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平泽进《AURORA》专辑内页乐评两篇——原文+翻译

2023-04-07 17:52 作者:21pilots_Creeper  | 我要投稿

元型ポップの洗練

AURORA解说

高橋かしこ(ファッシネイション)

 91年5月リリースの『ヴァーチュアル・ラビット』以来、 オリジナル・アルバムとしては2年9か月ぶりとなった 第4作。というと充電期間であったかのようだが、この間、 平沢進は活動休止中だったP-MODELを“解凍”させ、 P-MODELとして2枚のオリジナル・アルバムやヒストリー・ ヴィデオをリリース。全国ツアーも行った。ソロ名義では 『デトネイター・オーガン』のサウンドトラック3作、イメー ジ・アルバム『グローリー戦記』といった新作のほか、 ベスト・アルバム『魂のふる里』もリリース。さらにはドキュ メンタリ番組「カムイ・ミンタラ 神々の遊びの庭・阿寒」 (北海道テレビ制作)のサウンドトラックを担当し、ソロ・ コンサートも行っている。あまっさえ戸川純のアルバムに 参加したり、新人TAKAのプロデュースをしたりと、充電 どころか尋常ではない働きぶり。その間にこの 『AURORA』のレコーディングを行っているわけである。 おそらくはP-MODELとしてデビューしてからの35年間 で最も忙しい時期だったのではないか。

平沢自身が[P-MODELの活動と差別する意味も含めて サウンドより歌を重視した」と語るヴォーカル・アルバム。 平沢進はこの時期においても自身の楽曲の魅力は「上手い 「歌」を聴かせることではなく、あくまで「いい声」であること が重要と自己分析したうえで、以下のように述べている。

「鎮西さん(エンジニアの鎮西正憲)のヴォーカル処理って いうのをものすごく高く評価しているんです。派手なもの ではなくて、地味なものの積み重ねなんですけど、仕上が りがとても素晴らしい」(リットーミュージック『サウンド& レコーディング・マガジン』1994年4月号より)

『AURORA』は、次作『Sim City]のような「大転換」こそ なかったものの、初期(統合)3部作からタイ・レコーディング 3部作への橋渡しとして、極めて重要な作品である。簡単に 言ってしまえば、前3作の集大成であり、新しい音楽スタイルへ移行するための環境整備(準備・実験・検証 が行われている。

まず、制作環境としては、シーケンサ専用機から Amigaを使った音楽製作システム(当時はDTMと呼ばれ たが、いまで言うところのDAW)へ移行。ヴォーカルと ギター以外は、生演奏を排除し、まさにデスクトップで 制作されることとなった。当然のことサウンドも前作 からは変化し、シンプルでありながらも、バンド的な アレンジからは離れた、現在の平沢サウンドに通じる オーケストレイションやストリングス·アレンジが試みら れるようになった。このあたりは、別稿で『サウンド& レコーディング・マガジン』の國崎氏が解説してくれて いるはずである。

この音楽制作環境は、ライヴともリンクしている。 『AURORA』リリースの2年前、1992年9月23日に 渋谷公会堂で行われた「Hi-Res」は初めて平沢進が 「完全ソロ」として行ったコンサートで、ステージに平沢 以外のメンバーはなく、そのかわりにAmigaが導入され た。この「Hi-Res]をさらに発展させたのが、本作リリース 後のツアーとして初めて行われたインタラクティヴ・ライヴ である。Amigaによって音楽だけでなく映像もコント ロールされる双方向型マルチメディア・コンサートで、 システムは変更しつつも現在ではインタラクティヴ・ ライヴが平沢進の「デフォルト」となっている。

平沢自身がヴォーカル・アルバムと位置づけているだけ あり、歌詞もまたいかに平沢のヴォーカルが響くかという 「音」だけで選ばれているような、物語性や意味性を 極力排除した抽象度の高いものが多い。曲名もしかり。 中心となっているのは自然や自然現象、象徴(ユング心理学 でいうところの元型的イメージ)としてのそれら。これでも かといわんばかりに韻を踏みまくった[LOVE SONG]にし ても、天、雨、陽、空、花、風、波、といった単語が随所に散りばめられている。ちなみに平沢進の作詞作業で有用 なのがアト・ド・フリースの「イメージ・シンボル事典』 だそうである。

