【日本小5道德】30#熊的理所当然
熊の当たり前(熊的理所当然)
作者:魚住 直子(うおずみ なおこ)
子熊が一頭、ふんふん、鼻歌を歌いながら、森を歩いていた。
(一只小熊一边哼着歌,一边走在森林中。)
少し先の木の根元に、黒っぽいこんもりしたものが、横たわっている。見かけたことのある雄熊が、背中を丸め、横向きで倒れている。まぶたは開いているのに、何を見ているか分からないような暗い目をしてじっとしている。体は地面と同じ冷たさだ。
(在稍微前面一点的树根旁,横卧着一团黑色的圆滚滚的东西。见过的公熊蜷缩着,向侧倒着。它一动不动,眼眸睁开着,发暗的眼睛好似在盯着什么。它的身体如同地面一样冰冷。)
どきっとした。これは死んでいるんじゃないか。死んだ熊を見るのは、初めてだ。
(小熊吓了一跳。这是不是死了?它第一次看到死熊。)
子熊は駆け出した。急いでねどこに戻ると、兄ちゃんの熊にしがみついた。
(小熊跑了起来。它赶紧回到巢穴,紧紧抓住了哥哥。)
「怖いよう。死んだ熊を見たの。動かなくて、冷たかった。」
(“好可怕啊。我看到死熊了。一动不动,身体冰凉。”)
見たことのある雄熊だったと話すと、兄ちゃんは頷いた。
(它说了是见过的公熊后,哥哥点头道。)
「何が怖いんだよ。あの雄熊は凄く長生きだったんだ。それに誰でも死ぬんだぜ。」
(“有什么可怕的。那只公熊已经活了很久了。而且谁都会死。”)
次の朝になっても、子熊は、死んだ雄熊のことが忘れられなかった。
(就算到了翌日,小熊也忘不掉死去的公熊的事。)
そのうち、僕も、ああなってしまうんだ。そう思うと、何をする気持ちにもなれなかった。どうせ死ぬのに、なんで生まれてきたんだ。段々腹が立ってくる。こんなことなら、熊なんかじゃなくて、死なないものに生まれたかったよ。
(我以后也会变成那样啊。它如此考虑道,什么都不想做了。反正都要死,为什么会出生呢。它渐渐火大了起来。早知道这样的话,就不当熊了,作为不会死的东西出生就好了。)
兄ちゃんは皆死ぬって偉そうに言ったけど、森は広いんだもの、死なないものだって、一つくらいあるに決まってる。子熊はぶつくさ言いながら、森を歩き出した。
(哥哥虽然很自以为是地说大家都会死,但是森林很宽广,肯定存在一样不会死的东西。小熊一边嘟哝着,一边在森林中走着。)
子熊は、どんどん歩いて、森の外れまでやって来た。そして、崖の上の草っぱらに、大きな石があるのに気が付いた。頭の中でぴかんと光った。(これだ!)
(小熊不停地走着,来到了森林的尽头。然后,它注意到了悬崖上的草地上有一块大石头。它的脑海中灵光一闪。就是这个!)
「石さん。僕は見ての通り熊なんだけどさ、君みたいな石になりたいんだ。どうやったら石になれるか、教えてくれないかな。」
(“石头。我正如你所见的这样是熊,但是我想成为你这样的石头。怎么样才能成为石头,能告诉我吗?”)
その時、石から微かに声が聞こえた。
(这时,传来了石头微弱的声音。)
「……教えてやるのだ。」
(“……我告诉你。”)
低くて、ざらりとした声だ。
(它的声音低沉而又粗糙。)
「本当?どうすればいいの?」
(“真的吗?要怎么做?”)
