【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 112 [千五百七十三年 十二月中旬]
书名 战国小町苦劳谭
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十三年 十二月中旬(*原文网页序列号 - 129)
静子の許に根を下ろした昌幸たち真田衆は、環境の違いもあって戸惑いはしたものの、一ヶ月と経たずに尾張の生活に適応していた。
在静子的庇护下,经过不到一个月的时间,扎根于这里的真田家族,虽然一开始略显困惑于这个新环境,但很快便适应了尾张的生活。
嬉しい誤算として、間者の重要性を認めて評価してくれる昌幸を頼って、武田家の間者たちが続々と出奔して集まってきたという事があった。
据说有一件令人高兴的意外,就是武田家的间谍们开始辞职并纷纷聚集到了昌幸的身边,认识到间谍的重要性并予以肯定。
「今は亡き信玄公が心血を注いで育て上げた間者たちを、そっくりそのまま貰えるのです。対して武田家は苦心して築いた情報網を失い、今や日々の連絡にも不自由しているとか。私たちは濡れ手で粟を掴むようにして、彼らの手足を奪えるのです。幸運だとは思いませんか?」
“现在我们可以完全获得由已去的信玄公费心培养的间谍们。而武田家则失去了苦心建立的情报网络,现在甚至连日常联络也困难重重。我们可以轻松夺取他们的手脚,这不是很幸运吗?”
静子の家臣の一人が、昌幸の許に間者だけが増え続け、よそ者が大量に入り込むことを危惧し、静子に警告してきた。
静子的家臣之一向她发出了警告,说昌幸家中间谍不断涌入,外来者大量进入,这是令人担忧的情况。
それに対する静子の返答がこれだ。確かに数が増えれば管理が難しくなる。武田家から送り込まれた間者もいるだろうが、それすらも昌幸が手を尽くして取り込んでいた。
静子回答道:确实,如果数量增加,管理就会变得更加困难。虽然武田家派来间谍,但是昌幸已经竭尽全力把他们纳入麾下了。
そして静子の指摘通り、現在の武田家は情報網が機能しておらず、自領以外の情勢などさっぱり判らない鎖国状態に陥っていた。
而且正如静子所指出的,现在的武田家族情报网络失灵,对自己领地之外的情况不了解,陷入了闭关锁国的状态。
敵国に接する領地を持つ武田家家臣達は、外の情報を必要として間者を引き留めようとしたが、一度傾いた天秤が戻ることは無かった。
持有接壤敌国的领地的武田家家臣们需要外部情报,于是试图留住间谍,但曾经倾斜的天平无法回到原来的位置。
『三ツ者』、『歩き巫女』と言った諜報員を統括する組織が崩壊し、外部の情報が全く入ってこないという危機に直面していたが、国内を纏め上げる事に必死の勝頼は、これらを顧(かえり)みようとはしなかった。
“三者组”、“步行巫女”等负责监管间谍的组织已经崩溃,面临着完全不吸收外部信息的危机。然而,为了维护国内的稳定,勝頼不愿回顾过去,拼命地集结国内的力量。
「随分と人が増えたね。前の報告時点で200名ほどって話だけど、日々合流してきているみたいだし、実数はもっと多いんだね」
“人数增加得很快啊。之前的报告时候是200人左右,但每天都有人加入,实际数字可能更多。”
「信玄公直轄の集団もありましたので、実態を把握していたのは信玄公のみだったかと」
「也有由信玄公直接管轄的團體,所以了解實際情況的只有信玄公嗎?」
昌幸は集まってくる間者たちを、自分を頂点とした組織に取り込み、再編した組織の概要を静子に報告していた。
昌幸将前来汇聚的间谍收入以他为顶点的组织中,并向静子汇报重新编制组织的概要。
昌幸は精力的に働いていた。僅かな期間で指揮系統の崩壊した組織を再構築し、新たな諜報網として展開し、随時各地から情報が入ってくる体制を整えつつあった。
昌幸精力充沛地工作着。在短时间内重建了一个指挥系统崩溃的组织,并将其扩展为一个新的间谍网络,同时建立了一个从各个地方不断进入信息的体制。
急造の組織ゆえか、情報密度の偏りが存在するものの、人員が行き渡れば満遍なく情報を得られるため、さしたる問題とは考えられていなかった。
由于紧急建立的组织,存在着信息密度的偏差,但只要人员分布均匀,就能得到全面的信息,因此并未被视为严重问题。
「無理に指揮系統を組み替える必要はないね。従来の指揮系統の上に真田殿を据えるのと、監査要員を挟むぐらいかな? 急激な組織の改変は混乱を招きます。現状を維持しつつ、必要に応じて組み替えましょう」
“没有必要强行重新调整指挥系统。只需要在传统的指挥系统之上设立真田殿和审计员。急剧改变组织架构会导致混乱。在保持现状的同时适当地调整组织结构。”
「はっ」
「はっ」 - 哈 (Hā)
「それにしても、短期間で良くここまで調べ上げたものです。上様からもお褒めの言葉を賜っています。これからの働きにも期待していますね」
无论如何,您已经在短时间内做了这么深入的研究。我们也收到了上级的赞赏之词。期待您今后的表现。
「ご期待に副(そ)えるよう奮励努力いたします」
「我会努力奋斗,让你们的期待得到满足」
昌幸にとって今が正念場であった。かつての武功など、織田家に於いては何ら意味をなさない。しかし、働けば働くほどに評価され、活躍の場は広がっていく。
对于昌幸而言,此时是一个重要的关键时刻。他曾经的战功在织田家中已经毫无意义。然而,只要努力工作,他就会得到认可,他的工作机会也会拓宽。
間者組織を刷新し、各地の情報を適宜収集し、それらを集約・精査して信長へと定期的に報告する体制。このシステム作りを以て武功として賞された。
刷新间谍组织,适时收集各地信息,并将其集中、审查后定期向信长报告。这个体制的建立被视为一项功绩。
織田家にとって有用であるのなら、その功はいくさ場に限らないという評価方針は、手勢に兵力を持たぬ昌幸にとって非常にありがたかった。
如果对织田家有用的话,这个评价准则认为功劳不仅限于战场,对于没有手下士兵的昌幸来说非常有用。
真田家を出奔するに当たり、有能な将兵は殆ど本家に置いてきた。昌幸はあくまでも『家督争いに敗れて放逐された』という体(てい)でいなければならない。
在真田家出逃时,大部分有能的将士都留在了本家。昌幸必须坚持身为“在继承家督争夺战中失败并被放逐”的身份。
自分に追手すら掛けた本家ではあるが、自分が原因で古巣にあらぬ疑惑を向けられる事に忸怩(じくじ)たる思いがあった。
我虽然是对自己进行了追捕的正统,但由于自己的原因,我为古巢庇护了无辜之人,感到非常的内疚。
「根を詰め過ぎないようにね」
“不要过于拘泥于细节。”
見るからに肩に力が入り過ぎている昌幸を見て、静子は苦笑しつつ忠告した。
看到昌幸看起来肩膀过于紧张,静子一边苦笑着,一边给出了忠告。
冬も深まり十二月に入ると、いくさの気配は遠のいた。農閑期こそ仕掛けやすいのは道理だが、それどころではない差し迫った理由が存在した。
冬天愈深,进入十二月份,战事的气息渐渐远去。农忙季节本来是发动战争的合适时期,但眼下存在着十分紧迫的理由,已不及考虑此事了。
織田家に関することだけを拾い上げても、京や近江と言った畿内の穀倉地帯からの税が集計され、大規模な不作が判明したからだ。
只是关于织田家的事情被捡起来,这是因为从京都和近江这样的内地谷仓地区集中征收的税收被计算出来,发现了大规模的歉收。
正確な検地が行われていないため、平均的な収穫量の計算は出来ないでいたが、百姓らの言に依ると例年の六割程度しか収穫出来ていないという。
由于没有进行正确的测量,因此无法计算平均收成,但根据农民的说法,他们只收获了往年约60%的作物。
信長の支配地に於いて、食料に余裕があるのは美濃と尾張のみであり、新たに傘下に収まった畿内の領地では、余裕など望むべくもない。
在信长的统治地区中,只有美濃和尾张两个地方有充裕的粮食,而新附属于畿内的领土中却没有任何余裕可言。
例年並みであってすら、ぎりぎり食いつなげるという状態であったため、四割も足らぬとあっては非常事態と言えた。
即使是平常都勉強维持生计的情况下,缺少四成也可以被称为紧急情况。
このまま放置すれば民は飢え、一向宗たちが扇動すれば容易に一揆に発展する。一揆が起これば堺と京、尾張を繋ぐ物流の大動脈が停滞することになる。
如果这样放置不理,民众将会饥饿,一向宗一方面煽动,容易引发暴动。倘若发生暴动,会导致连接着堺与京都、尾張的物流大动脉停滞不前。
これらを考慮した結果、信長は美濃や尾張の余剰米や、新たな支配地用に積み立てていた備蓄米すら放出した。
考虑到这些因素,信长甚至释放了美濃和尾张剩余的米粮,以及为新的统治地区储备的储备米。
この施策のお陰もあって、畿内での騒動は起きなかったが、信長にとってもいくさが出来る程の余裕は無くなった。
由于这项政策的恩惠,京阴地区没有发生骚动,但信长也没有足够的余力来进行战争。
