徒然草 第53段 これも仁和寺の法師、童の法師にならんとする名残とて 、・吉田兼

これも仁和寺の法師:これも仁和寺の法師に関することだが、。どうも、仁和寺はモラルハザードを起こしていたのかもしれない。
童の法師にならんとする名残とて、おのおのあそぶ事ありけるに:仁和寺に使われていた稚児の少年が、僧になるについて、俗体からの離脱を祝う祝宴を開いて余興に花が咲いたのである 。
大方抜かれず:全く抜けない。 全否定であって現代語の部分否定「ほとんど」と異なるので注意。
傍なる足鼎を取りて:<かたわらなるあしがなえをとりて>と読む。「足鼎」は3本足の付いた容器。最初は鍋釜や線香立ての類であったものが、装飾が施されて置物に発展したもの。ここでは、たまたま宴会場にあった装飾用の置物だったのであろう。
かなはで:割ろうとしたが割れなかったので。
三足なる角の上に帷子をうち掛けて:足鼎の三本の足が逆さについているので角のように見える。これではみっともないので、帷子を引っ掛けて京都の医者のところへ行ったのである。「帷子」は單衣の布の総称。
医師のもとにさし入りて、向ひゐたりけんありさま、さこそ異様なりけめ:医師<くすし>の所へ行って、向かい合っている様子などというものは、実に異様な光景であったことであろう 。
老いたる母など、枕上に寄りゐて泣き悲しめども:<おいたるはわなど、まくらがみによりいて・・>と読む。
藁のしべを廻りにさし入れて:<わらのしべをまわりにさしいれて>。 「藁のしべ」は、穂先のところの硬くすべすべして摩擦の少ない部分。これを首と鼎の金属部分の間に挿入して摩擦を軽減して抜き取ろうという計略だったのであろう。
からき命まうけて:危ういところを助かって、の意。