そうした意味では、アルバム・タイトル[AURORA』が すべてを表しているし、オーロラ自体ではなくオーロ ラを発生させる太陽フレアをあしらったジャケットも 秀逸だ。

●石の庭「AURORA」

収録曲らしい象徴的なタイトルで「思い 出している」という出だしからして元型イメージをたどる かのよう。「鳥」「無敵の羽」「聖なる火」「空「水」「奇 跡の波」「山」「雨」といった単語が続く。

●LOVE SONG

 「オーロラ」とともにアルバムの印象を決定づけている曲。 P-MODELの[Chevron」をヒントにアルバム制作の初期 に作曲され、仮タイトルが[NICE SONGだった歌詞のない デモ段階でディレクターの竹内氏が[LOVE SONG」とい うタイトル案を出した。1993年10月11日の日比谷野 外音楽堂「ERROR OF INFORMATION待機」でい ち早く披露されている。韻を踏んだ歌詞が印象的だ が、歌詞はなかなか難産であったらしく、初期ヴァー ジョンでサビはすべて「TO KEEP LOVE SONG」と 歌われていた。誰から誰へ向けた[LOVE SONG」である かは聴く者に委ねられている。平沢進の楽曲にキリスト 教的世界観を感じることはないが、この曲にはアガ ペーのような「無償の愛」を感じてしまう。そうした普 遍性をもったLOVEである。

●オーロラ

平沢進はオーロラを見てこの曲をつくったわけではない。 あくまで「内なるオーロラ」を歌っているわけである。 そもそも「窓にオーロラ」というフレイズには初期段階 では「空のハルディン」というまったく異なる詞が当て られており、いわば「続ハルディン・ホテル」のような内容 だった。サビだけ抜き出すとなんだか平沢らしからぬ 人生応援歌のように聴こえるかもしれないが「今は夜が 歌う時」というフレイズこそ重要である。「キミ」は「眠 りへと船出」しているのであり「願いは叶う」のはあく まで「今は」なのである。「胸をすく混沌」なんて平沢進 以外の誰が歌うというのか。

●力の唄

この曲も早くにできあがり、前出の[ERROR OF INFORMATION待機(P-MODEL再凍結ライヴ)」で演奏 された。胡弓や尺八っぽいフレーズを使ったエスニックな アレンジはアイヌ民謡をアレンジに織り込んだ「カムイ・ ミンタラ」を想起させる。「月の夜は虫たちの弟子となり」 と自然を歌った一節と「キミを迎えたくて」という一節の 不釣り合いなところが面白い。平沢進の歌う「キミ」が 女性を思わせる場合はアニマ元型の要素が強いが、 この曲はその例と言えるだろう。

●舵をとれ

イドの奥底から湧き上がるかごとき力。バッキングには 前出「カムイ・ミンタラ」のデータが利用されているとか。 「まだ眠らぬキミ」「オーロラの無念の色」というフレイズは 「眠りへと船出するキミ」「窓にオーロラ」(オーロラ)に 呼応している。また「モンゴルの鬼火」は「エルモの火」 (石の庭)と呼応しているとも思える。「カオスの蝶」はカオス理論の「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が 起こる」バタフライ効果のこと。この土着的な荒々し い力は「BERSERK-—Forces-一」へと受け継がれる。

●スノーブラインド

 雪原にいると天地の境さえわからなくなることがある。 加えて寒さがひどいと現実感が希薄になり、自我同一性が 崩壊しそうになる。取材時に「雪になりそうになった 経験なんてないでしょう」と言ったら「いや、ありますよ」との 答え。もちろん、実体験を作品化したわけではないが、 ドキュメンタリ番組「カムイ・ミンタラ 神々の遊びの 庭・阿寒』の取材で真冬の阿寒へ行った体験がヒント になったと思われる。

●風の分身

「際立つキミ」という冒頭の1フレイズでやられてしまう 平沢でしかありえないナンバー。平沢進の敬愛する詩人に 宮澤賢治がいるが、この曲もイーハトーヴォの世界に 通じるものがある。世界観や価値観といった面でも 平沢への賢治の影響はうかがえる。