差し迫った脅威もないため、信長は支配地全域の統治強化に舵を切った。
由于没有严峻的威胁,信长开始加强对支配领土的统治。
これにより各地の統治を任されている家臣達も、検地や農業改革といった富国政策を重視した領地経営に勤しむようになった。
因此,负责治理各地的家臣们开始致力于强调富国政策的领地经营,例如地租调查和农业改革。
「農業改革は良いけど、何かある度に私を頼るのは勘弁して欲しいね」
「农业改革虽然好,但是每遇到点事就来找我可不要了」
信長の支配地各所から、農業指導出来る人員を派遣して欲しいだの、非常識な程の短納期で農機具を大量に用意して欲しいだの、と言った要望が上がってくることに静子は辟易としていた。
从信长的统治地各处出现了许多要求,例如派遣农业指导员以及为非常短的时间内大量准备农机具等等。静子感到非常疲惫。
なるべくなら現地で産業を起こして、内需を拡大する方針を取って欲しいと考えていたが、生き急ぐ武将たちに待てというのも酷な話であった。
最好在当地创立产业,采取扩大内需的政策,但对于急着求生的武将来说,让他们等待也很残酷。
現地近辺で賄えるものは、商人たちの伝手を通じて都合を付け、それすらも難しいものは静子が用意することで対応した。
在当地能够获得的东西,通过商人的联系进行安排,即使这样做也有困难,静子也会做好准备应对。
そうこうしている間にも季節は巡り、十二月も半ばとなる。年の瀬を目前に控え、誰しもが慌ただしい日々を送っていた。
就在这样匆忙中,季节转换了,已到了十二月中旬。年关将至,每个人都在过着忙碌的日子。
静子も忙しい仕事の合間を縫って時間を捻出し、金子の入った木箱を抱えて家臣たちの家へと向かう。
静子也抽出时间在繁忙的工作之余抱着装着金子的木箱前往家臣们的家。
「静子様にご足労頂くなど、勿体のうございます。御用とあらば何時でも馳せ参じましたものを」
「请让静子女士费心实在是太客气了。只要有事,我随时都可以前来务听使唤。」
玄朗が静子に深々と頭を下げた。武田軍の撃退に始まり、その後の長島一向一揆、浅井・朝倉戦でも目覚ましい武功のあった玄朗は、信長より士分に取り立てられていた。
玄朗深深地向静子鞠躬。从击退武田军开始,到在长岛一向一揆和浅井朝倉之战中表现出色,玄朗在信长的任命下获得了士分。
士分と言っても足軽ではなく、騎乗を許される士分として遇された。
虽然被称为士分,但并不是足轻,而是被视为允许骑乘的士分。
名字を名乗る事を許された玄朗は、名字を尾張楠木(おわりくすのき)、仮名(けみょう)を玄朗とし、諱(いみな)を静子から一字を頂戴して静興(しずおき)と名乗るようになった。
被允许使用名字的玄朗,将姓氏定为尾張楠木(おわりくすのき),用假名(けみょう)写作玄朗,从静子处接受一个字并将其諱(いみな)定为静興(しずおき)。
身分に相応しい衣類や調度、武家屋敷も与えられ、信長から拝領した刀を佩き、その名に恥じない出で立ちとなっていた。
赋予了相应身份的服装、器具和武家住宅,佩戴着从信长领受的刀,成为了名副其实的人物。
明日をも知れぬ食い詰め者であった頃からすれば、信じられない立身出世を成し遂げ、一廉(かど)の成功者とみられていた。
从不知道明天会发生什么的拮据时期起,现在已经实现了令人难以置信的成功,并被视为一位成功者。
尤も彼自身は何も変わっておらず、己を引き立ててくれた静子の恩に報いるべく、一層の忠誠を誓っていた。
尽管他本身没有改变,但为了回报静子所提供的帮助,他发誓要更加忠诚。
「こういう機会でも無いと玄朗爺の顔を見られないからね。この一年、本当にご苦労様でした」
“如果不是这种机会,就见不到玄朗爷的面了。谢谢你过去一年的辛勤工作。”
静子がそう言うと、後ろに控えていた小姓が進み出る。小姓は玄朗の前に膳を置くと、一礼して後ろに下がった。
静子这样说时,站在后面的仆人走上前来。仆人将膳放在玄朗面前,鞠了一躬,然后退到了一旁。
静子は自身が抱える木箱から、美濃紙に包まれた金子を取り出して並べ、膳を玄朗の許へと滑らせた。
静子从她抱着的木箱中取出用美浓纸包好的金子,摆在膳上,将膳滑到玄朗面前。
現代で言うところの冬の賞与である。年の瀬から新年にかけては色々と物入りとなる。
现代所说的冬季奖金。年末到新年期间会变得多事多难。
新しく家を興した玄朗ともなれば、その度合いも一入(ひとしお)であるため、それを補填するためにも静子が褒賞金を制度化した。
当玄朗新建了一栋房子时,这是一次大规模的事件,因此静子制定了奖励金制度来弥补这种程度的巨大开销。
「格別のご配慮、忝(かたじけの)う存じます」
"特别的关照,我非常感激"
他の家臣達にも配るため、そこまで大金という訳ではないが、それでも自分を気遣ってくれる静子に玄朗は感謝の念を抱いた。玄朗は恭しくお膳から金子を頂戴すると、懐に収めた。
为了分发给其他家臣,虽然不是很多钱,但玄朗仍然感谢静子对他的关心。玄朗恭敬地从盘子里取出金子,放进怀里。
「本当は近況とか聞きたいんだけど、今日しか皆のところを回れる時間が取れないから、悪いけど失礼するね」
“其实我想了解最近的情况,但今天只有这么点时间可以走访大家,真是不好意思,失陪了。”
「ははっ! 貴重な時間を頂戴し、ありがたく存じます。年の瀬も迫り、人通りも多くございます。くれぐれも道中、お気を付け下さいませ。御身に何かあっては日ノ本にとっての損失。この玄朗、何を差し置いてでも駆けつけますので、御用の折はお声掛け下され」
“哈哈!我非常感謝你給予寶貴的時間。年末即將到來,人潮也很多。請在路上小心。如果您出了什麼事,對日本來說也是損失。玄朗會盡全力前來幫助您,如果需要協助,請告訴我。”
「うん、十分に気を付けるよ。でも年末はゆっくり休んでね。体を休めることも大事な仕事だから」
“嗯,我会非常注意的。但年末你一定要放松,好好休息。休息身体也是重要的工作。”
「はっ!」
"「はっ!」" translates to "「哈!」" in Simplified Chinese.
軽く言葉を交わした後、静子は玄朗の屋敷を後にした。これから仁助たちの家も回る必要がある。
轻轻地交换了几句话后,静子离开了玄朗的宅邸。现在还需要去拜访仁助他们家。
本来であれば静子が出向くのではなく、彼らを屋敷に招いて褒賞を渡すのが道理である。
本来应该是请客人来府上颁发奖励,而不是静子去外面。
しかし、静子直属の功があった家臣だけでも、自ら出向いて暮らしぶりを確認して、その功を賞したいという静子の思いに、近侍達も根負けして、行列を作りながらの褒賞渡しが行われている。
然而,静子想要奖励那些直接为她做出了贡献的家臣,甚至亲自前往确认他们的生活,并且组织了一个颁奖队伍进行表彰。近侍们也被感染了这份心意,一同组成了队伍参与了这次颁奖典礼。
無論、全員を回ることなど到底為しえないため、安全上の配慮からも側近や、特に功のあった者に対象が限られていた。
由于无论如何都无法走遍所有人,因此为了安全起见,只限制在亲信或特别有功的人。
「確かこの辺りに……お、いたいた」
「确实在这附近……哦,找到了」
開けた土地にポツンと建つ道場のような建物に、静子は足満とともに足を踏み入れた。
静子和足满走进了一个像道场一样孤零零地立在开阔土地上的建筑物。
「これはこれは静子様。このようなむさ苦しいところへお越し頂けるとは、どういった御用でございましょう?」
「哎呀,这不是静子小姐吗?您来这样一个狭窄拥挤的地方,不知道您有什么事情要办呢?」
目的の人物は才蔵であった。この建物は鍛錬場と呼ばれ、長可が愛用しているのを見た才蔵や、高虎も触発されて鍛錬を行うようになった。
目的人物是才藏。这个建筑被称为锻炼场,长可常常使用它,看到他使用后,才藏和高虎也被激发开始进行锻炼。
慶次は何かしら理由を付けて同行しないのだが、彼は見えないところで常識はずれの鍛錬を行っている。
景次总能找到理由不同行,但他在看不见的地方进行着超出常识的锻炼。
しかし、傾奇者としては必死に努力している様など見られたくはないという、彼なりの矜持があった。
然而,他有着自己的自尊心,不想被人看作是死死地努力的傾奇者。
「鍛錬を中断させてごめんね。ほら、言っていた冬の褒賞を渡そうと思って」
“抱歉让你中断了训练。我想把之前说过的冬季奖励给你。”
「静子様にご足労頂かずとも、お呼び頂ければ参じましたものを」
"即便不用让静子大人亲自前来,只要有所召唤我便前来了"
「気にしないで。私が好きでやっている事だしね」
“别在意。这是我喜欢做的事情。”
笑いながら静子は足満から金子を受け取り、それを才蔵に手渡しする。才蔵は衣服を整え、一礼すると金子を恭しく押し抱いた。
笑着,静子接过了从足满手中递来的金子,并将其交到了才藏手中。才藏整理了一下衣服,恭敬地鞠了一躬,双手紧紧地抱着那些金子。
「鍛錬は順調かな?」
“锻炼顺利吗?”
