中小企業経営者の個人能力と 経営状況における相関分析モデルの構築

要 旨
現在、日本や中国の中小企業における製造業の付加価値割合60%以上を占める。現在、新型コロナウイルス感染症拡大により、日本や中国の経済は中小企業を中心に大きな影響を受けている。中小企業庁(2021)によると、2020年の実質 GDP 成長率は前年比4.8%減となり、2019年を大きく下回った。新型コロナの流行が世界経済に大きな 影響を与えた今、企業の90%以上であり、GDP生産高の60%以上を占める中小企業は、危機対応の成熟度が高い大企業以上に危機対応の方法・手段が求められる。中小企業の経営者は強い権限を持つことが多いため、中小企業の経営能力に着目し、企業の経営状況を推測分析することは学術研究の重要なテーマであろう。しかし、中小企業経営者や中小企業自体の多様性や不規則性により、分析モデルを構築することは難しい。
ただ、学術的な研究が進むにつれて、特定の現象との関連付けが見られるようになった。例えば、企業の危機管理の成熟度に関する研究では、企業の危機管理の成功が、学歴や職歴の勤務年数など、中小企業の経営者の個人能力と強く関連するとの主張がある。会計監査制度の導入と企業の経営状況の関連性についても、一定の研究成果が得られている。
したがって本研究では、中小企業経営者の能力と中小企業の経営状況の相関モデルの第三因子として、危機管理、会計システムなどの経営手段を通じて、中小企業経営者の能力と中小企業の経営状況の相関を説明することを目的とする。
そこで、本研究は「土社長現象」で有名な中国浙江省の中小企業を具体的に調査し、アンケート調査を行い、そのデータをもとに、第三の要因としての経営手段を検証している。
データの精度など十分ではないものの、それでもなお中小企業経営者の能力と経営状況との相関について、今後の研究に新しい考え方を示したものと考える。