●広場で

元型イメージが炸裂するかのような夢的光景の連続。 「高く聳えた塔」「夜更けの広場で」「黄金の船は来る」 「土を掘り」「また埋めて」「大きい戸は開く」「塔から船は 行く」「遅れはとってはバツ」—これらはまさに「燃え るようなデジャブ」である。なんどもなんども夢で見た 感覚がよみがえる。こんな詞を書けるミュージシャンは、 平沢進以外には知らない。

●トビラ島 (パラネシアン・サークル) 

Dedicated to Tangerine Dreamというクレジットが 表すように、タンジェリン・ドリームをモティーフにした曲。 「タンジェリン・ドリームで歌ものをやったらどうなるか」 という実験であったが、本人は失敗と評価した。サブ・タイ トルはポリネシアン・トライアングルのもじりと思われる。 個人的には諸星大二郎の『マッドメン』シリーズの主題歌 として最適。2010年11月10日リリースのセルフ・カヴァー・ アルバム『変弦自在』でリメイクされ、2011年1月に「凝集 する過去還弦主義8760時間」フィナーレとして SHIBUYA-AXで行われたライヴでも本篇ラストで大 フィーチュアされた。Nengの民族舞踊とスタンド・マイク で絶唱する平沢が忘れられないリスナーも多いだろう。

●呼んでるベル

言葉遊びのような韻律。「麗しの声がして」「鼻のき く大オロチが火を吹いたり」という一節からは「姫奪還 の物語」の元型イメージが浮かぶ。第1回インタラク ティヴ・ライヴ「オーロラ伝説」は、まさにオーロラ 姫を救う物語であった。

初期(統合)3部作を通じて平沢が生み出した「元型 ポップ」は、この『AURORA』で手法が総括・洗練され、 一応の完成を見た。そして、タイで衝撃的な新しい 元型イメージと出会った平沢進は、次の『Sim City. でさらにスタイルを発展させていくこととなる。

 

元型ポップの洗練

AURORA解说

高橋かしこ(ファッシネイション)

《AURORA》是距离1991年5月发布的《Virtual Rabbit》两年零九个月后的第四张原创专辑。这段时间里,平泽进“解冻”了处于活动停滞状态的P-MODEL,作为P-MODEL推出了两张原创专辑和历史回顾视频,并进行了全国巡演。以个人名义,他除了发行电影《Detonator Orgun》的三部原声带和形象专辑《Glory Chronicles》之外,还发行了精选辑《灵魂故乡》。此外,他还担任了纪录片节目《神々的嬉戏之庭·阿寒》(由北海道电视台制作)的原声带,并进行了个人音乐会。他还参与了戸川純的专辑制作,担任新人歌手TAKA的制作人等等,他的工作量非常之大。在此期间,他还录制了《AURORA》。这可能是自P-MODEL出道以来的35年间最忙碌的时期了。

平沢自己分析表示,这张专辑是一张更加注重歌声而非音乐的,意味着与P-MODEL的活动有所区别的歌唱专辑。他认为自己音乐的魅力不在于唱得好,而在于声音好听。他在这个时期深入思考后得出以下结论:

「我非常高度评价鎮西先生(工程师鎮西正憲)对于歌声的处理。虽然不是华丽的东西,但是是通过平凡的积累得到的成果,成品非常出色。」(引自《Sound&Recording Magazine》1994年4月号,LITMUSICS出版社。)

《AURORA》是一张非常重要的作品,虽然没有像下一张作品《Sim City》那样进行了“大转变”,但作为从早期(综合)三部曲到泰国录音三部曲的桥梁,它是非常重要的。简而言之,它是前三张专辑的集大成,也是为了转向新的音乐风格而进行环境整备(准备、实验、验证)的过渡。

首先,在制作环境方面,从专用音序器转向使用Amiga音乐制作系统(当时称为DTM,现在称为DAW)。除了人声和吉他之外,所有乐器都被排除在外,这些音乐作品完全是在桌面上制作的。当然,从前作到现在,音色也发生了变化,虽然简单,但是尝试了与乐队式的编排不同,更接近现在的平沢音乐风格的管弦乐和弦乐编排。在这个问题上,应该有另一篇文章,由《Sound & Recording Magazine》的國崎氏进行解释。

