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《死因——空腹·樱的境况》 与你共度的七日间补充小说

2022-09-23 00:18 作者:静听风语丶  | 我要投稿

空腹·樱的境况 

 

原著:とむ少佐 

初翻:我不是爱丽丝,度娘(主要负责排列语序) 

校对:有谁来吗? 

润色:有谁来吗?

PS1:因为翻译经验不多所以会自己加点词下去疏通句意,虽说大概意思应该是没有错的……有错误可以在评论区指出,我会把原文一起发上来。还有就是可能会按照死亡顺序翻译吧,虽然不知道是不是按官网的降序排列的……(话说下面把原文放上去了我还能声称为自己原创吗?)


 

■1

 

“爸——爸——!”

 当我举起那个的时候,爸爸在起伏的垄的对面抬起了弯着的腰。

“快看! 超大的萝卜! 有两根哦!”

“哦——!”

 从对面传来了欢呼的声音。

“这两根不能拿去发货,所以就当作今晚的晚饭吧——!”

 似乎形状怪异的萝卜,商家是不会购入的。明明同样的价格,大一点的会比较划算,这样想着,我抚摸着这根大萝卜拂去附着着的土。

 从身后突然伸过来的手,把我的萝卜举了起来。

“哦哦,好重好重。这家伙可真大啊!”

“哥哥。”

 比我早一些出生的哥哥,不知道什么时候已经长高到需要抬头去看他的程度了。

 因为太阳从哥哥的背后照耀着,所以仰望着那个高大的黑影的我眯起了眼睛。

“从川村先生那里,拿到了今天早上捕获到的秋刀鱼哦,配上刚拔出来的萝卜吃很美味哦。还要稍微滴一点酱油。」

 我重新抱起被还回来的萝卜。

“秋刀鱼,咱拿了多少条?”

“虽然没数过不太清楚,不过应该够人头数吧?”

 哥哥抬起头,稍微出了一下神,然后“一,二,三,四”的掰指头数着。

 爸爸和妈妈,爷爷和哥哥还有我,然后再加上两个弟弟,所以是……

“七条?”

“给了这么多啊。”

 我正歪着头的时候,哥哥将收获的成果带回去了。

“别偷懒,快干活!”

 听到了从远处传来的爸爸的声音。 

 

■2

 

 “一,二,三,四……”

 不论再数多少遍也是一样的。端到晚饭的餐桌上的是六条秋刀鱼。

 将萝卜削片的我的手停了下来。

“少了一条……”

“没有少哦。”

 拿着托盘的妈妈来到了我旁边。盛着米饭的木碗有完整的七人份。

“妈妈那份没关系的啦。”

“不可以。妈妈必须连小宝宝的份也一起吃才行!”

 在妈妈稍微变大的肚子里,有我的第三个弟弟。

“啊啦啊啦,那不是就要让另外一个人忍耐了吗?”

 一边微笑着,妈妈回到厨房去拿味增汤。

 我再次回到了将萝卜削片的作业当中。电视上正在播出世界珍馐特辑,正好拍到一位美女将令人毛骨悚然的食物看起来很好吃似地吃着。

“那么黑的疙瘩,到底好不好吃呢……?”

 我低声嘟囔着,从旁经过的哥哥停下了脚步。

“哥哥,那个,听说是鲨鱼的卵。”

“嘿——我还以为是山羊屎来着。”

 真是坦率的感想。虽然好像是很高级的食材,却完全看不出有多高级。

“不知道好不好吃呢?”

 虽然没能抹去这个疑问,但是哥哥满不在乎地回答“看她好像很好吃似地吃着,应该很好吃吧?”后走开了。

 

 

■3

 

 最开始是爷爷走到餐桌旁,以此为信号男人们就都陆陆续续聚集过来。

 最小的菊次郎跑了过来,在榻榻米上摔倒了。因为大一岁的菊太郎在逗他玩,吵吵嚷嚷的。

“今天是秋刀鱼啊?”

