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【花家世子×星隕文司宥】帰路(※日本語)【花亦山心之月】

2023-03-28 19:38 作者:Lilas_Official  | 我要投稿


 晴れた冬の朝。

 凌府の中庭は相変わらず積もった雪が解けず、日光に照らされたらキラキラ光を反射していた。

    まだ卯の刻だというのに、文司宥は予定もなく無駄に早起きした。庭は何度も歩き回っていたから杖はいらない、と思った彼は下駄だけで部屋から出た。

ほんの少し梅の花が香るこの庭に軟禁されるようになって早くもひと月が経つ。最初の頃は弟の文司晏、たまには花家世子や凌晏如が手配した医者が毎日何人も訪れていたが、そのうち数日に一人、今となっては全く来なくなった。

     まったく、本人より諦めがつかなくてどうする?

文司宥は診てもらう度に心の中で苦笑し、そう呟いていた。

今や、身の回りの世話をしてくれる花家世子以外に、彼を訪ねる者がほとんどいない。まだ同文行行長だった頃の文司宥が想像もつかない暮らしだった。

後ろから誰かが来た。と、文司宥は察知した。

   「文先生、お体が冷えますよ」

     花家世子は上着を文司宥に羽織って、そう言った。文司宥の目が見えなくなった後、花家世子がわざわざ宣京一流の職人に作ってもらった、銀河と満天の星が宿った羽織。

    「文某はそんなに貧弱じゃありません」

    それは嘘だ。

    あの事件以来、文司宥は目が見えなくなっただけではなく、体はいつもどこかしら具合が悪かった。服薬と心身の疲労で飯もろくに喉を通らず、だいぶやせ細ってしまった。花家世子ももちろんそのことは分かっていて、それでも「はい、はい」と笑い飛ばしました。

   この一ヶ月間、文司宥の世話をずっとしていたが、花家世子は全く苦だと思っていない。むしろ一度こっそり連れ出して、勢いで川に突き落としたあと、風邪を引かせてしまったことをずっと申し訳なく思っていた。本人がいくら気にしていない、楽しかったと言っても、だ。

   強いて言えば、苦労していたことは実はある。それは、文司宥に抱くあるまじき感情と葛藤に悩まされていたことだ。明雍書院に入学して以来、文司宥とのかかわりは途絶えることがなかった。はじめは厄介で意地悪な先生、そのうち自分に害を及ぼそうとしている狡猾な商人。誤解が解けた後一度命を救われたこともある。いずれにしても先生と家主という目上の立場であったが、今回は自分も家主となり、そして光を失った文司宥の世話係をしていた。毎日一緒にいる時間がとても長く、むろん体の接触もかなり増えて……それが厄介だ。

    今の文司宥はまるで地上に落ちた星だ。信頼しているからこそそばにおいてくれたというのに、自分の下心に気づいてしまったらさぞかしがっかりするだろう。花家世子はそう思って、あくまで生徒として文司宥に接するように努めていた。

   「もうすぐ春が来る」

   文司宥は独り言のように呟いた。どこか、寂しそうに。

   ああ、そうだ。春が来る。その一言だけで花家世子は春の野原を思い浮かべた。この庭も春になれば美しい花が咲いて、鳥が囀るだろうが、それでも花家世子は文司宥と野原を一緒に歩きたかった。もう目に焼き付けない春の景色に、自分の姿を映したかった。

   「文先生、ここから出ましょう」

   花家世子はようやく決意し、そう言った。

   文司宥には彼の顔や眼差しが見えないが、きっと自分に顔を向けて、真面目な顔で言っていたのだと分かっていた。彼は一瞬きょとんとしたが、すぐに微笑んで「ええ、頼みます」と言った。

 

   あとで花家世子から事情を聞いた凌晏如は特に反対しなかった。彼はただ「気を付けるんだ」の一言だけ忠告した。宣京での後始末は彼がする、という意味。

   国庫を空にされた宣行之は最近、宣京の土木工事を進めためになんとか金をかき集めようと必死だった。同文行がもう役に立たない以上、協力する意思もなさそうな文司宥の身柄はもはやどうでもよくなった。放っておいても大した問題にはならないだろう、という蔑みもきっとどこかにあった。一方、承永帝が実質皇位を放棄したあと、摂政王となった宣行之は朝廷の無能な官僚たちを一気に下野させたのはいいが、その結果朝政を処理できる人間がほとんどいなくなったのが現状だ。この状況下で、くだらないことで凌晏如と険悪になってしまうのは割に合わないことぐらい宣行之は知っている。だから凌晏如から文司宥を行かせたと報告された時、宣行之は「そうか」としか言わなかった。

 

 

   文司宥は花家世子と一緒に南塘に帰ることにした。

   弟の文司晏は越陽の本家のほうで処理しなければいけないことが山積みで、兄の世話をする余裕がありそうもなかった。それに、文司宥は最近ようやく目が見えないことを受け入れ始めたというのに、今すぐ本家という慣れた環境に戻ってしまい、かつて大景一番の財力を誇った文家家主の姿と重ねたら、彼は果たしてどう思うのだろうか。

   かれこれ考えて、花家世子は文司宥を南塘に連れて帰ることにした。馬車で南塘へ向かっている最中、花家世子は宣京に入った後の出来事と文司宥の現状、そして彼をしばらく南塘花家に住まわせたいことを二通の手紙に記し、それぞれ加急伝書で本家と、兄や玉沢がいる寒江宛てに出した。これで自分たちが南塘に到着する前に、木微霜と林珊はすでに状況を把握できる。そして、何より気が利く二人のことだから、きっと文司宥を受け入れる準備を事前にしておいてくれるはず。

   木微霜と林珊といえば、宣京へ旅立つ前に急に妙な比べっこを始めたのが覚えている。季家がいいのか文家がいいのか、まるで嫁選びじゃないか。いや、二人ははなからそのつもりだったのかもしれない。あの時は冗談半分で「両方もらったって良くないか」なんてほざいたが、まさかあのあと文家がこんな仕打ちに遭うなんで、誰が想像できるのだろうか。

   馬車の心地よい揺れで、文司宥は宣京も出ていないうちにうとうとし始めた。朝早すぎる起床が仇となり、耐えられずに文司宥は花家世子の肩に寄りかかり眠っていた。花家世子は小狐のようにすやすや眠る文司宥の髪をそっと手で撫でて、自分も睡魔に襲われるまではこの穏やかな寝顔をずっと眺めていようと思った。

   「なあ、微霜」

   花家世子は思った。

   「どうしよう。お前の嫁選び基準からすれば、今の文家はきっと論外だろう。けど僕はさ、少し本気になっちゃったみたいだ」

   

   馬車が揺れる。騒がしい宣京の景色を置き去りにして、ずっと、ずっと南のほうへ走っていく。

 


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