「恥ずかしながら、捗々しくはございませぬ」
“恕我惭愧,未能高效地进行工作。”
静子は訊ねながらも才蔵が吊るしたであろう紙を見やった。静子の視線の先を眺め、才蔵が自嘲しながら答えた。
静子一边询问,一边看到了才藏挂起的纸张。她注视着纸张,才藏自嘲地回答着。
才蔵が行っている鍛錬は単純だ。梁から糸を垂らし、その先に穴を開けた紙を結びつける。
才藏进行的锻炼很简单。他把一根线垂在梁上,然后在线的末端系上打了孔的纸片。
第一段階は吊るされた紙を槍で斬る。第二段階は紙を突く。最終段階は鎧戸を開けて、風に揺らぐ紙を斬る、もしくは突くのだ。
第一阶段是用矛斩断悬挂的纸。第二阶段是刺穿纸张。最终阶段是打开铁门,斩或刺摇曳在风中的纸张。
口で言うのは簡単だが、いざ実行するとなると、その難しさが理解できる。
说起来容易,做起来难,只有当真正付诸实践时,才能理解其难易程度。
身近な例でたとえるなら、長さ3メートル程度のステンレス製物干し竿を用意し、先端に濡れたジーンズを吊るす。
如果用身边的例子来比喻的话,就是准备一根长度约为3米的不锈钢晾衣杆,然后在杆的末端挂上湿润的牛仔裤。
その状態で、出来る限り手元を短く持って、先端を台座に載せようとする難しさだろうか。
在那种状态下,尽可能地缩短手的长度,把尖端放在底座上会有多大的难度呢?
重心が前方に偏っているため、先端を静止させることすら難しく、末端を握っているため、少しの動きが先端では大きな動きとなって現れる。
由于重心向前倾斜,甚至静止先端都很困难,拿住末端时,轻微的动作在先端会呈现出较大的运动。
これが才蔵の用いる大身槍ともなれば、穂先が二尺を超えるダマスカス鋼製であるため、その重量たるや想像を絶するものがある。
这是才藏使用的大杆矛,由于其刃长超过两尺,刃身由大马士革钢制成,因此其重量堪比想象。
前述の重心バランスに加えて、柄自体が重量でしなるため、標的となる紙に当てることすら余人には困難となる。
除了之前提到的重心平衡外,由于握柄本身就有所弯曲,因此就算是也对准靶纸都变得十分困难。
「斬る事に関しては苦労しませぬ。しかし、突くとなると勝手が違います」
「砍东西并不费力,但是如果要刺则情况就有所不同。」
流石は槍の名手たる才蔵らしく、先端をぶれさせる事も無く気合一閃、標的を切り裂いて見せた。次に槍を手元に引き寄せ、腰だめに構えると、槍をしごいて繰り出した。
他果然是槍的名手,如同才藏一般技藝高超。他毫不搖晃槍尖,施展出了一個氣勢煥發的一閃,將目標撕裂。接著,他拉回槍,站穩,以腰力振出槍尖。
しかし、槍の先端は標的から外れた空間を貫いた。槍とは基本的に叩くものだが、いくさではそうそう都合良く槍が振るえる状況ばかりではない。
然而,枪尖穿过了目标之外的空间。枪基本上是用来敲打的,但在战斗中,并不总是能方便地使用枪。
そこで才蔵は、左右に空隙が無くとも攻撃できる突きや、突きから変化させることで斬撃に繋げる鍛錬を己に課していた。
因此,才藏强迫自己经受突刺攻击并将其转变为刀刃攻击的锻炼,即使左右两侧没有空隙也可以攻击。
使うかどうかは状況次第だが、切れる手札が多いに越したことはない。
使用与否取决于情况,但是最好手中有越多的牌能够使用。
「上から下に重量を載せて叩けば、相手を鎧の上からでも弱らせられますが、鋭く突いて引き戻せれば相手を屠った上で、より早く次の攻撃を繰り出せるのです」
如果从上方向下方施加重量并敲打,即使在对手的铠甲上也可以削弱对手,但是如果猛烈刺击并拉回对手,那么就可以在屠杀对手的同时更快地发动下一次攻击。
叩いて転ばせ、突き殺すという二動作よりも、突いて引き戻せば、次の攻撃準備にもなる。理想を言えば一撃一殺が望ましい。
与其采取击倒再刺杀的两步走策略,不如采用突刺后再拉回的方式,这样可以为下一次攻击做准备。理想情况下应该在一次攻击中解决战斗。
この考えは当然いくさ場でも有効だが、往来の多い街中などで護衛を務める馬廻衆としての考えが強く出ていた。
这个想法在战场上当然也很有效,但作为保护城市等人流繁忙地区的侍从队,更强调了这个想法。
群衆に紛れて貴人を襲う輩を、人の隙間を縫って素早く仕留め、次の攻撃に備え続ける。
混在人群中袭击贵族的人们,迅速趁机消灭并继续准备下一轮攻击。
群衆だけでなく同僚を盾にされた場合も考慮し、僅かな隙間でも刺し貫ける精度を身につけようと懸命に考えた末の鍛錬であった。
考虑到不仅仅是人群,如果同事也被用作掩护,我努力地思考,经过训练,掌握了即使在极小的空间内也能刺中目标的精度。
「まあ、こういうのは一朝一夕に身に着くものじゃないよ。参考になるかは判らないけど、姉が長柄の武器を使う時は捻ると先端が安定するって言っていたよ」
“这种技巧不是一蹴而就的东西。虽然不知道能否对你有所帮助,但我姐姐说当使用长柄武器时,如果扭转,就能使末端更稳定。”
「ほう! 捻るのですか?」
"哦!您是要扭曲它吗?"
「なんだっけ、ジャイロ効果? ともかく槍を回転させながら突けば、先端は収束するみたいだよ」
不知道,陀螺效应?不管怎样,握着枪旋转刺的话,先端好像会汇聚在一起。
「捻る……何やら光明が見えた気がいたします」
“扭动……感觉看到了某种光明。”
「手元だけで捻ると、逆にぶれるんだっけな? まあ、聞きかじりだから参考程度にね」
“只用手指不断地捻伸,不是反而会显得轻轻晃动吗?嘿,只是道听途说,仅供参考而已。”
「はい、肝に銘じております。己の努力が正しいか、自問自答しつつ鍛錬を行って参ります」
“是的,我刻苦铭心。我将自我怀疑并锤炼自己,在努力是否正确的同时。”
「ならば良し」
"那就好"
才蔵の言葉に、静子は親指を立てて言葉を口にした。
才藏说完后,静子竖起了大拇指,说了一句话。
冬の賞与を渡し終えた静子は、いよいよ年末の準備を始める。とはいえ、昔のように全ての作業を自分でする訳にはいかない。
冬季的奖金已经发完,静子开始准备年末的事务。但现在不可能像过去那样自己完成所有工作。
彼女にとってはもどかしくとも、指示を出して配下に作業をさせる必要があった。
她虽感到不安,但仍需要下达指示,让下属进行工作。
「うーん。年越しの準備は楽しいんだけどね」
"嗯。虽然准备跨年很有趣呢。"
腕まくりをしつつ、意気揚々と年越しの準備に加わろうとした静子だったが、彩と蕭から『主人が準備に奔走しては、家人の能力を疑われます。どうかご自重下さい』と諫められた。
静子准备过年时卷起袖子加入其中,但被彩和萧劝阻:“如果主人忙碌,会怀疑家人的能力。请自重。”
結果的に静子は、為すべき作業をリストアップし、それに従って作業を進めるよう指示を出せば、後は一切やることが無くなってしまった。
最终,静子列出了应该完成的任务清单,并根据清单进行工作,然后就再也没有其他事情要做了。
実質的に家内の事は彩と蕭が取り仕切っており、静子に対して質問すらないため、思いのほか暇を持て余すことになった。
实际上,家务事由彩和萧负责,甚至没有向静子提问的机会,所以她比想象中更加闲得无聊。
部下が優秀だと楽を出来るが、手持無沙汰なのも困るなと静子は思った。
部下越优秀越轻松,但静子也担心太无所事事的下属会带来麻烦。
「上に立つ者の宿命だな」
“站在上面的人的宿命啊” (Zhàn zài shàngmiàn de rén de sùmìng a)
静子の愚痴に足満が応じる。
静子发牢骚,但足满对此做出了回应。
以前は静子一人に負荷が集中していたが、いくさで長期間家を空けることが多くなり、彩や蕭が留守を預かることで鍛えられ、彼女達で処理できる仕事の範囲が増えた。
之前,负担都集中在静子一个人身上,但随着战争使她经常长期离家,彩和萧开始代替她处理家务,他们的经历增加了能够处理的工作的范围。
もはや静子に残されているのは、報告を聞くことと、彼女でなければ決裁出来ない事案か、信長からの命令書などに限られる。
现在静子留下的只有听取报告,或者仅限于她才能决策的问题或信长下发的命令等等。
「私の役目って、金策と各部署の調整ぐらいしかなくなってきたよ」
"我的工作已经只剩下筹集资金和协调各部门了。"
「社長や会長が仕事の詳細を把握していないのと一緒だ。暇が出来たなら、畑仕事でもしたらどうだ」
"和社长或会长不了解工作详细情况一样。如果有空的话,去干点农活怎么样?"