 老爷爷一边咕噜咕噜地大口灌酒,一边时不时地去看飘散着香味的烤秋刀鱼。

“听说是川村先生给的。少了一条鱼……”

 我把刚削成片的萝卜轻轻地放到爷爷那份秋刀鱼的边上。用闲下来的手敲了下菊太郎,然后一把抓起哭唤着的菊次郎的脖子。

“今年可真热啊——”

 爷爷看着自己的秋刀鱼,然后若无其事地只抬起一弯眉毛,看着妈妈的座位。在那里并没有秋刀鱼。

“天气一热就捕不到了么?”

 回答那个问题的是从后面走来的爸爸。

“因为到了这个季节捕鱼量会变少啊——”

 将洗完澡后的手巾从脖子上垂下来,把瓶装啤酒倒入杯中。哥哥说着“嘬一小口吧”从旁边伸出手,但在递来之前爸爸抢先一步将酒杯拿远了。

“那就,开动吧?”

 最后到的母亲一边坐到位子上一边这么说以后,不绝于耳的“嘁嘁嘁”的金铃子的鸣叫声完全听不到了。

 我拿着筷子一动不动,凝视着自己的秋刀鱼。刚烤好的秋刀鱼还热乎着,烤地恰当好处的焦痕勾起了我的食欲。

 明明大家的面前每人各有一条,可只有妈妈那没有。

 咽了咽口水后,我把自己的秋刀鱼推到妈妈的面前。

“啊啦,樱?”

 妈妈睁圆了眼睛,我稍微低下了头。

“秋刀鱼,我不喜欢吃……”

“骗人——! 姐姐啊,之前连我的份都吃掉了!”

 菊太郎说出那句话后,连菊次郎也反复起哄着“吃掉了!”。

“烦死了。我可没吃菊次郎的那份吧?”

 我简短地回了一句,“是哦……”这么说着,菊次郎不再开口了。

“谢谢啦。那么就,对半分吧?”

 妈妈干净利落地撕下半条秋刀鱼然后递到我这边。

 没什么的,我只是做了理所当然的事。因为我,是姐姐啊。

 我放上很多切成片的萝卜,一声不吭地吃着秋刀鱼。

 只有萝卜有好多好多。

 

 

■4

 

 我出生的时候,就有个哥哥在了。

 所以从那之后的数年间,我作为忽那家的最小的孩子,哥哥的妹妹,是这阳气旺盛的家中唯一的“女孩子”。

 虽然只勉勉强强地记着些许,但我想那时确实被疼爱着。只有自己一人得到爱真是太好了。

 但,那也是在人情世故还不知有没有在我心底萌生出来的那样的时期当中,妈妈肚子变大之前的事情了。

“樱,弟弟要出生了哦?”

 一边抚摸着变大的肚子,妈妈一边温柔地说道。

   “那个是,好事情吗?”

 “我不再是最小的了”之类的,“要是像至今为止一样被疼爱就好了,可接下来就不一样了”之类的,我不知道该不该寻找回应那些发自内心的难题的答案,就算有被找到的答案,我也不知道该不该说出来,所以我只能这样问。

“是啊,是很好的事情。因为家人要增加了啊。”

 所以当妈妈这样回答的时候,我明白了必须要改变自己的处世态度。

 我也必须要疼爱谁,今后必须和哥哥站在同样的立场上。并没有想得太多,也因为还没有到能想多的年龄,只是本能的切身感受到“弟弟要出生了”这件事。

 

 不久后菊太郎出生,我成为了“姐姐”。在那之前我非常地喜欢妈妈,每当有什么事就紧紧抱住她,但自从他出生之后我便突然停止那样做了。看着妈妈抱着新的小婴儿,我不得不作罢。理解那叫做“忍耐”,已经是在那很久之后的事了。