这个音乐制作环境与演唱会有联系。在发行『AURORA』两年前的1992年9月23日,平泽进第一次作为“完全独奏”的音乐会在涩谷公会堂举行,除平泽进外没有其他成员,相反引入了Amiga。这个“Hi-Res”被进一步发展为本作品发行后的巡回演唱会,也是首次进行的互动式演唱会。这是一个双向多媒体演唱会,不仅音乐而且视频也由Amiga控制,虽然系统发生了变化,但现在互动演唱会已成为平泽进的“默认”演唱会。

这里所说的平沢自身的歌曲是以他的歌声为中心的专辑,歌词选择主要考虑到平沢声音的共鸣,而不是为了创造故事情节或者意义深刻的歌词。这些歌曲的抽象程度非常高。甚至包括曲名也是这样。这些歌曲的中心内容都是关于自然和自然现象,以及它们作为象征(根据荣格心理学中的原型图像)的意义。即使是像「LOVE SONG」这样韵律极强的歌曲,也会随处添加天、雨、阳光、天空、花、风和海浪等单词。顺带一提,据说在平沢进的作词过程中,「Atu-de-Furisu」的「图像和象征事典」非常有用。

从这个意义上来说,《AURORA》专辑标题就代表了一切,而不是代表极光本身,专辑封面上使用太阳耀斑来制造极光的设计也非常出色。

●石の庭

从开始就有着“回忆”的象征性标题,例如“鸟”、“无敌的羽毛”、“神圣的火”、“天空”、“水”、“奇迹的波浪”、“山”、“雨”等词语紧随其后,仿佛在追溯原型意象。

●LOVE SONG

这首歌与《极光》一起决定了整张专辑的印象。在制作早期,根据P-MODEL的《Chevron》的启示,这首歌曲就被创作出来了。在没有歌词的演示阶段,导演竹内先生提出了“LOVE SONG”这个标题案。它在1993年10月11日的日比谷野外音乐堂“ERROR OF INFORMATION”上早早地被公开展示出来。歌词很有印象,但是似乎很难产生,早期版本的副歌都是“TO KEEP LOVE SONG”。这首歌是写给谁的“爱之歌”由听众自己决定。虽然在平沢進的音乐中并不会感受到基督教的世界观,但这首歌让人感受到了像阿加佩一样的“无私之爱”。这是一种具有普遍性的爱。

●オーロラ

这首歌并不是平沢进看到极光后才创作的。实际上,他唱的是“内在的极光”。最初阶段,“窗前的极光”这个短语被赋予了完全不同的歌词,“空的哈尔丁”,可以说是“续哈尔丁酒店”的内容。如果仅仅取出副歌,可能会听起来像是平沢进独有的人生励志歌曲,但“现在是夜在唱歌”的短语才是重点。因为“你”正在“驶向梦乡”,所以“愿望实现”的是“现在”。“胸中混沌”的歌词是只有平沢进才能唱出的。

●力の唄

这首歌早在很早的时候就完成了,并在之前提到的P-MODEL再次冻结演唱会“ERROR OF INFORMATION WAITING”中演奏过。使用胡弓和尺八等乐器的民族风格编曲让人想起将阿伊努民谣融入编曲的“卡姆伊·明太拉”。其中一句歌词“在月光下成为昆虫的学徒”和“想要迎接你”的不协调之处很有趣。虽然平泽进所唱的“你”在一定程度上让人想到女性,但这首歌可以说是该元型的一个例子。

●舵をとれ

从伊底深处涌出的力量如同笼子一般。据说在伴奏中使用了之前提到的《卡穆伊·明塔拉》的数据。短语“仍未入眠的你”、“极光的无念之色”呼应着“启程前往梦乡的你”、“窗外的极光”(极光)。另外,“蒙古的鬼火”也可以看作是与“埃尔莫的火”(石之花园)呼应的。而《混沌之蝶》则指的是混沌理论中的“北京的蝴蝶振动引起纽约的暴风雨”蝴蝶效应。这种土著的粗犷力量被传承到《BERSERK-—Forces-一》中。