「……ないの。皆、優秀でね。私が作業することが無いの」
「没有啊。大家都很优秀。我没有什么工作要做。」
足満の言葉に、静子は重いため息を吐いた。繊細な作業を求められる一部品種の栽培を除けば、静子でなければ出来ない作業は無くなってきていた。
静子听了足满的话,叹了口重重的气。除了那些需要做一些精细操作的部分,其他工作都不需要静子完成了。
それぞれの作物に担当者が付き、最初こそは助言を求められる事もあったが、今では立派に成果を出していた。
每个作物都有一个负责人,起初可能需要寻求建议,但现在已经取得了显著的成果。
文字の読み書きを覚えさせたことで、栽培記録が付けられ、優秀な者がそれを元に教材を作るまでに至っていた。
通过教授文字的阅读和书写,记录种植信息,优秀的人通过这些记录创作了教材。
これら全てが出世欲などではなく、いつも忙しい静子に楽をさせようと言う善意から来ているため、彼女としても口を噤むしかない。
所有这些行为都不是出于升迁的野心,而是出于想让总是很忙的静子能够轻松些的善意,因此作为她,我只能保持沉默。
「その内、マンゴーとか南国系の果実も手が離れるかもね。カカオも来年の五月ぐらいには実を付けそうだし……コーヒー豆も順調だし……。新しい作物の種でも輸入しようかしら」
「可能很快就会有芒果和其他热带水果了。可可似乎也在明年五月左右结实……咖啡豆也很顺利……我们应该考虑进口一些新的作物种子。」
「考え事は構わぬが、さっきから手が止まっているぞ。持ち時間はもうないから、考慮時間を使い切る前に次を指せ」
“思考问题无妨,但你手里已经停了一段时间了。我们没有多余时间了,所以在耗尽思考时间之前,请指出下一步。”
砂時計を示しながら足満は将棋盤に目を落とす。
足满看着将棋盘,同时指了指沙漏。
戦局は既に静子の負けが9割方確定している状態だった。大駒である飛車は残されているが、敵陣に単騎で取り残され、身動きが出来ずに見事に死に体となっていた。
战局早已处于静子九成输定的状态。飞车虽然还没被吃掉,但已孤身深入敌阵,动弹不得,成了生命垂危的状态。
王を守る囲いも半ば崩壊し、足満に一手の猶予が出来れば静子の負けが確定する。静子としては足満に王手を掛け続けなれば、即座に敗北するという崖っぷちに追い込まれていた。
王的保护围栏已经半毁,如果足满能有一步的缓冲时间,静子就已经输定了。对于静子来说,如果不能一直对足满进行攻击,她就会立即陷入失败的境地。
「いや、ここに桂馬を打てば、合駒は利かないから詰みだよね!」
“不,如果在这里走桂马,那将无法使用合子吃子的战术,所以就输了啊!”
「残念ながら、それでは駒が一つ足りぬ。ほれ、こう逃げれば次の王手は出来まい」
“遗憾的是,这样棋子就会少了一颗。看,这样逃跑就不会受到下一个将军的攻击。”
「ぐぬぬぬっ」
“ぐぬぬぬっ” 翻译成简体中文是“嗯嗯嗯嗯”
将棋盤を舐めるように見つめるが、どう考えても王手を掛ける事が出来ない。そして一手空いてしまえば、後は足満の王手連打を凌ぎきれずに投了となる。
盯着将棋盘看,像在舔一样,但是无论怎样也无法将对方将军。一旦失误,只剩下被对手连续王手的命运了,最终只能认输。
「ありません。こいつに誘われたね……ていっ」
"没有。被这家伙邀请了吗......说什么呢"
投了を示す言葉を告げて頭を下げる静子だが、負けるのは悔しい。そんな思いから、勝敗を分けた足満の『銀』に向かって、己の『歩』を指で弾いて飛ばす。
向对方展示自己认输的姿态并低下了头。但是静子很不甘心输。由于这样的想法,她用手指敲打着自己的“步兵”棋子,并把它们朝着取得胜利的足满手中的“银将”棋子飞去。
「やめなさい」
"停止"
弾かれた駒を足満が掴みとり、元の位置に打ち直す。素直に態度を改めた静子に対して、足満主導で感想戦を行い、それぞれの局面での最善手を模索する。
将被吊销的棋子符子抓住并重新放回原位。在顺从态度得到改变的静子的带领下,足满主导下进行感想战,并寻求每个局面的最佳策略。
それが終わると将棋盤と駒を片付け、足満はすっかり冷めて温くなった茶で喉を湿らせた。
把棋盘和棋子收拾好后,足满喝了一口已经冷却的暖茶润喉。
「次は負けないよ。積年の屈辱を晴らしてくれる!」
「这次一定不会输。要赢回多年的耻辱!」
「そうは言うが、随分と黒星が溜まっておるぞ。感情に流されず、負けた原因を追究して精進せよ」
“虽然如此说,可是黑色棋子已经积攒了很多了。不要受情绪左右,追究失败的原因并努力进修。”
「私が将棋の手ほどきをしたって言うのに!!」
“我说了我给你下棋指导了啊!!" (Simplified Chinese)
「まあ、そこは年の功と言うものだ」
"嗯,那就是年龄的功劳了"
静子が再戦を求めていると理解した足満は、再び将棋盤を戻して駒を並べる。静子も自分の駒を並べ終えると、振り駒をして先手を決めた。
理解了静子想要再战的足满,再次调出象棋盘并排列棋子。静子也排完自己的棋子后,摇了摇色子决定谁先行棋。
「そうそう、新居に移って以来、屋敷内がすっきりしているな」
“对了,自从搬家到新居以来,庭院内感觉舒适多了。”
今回は静子が先手となり、互いに駒を指す音しかしないなか、不意に足満が言葉を発した。
这次静子先手,双方只有指棋的声音响起,却突然被足满说出话来。
彼の言にある通り、以前の静子邸では敷地面積に対して物が多く、雑然とした印象となっていた。
他的话是对的,在之前的静子住宅中,相对于地块面积,物品太多,显得杂乱无章。
しかし、新居に移って以降は家人が増えたためか、細かいところまで目が行き届き、整理整頓が徹底されている感がある。
然而,自从搬到新居后,家庭成员增加了,似乎注重细节,整理整齐得到了彻底的实施。
「5Sを教えて、徹底させているからね。PDCAサイクルとかはまだ無理だろうけど、5Sは基本だからね」
“我们教授并严格实施5S。虽然PDCS循环等方面可能还有困难,但5S是基础。”
5Sとはサービス業や製造業に於いて、円滑に業務を遂行できるよう考えだされたスローガンだ。
"5S是在服务业和制造业中设立的旨在顺畅地实施业务的口号。"
『整理』『整頓』『清掃』『清潔』『躾』の5項目からなり、ローマ字で表記すると、全て先頭がSとなることから5Sと呼ぶ。
“整理”、“整顿”、“清扫”、“清洁”、“整理衣物”这5个项目,用罗马字表示时都以“S”开头,因此被称为5S。
5Sとは特別な理念を説く訳ではなく、日々の生活に於いて心掛けるべき事を明らかにし、個人ではなく組織全体として取り組む処にある。
“5S并不是阐述特别的理念,而是明确应该在日常生活中注意的事项,并在整个组织而不是个人方面进行处理。”
余談ではあるが、企業によっては更に項目を追加し、7Sや10Sとする場合もある。
顺便提一下,有些企业可能会添加更多的项目,例如7S或10S。
静子はこの最も基本的な5Sを、静子邸に奉公する全ての人間に徹底して叩き込んだ。
静子把最基本的5S原则严格教育给所有在其家庭工作的人。
毎朝社訓を読み上げさせる経営者よろしく、5Sを確認させる時間を各食事前に設け、暗唱できればおかずが一品増えるという目に見える飴を与えた。
像一位每天早晨都会宣读企业宗旨的企业家一样,我们在每一次用餐前都设定了确认5S的时间,并且会赠送明显的奖励:如果能够背诵,就会多一道菜。
これは若年者ほど覿面(てきめん)に効果があり、家人の仕事ぶりを彩や蕭から聞き取り、ことあるごとに優秀者を皆の前で褒めた。
这对年轻人的效果特别显著,他从家人那里听到了工作的情况,不断地在人前赞扬那些优秀的人。
5Sを徹底すれば静子の覚えがめでたくなるとあって、皆が競い合うようにして5Sを学び、また実践していく。
如果彻底实行5S,静子的记忆将会变得很好,每个人都会努力学习5S,并加以实践。
このお陰もあって、新居では洗い場に漬け置かれた食器なども見なくなり、蓋が開いたままの長持(ながもち)も姿を消した。
由于这个缘故,在新家里,不再看到被放在洗碗池里泡着的餐具,也不再看到盖子没拧紧的长筒袋。
しっかり整理整頓が行き届いた仕事場を維持しているお陰もあって、小さなミスや事故が目に見えて減っていた。
由于保持着整洁有序的工作场所,小错误和事故明显减少。
今では、より効率の良い整理整頓法が模索され、蓄積されたノウハウを体系化するまでに至っていた。
现在,人们正在探索更高效的整理整顿方法,并将积累的经验体系化。
「読み書き算盤(そろばん)に加え、こういった生活の基礎を教え込めば、別の家に奉公しても役立つしね」
"在学习了阅读、写作和算盘之后,教授这些生活基础技能,就算去另一个家里做佣人也会有用处。" Translation to simplified Chinese: "在学习了阅读、写作和算盘之后,教授这些生活基础技能,就算去另一个家里做佣人也会有用处。"
「今では静子の図書館で書を読む下女もいるらしいな」
现在似乎静子的图书馆里有女佣读书了。
当初は少なかった蔵書も、蒐集が進むにつれて部屋を圧迫するようになった。
当初蔵书不多,但随着收集的进行,书籍越来越压迫房间。
そこで静子は一枚の美濃紙を二つ折りにして綴じる、袋綴のいわゆる和装本(わそうぼん)で本を管理するようにした。
于是静子将一张美浓纸对折,装订成袋装的和式书本,用它来管理书籍。
大きさも形式もバラバラの巻物や、紙束を整理して纏め、規格化された美濃紙にガリ版印刷して糸で綴じた。原本は蔵に保管し、複製本に連番を振って木製の書棚に並べた。
整理大小和形式不同的卷轴或堆叠的纸张,用准确的美濃纸规格进行铅字印刷并用线缝装起来。原本保存在库房中,副本则按连续编号排列在木制书架上。
初期には単に書庫と呼ばれていたが、静子が普段から図書室と呼ぶため、いつしか図書室の呼称が広まった。
最初被称为“书库”,但由于静子通常称之为“图书室”,因此“图书室”的称呼逐渐流行开来。
「学習の機会は平等に与えるべきだよ。適性があるかは本人次第だけど」
「学习的机会应该平等地给予。是否有适性取决于个人。」
「学んだことは無駄にはならぬ。知識は誰にも奪えない財産となるのだからな」
"所学之物不会白费,因为知识是无人能夺走的财产。"
静子の言葉に足満は笑みを浮かべて頷いた。
静子的话让足满浮现笑容并点头。
従者たちは年越し準備に忙殺されていたが、主人である静子は暇を持て余していた。久々に本でも読もうと、彼女は図書館に足を向けた。
随从们正在忙于准备跨年,而主人静子则是无所事事。她决定去图书馆看看书,好久没这样做了。
「これは静子殿」
"这是静子大人"
図書室には先客がいた。上杉家から差し出された人質として逗留している長尾喜平次、後の上杉景勝である。彼は手にした本を閉じると、文机から立ち上がって一礼する。
图书馆内已有人,那是长尾喜平次,他是上杉家交出的人质,后来成为上杉景胜。他合上手中的书,从书桌前站起来行了个礼。
静子も思わず頭を下げて、礼を返してから声を掛けた。
静子也不由自主地低下头,行礼回答后才开口说话。
「最近じゃ、図書室の主(ぬし)って呼ばれているみたいだけど、そんなに気に入った?」
“最近似乎被称为图书馆的主人,你喜欢这个称呼吗?”
