【日本の名随筆】月見草 山之口貘
月见草
原作:山之口 貘
翻译:胖熊猫

現在のところに住んで、まる六年になる。東京都練馬区なのであるが、山手線の池袋駅からは、私鉄で十五分くらいのところで、まだまだたんぼ①や畑②など私鉄の窓からもながめられて③、いわゆる④武蔵野を感じないではいられないのだ。
①たんぼ:水田
②畑(はたけ):旱田
③眺める(ながめる):眺望
④いわゆる:所谓的
在现在这个地方已经住了整整六个年头。虽然说是东京都的练马区,从山手线的池袋站乘坐私铁的话也不过15分钟左右,但沿途从私铁的车窗依旧能看到许多的田地,可谓是武藏野的田园气息扑面而来。
ぼくの住んでいる家のすぐ前には、舗装道路がはっていて、石神井、新橋間のバスやその他の自動車が昼夜走っている。その道路を左へ百メートルほども行くと左右がたんぼになって、人家がまばら⑤で、むこうには八幡さまの森が見え、そのずっとむこうに秩父方面の山脈がながめられるのだ。
⑤疎ら(まばら):稀疏
我所住的房子的面前便是一条铺装好的马路,往返于石神井和新桥间的公交车,还有一些其他的小汽车日夜川流不息。沿着马路往左边走大约100米之后,左右两边便全是农田,只有稀疏的几户人家,远远地可以看见八幡神社的森林,而森林的更远处还能望见秩父那边的山脉。
今年も、また、例によって⑥、庭には月見草が咲き⑦出し⑧た。この家に、ぼくの一家が来たころは、まだ家主⑨さんの家庭菜園なのであったが、まもなく⑩もと⑪の庭になって、月見草も今年で五回目の花を咲くわけである。
⑥例によって:一如往常地
⑦咲く(さく):开花
⑧~出す(だす):开始......
⑨家主(いえぬし):屋主
⑩まもなく:不久
⑪元(もと):原来的
今年也是一如往常地,院子里的月见草开出了花来。这个院子,在我家刚搬进来的时候,还是之前的屋主弄的家庭菜园,但没过了多久就变回了原本的庭院,而月见草算上今年也已经是第五次开花了。
ぼくは、生活上のいろいろの事情⑫で、原稿を書くのは夜なのだが、夏になると、机⑬の前のガラス戸をあけて仕事にかかる。すると、スタンド⑭のまわりに、様々の虫が寄って⑮くるのだ。蚊はもちろんのこと、カブトムシだのカナブンだの、ガだのアシナガだの、それにクモまでが原稿紙をのぞき⑯に寄ってくるのである。これらの虫達はなにも、ぼくの仕事を邪魔する⑰つもりで生きているのではなかろうが、ぼくにしてみれば⑱腹の立つことで、残念⑲ながら、愛情をもって虫達を迎えることが出来ないのだ。それどころか⑳、はなはだ㉑残酷なことをしないでいられなくなったりして、むきになって㉒しまって、虫達の生命をどれほど奪い去った㉓かも知れないのである。
⑫事情(じじょう):原由
⑬机(つくえ):书桌
⑭スタンド:台灯
⑮寄る(よる):靠近
⑯覗く(のぞく):窥视
⑰邪魔する(じゃまする):妨碍
⑱~にしてみれば:在....看来的话
⑲残念(ざんねん):遗憾
⑳それどころか:甚至还....
㉑(甚だ)はなはだ:非常地
㉒むきになる:较真
㉓奪い去る(うばいさる):夺去
我因为生活上的种种原因,写稿的事情都放在了晚上。而到了夏天的时候,我便会将书桌前的窗户打开来干活。结果就是各种各样的虫子都向着我的台灯聚集了过来。蚊子自然不用说了,什么独角仙呀、金龟子、飞蛾、长脚、就连蜘蛛也都来窥看我的原稿。虽说这些虫子活着也不是为了妨碍我的工作,但对于我来说却是一件恼人的事情,很遗憾地,实在是无法心怀喜悦地迎接他们的到来。甚至乎不知道曾多少次怒火上头的时候,非常残忍地夺去了他们的性命。
しかしながら㉔、月見草からは、いつもベンタツ㉕されて来た。前には月見草といえばセンチメンタル㉖な花だとおもっていた。夕方㉗になると、月見草はそのからだをふるわせ㉘ながら、黄の花をひらくのだが、夜なかになっても、ぼくの仕事がはかどらず㉙、四苦八苦㉚の揚句㉛、ペンをおいて一服している㉜ときなど、ふと庭に眼をやると、月見草はまったく素晴らしいのだ。夜になって眼を覚して、さかんに㉝生きているとでもいいたいながめ㉞で、ぼくなどもおなじ仲間みたいに親し味㉟を感じ、勇気づけられるのである。
㉔しかしながら:但是
㉕鞭撻(ばんたつ):鼓励
㉖センチメンタル:伤感的
㉗夕方(ゆうがた):傍晚
㉘震わせる(ふるわせる):使震动
㉙捗る(はかどる):进展顺利
㉚四苦八苦(しくはっく):非常辛苦
㉛揚句(あげく):结果、最后
㉜一服する(いっぷくする):抽烟
㉝盛んに(さかんに):旺盛地
㉞眺め(ながめ):景色
㉟親し味(したしみ):亲切感
但是,从月见草这儿,我却是总是能够得到鼓舞。一直以来,我都觉得月见草是一种令人伤感的花。每到了傍晚时分,月见草都会抖动着她的身姿,绽放出黄色的花朵。然而到了夜深,当我因为工作不顺利而深深苦恼,最后只能抛下手中的笔,摸出烟来抽着的时候,不经意地视线落在的庭院里,就会见到那月见草是那么的美丽。看着这让人半夜也会清醒过来的充满生命力的景色,我仿佛感觉到了一种有如伙伴一般的亲切感,内心里一股勇气油然而生。
仲間といえば、縁㊱の下にもいるのである。大きなガマなのだ。縁側に出て、外の空気を吸っていると、ガマがおもい出しては歩きおもい出しては歩きしているのを見かけるのだ。そんなときかならずぼくは、カナブンを捕って、それをガマに投げあたえる。ガマはしかし、用心深い㊲みたいに、すぐには食わない㊳のだ。一足ずつ静かに近寄って、適当な距離に来ると、じっとカナブンを見守っている㊴のだが、死んだものは食えぬとでもいうのか、カナブンが身動きするのを見届けて㊵はじめて、ぺろっと㊶食ってしまうのだ。
㊱縁(えん)・縁側(えんがわ):套廊
㊲用心深い(ようじんぶかい):小心谨慎
㊳食う(くう):吃
㊴見守る(みまもる):守护
㊵見届ける(みとどける):见证
㊶ぺろっと:一口吃掉
说起伙伴,套廊底下也有一位。那是一只硕大的蛤蟆。在我从套廊走到院子里呼吸新鲜空气的时候,总会看到一只蛤蟆在那儿走走停停的。每当这个时候,我便会抓一只金龟子来,扔给那蛤蟆吃。但是,那蛤蟆似乎是非常小心谨慎的性格,总是不会马上就吃。一脚一脚地无声地靠近,等到了适当的距离,就会一直盯着那金龟子看,也不知道是不是它不吃死掉的东西,总是要等见到金龟子动了,它才会大口一张地将它吃进肚子里面。