徒然草 第41段 五月五日、賀茂の競べ馬を見侍りしに、・吉田兼好 日文念书

賀茂の競べ馬を見侍りしに:5月5日に京の都上賀茂神社で行われていた競馬のこと 。
埒のきはに寄りたれど:<らちのきわによりたれど>と読む。「埒」は通行を制限するための柵で、ここでは競馬の柵を言う。 同乗の人々は牛車から競馬が見えなかったので、そこから降りて柵に寄ったのである。
向ひなる楝の木に:「楝 <あふち>」は樗でセンダンの古名。栴檀は双葉より芳しの栴檀ではなく、梅雨時に白または紫の花をつけるセンダン。そこに居眠り坊主が上っていた。 この木は、うつぎ同様、樹幹が中空で力学的には弱いので気をつけなくてはいけない。
世のしれ物かな:大層なばか者だ。
我が心にふと思ひしまゝに:とっさに思ったまま、。この次は作者の発言。
愚かなる事はなほまさりたるものを:ばか者はあの木の上の坊主だけではない。今すぐにだって死が来るかもしれないというのに、こんな所で競馬なぞ見て暮らしているのは、もっとばか者と言えなくもあるまい。
所を去りて:場所を開けてくれて。