 我最最喜欢的妈妈。那样的妈妈所非常珍重的“他”,我不能不去好好地重视。在那一年后,四人同怀的最小的孩子菊次郎也加入了我们家。

 我很重视他们。虽然这是经过名为妈妈的反射板所映射出来的爱,但那是爱的事实并非谎言。

 但是,有问题出现了。

 首先有一点,我们忽那家并不是富裕的资产家一族,而是甚至会让我觉得祖上肯定也不过是江户时代名不见经传的老百姓之类的,最最普通的贫困农家。虽然房子大到感觉很空旷,但那也是因为这里是周围什么建筑物都没有的乡下。

 其次,七人家庭,加之小儿子们还成为不了人手的不成熟,至今为止的朴素生活更是雪上加霜。再者因为女性有两人而男性有五人,煮一升(注:日本一升约为1803.9毫升)米当天就见底也并不奇怪。

 还有一点就是,我是这个家里唯一的“姐姐”这件事。这是比任何事情都,超出我的预想的沉重的枷锁。

 当初,我以为自己会成为和哥哥一样的角色。哥哥把我当做妹妹疼爱是只有刚好想法一致的时候,而当有哥哥想要看的电视节目的时候啊,或者哥哥像是在和谁打仗一般狼吞虎咽的时候,名为妹妹的存在连他脑海的角落里都没有存在过。因着哥哥的心情我时而是他可爱的妹妹,又时而有所不同。

 但是“姐姐”是不一样的。

 我被赋予了的“姐姐”的工作内容,归根结底既是当姐姐又是当爸爸,然后还要当妈妈。

 作为姐姐时去教育关心他们,作为爸爸时要教训两个调皮捣蛋的弟弟,作为妈妈时必须细心照料这两个孩子。

 我不能辞去那名为“姐姐”的职务。看着因七人份的洗衣做饭而一整天都没有休息的妈妈,只有我放弃职务什么的,不用想也知道那样我会成为辜负一整个家的人。

 吃饭的时候,位于妈妈旁边时,妈妈偶尔会抚摸我的头。那是“姐姐”会被给予的唯一奖励。所以我时常会想,那真的是太好了。这也不过,是和主要矛盾相比较为琐碎的事情。

 忽那家全家出动着手开始农耕时,我从不缺勤过。

 在白天,越是工作,处在成长期的身体就越是会消耗燃料,得罪肚子里的馋虫。哥哥在饭桌上一定会再来上一碗饭,但我却不被允许。“姐姐”的真正的问题就在于此。

“因为男孩子们特别能吃啊——”

 用着像是从出生起就知道了一般的口吻,妈妈没有对着任何人自言自语道。

 因为我是姐姐,所以男孩子们吃得越多,姐姐就越是必须要忍耐。

 确实,我因为有了两个弟弟的缘故,被迫要忍耐的机会增加了。话虽如此,如果只是因为这样就不能平等对待我的话,我的内心还是会不服气。但是,因为在眼前妈妈也同样忍耐着,所以我什么也没有说。

 只不过是些没什么文化的农民,但可能也正因如此,即便年号变成了平成,重男轻女的社会也还是在这里构建了起来。

 

 

■5

 

 那一天夜里,我在被褥中醒来。

 从入睡开始还没经过多长时间。

 仿佛胃的周围瘪下去一般。挪开菊次郎的脚,推开菊太郎的手,我忽地撑起了上半身。

“……肚子饿了。”

 家里大家都睡着了。因为明天也得早起。

 虽然不知道肚子为什么会这么饿,明明平常都能忍住的,总之先起身去到有餐桌的房间。

 当然,餐桌上什么都没有。月光透过被敞开着的拉门照进来,金铃子依旧鸣叫着。

 一进到厨房冰箱发出呜呜呜的声音运作着。即便打开冰箱,里头也没有什么特别值得注意的东西。总之我先喝了杯牛奶,然后将杯子放到洗碗池里。

 今早刚摘出来的萝卜已经啃完了。以前我也那么做过,了解到那样吃萝卜非常的辛苦。

 坐在走廊上看着外头,眼睑渐渐地垂了下来。金铃子悦耳的摇篮曲,以及秋季的夜风沙沙沙地摇晃着树林。

 听到了一声“嗝嗝——”,然后听到了啪嚓的水声。我揉了揉眼睛,穿上了凉鞋。

 