「はい。ここには古今東西の書が集められており、全てに目を通すとなればどれほど掛かるか想像もつきませぬ」
“是的。这里收集了古今中外的书籍,如果要阅读所有的话,想象都不知道需要多长时间。”
「お金に飽かして、あちこちから掻き集めたからね。随分とお金を使ったけど、それに見合うだけの蒐集は出来たつもり」
“因为对钱厌倦了,所以从各个地方搜集起来。虽然花了很多钱,但我认为我还是能够获得与之匹配的收集品。”
「蔵書の量だけならば僧院の方が多いでしょう。しかし、量と質が段違いです。これほど広範に亘って叡智が集約されている場所など、この日ノ本中を探してもここ以外にはありますまい」
「藏书量方面,寺院可能更多。但数量和质量是天壤之别。在这个智慧集聚的地方,没有其他地方能够比得上这里,即便是搜索整个日本也找不到。」
「そう言って貰えると集めた甲斐があるよ」
"如果能听到你这样说,收集就有意义了"。
「しかも一部を除きその殆どを無料で開放するなど、最初は正気を疑いました。しかし、利用するにつれ、その意義が判るようになり申した」
“而且除了一部分之外,几乎全部都是免费开放的,一开始我甚至怀疑这是不是真的。但是随着使用,我意识到它的意义,于是我表示赞同。”
「ふーん。その心は?」
"嗯。你的心思呢?"
「皆がここで知識を得れば、織田家全体の教養が高まります。下の者が学んでいるのに、上が無学では示しが尽きませぬ。そうなれば皆が勉強に励むことになり、尾張全体に智慧が根を下ろすことになりましょう」
如果大家能在这里获得知识,那么織田家的整体素质将会提高。如果下层的人在学习,而上层则一无所知,那么这种情况将无法持续。如果这样,每个人都会努力学习,使智慧在尾张县扎下根来。
「随分と遠くが見えるようになったみたいだね」
「好像能看到相当远的地方了呢。」
「ただ、南蛮の書は難解で、日ノ本の言葉に直されているのに理解が及びませぬ」
“只是,南蛮的书很难理解,即使已经翻译成日本的语言我也无法理解。”
「あれでも筆記体から印刷用のブロック体に直して、それを更に和訳しているんだよね。原本は蚯蚓(みみず)がのたくっているようで、私も読めないぐらい」
“我把它从手写体转换为印刷体,再加上翻译。原本写得像蚯蚓爬的一样,我自己也看不懂。”
「あれでも読み易くなっているのですか……」
“这样看来变得更易读了吗……”
喜平次は愕然とした面持ちで呟いた。
喜平次惊讶地喃喃自语,面容惊恐。
「南蛮人の虎太郎が解読してくれないとね、あんなくせ字は見分けがつかない」
"如果南蛮人的虎太郎不能破译它,那样的难字我是分辨不出来的。"
人質という立場だが、静子の気さくな態度に喜平次も気が緩んだのか、幾分口調が柔らかくなった。
虽然处于人质的地位,但是看到静子友好的态度,喜平次也放松了些许,语气也变得柔和了一些。
「しかし、我々とは全く違う土壌で育まれた感性で書かれる書には、和書にはない趣を感じます。出来るならば原書を読んでみたくあるのですが、流石に南蛮の言葉を習得するのは……」
“然而,那些用与我们完全不同的土壤培育出的感性所写的书籍,让我感受到了和书中没有的趣味。如果有机会的话,我还想读读原文,可掌握南蛮语言确实太难了……”
「うーん、南蛮語の辞書も作ってはいるんだけどね。ただ、流石に写本になってない原書は閉架書庫に仕舞ってあるし、閲覧するのにも上様の許可が必要だから、貸し出しは無理かなあ?」
“嗯,虽然有制作南蛮语词典的计划。但是像这种未成文的原始文献被保管在封闭的书库里,需要得到上级的许可才能阅读,因此借阅可能不太现实。”
静子の言葉通り、彼女の図書室の閉架書庫には現代で言う稀覯本が山のように眠っていた。
按照静子的话所说,她的图书馆封闭式书库里堆积着大量的稀有书籍,就像一座山一样沉睡着。
例を挙げるとコペルニクスが1543年に出版した『天球の回転について』の初版本。
举个例子,就是尼古拉·哥白尼于1543年出版的《天体运行论》的第一版。
ニッコロ・マキャヴェッリの『君主論』や『戦術論』。
尼可罗·马基雅维利的《君主论》和《战术论》。
デジデリウス・エラスムスの『痴愚神礼賛』や『校訂版 新約聖書』。
德西德利乌斯·伊拉斯谟的《愚见赞》和《校订版新约圣经》。
マルティン・ルターが発表したとされる『95ヶ条の論題』。
马丁·路德被认为发表了《九十五条论纲》。
1555年にリヨンのマセ・ボノムにて出版されたと言われるノストラダムスの『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』の初版本などだ。
据说是在1555年在里昂的马塞·波诺姆出版的诺斯特拉达姆斯的《米歇尔·诺斯特拉达姆斯大师的预言集》的初版。
中にはレオナルド・ダ・ヴィンチ手稿と言う、現代では失われたものまでが存在していた。
其中甚至还存在着现代已经失落的莱昂纳多·达·芬奇手稿。
その真贋については定かではないのだが、二万ページにも及ぼうかという膨大な資料が、万が一にも本物であった場合、遺失させるにはあまりにも惜しいと考えた静子が買い取った物である。
关于其真实性,尚不确定,但静子觉得,这份涵盖着两万页内容的庞大资料如若是真品,就算不幸丢失,也太过可惜。因此,她决定购买此物。
他にもカトリック教会が危険視した書籍のリストである『禁書目録』に名を連ねる本もあった。
还有一些被天主教会视为危险的书籍也被列在了《禁书目录》中。
そういった本が日本に持ち込まれたのには、為政者や宗教家たちの妥協という背景があった。
这些书在日本被带入,背后有政治家和宗教家的妥协。
カトリック教会としては禁書に指定した書籍は処分したい。しかし、膨大な資金を掛けて作られた本を灰にするには惜しい。
天主教会认为被列为禁书的书籍应该被处理掉。但是,对于那些花费大量资金制作的书籍而言,将其烧成灰烬是非常可惜的。
出来る事なら掛かった費用は回収しつつ、現物は闇へと葬りたいというのが本音であった。
如果可以的话,回收费用并将物品埋藏在黑暗中是我的真实想法。
そこで白羽の矢が立ったのが日本への売却であった。非キリスト教国であり、旺盛な知識欲と金に糸目をつけない購買力から、商人や宣教師たちが挙(こぞ)って持ち込んだ。
于是,向日本出售成为了最终的选择。日本是一个非基督教国家,商人和传教士们都积极地将书籍带到这里,因为日本人有着旺盛的求知欲和豪华的购买力。
通常であれば、言葉も判らない西洋の書籍など、少数の好事家が買い集めるぐらいだが、静子は大々的に買い取りを宣言した。
通常情况下,西方的书籍等语言不通的作品只有少数的爱好者会收集购买,但静子却大张旗鼓地宣布了购买计划。
その結果、西洋から持ち込まれる書籍の殆どが、静子の許へと集まってくるようになった。
因此,几乎所有从西方带来的书籍都开始聚集到静子的手中。
カトリック教会としても危険な知識は処分され、対価として少なくない金を得ることが出来る。
在天主教会中,危险的知识会被处理掉,但相应地也会得到不少的金钱作为补偿。
かくして双方の思惑が一致した結果、静子は西洋の本を制限なく購入できるようになっていた。
结果,双方的想法一致,静子可以无限制地购买西方的书籍。
これらを虎太郎がブロック体に書き直したものと、日本語に翻訳したものがガリ切りされ、ガリ版印刷に回される。
这些经过虎太郎转换成方块字体并翻译成日语的文字将被刻成木版印刷。
そうして原本と複製された印刷物に管理番号を振り、原本と原語版は閉架書庫に保管され、日本語訳に関しても検閲を受けて問題なしと判断されたものだけが開架書庫に公開されている。
然后给原件和副本印刷品编上管理编号,并将原件和原版语言存放在封闭书库中。与日语翻译有关的材料也要经过审查,只有被认为没有问题的才会在开架书库中公开。