●スノーブラインド

在雪原上,有时甚至分不清天地的界限。此外,寒冷也会让现实感变得淡薄,自我认同也会崩溃。采访时,当问及“你没有经历过几乎要变成雪的经历吧”时,得到的回答是“不,我有啊”。当然,并不是将亲身经历直接作为作品,但在记录片《神的游戏之庭 阿寒》的采访中,前往严寒的阿寒时的经历成为了启发。

●風の分身

这首歌是只有平泽进才能演绎的歌曲,让人在开头的一句歌词“突出的你”中迷失了自我。平泽进敬爱的诗人宫泽贤治,这首歌也有着通往伊哈托沃世界的东西。从世界观和价值观的角度来看,宫泽贤治对平泽进的影响可以看出来。

●広場で

这些歌词像是一连串梦幻般的场景,充满了原型意象。如「高耸的塔」「在夜晚的广场上」「黄金之船来了」「挖掘土地」「再次埋葬」「大门打开了」「从塔上船只离开了」「追赶时间以弥补错过的机会」——这些恍若重生的感觉总是在梦中反复出现。除了平沢進,我不知道还有哪位音乐人能写出这样的歌词。

●トビラ島 (パラネシアン・サークル) 

这首歌曲以"Tangerine Dream"为主题,正如所表明的那样。 这是一次“用Tangerine Dream的风格唱歌”的实验,但本人评价其为失败。副标题可能是对波利尼西亚三角洲的变形。个人认为它非常适合作为漫画家諸星大二郎的《疯狂的人》系列的主题曲。在2010年11月10日发行的翻唱专辑《変弦自在》中被重新制作,在2011年1月的"凝聚过去回旋主义8760小时"作为SHIBUYA-AX演唱会的大结局中得到了重要的特别安排。平泽进在使用了Neng的民族舞蹈和手持麦克风时唱得很动情,这一点是许多听众难以忘怀的。

●呼んでるベル

从像言葉遊び一样的韵律中可以感受到,“麗しの声がして”、“鼻のきく大オロチが火を吹いたり”等一节中呈现出了“姬夺还的故事”原型的意象。第一次互动现场演出“极光传说”正是一个拯救极光公主的故事。

平沢在早期(综合)三部曲中创造的“原型流行”在《AURORA》中总结并精炼了其技法,并初步完成了。之后,平沢进一步发展了他在泰国获得的震撼性的新原型形象,在下一张专辑《Sim City》中探索更多风格。

 

「タンジェリン・ディレイ」で目指した先

AURORA●サウンド解説

國崎晋(サウンド&レコーディング・マガジン)

初期三部作でソロ・アーティストとしての新たな像を 完べきなまでに提示した平沢進。そんな彼が次に向かっ たのは、凍結していたP-MODELを解凍する作業で あった「ソロはソロとしてのタッチを維持して、その対極に あるテクノをP-MODELでやってみようと思った」と当時の インタビューで語っている通り、またバンドがやりたく なったというより、あくまでテクノをやるための器、別名義が 必要になったからにほかならない。しかし、解凍した P-MODELで作り上げたアルバム、その名も 『P-MODEL』は、平沢が当初目指していたサウンドと は違うものだった。

  [P-MODELを解凍したときに何をやろうと思ったかと いうと、タンジェリン・ドリームだったんです。もちろん、 そのままやるんじゃなくて、ポップな形にして、リズム隊が あるもの。でも、できなかった……それでいったん断念 したんですけど、それをソロでやろうとしたんです」

  タンジェリン・ドリームとは1960年代後半にドイツで 結成された電子音楽グループ。呪術的なシーケンス・ フレーズが特徴で、クラフトワークとともに後のテクノに 多くの影響を与えた存在だ。平沢はソロになるときに “歌えるヴァンゲリス”というテーマを掲げていたが、今度は “歌もののタンジェリン・ドリーム”という新たなテーマを 設定したわけだ。だが、P-MODELでなし得なかった このテーマは『AURORA』でも挫折する。