 来到眼前的水稻田,水的波纹扩散开来。

 一定是有青蛙在吧。水面上倒映着月光,我看到有很多黑色的小颗粒沉在水田的底部。

“鱼子酱。”

 刚记下来的单词脱口而出。

 虽然我知道那不并是高级食材而是青蛙的卵,但晚饭时电视上的影像却在我的脑海当中挥之不去。

 夜风再次吹拂,水稻摇曳着,与映照着的月光所不同的光亮出现在水面上。抬头望向路对面的山,在那里亮着微弱的灯光。

 肚子咕噜咕噜地叫着,我感到自己的肚子和我一时兴起联手在了一起。

 

 

■6

 

 我并不觉得夜晚的森林有多恐怖。

 因为原本就是山里长大的,一到夏天就会出来抓虫子,这从小就是我的非常棒游乐园。

 月光洒满全地,即便天黑也能看得清清楚楚。因为猫头鹰鸣叫着(注:猫头鹰用叫声宣誓领土和驱赶小动物),所以我知道这座山上没有什么可怕的东西。

 忘我地走着,眼前已经能看到亮着灯的小屋。明明已经这么晚了,却还点着这么亮的电灯。

 那间小屋虽然很小,但和就在旁边的大房子还有走廊紧挨着。拿着托盘的老奶奶,走在那条走廊上。

 托盘上有饭团和碗还有……总之好像放着食物。

 “这是夜宵。”那个老奶奶说着,把托盘放在门前后就原路返回了。老奶奶一走过去,走廊便嘎吱嘎吱地作响。

 我稍微看了一会儿她走开的样子。老奶奶没有注意到我的样子,就那样进入到家中。

 我,肚子正饿着。

 

 

■7

 

 走上跟前的走廊,沿着老奶奶走过的路前进。在走廊的对面,小屋前放着食物。

 我一踏出脚,走廊就嘎吱地响了起来。小屋前的荧光灯啪嘁啪嘁地,微弱地闪烁着。我的喉咙变得干涩。

 即便发出一点点声响,也只会因为周围不绝于耳的虫鸣声而掩盖住,没有丝毫的变化。

 放心后,接下来下一步细心注意不让走廊发出声响。虽然吱吱地发出了细小的声音,但并没有影响到周遭。

 味增汤里冒着热气。附上用海苔包住的饭团,还有看起来好好腌制入味的咸菜。

 将流出来的口水滋溜地吸回去咽下,小心翼翼地伸出手。

 背紧绷着。眼前的门轻轻地开了条缝,从里头伸出的白手没有发出声响抓住了我的手腕。

“肚子饿了么?”

 白手的主人,他的脸也被苍白的皮肤所覆盖,眼镜后瞳孔的颜色淤塞浑浊。因为那个白发苍苍的大人穿着白大褂,我想他一定是医生先生吧。

 因为我不知道怎么说谎,所以老实地点了点头。没有,发出任何声音。

“这个,想吃吗?”

 再一次点头,医生先生苍白的脸上浮现出满意的微笑。

“给你吃也没关系的。”

“真的吗?”

 这时我终于发出了声音。我为能治愈这空腹感到很高兴。因为第一次可以不用再忍耐了。

 虽然是令人感到毛骨悚然的脸色苍白的医生先生,但是因为是医生先生所以肯定很温柔吧。什么嘛,没什么好害怕的。

“啊啊,进来吧。”

 医生先生拿着托盘进到里面。

 那个房间里有各式各样的大型器械,不论哪个都是从来没见过的东西。

 房间的角落里堆满了笼子,里头的小白鼠在咔哩咔哩地挠着笼子。

 在后面关上门,只听到咔嚓一声上锁的声音,医生先生又一次满意地微笑起来。

“刚刚好需要。像你这样的小孩……”




空腹サクラの場合

 

 

■1

 

