元乃木坂46 井上小百合が小学校の新米教師に「子どもたちに元気をたくさんもらいまし
元乃木坂46のメンバーで、現在は女優として活躍する井上小百合が映画『ラストサマーウォーズ』(6月24日(金)よりユナイテッド・シネマ入間で先行公開後、7月1日(金)から全国にて公開)に出演する。本作は、自主映画の製作に奮闘する小学生のひと夏を描いた青春ジュブナイル映画。そのなかで、井上は子どもたちを見守る小学校の若手担任教師を演じている。役へのアプローチ方法、子どもキャストとのエピソードや共演者についてなど話を聞いた。
──夏休みの自由研究として映画製作に励む子どもたちの姿を描いた映画『ラストサマーウォーズ』。井上さんは、子どもたちをサポートする映画好きの担任、土方先生を演じられています。先生役を演じるうえで意識した部分はありますか。
井上 土方先生は新米教師で、結構ミスや抜けているところがある子なんです。教師としてしっかりとした人、というよりは子どもたちにとっては一番近い存在。学校という教育の場で一番親身になってくれる大人なんじゃないかなと思って、子どもたちとのコミュニケーションを大事に演じていきました。
最初は子どもたちも緊張していて、どういう風に距離を縮めていこうかなと思ったんですけど、宮岡(太郎)監督が一緒に話しかけてくださったり、子どもたちと話す場を作ってくださったりして。「好きなテレビ番組はなんですか?」というようなことから話しかけて(笑)。ちょっとずつ打ち解けていきました。
──演じる土方先生との共通点、似ている部分を挙げるとしたら?
井上 子どもたちに向かって「こんなところでボーっとしていないで遊びな!」というセリフがあったんですけど、わりと私もそういうアクティブなタイプ。お休みの日があったら、とにかく遊びたい方なので、自然体で演じることができたかなと思っています。
あとは、映画好きという部分も共通点ですね。空き時間に監督と今年観た面白かった映画の話題で盛り上がったり、お互いにおすすめの作品を教え合ったりして。楽しかったです。
──演じるうえで監督からリクエストされたことはありましたか。
井上 そこまで具体的な指示はなかったと思います。宮岡監督は「いいですね!」とすごく褒めてくださる方。例えば、私が寝坊しちゃうシーンでハッと電話を取って「忘れてました!」と髪をかき上げたら「それ、いいですね!」とすぐ採用してくださったりして。一つ一つ、お芝居のいいところを見つけて褒めてくださるので、逆に「これで大丈夫かな」と心配になるほどでした。
──撮影現場で印象に残っていることは?
井上 とにかく子どもたちがかわいかったです!ロケバスで移動するだけなのに、子どもたちは遠足みたいに毎日楽しそうに現場に向かうんです。アイスを食べるシーンがある日なんて、朝から「何味のアイスかな~」って。すごくかわいくて。純粋に撮影を楽しむ気持ちにハッとさせられましたし、子どもたちに元気をたくさんもらいました。
──この映画をどんな方に観てもらいたいですか。
井上 最初に台本を読んだとき、子どもたちのまっすぐさをおもしろおかしく表現している部分に楽しさを感じると同時に、そんな子どもたちの姿を見て周りの大人たちも成長していく、という過程がすごく素敵だなと思ったんです。子どもたち主体でかわいくて面白い、というだけじゃなくて大人が観てもいろいろ感じるものがある深い作品だなって。
私の演じる土方先生には、もともと映画監督になりたかったというバックボーンがあります。紆余曲折あって今は教師の仕事に就いているという人なんですけど、夢半ばで諦めてしまったという過去があるので、まっすぐに映画を作りたいという夢に向き合う子どもたちを見ながら、もう一度自分を見つめ直していくんですね。
だから、土方先生のように何か憧れや夢があったけど、いろんな壁にぶつかったり、環境的に難しかったりで諦めてしまった人に観てもらいたいなと思います。大人になると現実的になってしまう部分もあるけど、この映画は「何かまだ出来るかもしれない」と自分の人生を振り返れる作品になっているのかなって。あとは、お子さんを持つ親御さんにも観ていただきたいです。「あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ」っていうのは、果たして子どもを守る正しいことなのか。そういったメッセージも詰まっています。
──土方先生のセリフもメッセージ性が強く、子どもたちの心に刺さるものが多かったように思います。なかでも、子どもたちが土方先生の言葉に奮起して「やるっきゃない!」と言い合うシーンが印象的でした。井上さんが最近「やるきゃない!」と思ったことを教えてください。
井上 いっぱいありますね。最近、自分のことが少しずつ分かってきた気がするんですけど、そのなかでも伸ばしていきたいなと思うところを具現化して、もっといろいろやってみたいと思うようになったんです。そのためにも、自分をまず整えることをやらなくちゃいけないなって。朝昼晩ちゃんとしたご飯を食べるとか、必ず朝日を浴びるとか。1日の終わりに嬉しかったことや感謝したことをノートに書いて寝るとか。いろんなことに「やるっきゃない!」と思って過ごしています。
あと、この映画に感化されてテナーサックスの教室に通い始めました。そういえば、私も諦めていたことあったなと思って。学生時代にテナーサックスをやっていたんですけど、当時、ジャズの映画を観て「この楽器がやりたい」と思って始めたんです。でも、私が通っていた学校はクラシック専門で、一度もジャズをやらずに終わっちゃったんですよ(笑)。だから、「やるっきゃない!」という感じで、一からジャズを習いに行っています