  『AURORA』に入っている全部の曲で、“歌ものの タンジェリン・ドリーム”という手法を試したんですが、 全部駄目でした。でも未完成かもしれないけど、その 気持ちをこのアルバムのどこかで成就させたいなと 思ってやったのが「トビラ島(パラネシアン・サークル)」な んです」

  13分を超える大曲「トビラ島(パラネシアン·サークル)」は このアルバムの中でも異色の存在だ。不気味なSEと が始まり、つぶやくような歌と絶唱が永遠に繰り返され るかと思えば、後半では細かなシーケンス・パターンが フェード・インし、疾走感とともに曲を別次元へと連れ 去っていく……。確かに『フェードラ』など1970年代の タンジェリン・ドリーム作品をほうふつさせるドラマ ティックな作品だが、同じ手法をアルバムすべての曲に 適用するのはどう考えても無理だったろう。

  ただ、諦めたとはいえ、タンジェリン・ドリーム的な 要素は『AURORAI』収録曲の端々に残っている。分かりや すいのはシーケンス・パターンに16分音符のディレイを かけつつ、付点8分音符のところにアクセントを付ける 手法で、不思議なことにそれだけでタンジェリン・ドリーム 的な世界が現われてくる。そのディレイを作り出していた のが、Amigaで走らせていたMIDIシーケンス・ソフト Bars & Pipes Professional:だ。

  それまでMIDIシーケンサーにはYAMAHAのQX3 という専用機を使用していた平沢だが、本作からは COMMODORE社のコンピューターAmiga2500を使 うようになる。当時のプロ・ミュージシャンが音楽用として 使っていたコンピューターは、NEC PC-9800、APPLE Macintosh、ATARI1040STが主で、Amigaを使う ミュージシャンなど皆無であった。そもそもCG用として 導入した平沢だが、Bars&Pipes Professionalという MIDIシーケンス・ソフトが優秀であったため音楽用と しても使い始める。その名の通りMDI信号を水道管の 中を通すように途中で枝分かれさせたり逆流させたり …すなわち分割したりリバースしたりと、リアルタ イムでさまざまな加工ができるソフトで、現在のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)的な用語で言えば、“MIDIエフェクト・プラグイン”『AURORA』に入っている全部の曲で、“歌ものの タンジェリン・ドリーム”という手法を試したんですが、 全部駄目でした。でも未完成かもしれないけど、その 気持ちをこのアルバムのどこかで成就させたいなと 思ってやったのが「トビラ島(パラネシアン・サークル)」な んです」(デジタル・オーディオ・ワークステーション)的な用語が充実して いたのだ。そのMIDIエフェクトの1つとして平沢は先 のディレイを設定して“Tangerine Delay”と名付け、 「トビラ島(パラネシアン・サークル)」のほか「石の庭」「ス ノーブラインド」などで使用している。

  このような痕跡はあるものの、“歌もののタンジェリン・ ドリーム”というテーマは崩れさった。だが、そのことが このアルバムを“平沢史上最も歌を大切にした作品” へと昇華する。ソロを始めたときはそれまでの P-MODELとの対比を考え、徹底的に音数を多くする 戦術を採っていたが、本作では“いい歌なのかどうか”を すべてにおいて優先し、ボーカル・テイクの厳選はもと より、オケも歌を引き立たせるために徹底的にブラッシュ・ アップ。結果としてストリングスがこれまで以上に フィーチャーされることになった。

  「とにかくロックっぽいビート感からはずれたものに しようと思ったんです。リズムにはまっていく感覚よりも、 潮の流れに身を任せて漂っていく仕上がりにね。だから、 ビートものが減って、ギターも減って、ストリングスが 増えた。ストリングスの清涼感と暗さと重さはすごく 好きです……さわやかなだけじゃなくて暗く重くない と駄目なんですけどね」

  だが、そのストリングスは生ではなく、すべてサンプラー /シンセサイザーによるものだ。

  「生はコントロールが難しいんです。確かに出来栄えは いいんですけど、僕の頭の中にあるストリングスの音 は大きなホールで鳴らしたもので、スタジオの中でそ れを再現するのは難しい」