「……そこにひっくり返って、じっとしていればいいのだ。」
(“……只需静静地躺在这里。”)
石のようにじっとして、空を見上げていると、ゆっくりゆっくり雲が動いているのが分かった。子熊は嬉しくなってきて、ふんふん鼻歌を歌い始めた。途端、石の声がした。
(它像石头一样一动不动地仰望着天空,发现云缓缓地动着。小熊高兴地哼起了歌。这时,响起了石头的声音。)
「石は、歌わないのだ。」
(“石头不会唱歌。”)
子熊は慌てて歌うのをやめた。
(小熊赶紧停下了哼歌。)
足が痒くて掻いても、お腹が空いて腹が鳴っても、眠くなって目をつぶっても、何かをしようとするたびに石にぴしゃりと言われるので、子熊は、我慢しながらずっと動かないでいた。気が付くと、夕方になっていた。空の端がオレンジ色に変わっている。
(就算脚痒挠了,就算肚子饿得咕咕叫,就算困得闭上了眼,每次无论想做什么,都会被石头严厉地说教,因此,小熊忍耐着一动不动。回过神来时,已经是傍晚了。天空的尽头变为了橘色。)
「綺麗だなあ。」
(“好美啊。”)
子熊は、呟いた。すぐに石が言った。
(小熊嘟哝道。石头马上说道。)
「石は呟かないのだ。」
(“石头不会嘟哝。”)
「でも、綺麗だなって、思うくらいはいいでしょ。」
(“但是总会想想好美吧?”)
「石は、綺麗だと思わないのだ。」
(“石头不会觉得美。”)
空が暗くなり、星が光り始めた。もう星を見ても綺麗だと思わなかった。疲れてどうでもよくなってきたのだ。僕は、このまま、本当に石になるのかも知れない。
(天空暗下了,星星开始闪烁。小熊就算看到星星已经不觉得美了。因为它疲惫得觉得其它事都无所谓了。我这样下去也许真的会成为石头。)
その時、声がした。
(这时,响起了一个声音。)
「おうい、どこだあ。」
(“喂,你在哪里?”)
兄ちゃんの声だ。子熊は、はっとした。石が、子熊の気持ちが分かったように言った。
(是哥哥的声音。小熊惊了一下。石头似乎是知道了小熊的想法,说道。)
「石は、誰にも会いたくないのだ。」
(“石头不想见任何人。”)
兄ちゃんの声がどんどん近づいてくると、涙だけがぽろぽろ流れた。
(哥哥的声音渐渐逼近,唯有眼泪簌簌流下。)
「石は、泣かないのだ。」
(“石头不会哭。”)
でも、止められなかった。そのうち、喉の奥がひくひく、言い出した。
(但是,眼泪止不住了。渐渐地,它哽咽了起来。)
兄ちゃんは、その音を聞きつけて、子熊を見つけ出した。
(哥哥听到这声音后,找到了小熊。)
「こんなところで、何してるんだ。」
(“你在这里做什么?”)
その途端、子熊は飛び起きた。
(这时,小熊跳了起来。)
「僕、足を掻きたくて、歌いたくて、お腹が空いて、眠くて、兄ちゃんに会いたかったんだ!」
(“我想挠脚,想唱歌,肚子饿了,想睡觉,想见哥哥!”)
泣きじゃくりながら言うと、兄ちゃんが笑い出した。
(它抽泣着说道,哥哥笑了出来。)
「そんなこと、全部出来るよ。お前は足を掻いて、歌って、食べて、寝て、俺に会える。」
(“这些事你全都能做。你能挠脚,唱歌、吃饭、睡觉、见我。”)
子熊も泣きながら笑った。
(小熊又哭又笑。)
「さあ、帰ろうぜ。」
(“好,回去吧。”)
行きかけたが、子熊はちょっと待ってと、石のそばに戻った。兄ちゃん熊に聞こえないよう、小さな声で言った。
(刚要走,小熊说等等我,然后回到了石头旁。用哥哥听不到的声音,小声说道。)
「石になるのはやめとくよ。死ぬのは今でも怖いけど、それでも熊の方がいいって分かったんだ。」
(“我不当石头了。虽然我现在也害怕死亡,但是我觉得还是当熊更好。”)
石はもう二度と口をきかなかった。
(石头不再开口了。)
やがて熊のお尻が二つ並んで、森の中へ消えていった。
(最后两只熊并排着消失在了森林中。)

