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《サムデイ イン ザ レイン(Someday in the Rain)》【剧本原文】

2021-08-05 22:54 作者:eftvc  | 我要投稿

本文采用《ザ・スニーカー2006年8月号》中刊载的版本,与实际剧集略有出入。

格式受专栏限制无法还原,PDF版会在日后发布,请留意评论。


〇北高正門。天候曇り。

冬服姿で下校していく生徒達。女子はセーラーの上にカーディガン、男子はブレザーの下にニットのベスト。マフラーを巻いている生徒もチラホラ。

〇部室棟遠景、背景に曇り空。

キョンN 「文化祭やその後にやってきたゴタゴタも終了し、早や冬の足音が山風とともに聞こえてくる今はもうそろそろ十二月で、建築以来の古さを誇る旧館、この部室棟はその壁の薄さのせいもあって、屋内にいながら妙に寒々しい日のことである…」

※注Nとはナレーションのこと。

 

(OP)

 

〇文芸部部室。

キョンと古泉は向かい合ってカードゲーム(ドラゴン☆オールスターズ)、長門(制服の上にカーディガン)はテーブルの隅で読書中(『赤頭巾ちゃん気をつけて』庄司薫・中央公論社ハードカバー、図書館貸し出し本)。

みくる(メイド姿)は座って編み物(マフラー)をしている。

キョン、ふと顔を上げる

キョンM 「毎度いろんなとに巻き込まれてきたSOS団…というよりもっぱら俺だったが、しかしそんな事態が毎日毎日律儀に訪れるわけはなく、だいたい毎日のようにアレやコレやの非日常爆弾が炸裂していたら俺の身が保たず、心のほうはもっと保たない」

※注とは心の中でつぶやいているモノローグゼリフのこと

キョン、傍らに置いてあった湯飮みのお茶を飲みつつ、

キョンM 「しかしハルヒがいないとホント、静かでいいな…。でも少し、静かすぎるか……」

キョンの視線が無人の団長机に向く。

机の上に雑多な物が散らばる下、『世界の鍋百選』というムック本やクリスマス特集の雑誌が隠すように積み重なっている。

× × ×

キョン、サイコロを一つ振ってテーブルに転がす。

キョンM 「よく考えたらハルヒや朝比奈さんたちと出会って、もう半年経ってんのか」

古泉が転がすサイコロの出目から目を逸らし、部室内に顔を巡らすキョン。部屋の隅にある段ボールに入っている薄汚れた野球グローブとボール、短く切られて怙れた笹にかかっている短冊、壁に画鋲で貼ってある集合写真(孤島の浜辺で水着になっている全員)、ハンガーラックにかかっているみくるの衣装(バニーガール、ナース服、夏用メイド服、ウェイトレス、アマカエルの着ぐるみ、セーラー服とカーディガン+マフラーも)、テーブル上の四台のノートパソコン。

キョンM 「いろいろやらかしてきたもんだ。ハルヒが原因なものもあれば、そうでないものも含めてな。まあ、たいていはこうして俺たちがまったりと時を過ごしている最中に、あいつが突然飛び込んできて始ま――」

モノローグが終わらないうちに部室のドアが勢いよく音を立てて開く。

ハルヒ 「みんな聞いて! 朗報よ!」

携帯電話を掲げて笑顔いっぱいのハルヒ。格好はセーラー服にカーディガン。

キョンM 「…またか。こいつの言う朗報とやらが、俺たち…特に俺と朝比奈さんにとって朗らかな報告となったことなど、実際ほとんどないのだが」

 

キョン 「今度は何だよ」

ハルヒ 「部室に暖房器具を設置する手はずが整ったわ」

ハルヒ、ずかずかと団長机に向かい、ドスンと座る。

みくる 「あっ。はい、はい」

みくるは編んでいた毛糸と棒針を置き、いそいそとお茶の準備を始める(嬉しそうに)。

ハルヒ 「映画撮ったときにスポンサーになってくれた電器屋さんが提供してくれるって。去年の売れ残りを倉庫にしまったっきり忘れちゃってて、処分に困っている電気ストーブでよければって、さっき電話があったわけ」