  これまでサンプラーによるストリングスをメインにまったく生を使わずに作ってしまったのだ。アルバムの 制作前、生を使わないという決断が下されたころに 筆者は平沢から相談を受けた……いい音のストリン グスが入っている音源はないか?”と。迷わず、当時 プロの間で評判になっていたProteus/2という音源モ ジュールを薦めた。Emulatorで知られるサンプラーの 名門E-MUが発売した、オーケストラ楽器に特化した 音源モジュールだ。筆者の推薦を信じ、平沢は Proteus/2を購入。果たして数カ月後に出来上がった 『AURORA』は素晴らしいストリングスサウンドに彩 られていた!得意気な顔をして、アルバム発売時の インタビューで開ロー番「Proteus/2、大活躍でした ね?」と尋ねたら、「いや、あまり」と答えられ拍子抜 けした。結局、愛用していたAKAI PROFESSIONAL S900の後継機S1100でこれまで作りためていたス トリングスのサンプルを再生する方法に落ち着き、 Proteus/2はせいぜいピチカートに使ったくらいだった という。細かく尋ねていくと、ベースやパーカッション 用にも使ったとのことで、無駄な買い物というわけで はなかったが、何とも申し訳ない気持ちでいっぱい になってしまった……。

  そんな筆者の気持ちはともかく、本作でのストリングス は平沢が頭の中に思い描いた通りの音像を結び、絶妙 な塩梅で歌をサポートしている。さらに、これも新たに 導入されたROLANDのシンセサイザーJD-800によ るくぐもったパッドが楽曲に深みを与え、先の “Tangerine Delay”は律動感をもたらす。確かに派手 さはないかもしれないが、その分、飽きの来ない長く 聴ける作品となっているのだ。曲良し、歌良し、サウンド 良し……まさに三拍子そろったアルバムであり、平沢 作品で何がベストかと尋ねられれば、筆者はずっと “『AURORA』です”と答え続けている。

 

 

 

 

「Tangerine Dream」的目标

AURORA●音效解说

國崎晋(サウンド&レコーディング・マガジン)

 

在他的早期三部曲中,平沢進作为一个独立艺术家展示了一个全新的形象。接着,他的下一个目标是解冻被冻结的P-MODEL,如他当时在一次采访中所说:“我想保持独奏风格的同时,在P-MODEL中尝试相反的电子音乐。” 这并不是因为乐队想要再次活动,而只是因为他需要一个不同的名义去做电子音乐。然而,由解冻的P-MODEL制作的专辑,名为“P-MODEL”,与平沢最初追求的声音有所不同。

 

当解冻P-MODEL时,平沢進原本打算做什么呢?他说:“是想做橘子梦(Tangerine Dream)的。当然,不是直接模仿,而是做成流行形式,加入鼓点等元素。但是,我没做出来……所以我暂时放弃了,但之后我打算以个人名义尝试做出来。

 

“タンジェリン・ドリーム”是在1960年代后期在德国成立的电子音乐团体。其特点是使用咒语般的音序和短语,并与Kraftwerk一起对后来的Techno产生了很大的影响。平泽进在成为独立音乐人时提出了“能唱的Vangelis”的主题,而现在他设定了一个新的主题:“歌曲化的Tangerine Dream”。然而,在P-MODEL中无法实现的这个主题也在《AURORA》中受挫。

 

平沢進在『AURORA』专辑中的所有曲目中都试过“歌曲风格的Tangerine Dream”的手法,但全部都失败了。不过,虽然可能还没有完成,但他想在这张专辑的某个地方实现那种感觉,所以创作了《扉の島(巴拉内西亚之圈)》这首曲子。

这首超过13分钟的大曲《扉之岛(巴拉尼西亚之圈)》是该专辑中异色的存在。从不可思议的SE和低语般的歌声开始,似乎永远重复着歌曲和高歌,但在后半段,细致的序列模式淡入,将歌曲带到另一个维度……确实,这是一部充满戏剧性的作品,让人想起了1970年代的《飞德拉》等橘子汽水音乐的作品,但想将同样的手法应用于整张专辑的所有曲目中显然是不可能的。

尽管已经放弃了,“歌もののタンジェリン・ドリーム”的元素仍在《AURORA》的歌曲中留存。其中最明显的是一种手法,即在序列模式上添加16分音符的延迟,同时在附点8分音符处加重重音。奇怪的是,仅仅这样就可以呈现出类似于“橘子梦想”的世界。创造这种延迟的软件是在Amiga上运行的MIDI序列软件Bars & Pipes Professional。