そして開架書庫に並べられた書籍であれば、静子邸で働く者は自由に閲覧が可能であった。
如果是在开架书库中排列的书籍,静子府的工作人员可以自由查阅。
侍女たちは『枕草子』や『源氏物語』に熱中し、小姓たちは『徒然草』を読んでは、内容について語り合った。
侍女们热衷于《枕草子》和《源氏物语》,而小姓们则阅读《徒然草》,并相互讨论其内容。
ガリ版印刷に適した薄くて硬い紙が用意できないのと、陳列スペースの物理的問題により複数部数あるはずの本は常に誰かの手にあり、順番待ちが発生する程の人気を博していた。
由于无法获得适合凸版印刷的薄而硬的纸张,并且由于陈列空间的物理问题,应该有多份的书籍总是在某人手中,并且变得非常受欢迎,以至于会出现等候的情况。
日本三大随筆の一つにも数えられる『方丈記』は、他の二冊に比べると人気が無かった。
被认为是日本三大随笔之一的《方丈记》,与另外两本相比,人气相对较低。
「まあ、南蛮の言葉については追々覚えていくと良いよ。翻訳出来る人が増えるのは大歓迎だからね。それに他国の思想もなかなかどうして馬鹿には出来ないよ。環境が違うから、全てが適用できるわけじゃないけれど、日ノ本でも通用する概念もあるしね」
“嗯,对于南蛮语言,慢慢记住会很好的。能翻译的人增加了是非常欢迎的事情。此外,其他国家的思想也不是那么容易被嘲笑的。由于环境的不同,不是所有的事情都能适用,但也有在日本通用的概念。”
そう言いつつ、静子は一乗谷から持ち帰った書籍が並ぶ書棚から一冊を抜き出して手に取った。
这样说着,静子从一乗谷带回来的书籍排列在书架上,她拿出一本书。
この図書室には明文化されていない暗黙のルールが一つだけあった。新しく図書室に並んだ本を最初に読むのは静子であるというルール。
这个图书馆有一个未明文化的暗示规则,就是静子有权首先阅读新摆放的图书。
それが為、一乗谷から持ち帰られ、複製を待つ原書が並ぶ棚は手つかずであり、静子だけが順番に借りては読んでいる状態だった。
因此,从一乘谷带回来并等待复制的原书排成一排的书架尚未被触及,只有静子一个人按顺序借阅并阅读。
「よし、今日はこれの貸し出しをお願い」
“好的,今天请借给我这个。”
「はい、承りました」
“好的,我接受了”
静子は本と一緒に、木札を司書に手渡した。静子の図書室で司書を務めるのは、奇妙丸の教育係でもあった爺であった。
静子手拿着书,把木牌递给了图书管理员。在静子的图书馆里,担任图书管理员的是一个奇怪的老人,他也是奇妙丸的教育负责人。
奇妙丸が元服し、信長の許で活動するようになると、彼はお目付け役としての役目を終えた。
奇妙丸成年后在信长府中开始活动,完成了他作为监护人的任务。
静子は教養もあり、学問に造詣の深い人材を埋もれさせるのは惜しいと考え、図書室の司書として働かないかと打診した。
静子认为埋没有受过教育并在学术方面有深刻见解的人才是可惜的,因此建议她考虑成为图书馆馆长。
特に断る理由もなく、待遇は破格に良かったため、爺は二つ返事で引き受けた。それ以来、静子の図書室での貸し出しを一手に担っていた。
特别是待遇非常优厚,爷爷没有拒绝的理由,便毫不犹豫地接受了。从那以后,他便独揽起了静子图书馆的借阅事宜。
図書室から本を借りる方法は現代のそれと大差ない。
从图书馆借书的方法与现代方法没有太大区别。
まず司書に申請して個人用の図書室利用カードに相当する木札を受け取る。借りたい本を貸出台まで運び、自分の木札と一緒に提出する。
首先向图书管理员申请个人图书室使用卡片相当的木质牌子。将想要借阅的书籍搬到借出台,然后与自己的木质牌子一起提交。
司書である爺が、本の管理番号を木札と台帳に書き込み、台帳には更に貸出日と貸出先を記入する。木札は司書が預かり、図書室で管理し、本の返却を以て木札を返す。
图书管理员老爷爷会将图书管理编号写在木牌和台账上,并在台账上记录借出日期和借阅者信息。木牌由图书管理员保管,管理在图书馆内,归还时需要归还木牌。
本を乱暴に扱ったり、汚損したりすれば被害に応じた罰金が科せられる。
如果粗暴地处理书籍或者弄脏它们,将会根据损害程度收取罚款。
「どうぞ」
请返回简体中文翻译「どうぞ」。
「ありがとね」
"「ありがとね」" can be translated to "谢谢啦" in Simplified Chinese.
記帳を終えた後、爺は静子に本を渡し、木札を壁に設けられた貸出札入れに差し込んだ。
记账结束后,爷爷递给静子一本书,然后将它插入到墙上的借阅卡座中。
「それじゃあ、私は失礼するね。あんまり根を詰めないで、偶には外の空気を吸うのも大事だよ」
"那我就失礼了。不要太过紧张,偶尔呼吸外面的空气也很重要哦。"
本を受け取った静子は、読書に集中する喜平次に声を掛けて図書室を後にした。本の世界に没頭している彼の耳に、彼女の忠告が届いていたかは謎である。
静子接过书后,打招呼并离开了图书室,留下喜平次专注于阅读。他沉浸在书的世界中,还不确定是否听到了她的建议。
本を抱えて自室に戻る途中、静子は少し回り道をすることにした。
拿着书回自己的房间的途中,静子决定稍微绕远路。
「やあ、調子はどうかな?」
“嗨,你怎么样了?”
「おや、御主人。直々のご来訪とは珍しい。手探りながら進めておりまする」
“哦,主人。您直接来访真是不同寻常。我一边摸索着前进。”
ここは虎太郎が管理するワイン醸造蔵だ。醸造蔵と言っても、その敷地の殆どが貯蔵スペースとして利用される。
这里是由虎太郎管理的葡萄酒酿造库。虽然称之为酿造库,但大部分土地用作存储空间。
ワインには赤、白、ロゼの三種類があり、主な製造工程は共通している。赤ワインは皮ごと仕込み、白ワインは皮や種子を取り除いて発酵させる。
葡萄酒分为红、白和玫瑰三种,其制作工艺主要是相同的。红葡萄酒在葡萄皮的情况下酿造,白葡萄酒则去除皮和种子进行发酵。
ロゼワインについてはいくつか製法が存在するが、虎太郎はセニエ法と呼ばれる途中で果皮を取り除いて発酵させる製法を採用していた。
玫瑰酒有几种制作方法,虎太郎采用了一种称为塞涅采(Senier)法的方法,在其中间去除果皮并进行发酵。
今回収穫された甲州ぶどうは淡い赤紫色の果皮を持ち、果実は優しい印象の薄桃色を呈する。酸味は弱めで甘みもそれほど強くなく、ワイン造りに適しているとは言えなかった。
这次收获的甲州葡萄果皮呈淡红紫色,果实呈淡桃色的柔和印象。酸味较弱,甜味也不太强,不适合酿造葡萄酒。
しかし、西洋に於けるワイン造りの権益は教会が握っており、彼らは挙ってぶどう畑を開墾しては醸造技術を磨いていた。
然而,在西方,葡萄酒生产权掌握在教会手中,他们纷纷开垦葡萄园来提高酿造技术。
中には教会を訪れる巡礼者にワインを振る舞う事もあり、これが居酒屋のルーツとも言われている。なお、現在のようにワインを瓶詰し、コルクで栓をするようになったのは十七世紀末の事だ。
据说有些酒馆会招待参观教堂的朝圣者喝葡萄酒,这也被称为酒馆的渊源。而类似于现在将葡萄酒装进瓶子,并用软木塞封起来的做法出现在十七世纪后期。
そうした背景もあって、教会の秘儀に属するワインの製法は秘匿され、ワインそのものならともかく、ぶどうの種子や苗木となると途端に持ち出しが難しくなる。
因此,由于这样的背景,教堂的酒,作为秘密,它的酿造方法被保密,而不仅是葡萄酒本身,而是葡萄种子和幼苗,一旦拿出去就难以保密。
イエズス会に要望を出してはいるものの、未だに見通しが立たず、日ノ本でワイン醸造をしようと思ったら甲州ぶどうを用いる他なかった。
尽管向耶稣会提出了要求,但仍没有看到明确的前景。如果想在日本酿造葡萄酒,就只能使用甲州葡萄。
「樽に詰めているってことは、これから熟成するのかな?」
“把它装在桶里,这是要陈酿吗?”