キョンM 「ハルヒにわざわざ電話して、そんな申し出をするほどヒマでも親切でもないだろうから、どうせこいつがゴリ押しでねじ込んだのだろう」

ハルヒ 「だからね、キョン。あんた、これから店に行って貰ってきてちょうだい」

キョン 「俺が? 今から?」

ハルヒ 「そう。あんたが、今から」

キョン 「お前、俺に毎日往復している山道をもう一回下りて、しかも電車で二駅かかる電器店まで行ってから、おまけに荷物抱えてまたここまで戻って来いって言うのか」

ハルヒ 「そうよ。だって急がないとおっちゃんの気が変わっちゃうかもしれないじゃない。いいカらさっさと行きなさい。どうせヒマなんでしょ?」

キョンM 「この部室にいる時点でヒマでないヤツなどいないような気がするが」

ハルヒ、みくるの入れたお茶をズルズル啜る。

キョン 「お前はヒマじゃねえのか」

ハルヒ 「あたしはこれからしないといけないことがあるから」

ハルヒ、にんまりとみくるを見る。キョトンとしているみくる。

キョン、古泉を見る。手持ちのカードをテーブルに伏せ、わずかに肩をすくめる古泉。

ハルヒ 「古泉くんは副団長で、あんたはヒラの団員なんだから、階級の低い方がキリキリ働くのはどこの組織だって同じよ。もちろんSOS団もそのルールを採用しているわ」

キョンM 「人使いが荒いのは今に始まったことじゃないが、…まあいいか。今回ばかりはハルヒもマシな用件を取り付けてきた。ちょうど部室に暖房器具が欲しいと思っていたところだ。俺が行くのでなければなおのことよかったのだが、朝比奈さんや長門に行かせるくらいなら俺が行くさ」

キョン 「わかった、わかった」

腰を上げ、立ち上がるキョン。古泉は意味ありげな微笑。

古泉 「どうぞ、お気をつけて」

みくる 「あ。あたしも行きましようか?」

ハルヒ 「みくるちゃんはいいの、ここにいなさい、雑用係はキョンの使命みたいなものなのよ」

みくる 「はあ…」

心配そうにキョンを見るみくる。長門は一切顔を上げず、読書中。みくる、何か思いついたように手を合わせるとハンガーラックへ歩み寄り、ぶら下がっているセーラー服にかけていたマフラーを持ってきて、

みくる 「今日は冷えますから…」

キョンの首に巻いてやる。一瞬驚いてからホワンとした表情になるキョン。

キョン 「いやぁ……どうも」

ハルヒはやや不機嫌そうに、

ハルヒ 「は・や・くっ。行きなさいよっ」

キョン、ひらりと片手を振って部室を出る。

× × ×

ハルヒ、窓際に立つて中庭を見下ろしている。中庭をキョンが横切って歩いていくの確認し、パッと振り返る。

ハルヒ 「さ、邪魔者は消えたわ」

みくる 「えっ?」

ハルヒ、机の中からデジカメを取り出す。不安そうにピクっとなるみくる。

ハルヒ 「みくるちゃん、あなたの写真撮りたいから、ポーズとってくれる?」

みくる 「ええっ? なな、なんの写真ですか?」

ハルヒ 「決まってるでしよ、文化祭で上映した映画、『朝比奈ミクルの冒険エピソード00』をDVDにするから、そのジャケット撮影よ」

みくる 「えええつ。あれ、本当に作るつもりなんですかぁ? あきらめてくれたんじゃあ…」

ハルヒ 「あん時はキョンがうるさかったから。いいじゃない、今なら反対するヤツもいないしね」

ハルヒ、ニャリと笑ってカメラを構える。長門は無反応で読書中。おろおろするみくるに、古泉が微笑んで肩をすくめてみせる

〇高校前の坂道。

キョン、坂を見下ろしながら下っている。両手をポケットに突っ込み、テクテクと。

キョンM 「最初にこの坂道を上って登校した日にはウンザリさせられたが、半年以上通っているとすっかり慣れちまった。ハイキングコースみたいな登下校にも、そしてSOS団にもな」