「とーちゃーん!」

 あたしがそれを掲げると、波打つウネの向こうで父ちゃんが曲げていた腰を伸ばした。

「見て! でっかい大根! 二股なの!」

「おー!」

 向こうから歓声が飛んできた。

「それは出荷には出せねえから、今夜の夕飯にでもすっかー!」

 形の悪い大根は、業者が買い取ってくれないそうだ。同じ値段なら大きいほうが得なのにと、あたしはその立派な大根を撫でて土を払った。

 後ろからぬっと伸びてきた手が、あたしの大根を持ち上げた。

「おお、重い重い。こいつは立派だなぁ」

「兄ちゃん」

 あたしよりも一足先に生まれた兄ちゃんは、いつの間にか見上げるほど背が伸びていた。

 兄ちゃんの後ろから太陽が照らすから、その大きな黒い影を仰いだあたしは目を細めた。

「川村さんのとこから、今朝穫れた秋刀魚をもらってるからよ、とれたての大根で食ったらうめえぞ。醤油をちっと垂らすんだ」

 あたしは返された大根を抱え直す。

「秋刀魚、いくつもらったの?」

「数えてねえからわかんねえけど、人数分はあるんじゃねえか?」

 兄ちゃんを見上げたまま少しぽかんとしてから、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ、と指折り数える。

 父ちゃんと母ちゃん、爺ちゃんに兄ちゃんにあたし、それに弟が二人だから……。

「ななつ?」

「そんくれえだ」

 あたしが首を傾げている間に、兄ちゃんは収穫に戻っていた。

「サボってねえで働けえ」

 遠くから父ちゃんの声が聞こえた。

 

 

■2

 

 「ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ……」

 なに回数えても一緒だった。夕飯の食卓に上がったのは六尾の秋刀魚。

 大根を摺り下ろすあたしの手が止まった。

「一匹足りない」

「足りなくないよ」

 盆を持った母ちゃんが隣に来た。ご飯のお椀はちゃんと七つある。

「母ちゃんの分はいいから」

「だめ。母ちゃんは赤ちゃんの分も食べなきゃ」

 母ちゃんの少し大きくなったお腹には、三人目の弟がいるのだ。

「あらあら、じゃあ誰かが我慢しなきゃいけないじゃない」

 微笑みながら、母ちゃんは味噌汁を取りに台所へ戻った。

 あたしは再び大根を下ろす作業に戻った。テレビでは世界の珍味特集をやっていて、不気味な食べ物を美味しそうに食べる美人さんが映っていた。

「あんな黒いつぶつぶ、美味しいのかなぁ」

 あたしがぼそりと呟くと、通りがかった兄ちゃんが足を止めた。

「兄ちゃん、あれ、鮫の卵なんだって」

「へえ。ヤギのフンかと思った」

 率直な感想だった。高級なものらしいが、全然高そうに見えない。

「美味しいのかな」

 その疑問を拭い切れなかったが、兄ちゃんは「美味そうに食ってるから美味いんじゃないの」と投げやりな答えで歩いて行った。

 

 

■3

 