「樫の小樽で発酵を行いましたが、故郷のオークとは勝手が違うため、どんな香りが付いたか判りませぬ。味見をした限りでは少し水っぽい印象を受けました」
“我们在橡树小港进行了发酵,但由于与故乡的橡树不同,我们不知道会带有什么样的香味。从尝试品尝来看,它略带一点水味。”
今回虎太郎が仕込んだのは赤ワインとロゼワイン。
这次虎太郎准备的是红葡萄酒和玫瑰红葡萄酒。
まずは収穫されたぶどうの実を房から一粒ずつに解(ほぐ)す。この際に、ぶどうを洗うと表皮についている酵母菌が落ちるため、極力洗わないようにする。
首先将收获的葡萄从葡萄枝上一个一个地解开。在解开的过程中,尽可能不要洗葡萄,因为洗掉表皮上的酵母菌会影响味道。
次にぶどうの実を軽く圧搾して果汁を流出させ、用意しておいた小樽に丸ごと移して発酵工程に入る。
然后轻轻压榨出葡萄果实中的果汁,倒入准备好的小木桶中,将整个桶放置进入发酵过程。
後は一日数回かき混ぜてカビないようにしつつ、数週間かけて発酵を行う。
之后每天需搅拌数次,以避免发霉,发酵需要数周时间。
ある程度発酵が進んだ段階で、セニエ(フランス語で血抜きを意味する)を行い、液体の中に果皮や果肉、種子の比率を高めて凝集感を出す。
在发酵到一定程度后,进行"塞尼耶"(法语意为"去血"),以增加果皮、果肉和种子的比例,提高液体的凝聚度。
こうして抜き取った部分が赤ワインとなり、残った部分はロゼワインとして次の工程に進む。
这样取出的部分将成为红葡萄酒,而剩下的部分将作为玫瑰葡萄酒继续下一步工艺。
ここまでを一次発酵と呼び、一次発酵が終わると果汁のみを抽出し、残った皮や種子に強い圧力をかけて圧搾する。これらの混合物を再びアルコール発酵させる。
将其称为初始发酵,当一次发酵结束后,提取果汁,然后对剩下的果皮和种子施加高压进行压榨。将这些混合物再次进行酒精发酵。
これが終わると、貯蔵用の樽に移して熟成させる。ここまでの工程を二次発酵と言う。
这些步骤被称为二次发酵。完成后,将其移至储存桶中进行成熟。
この後は熟成期間が進むにつれて樽の下部に澱(おり)と呼ばれる様々な沈殿物が溜まるため、澱引きという上澄みだけ別の樽に移し替える作業を何度か行う。
随着熟化期间的推进,桶的底部会积累各种沉淀物,称为澱。因此需进行澱引,将上面清澈的液体移至另一个桶中,这个步骤需要多次操作。
熟成を終えたワインは残った沈殿物を取り除くため濾過され、最後に瓶詰めを行う。
成熟的葡萄酒在完成后要通过过滤去除剩余的沉淀物,最后进行瓶装。
いずれも単純な作業だが、用いるぶどうの品種や、熟成させる樽の材質、樽の加工処理や、熟成させる年月等によってワインの味わいは変化する。
不同的葡萄品种、成熟木桶的材料、木桶的加工处理和陈年等,会影响葡萄酒的口味,虽然它们都是简单的工作。
同じワインであっても若飲みするのと、長期間の熟成を経てから飲むのとでは違った味わいを見せる。
即使是同样的葡萄酒,年轻饮用和长时间陈放后饮用会展现出不同的口感。
ワインを飲むうえで外せないアイテムとしてデキャンタが挙げられる。お店などでボトルを注文すると、卓上用の容器に移してくれる。この容器をデキャンタと呼ぶ。
在品尝葡萄酒时,醒目的物品之一就是醒酒器。当在店里点餐酒瓶时,店家会将它倒入桌面用的容器中,而这个容器就被称为醒酒器。
厳密に言うと『カラフェ』と『デキャンタ』の二種類があり、それぞれ用途が違うのだが、ここではデキャンタのみを扱うこととする。
严格来说,葡萄酒的组成有两种类型,即“颈瓶”和“酒瓶”,它们的用途不同,但在这里我们只讨论“酒瓶”。
ワインをデキャンタに移し替えることをデキャンタージュと呼び、主に沈殿した澱を除去するために用いられる。
将葡萄酒倒入醒酒器中被称为醒酒,主要用于除去沉淀物。
瓶詰後もワインの熟成は進み、その過程で色素の成分やタンニンが結びついて澱となる。この澱はワインの味わいを大きく損なうため、わざわざ移し替えることで澱を取り除くのだ。
瓶装后葡萄酒仍在发酵成熟,此过程中色素和单宁质结合形成澄清物。此沉淀会严重影响葡萄酒的口感,因此要通过操作将沉淀物从葡萄酒中分离出去。
長期間熟成したヴィンテージワインはデキャンタへ移すことが多い。ただし、ワインの種類によってはデキャンタに移すことで魅力を損なう事もあるため、注意が必要だ。
长时间陈酿的复古葡萄酒通常会倒入醒酒器中。但是,有时根据酒的种类,倒入醒酒器可能会破坏其魅力,因此需要谨慎。
「上手くいけば美味しいワインになるかもね。ただ、血のような色合いが忌避されるかも知れないけど」
「如果做得好的话,可能会变成美味的葡萄酒。但是,像血液一样的颜色可能会被人们所厌恶。」
「売れなければ私が責任を以て消費しますし、南蛮人への手土産にもなりましょう」
"如果卖不出去,我会承担责任消耗掉它,也可以当做馈赠给南蛮人的礼物。"
「くれぐれも呑み過ぎには注意してね?」
“一定要注意不要喝醉了哦?”
「ご心配には及びません。体を悪くする前に酔い潰れますので」
不用担心。我会在生病之前喝醉的。
「それはそれで、風邪とか引いたりするから心配なんだけど」
“不过另一方面,我还是很担心会感冒或者生病。”
「一人酒は控えますのでご安心を」
“我会控制自己喝酒,敬请放心。”
根本的な解決になっていないと思ったが、これ以上しつこく言うのも逆効果かと考え、静子は彼を信用することにした。
我认为这根本没有解决根本问题,但是考虑到继续纠缠可能会适得其反,静子决定相信他。
「ま、ほどほどにね。私は飲めないけど、上様はワインに興味を持っておられるみたいだから」
“嗯,适可而止吧。虽然我不能喝酒,但好像您对葡萄酒很感兴趣。”
「熟成が終わった段階で出来の良いのを選び献上致します」
``` 在熟成完成后选择最好的并献上。 ``` (Note: I have omitted the honorific language used in the original text in this translation)
「任せたよ」
"交给我了"
それだけ言うと静子はきびすを返してワイン醸造蔵を後にした。
那么说完,静子回了一个白眼,离开了葡萄酒酿造厂。
美濃と尾張の市場には少量ずつだが信長の新貨幣が流入し始めていた。需要に対して供給が追い付いておらず、市場では混在して利用されている。
美濃和尾張市场开始出现少量信长的新货币流入。由于供应跟不上需求,这些货币在市场上混杂使用着。
それでも新たな銅貨の流入により、僅かずつとは言え鐚銭が回収され始め、市場から撰銭(えりぜに)に起因する騒動が少なくなってきていた。
然而,随着新铜币的流入,锞钱开始逐渐被回收,尽管稍微有点,市场上由铸币引起的骚动正在减少。
貨幣の呼び方を変える気が無かった信長だが、最も身近な銅貨が従来の永楽銭と同じく丸型で穴が開いているため、「先を見通せる」、「商売の縁(円)が出来る」として、いつしか「円」と呼ばれるようになっていた。
货币的称呼一开始并没有改变的信长,但因为最为常见的铜钱与永乐钱一样是圆形且有洞的,被认为是「可以看得出未来」、「能够带来商业缘分(周围)」,因此渐渐地被叫做「圆」。
そうした市場の動きを他所に、静子は新居の傍に新しい施設を建設し始めた。それは私塾、現代で言うならば私立学校に当たる。
在那个市场变化莫测的时候,静子开始在她新家附近建立新的设施。那就是私塾,现在与当今的私立学校相当。
今までは徒弟制度よろしく先達が後輩に教え伝えるので十分であったが、先達に対して教えを乞う後輩の数が多くなりすぎ、先達は本来の業務が疎かになり、後輩に関しても教育の度合いにばらつきが出るという問題が発生していた。
过去学徒制度式的前辈向晚辈传授经验已经足够了,但是后来向前辈寻求教导的晚辈人数增多,导致前辈无法完成本来的工作,晚辈的教育水平也存在差异。这就引发了问题。
そこで急遽学校を建築し、専門の教育機関として独立させることにした。
于是我们决定紧急建立一所学校,并将其独立为专业教育机构。
学校とは言っても収容人数は百人に満たず、平屋造りで部屋数もそれほど多くない。
即使称之为学校,容纳人数也不足百人,平面建筑也没有很多房间。
ただし、教室以外にも特殊教室として図書室、技術室、家庭科室、音楽室、美術室、武道場に運動場と、現代の中学校程度の設備は整えられていた。
然而,除了教室之外,还准备了图书馆、技术室、家政室、音乐室、美术室、武道场和运动场等特殊教室,设备已经配置到现代中学的水平。
何もかもが手探りで始まった学校ゆえに、入学できる者は静子の邸宅で働く者のみに限られた。
由于一切都是摸索着开始的学校,因此能够入学的人只有在静子宅邸工作的人。
教育内容は基本的な文字の読み書きに加えて、算盤を用いた四則演算までを必修とした。
教育内容包括基本的汉字阅读和写作,以及必修使用算盘进行四则运算。
この他にも必修技術として料理に裁縫、掃除に洗濯と言った生活に必要な技能を男女わけ隔てなく教え込む。
除此之外,还要教授烹饪、缝纫、清洁和洗涤等生活必备技能,男女不分地教授。
選択科目として、希望者には農機具などの整備や修理、楽器の演奏や譜面の読み方、絵画や書道、華道、茶道と言った芸事なども学ぶことが出来る。
作为选修课,有兴趣的人可以学习农机维修、乐器演奏、乐谱阅读、绘画、书法、茶道等艺术技能。
(武芸で薙刀の指南が出来る人は蕭ちゃんに伝手があるらしいけど……さて、剣術の指南役は誰にしようか。宮本武蔵はまだ先だし、塚原卜伝はもう亡くなっているし、上泉信綱は無理だろうね。とすると、やはり上泉信綱から免状を与えられた柳生宗厳しかいないか。今は松永久秀に仕えているはずだから難しいかな……一回足満おじさんに相談してみるかな)
(据说能够进行长刀指南的人有蕭小姐的关系......那么,剑术指导者该找谁呢。宫本武藏还很遥远,塚原卜传已经去世,上泉信纲也不可能了。那么,只有从上泉信纲那里获得免状的柳生宗严了。他现在应该仕奉于松永久秀,所以可能比较困难......还是先向足满叔叔咨询一下吧)
「お、静子。ここに居たのか……ああ、そのままで構わん」
"哦,静子。你在这里啊……哦,保持现在的姿态没关系。"
色々と考え事をしていると背後から声を掛けられて振り返る。信忠が馬上から手を振りながらこちらに近づいてくる。馬から下りようとした静子を、信忠は手で制した。
转头后,他被人从背后喊住。信忠骑马向他招手,走近了。静子正要下马,信忠阻止了她。
「こっちに顔を出すのは珍しいね」
“很少见你露个面啊”
「偶には静子の顔を見ないとな」
必须偶尔见见静子的脸
そんな事を話しつつも信忠は静子へちらちらと視線向ける。
即使在谈论那样的事情,信忠也会偷偷地瞥向静子。
その様子から何か良い事があったのだが、自分から言い出すのは憚られる。何があったか聞いてくれという雰囲気を漂わせていた。
从那种态度看来肯定发生了什么好事,但是自己说出口又觉得有些不好意思。他/她透露出一种想要让别人问自己发生了什么事的氛围。
あえて無視する事も出来たが、それをして臍を曲げられても面倒だと考え、譲歩することにした。
故意不理会也可以,但考虑到即使那样做可能会带来麻烦,我决定退让了。
「随分とご機嫌だけど、何か良い事でもあったのかな?」
"你很高兴,是因为有什么好事吗?"