キョン、歩きながら遙か下に広がる風景を眺めて、やれやれという表情

キョンM 「今頃、俺のいない部室でハルヒは何をやってんだろう。ヒマだからとかなんとか言って、朝比奈さんをオモチャにしてなければいいんだが」

首に巻くマフラーツ触るキヨン。

〇文芸部部室。

最初の位置からまったく動かず本を読んでいる長門。みくるは怯えた表情で盆を抱えて棒立ち。

ハルヒ 「古泉くん、レフ板係お願いね」

古泉 「解りました」

古泉、部室のガラクタ置き場からレフ板(べニヤに車用サンシェードを貼ったもの)を引っ張り出す。

ハルヒ 「みくるちゃん、ばうっとしてないでポーズをとりなさい。ほら、ほら」

みくる 「は、ふああい…」

 

古泉がレフ板を掲げる前で、みくるを激写するハルヒ。

様々なポーズを取らされるみくる。せわしなく色々な角度からシャッターを切りまくるハルヒ。

〇県道沿いの坂道。

自動車が行き交う車道沿いの道を歩いているキョン。背景の山際がほのかに紅葉している。

〇文芸部部室。

ハルヒ、カメラを下ろし、ニパっと笑う。片手にバニーガール衣装。

ハルヒ 「そろそろ衣装チェンジしましよ。次はこれ」

みくる 「えー…」

ハルヒ 「いいから、いいから」

腰を引かせるみくるをガッシとつかみ、ハルヒは強制着替えを開始。

みくる 「あわわ…わわつ」

古泉は微笑したまま、静かにレフ板を置くと部室を出て行く。

ポイポイっと空中に投げ出されるメイド衣装。ただし脱衣そのものは長門の頭が邪魔になって見えないカメラワーク。

〇文芸部部室前通路。

古泉、湯飲みを片手に部室ドアにもたれている。背後にハルヒとみくるの嬌声。古泉はのんきに、

古泉 「平和ですねえ」

〇文芸部部室。

ハニーガールとなったみくる。胸元を押さえつつ、ぶるっと震え、

みくる 「うう、さぶいです…。それに、恥ずかしいですよぅ…」

ハルヒ 「みくるちゃん、あなたはもっと自信を持つべきよ。何と言ってもこのあたしが選んだ学校一のマスコットキャラなんだから。ね、古泉くん」

古泉、またレフ板を持っている。爽やかに、

古泉 「まったく、その通りかと」

ハルヒ、バニーガール朝比奈の激写を開始。また様々なポーズと角度から。

ハルヒ 「んじゃ、次。これ着て」

ハルヒの手にはナース服。また脱がされていくみくる。

もちろんその様子は長門の頭に隠れて見えな。ハルヒと、ばたつくみくるの手足だけが辛うじてかいま見える。

〇文芸部部室前通路。

部室ドアにもたれて優雅に微笑む古泉。湯飲みを傾け、のんきに、

古泉 「ふー」

〇光陽園駅前。

切符を買っているキョン。

〇文芸部部室。

ナース姿のみくるをハルヒ激写。古泉はレフ板持ち。長門は読書中。

ハルヒ 「はい次。これ」

持っているのはアマガエルの着ぐるみ。

みくるは恐る恐る、

みくる 「あのう、さっきのナース服もそれも、映画の中で着たりしてないんですけど…本当にこれ、ジャケットの撮影なんですか?」

ハルヒ 「うん、そうよ。でも今アイデアが閃いたわ。この分たと写真集だって作れそうね。どう? 古泉くん、このアイデア」

古泉 「まことにけっこうなアイデアかと」

みくる 「ひええ」

ハルヒ 「いえ、侍って。どうせDVDにするなら、特典としてオマケ映像をつけるべきよね。とう? 古泉くん」