此之前,平泽一直使用雅马哈的QX3专用设备作为MIDI序列器,但从这张专辑开始,他开始使用COMMODORE公司的Amiga2500计算机。当时,作为专业音乐家使用的计算机主要是NEC PC-9800、APPLE Macintosh和ATARI1040ST等,几乎没有使用Amiga的音乐家。虽然最初是用于计算机图形,但是由于MIDI序列软件Bars & Pipes Professional非常出色,因此平泽开始将其用于音乐制作。正如其名字所示,该软件可以像将MIDI信号传递到水管中一样,在中途进行分支或反向流动,即分割或反向等,可以在实时处理中进行各种处理,这类似于现在的数字音频工作站(DAW)术语中的“MIDI效果插件”。在《AURORA》中的所有曲目中,平泽尝试了“唱歌风格的Tangerine Dream”这种技巧,但全部都不成功。但是,他想要在这张专辑中的某个地方实现这种技巧的想法,促使他创作了《Tobira Island (Paranesian Circle)》这首歌。作为这些MIDI效果的其中之一,平泽设定了所谓的“Tangerine Delay”,并在《Tobira Island (Paranesian Circle)》、《石の庭》和《Snow Blind》等曲目中使用了它。

虽然有这样的痕迹,但“歌曲版的Tangerine Dream”这一主题已经崩溃了。不过,这一事实将这张专辑提升为“平沢历史上最重视歌曲的作品”。当他开始独唱时,为了与之前的P-MODEL相对比,他采取了彻底增加音数的策略,但在这张专辑中,“好歌曲”在所有方面都优先考虑,从严格挑选唱片到为了突出歌声而彻底打磨管弦乐。结果,弦乐器比以往更受关注。

 

「我想做出与常规的摇滚节奏不同的东西。而是让人感觉像漂流在潮流中,而非被节奏带动。所以,节奏少了,吉他也少了,弦乐增加了。我很喜欢弦乐的清凉感和暗沉重厚的感觉……不仅是清新的感觉,而且没有暗沉重厚的感觉也不行啊。」

 

但是,那些弦乐器的声音并非真正的演奏录制,而是由采样器和合成器创造出来的。

 

「实际上,现场演奏的难度很高。虽然效果确实很好,但我心中的弦乐声是在大音乐厅里响起的,要在录音室里复制它很困难。」

 

这个人之前一直使用采样器制作了所有的弦乐器音效,没有使用真实乐器演奏。在专辑制作之前,他决定不使用采样器,并向平泽寻求建议,问道:“你知道有哪些好听的弦乐器采样吗?”不犹豫,他向平泽推荐了当时备受专业人士推崇的音源模块Proteus/2。这是E-MU公司推出的一款专注于管弦乐器的音源模块,E-MU以Emulator采样器而闻名。平泽相信了他的建议,购买了Proteus/2。数月后,他们制作出了被美妙的弦乐器音效所装点的专辑《AURORA》!当被问到“Proteus/2,表现出色了吧?”时,平泽显得很沮丧地回答说:“不是很好。”他最终决定使用AKAI PROFESSIONAL S900的后续机型S1100来播放之前已经制作的弦乐器采样,Proteus/2最多只用于弹拨音效。虽然他也用于贝斯和打击乐器,但这并不是多余的购物,但他仍然感到很抱歉。

 

在本作中,无论如何,平泽以他脑海中想象出的声音将弦乐音像绑定在一起,并以恰到好处的方式支持歌曲。此外,由ROLAND的合成器JD-800引入的低沉的音色为乐曲增添了深度,而先前的“Tangerine Delay”则带来了节奏感。虽然可能没有太多夸张的元素,但作品因此变得不仅好听而且能长时间听下去。好曲、好歌、好声音……这绝对是一张三拍子完美的专辑,如果被问到平泽的作品中最好的是什么,笔者会一直回答“‘AURORA’”。

 


平泽进《AURORA》专辑内页乐评两篇——原文+翻译的评论 (共 条)

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