──本作は、埼玉県入間市が全面協力で撮影。宮岡太郎監督も埼玉県入間市生まれですし、井上さんも埼玉県本庄市出身。ほかにも、埼玉県に縁のある方が多く揃っていますね。
井上 自分の地元、埼玉県で撮影が出来るのがすごく嬉しかったです。埼玉の魅力を知ってもらえる機会でもあるし、地元の方がどんな気持ちで観てくれるのかなというのも楽しみです。
──今回新たに知った埼玉の魅力、何かありましたか。
井上 映画のなかにも出てくる狭山茶!実際に撮影中、お弁当の時間に飲んでいたんですけど、すごく美味しかったんです。お茶でいうと静岡県が有名ですけど、埼玉も負けてないぞ!と、もっと知ってほしいなと思いました。茶畑のシーンも、すごく綺麗なんですよ。埼玉出身というと「都会だね」と言われることが多いんですけど、自然もたくさんあるので、この作品を通してそういった部分も知ってもらいたいです。
──主人公の陽太を演じた阿久津慶人くんと、その兄・匠を演じた長妻怜央(7ORDER)さんの印象についてもお聞かせください。
井上 阿久津くんは、しっかりしてる子というのが最初の印象でした。セリフも全部覚えてきていたし、台本をチラッと見たら細かく付箋が貼ってあって。でも、だんだんと撮影が進むにつれて子どもっぽさも見せてくれるようになってきて。「これあげる!」と言われて「ありがとう」と受け取ったら「ゴミだよ!」とか(笑)。小学生らしいかわいらしさもある子で、愛おしくて仕方なかったです。
長妻さんとは一緒のシーンが少なかったんですけど、子どもたちと一緒になって遊んでコミュニケーションを取っていた姿が印象的でした。子どもたちと一緒に撮影を楽しもうという気持ちが伝わってきて、長妻さん自身が無垢で純粋な方なんだなと感じました。
──本作で子どもたちは夏休みの自由研究として映画製作に挑むことになりますが、井上さん自身の自由研究の思い出を教えてください。
井上 言葉が悪いかもしれないんですけど、私、小さいころは本当に“クソガキ”だったんです(笑)。やんちゃで、外遊びが大好きだったから「川魚を捕まえる研究」をやったりしたんですけど、それ川に遊びに行きたいだけだよね?とか。あとは、自動販売機のボタンを両手で同時に押したら、どっちのジュースが出てくるか、ってこれもジュースが飲みたいだけなんですけど(笑)。
でも、いろんなものを燃やすという研究は賞をもらったんですよ。最初はただの好奇心だったんですけど、燃やすものによって炎の色が変わるのが分かって、「これは科学的だ!」と思ってちゃんとやったら、理科の先生にすごく褒められました。
あんまり勉強が好きじゃなかったんですけど、好奇心からの遊びを通して学べることっていっぱいあるんだなって。それは、今の自分にも通じているところがありますね。芝居を見るのが好きとか、人に会うのが好きとか。今もそういった好奇心で動いていることが多いので、子どものころの面白かった、楽しかったという感覚が今、仕事をする感覚に似ているのかなと思います。
──子どもたちが撮っていた映画はホラー系でしたが、井上さんが映画を撮るならどんなジャンルでしょうか。
井上 動物が好きだから、動物系の映画を撮りたいです。動物が出てくる映画やドラマを観ると涙が止まらなくなっちゃうんですよね。それに、実は私ホラーがあまり得意じゃないんです。だから、撮るならほのぼのした感じがいいなって。でも、今回子どもたちの映画のなかでゾンビ役をやったのはすごく楽しかったです。みんなで「うぉ~」って言い合うのも面白かったし、そこで結束力が高まったようにも感じました
──本作の撮影を通して得た学びや次の作品に活かしたい、と思ったことを教えてください。
井上 映画のなかで土方先生が「なんでそんなに難しいことに挑戦しようとするの?簡単なことならたくさんあるのに」って子どもたちの前で言ってしまうシーンがあるんですけど、自分のなかにある「好き」とか「これがやりたい」という気持ちって、大人になるとどうしても現実的に考えて諦めてしまうところってあると思うんです。
でも、子どもたちのまっすぐな姿勢を、映画のなかだけじゃなく一緒に過ごすなかでも見ることが出来て、自分の好きなものに対して、まっすぐに取り組むってすごく素敵なことだなと感じました。これは無理かな、難しいかなと思うことも、まずは挑戦してみることが大事なんだということを改めて学びました。
──今、井上さんが挑戦したい好きなことは?
井上 お芝居です。でも、好きと得意は違うじゃないですか。得手不得手があるから、役者が自分にあった仕事なのか、というのは今もまだ分からないし、自分はちゃんと前に進めているのかなと考えてしまうこともあるんですけど、やっぱり自分の好きなものに対しては、まっすぐにぶつかっていきたいなと思っています。
──最後に改めて本作の見どころを含めて、メッセージをお願いします。
井上 何か夢を持っている人はもちろん、その夢を諦めてしまった人も元気をもらえる作品です。とにかく子供たちがかわいくて癒されますし、それだけで温かい気持ちをもらえると思います。この映画の主人公、陽太くんもそうですが、私もファンの方や周りの人の応援がなかったら成しえなかったことが、今までたくさんありました。支えてくれる人のありがたみも描かれている映画なので、この作品を通してファンの方に「ありがとう」のメッセージも伝わったらいいなと思います。