徒然草 第130段 物に争はず、己れを枉げて人に従ひ、・吉田兼好 日文念书

されば、負けて興なく覚ゆべき事、また知られたり:(勝って喜ぶのなら)負けて悔しがるのは知れたことだ。
人に本意なく思はせて我が心を慰めん事、徳に背けり:他人に不本意な思い(負けて口惜しい思い)をさせ て、自分だけ良い思いをするなどということは、「徳目」にはない。
されば、始め興宴より起りて、長き恨みを結ぶ類多し:という訳で、はじめに酒の席のような処で始まった話が、後に恨みつらみの結果を招いたなどという話が多いのはそのためだ。
道を学ぶとならば、善に伐らず、輩に争ふべからずといふ事を知るべき故なり:学問をするのなら、顔回が前段(第129段)で言うように、「善を伐<ほこ>らず」、人と争わないということを知らなくてはならぬ。