 始めに爺ちゃんが食卓の端につくと、それに釣られて続々と男たちが集まってきた。

 末っ子の菊次郎が走ってきて、畳の上でコケた。一つ上の菊太郎がそれをからかうから騒がしい。

「今日は秋刀魚か」

 爺ちゃんはぐい呑みに酒を注ぎながら、香ばしい匂いを漂わせる焼き魚をしばしばと見た。

「川村さんのとこのだって。一匹足りないの」

 あたしは摺り下ろしたばかりの大根を爺ちゃんの秋刀魚の端にちょこんと据えた。空いた手で菊太郎を叩いてから、泣き喚く菊次郎の首根っこを掴んで起こしてやる。

「今年は暑かったもんなあ」

 爺ちゃんは自分の秋刀魚を見てから、さりげなく片眉だけを上げて母ちゃんの卓を見た。そこに秋刀魚はなかった。

「暑いと獲れないの?」

 その問いに答えたのは後ろから来た父ちゃんだった。

「不漁になっちまうからな」

 風呂あがりの手ぬぐいを首から下げて、瓶ビールをコップになみなみと注ぐ。一口ちょうだいと兄ちゃんが横から手を出すが、お前にゃまだ早いと父ちゃんはコップを遠ざける。

「さ、食べましょうか」

 最後にきた母ちゃんが腰を下ろしながらそう言うと、ちぐはぐな頂きますが鈴虫の声を掻き消した。

 あたしは箸を持ったまま、自分の秋刀魚をじっと見つめる。焼きたての秋刀魚はまだ熱々で、絶妙な具合の焦げ目が食欲を挽き立てた。

 みんなの前には一匹ずつあるのに、母ちゃんのところにだけない。

 ごくりと唾を飲み込んでから、あたしは自分の秋刀魚を母ちゃんの前に押しやった。

「あら、桜?」

 母ちゃんが目を丸くして、あたしは少し顔を伏せた。

「秋刀魚、嫌い」

「嘘だー! 姉ちゃん、こないだ僕の分まで食べた!」

 菊太郎がそう言うと、菊次郎まで「食べた!」と繰り返した。

「うるさい。菊次郎のは食べてないでしょ」

 あたしが短く返すと、菊次郎は「そうだった」と言って黙る。

「ありがとうね。じゃあ、半分こしようか」

 母ちゃんが綺麗に秋刀魚の半身だけ剥がしてこっちに寄越した。

 別に、当たり前のことをしただけだ。だってあたしは、お姉ちゃんだから。

 あたしは摺り下ろした大根をたんまり乗せて、黙って秋刀魚を食べる。

 大根だけはたくさんあった。

 

 

■4

 

 あたしが生まれた時、あたしには兄がいた。

 だからそれからの数年間は、あたしは忽那家の末っ子で、兄ちゃんの妹で、男臭いこの家での唯一の「女の子」だった。

 わずかにしか覚えてないけれど、その時はたしかに可愛がられていたと思う。一身に愛を受けているだけで良かった。

 だけどそれも、あたしに物心が芽生えるか芽生えないかのそんな時期に、母ちゃんのお腹が膨れるまでの話だった。

「桜、弟が出来るんだよ」

 大きくなったお腹をさすりながら、母ちゃんは優しくそう言った。

「それって、すてきなこと?」

 あたしが一番下じゃなくなるのとか、今まで可愛がられるだけで良かったのにこれからはちがうのとか、そういった難しい質問をどんな言葉にして尋ねればいいのかわからなかったし、仮に尋ねられるだけの言葉があるとして、それを口にしていいのかわからなかったから、あたしはそう訊くしかなかった。

「そうね、とっても素敵なこと。家族が増えるんだから」

 だから母ちゃんがそう答えたまさにその時、あたしは生き方を変えなければいけないと悟った。

 あたしも誰かを可愛がらなければいけなくて、これからは兄ちゃんと同じ立場に立たなければいけない。決して深く考えたわけではないし、まだ考えられるような年頃でもなかったから、本能的に「弟ができるということ」を肌で感じたのだった。

 

 やがて菊太郎が生まれ、あたしは「お姉ちゃん」になった。それまで母ちゃんのことが大好きで、ことあるごとに抱きついていたが、彼が生まれてからはぱったりとそれをやめた。母ちゃんが新しい赤ん坊を抱いているのを見ると、あたしはやめざるをえなかった。それが我慢であるということを理解するのは、それからかなり後のことだ。

 あたしが大好きな母ちゃん。そんな母ちゃんがとても大事にしている「彼」を、あたしが大事にしないわけにはいかなかった。その一年後、四人兄弟の末っ子である菊次郎も我が家に加わった。

 あたしは彼らが大事だった。母ちゃんという反射板を経ての屈折した愛情ではあったが、それが愛情であることに嘘偽りはなかった。

 ただ、問題はあった。

 ひとつに、我が忽那家は裕福な資産家の一族ではなく、きっと前世も江戸時代のくだらない百姓かなにかだったにちがいないと思うほど、至って普通の貧乏な農家だった。家こそだだっ広いけれど、それは周りに建造物がなにもないど田舎だからだ。