「ふっふっふ、判るか? どうしてもと言うのなら教えてやらんでもない」
“嘿嘿嘿,明白了吗?如果你非得要我告诉你的话,我也不一定不会告诉你。”
(面倒だなあ)
好麻烦啊
信忠のテンションが上がるほどに、静子のテンションは果てしなく下がっていった。しかし、有頂天の信忠には静子の態度も目に入らない。
随着信忠的情绪高涨,静子的情绪则不断下降。但是,一旦信忠陷入狂喜状态,他就完全没有注意到静子的态度。
「聞いて驚け、静子! 俺は年明けより、父上から東国征伐の総大将に任命されることが決まったのだ!」
“听着,惊讶吧,静子!我已经从新年开始被任命为东国征伐的总指挥,这件事已经确定了!”
「へー、良かったね」
"哦,太好了"
「おい! もうちょっと喜んでくれても良いだろう!」
“喂!你不觉得你应该更高兴一些吗!”
「うん、良かったね。良い子良い子」
"嗯,很好。好孩子,好孩子。"
「やめぬか! 俺はもう二十前だぞ! 頭を撫でられて喜ぶ歳ではないわ!」
"别摸我头!我已经快20岁了,不是那种被摸头就高兴的年龄了!"
頭を撫でられた信忠が恥ずかしさのあまりに叫ぶ、その声に驚いた馬が動き出しそうになったため、手綱を引いて制動を掛けた。
当信忠被抚摸头时,由于尴尬而尖叫,马因为惊讶而差点走开,因此拉紧缰绳并制动。
その間、身動きできない信忠の頭を、静子は存分に撫でまわした。
在此期间,静子尽情地轻抚着无法动弹的信忠的头部。
「それで、東国征伐はいつから始めるの」
“那么,东国征讨从什么时候开始?”
信忠の頭を撫でるのをやめると、静子は東国征伐の話をふった。
停止抚摸信忠的头后,静子开始谈论东国征伐的话题。
東国征伐と言うが、相手は武田と考えて良い。上杉は既に臣下となっているが、それが影響してか武田はますます態度を硬直させ、織田側との交渉を蹴り続けている。
东国征伐所指的对手可以认为是武田。上杉已经成为臣下,但这好像对武田产生了影响,使其态度更加僵硬,继续拒绝与织田方面的谈判。
信長としても武田の態度は織り込み済みであり、度重なる交渉は『対話は十分行った』という実績の為であった。
信长已经考虑到了武田的态度,在多次谈判中,这是为了证明“对话已经充分进行”。
「俺としては年明け早々にでも軍を進めたいが、それに先立つ情報がまるで足りぬ。ここは腰を据えてじっくりと情報を集めなくてはならない。特に敵方の城の配置と補給路、水源地や河川の位置なども判れば尚良し。これらを押さえた上で、必殺の作戦を練って、一息に叩き潰すのが理想よ。無論、武田が動かぬ前提ではあるがな」
“我想尽早开始军事行动,但是我们还没有足够的情报。我们需要静下心来,收集更多的信息。尤其是敌方城市的布局,补给线,水源和河流的位置等等。有了这些信息,我们可以制定必杀计划,一举消灭敌人。当然,这是在武田不会动的前提下。”
「取りあえず攻め込んで、現地で作戦を考えるとか言ったら、引っ叩いてでも止める気だったけど、その必要はなさそうだね」
“暂且进攻,然后在现场考虑战术,虽然我本来是想打击他们的,但似乎没必要了。”
「流石に以前の単騎突撃のような真似はせぬ。必勝を期さねばならぬからこそ、一撃で仕留めねばならぬ」
“自然而然地,不会像以前单枪匹马的突击那样妄动。正因为必须要确保胜利,所以必须要一击制敌。”
「徳川、上杉との連携も考えないとね」
“我们也考虑与德川和上杉合作。”
「そうだ。上杉は実際に動かずとも良い。攻め込む気配を見せるだけでも、武田としては兵力を割かざるを得ないからな。とは言え、不安が無い訳でもない」
“没错。其实上杉不用去动,只要显示出攻击的意图,武田就不得不消耗部队了。但是,也不是完全没有不安全感。”
「それは?」
这是什么?
「北条だ。今もなお、奴の旗幟は定まっておらぬ。しかし、敵となるなら、武田と一緒に潰すまでだ」
“北条说道:“即使现在,他的旗帜仍未确定。但是,如果他成为敌人,我们将与武田联合直至消灭他。””
「勝頼の妻は北条の人間だからね。それを考慮しても北条は動けないんじゃないかな?」
「胜世的妻子是北条家的人。考虑到这一点,北条家可能无法行动,不是吗?」
「それならそれで構わん。武田が滅べば北条がどう足掻こうと、もはや状況は覆らぬ。北条さえ潰せば残りは烏合の衆よ。後はじわじわと圧力を掛ければ良い」
"如果那样的话,也没关系。如果武田灭亡了,北条将再怎样挣扎,形势也不会改变。如果北条被消灭了,剩下的就是一群杂鱼了。然后只需逐渐施加压力就行了"
既に頭の中では大枠の計画が見えているのか、信忠の態度は自信に満ち溢れていた。実際に信忠の考えは間違っていない。
信忠充满自信,他的头脑中已经出现了大体的计划。实际上,信忠的想法是正确的。
彼我の戦力を考えれば、慎重に計画を推し進め、確実に武田を滅ぼしさえすれば、後はどうとでもなる。
考虑到对方和我方的实力,我们必须谨慎地计划并确保彻底消灭武田家,剩下的事情就不难处理了。
織田に降れば良し、さもなくば敵として潰すのみ。信長の手法を真似ているが、定石通りであり、そこに大きな間違いはない。
降服于織田家是最好的选择,否则只能被视为敌人消灭。仿效信长的策略是行之有效的,毫无疑问地。
しかし、静子には奇妙な不安がしこりのように残っていた。
然而,静子心中仍感到一种奇怪的不安,像一个结块一样留存着。
(……やめよう。根拠のない不安で手を停めれば、機会を失う)
(……停下吧。如果因为没有根据的不安而停下手,就会失去机会。)
物事が順調に運んでいる時こそ危うい。好事魔多しの故事にあるように、思い通りに物事が進み過ぎている事に静子は不安を感じていた。
万事顺利时最难保守。就像谚语所说,“好事多磨”,静子感到过于顺利的事情正让她感到不安。
意識して、頭の中から不安を追い出すと、静子は人の好い笑みを浮かべる。
当静子意识到并排除了她内心的不安后,她露出了友好的微笑。
「上手くすると東国は数年で平定出来るかもね」
“如果做得好,东国也许可以在几年内平定。”
「そう願いたいものだ」
"希望如此"
静子の言葉に信忠は屈託なく笑った。
静子的话让信忠毫不犹豫地笑了。