【オハヨー乳業】
4月1日の出荷分から焼きプリンやヨーグルト16品目を税抜きの希望小売価格で5円から22円値上げ。
調味料など
【キッコーマン】
4月1日の納品分からしょうゆ、つゆ・ぽんず類157アイテムを希望小売価格でおよそ5%から16%値上げ。
また、豆乳や豆乳スープ56アイテムについても、希望小売価格でおよそ12%から16%値上げ。
【ヤマサ醤油】
4月1日の納品分からしょうゆや濃縮つゆなど業務用を含めた101品目を出荷価格でおよそ5%から12%値上げ。
【キユーピー】
4月1日の出荷分からマヨネーズ類やタルタルソースなど36品目を参考小売価格でおよそ3%から21%値上げの見通し。
【味の素】
4月1日の納品分からマヨネーズなど5品種を出荷価格でおよそ5%から9%値上げ。
菓子・生菓子など
【明治】
4月1日の出荷分からチョコレートやグミなど96品を出荷価格でおよそ5%から10%値上げ。
【日本ケロッグ】
4月1日の出荷分から「プリングルズ」のブランドのポテトチップス11品を値上げ。
15%から20%程度の価格引き上げになる見通し。
【ハウス食品】
4月3日の発売分から「とんがりコーン」などスナック菓子6品の内容量を減らし、実質値上げ。
【銀座コージーコーナー】
4月1日から洋生菓子と焼き菓子35品を税込みの本体価格で平均でおよそ8.6%値上げ。
いちごのショートケーキは税込み475円から496円に価格引き上げ。
【シャトレーゼ】
4月1日から9月にかけて、およそ150アイテムを税抜きの店頭価格で10円から30円、値上げ。
4月はケーキやシュークリーム、プリンなど18品を値上げ。
飲料など
【大塚製薬】
4月1日の納品分から「ポカリスエット」など28品を税抜きの希望小売価格で4.8%から15.2%値上げ。
【味の素AGF】
4月1日の納品分からドリップコーヒーなど18品種を値上げ。
店頭価格でおよそ15%から25%の価格引き上げになる見通し。
アイスクリーム
【ハーゲンダッツ ジャパン】
4月1日の出荷分からおよそ20品目を税抜きの希望小売価格で30円から74円値上げ。
ミニカップは税抜き295円から325円に。
酒類
【サントリー】
4月1日の出荷分から国産ワインと輸入ワインの91品目をカタログ価格で4.7%から29.7%値上げ見通し。
【キリンビール】
4月1日の納品分から「ジョニーウォーカー レッドラベル」といった輸入洋酒など16品目を値上げ。
店頭価格で7%から22%程度の引き上げになる見通し。
【アサヒビール】
4月1日の出荷分からワインや輸入洋酒、それにシードルの234品目を参考小売価格でおよそ3%から54%値上げの見通し。
【サッポロビール】
4月1日の売り上げ分から参考小売価格で国内製造ワインや輸入ワインの48アイテムを4%から37.5%、焼酎23アイテムを2.8%から5.3%値上げの見通し。
新生活の準備 節約につながる家電が人気

物価の上昇は進学や就職などで新生活を始める人にも影響を与えています。
横浜市港北区にある家電量販店には今の時期、新生活に必要な冷蔵庫や洗濯機などを購入しようと訪れる大学生や会社員などが多くなっています。
店によりますと、原材料価格の高騰などを受けて家電の店頭での販売価格は去年11月ごろから上がり始め、現在はその前に比べて5%から10%ほど高くなったものが多いということです。
こうした中、できるだけ節約につながる家電を買い求めたいという声が多く、洗濯の回数を少なくして消費電力を抑えられる容量の大きい洗濯機や省エネ性能の優れた冷蔵庫などが人気を集めているということです。
海外勤務から戻ってきたという横浜市の20代の女性は「節電できるといった高性能な家電がいいですが、値段が気になるので自分の財布と相談しながら商品を見ていきたい」と話していました。
また、結婚したばかりだという20代の男性は「冷蔵庫を買い替えにきました。食品が値上がりしているので、安い価格の時に購入して保存できる容量の大きい冷凍庫や、省エネにつながる商品がほしいと思います」と話していました。
「エディオン日吉店」の宇高信也主任は「今後も家電の値上がり傾向が続くとみられるので、早めの購入を呼びかけています。来店者の減少などはまだみられていないが、買い控えのおそれもあるので動向を注視していきたい」と話していました。
教育現場にも値上げの余波 授業料上げる学習塾も

川崎市中原区にある学習塾では小学生から高校生までを対象に個別指導を行っていて、およそ20人の児童と生徒が通っています。
塾によりますと、授業で使う問題集は1割程度、コピー用紙は2割余り、去年と比べて値上がりしました。また、電気代の負担も去年と比べて大幅に増えたといいます。
このため塾では先月、授業料を3%から5%程度、1教科あたりの教材費を2割から3割程度値上げしたほか、電気代などに充てるため毎月、徴収している維持費を1500円から2200円に値上げしました。
中学生の娘が通う40代の母親は「費用が上がるのは納得しているが、できればこのままで維持してほしい。節約を意識しながら生活していきたい」と話していました。
一方、塾ではコスト削減の取り組みも進めています。
これまでは授業内容を報告するため、保護者に書類を配っていましたが、紙の使用量を減らすため、オンラインで報告できるシステムを先月から導入しました。
新年度の前後は、塾に入る子どもが1年で最も多い時期だということで、塾ではコスト削減と新しいサービスで生き残りを図ろうとしています。
英数学院の長江広紀代表は「このままだと経営的に厳しくなるので、値上げは必要不可欠だった。付加価値をつけていかないと生き残れないので、これから新しいものをどんどん取り入れていきたい」と話していました。