 そこに、七人家族の、しかも末っ子たちはまだ働き手にもならないような幼さだから、これまでの質素な生活はさらに加速した。おまけに女二人に対して男五人なわけだから、一升炊いた米がその日のうちに底をつくなんていうこともざらだった。

 もうひとつは、あたしがこの家で唯一の「お姉ちゃん」であること。なによりこれが、あたしの想像を裏切るほどに重い枷だった。

 当初、あたしは兄ちゃんと同じような役回りになるんだと思っていた。兄ちゃんがあたしを妹として可愛がるのはまさに一緒にいる時だけで、兄ちゃんの見たいテレビがある時とか、兄ちゃんがなにかと戦うようにご飯を掻き込む時とかは、妹という存在が彼の頭の片隅にさえ存在していなかった。兄ちゃんの都合によってあたしは彼の可愛い妹であったし、また同じようにしてそうでなかったりした。

 でも「お姉ちゃん」はちがうのだ。

 あたしに与えられた「お姉ちゃん」のお仕事内容は、つまるところ姉であり父であり、そして母であることだった。

 姉として可愛がり、父としてやんちゃな弟二人を叱り、母として子供二人の面倒を見なければいけなかった。

 その「お姉ちゃん」という役職を辞任するわけにはいかなかった。七人分の炊事洗濯で一日中休まることのない母ちゃんを目の前に、あたしだけ職務放棄するなんて、それが一家の裏切り者になることは考えずともわかった。

 ご飯の配膳の時、母ちゃんの隣に立つと、たまに母ちゃんは頭を撫でてくれた。それは「お姉ちゃん」に与えられた唯一のご褒美だった。だから、それは良かった。これも、本題に比べれば些細なことだ。

 忽那家では家族総出で農業に取り掛かり、あたしはそれを欠かしたことはなかった。

 日中、働けば働くほど、育ち盛りの身体は燃料を消費して、腹の虫は機嫌を損ねるのだ。兄ちゃんは、食卓では必ずご飯をおかわりするけど、あたしにそれは許されなかった。「お姉ちゃん」の本当の問題はこれだった。

「男たちはよく食べるからね」

 生まれた時から知っていたかのような口ぶりで、母ちゃんは誰に向けるでもなくそう言った。

 あたしはお姉ちゃんだから、男たちがよく食べれば食べるほど、お姉ちゃんは我慢せねばならなかった。

 たしかに、あたしは弟二人が出来たことによって、我慢を強いられる機会は増えた。それにしても、これだけは対等ではないと、腹の内では不服を抱えていた。でも、目の前で同じように我慢をしている母ちゃんがいるから、なにも言えなかった。

 ただのどん百姓のくせに、だからこそかもしれないけど、平成という元号になってもまだ、男性優位の社会がここに築かれていた。

 

 

■5

 

 その日の夜、あたしは布団の中で目を覚ました。

 まだ眠りについてからいくらも経ってない。

 まるで胃のあたりがへこむようだ。菊次郎の足をどかして、菊太郎の手を押しやって、むくりと上半身を起こした。

「……お腹減った」

 家族はみんな寝ていた。明日の朝も早いからだ。

 どうしてこんなにお腹が減るのかわからないけれど、いつもなら我慢できるのに、とにかく食卓のある部屋まで起きて行った。

 当然、食卓にはなにもない。開け放たれた障子から月の明かりが差し込んでいて、鈴虫はまだ鳴いていた。

 台所へ行くと冷蔵庫が唸っていた。開けても中に目ぼしいものはなにもない。とりあえず牛乳を一杯飲んで、コップを流しに置いた。

 今朝穫ったばかりの大根をかじるのはよしておいた。それは前にもやって、辛いだけだと知っていた。

 縁側に腰掛けて外を見ていると、少しずつまぶたが下りてきた。鈴虫の心地よい子守唄と、秋の夜風がさあっと木々を揺らした。

 げこ、と一つ聞こえて、それからぽちょんと水の音がした。あたしは目をこすって、サンダルを履いた。

 

