徒然草 第56段 久しく隔りて逢ひたる人の、・吉田兼好 日文念书

久しく隔りて逢ひたる人の、我が方にありつる事:しばらく会わないでいた人に暫くぶりで会ったとき、一方的に自分の話を聞かされるのは、。
あいなけれ:興のさめること 。
隔てなく馴れぬる人も、程経て見るは、恥づかしからぬかは:<へだてなくなれぬるひとも、ほどへてみるは、はずかしからぬかは>と読む。どんなに親しい間柄であっても、暫らく会わずにいると遠慮がちになるものだ。
つぎざまの人は:無教養な人。
あからさまに立ち出でても:ちょっとそこいらに外出してきた、というのですら。「あからさま」は古語では、ちょっとした、の意に使われる。
今日ありつる事とて:今日こんなことがあったよと言って、。(あるいはまた「興ありつる事とて」の誤りか? )
いとらうがはし:騒々しい。ここでは、喋る方が「よからぬ人」であるだけでなく、それを聞く方も「よからぬ人」なのであろう 。
人の身ざまのよし・あし:他人の人品骨柄の良悪についての話題。そういう話題で自分を例にするのは見苦しい、ということ。
才ある人はその事など定め合へるに:<ざえある・・>と読む。学才のある人が、才能に関する話題を論ずるにあたって、。「定め合へる」のは、論評すること。
己が身をひきかけて言ひ出でたる、いとわびし:自分のことを引き合いに出して話したりするが、あれはどうも聞いていて良い気持ちがしないものだ。