 目の前の田んぼに行くと水の波紋が広がった。

 きっと蛙がいたのだろう。水面に月が映っていて、その底に黒いつぶつぶが沈んでいるのが見えた。

「きゃびあ」

 ぽつっと覚えたての単語が口をついた。

 それが高級珍味ではなく蛙の卵だって知っていたけれど、夕飯時のテレビの映像が頭から離れなかった。

 また夜風が吹いて稲が揺れると、写り込んだ月とはちがう明かりが水面にあった。道の向こうの山を見上げると、一点の明かりが灯っていた。

 お腹がぐぐうと鳴いて、それがあたしの興味と手を繋いだ気がした。

 

 

■6

 

 夜の森を怖いと思ったことはなかった。

 もともと山育ちだし、夏になれば虫取りに出かけるし、小さい頃からあたしの立派な遊び場だった。

 そこらじゅうに月明かりも照るから、暗くてもよく見える。ふくろうが鳴いてくれるから、この山になにも怖いものがいないとわかる。

 夢中で歩いていると、もう目の前には明かりのついた小屋が見えていた。こんな遅くだというのに、まだ煌々と電気をつけている。

 その小屋は小さいけれど、すぐそばの大きな家と廊下で繋がっていた。その廊下を、お盆を持ったおばあさんが歩いている。

 盆の上にはおにぎりとお椀と……とにかく食べ物が載っているようだった。

 お夜食です、とそのおばあさんは言って、扉の前にお盆を置いて引き返した。おばあさんが歩いて行くと、ぎいい、ぎいいと廊下が軋んだ。

 あたしはそれをしばらく見ていた。おばあさんはあたしに気づかない様子で、そのまま家の中へと入ってしまった。

 あたしは、お腹が減っていた。

 

 

■7

 

 手前の縁側に上り、おばあさんが歩いていた道を辿った。廊下の向こう、小屋の前には食べ物が置いてある。

 あたしが踏み出すと、廊下がぎい、と鳴った。小屋の前の蛍光灯がパチンと弱く点滅する。喉がからからになった。

 少ししても、辺りの虫の声が鳴り続けているだけでなにも変化はなかった。

 安心して、それから次の一歩は廊下が鳴らないように細心の注意を払った。ぎ、ぎ、と小さな音はしたが、辺りに響くほどではない。

 お味噌汁から湯気が立っていた。海苔で巻かれたおにぎりと、よく味の染みていそうなお新香が添えられている。

 滲んできたよだれをごくりと飲み込み、そっと手を伸ばす。

 背筋がぴんと張り詰めた。目の前の扉がススッと開くと、中から白い手が音も無くあたしの腕を掴んだ。

「お腹が減っているのかい」

 白い手の主はその顔も白い肌で覆われていて、眼鏡の奥の瞳の色は淀んでいた。その白髪交じりの大人は白衣を着ていたから、きっとお医者様なんだと思った。

 あたしは嘘をつくことを知らなかったから、正直にこくりと頷いた。声は、出なかった。

「これ、食べたい?」

 また頷くと、お医者様は白い顔でにんまりと微笑んだ。

「食べていいから」

「ほんとう?」

 その時やっと声が出た。この空腹を癒せることが嬉しかったんだと思う。我慢しなくていいのは初めてだったから。

 不気味な白さのお医者様だけど、きっとお医者様だから優しいんだ。なんだ、怖がらなくてよかった。

「ああ、お入り」

 お医者様がお盆を持って中に入れてくれた。

 その部屋の中には大きな機械が色々あって、どれも見たことのないようなものばかりだった。

 部屋の隅にはケージが積み上げられていて、中で真っ白なネズミがケージをカリカリと掻いていた。

 後ろで扉が閉まり、カチリと鍵のかかる音が聞こえて、お医者様はまたにんまりと微笑んだ。

「ちょうど、欲しかったんだ。君みたいなのが」



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