古泉 「非常によいお考えかと」

みくるにウインクするぐ古泉。縮こまるみくる。

〇文芸部部室前通路

部室ドアにもたれている古泉。ふと廊下の窓から外を眺め、

古泉 「「どうやら、一雨来そうですね」

〇電車内。(座席は埋まっている。『光陽園女子学院』の生徒が多い

つり革を持って揺られているキョン。窓の外では、曇り空が濃くなっている

〇文芸部部室。

アマガエル衣装のみくるを撮影した後、今度はウェイトレス(ミクルの冒険で使用)に着替えさせようとするハルヒ。

ハルヒ 「ほら、脱いで脱いで」

みくる 「わわっ、ちょっ…。ひえっ」

 

あわや脱がされそうになったみくるの半裸シーンが見えると思いきや、それまでじっと本を読んでいた長門が、不意に立ち上がって本棚に移動、みくるの姿を覆い隠す。

 

ハルヒ(off) 「みくるちゃん、また大きくなったんじゃない? ますますダイナマイトね」

みくる(off) 「涼宮さ…その、触らないで…ひっ」

※注off)とは、画面上に出ていないキャラクターが話すセリフのこと。

本を選び終えた長門、再び定位置の椅子に座る。その動きにつられたようにもつれ合うハルヒとみくるも移動。結局、着替えシーンは映らない。ハルヒの姿とわたわたするみくるの髪や手足のみが長門ごしに見える。

長門、淡々と読書していたが、ふと

カメラのほうを見て、しばらくそのまま。(冷たい眼差し)

――中CM――

〇大森電器店。

大森電器店店長(大森栄二郎)が段ボールを床にドスンと置く。

 

大森 「これが約束のストーブだよ。持って帰れるかい?」

キョン 「ええまあ、なんとか」

大森 「あの可愛い娘さんたちは元気かな」

キョン 「一人が元気ありすぎて困ってますよ」

キョン、店内を見回す。

キョン 「CMの効果はありました?」

大森 「正直言って、あまり変わってないね」

キョンM 「そりやそうだろうな。高校の文化祭映画上映中のCMじゃあ、あまりに局地的すぎる。よくスポンサーなんかになってくれたものだ」

大森 「ところで、あの元気のいい娘さんが電話で言っていたんだが、映画の続編を作るって本当かい?」

キョン、あきらめ顔。

キョン 「あいつがそう言ってんだったら、そうなるんでしようね」

大森 「次もスポンサーになるよう頼まれてしまったよ」

大森店長はおかしそうに笑い、

大森 「そのストーブは次のスポンサー料の前渡しだと思ってくれ」

キョンM 「そういうカラクリだったか。いくら何でもタダでくれるなんて話がうますぎると思ったんだ」

× × ×

大森店長に頭を下げるキョン。にこやかに手を振る大森店長。キョン、段ボールを抱えて店を出て行く。

キョン 「さて、帰るか」

〇文芸部部室。

長門が一人で本を読んでいる。

〇電車内。(がら空き

座席に座って揺られているキョン。傍らに電気ストーブ入り段ボール。

〇文芸部部室。

読書中の長門。ふっと顔を上げて窓のほうを見る。

〇光陽園駅前。

改札から出てくるキョン。そこに喫茶店から出てきた谷ロと国木田が通りすがる。

谷口 「よう、キョン。何やってんだ、こんなところで」

キョン 「見て解らないか。荷物運びだ」

谷口はニャニヤと、

谷口 「はん、ご苦労なこった。どうせまた凉宮の命令だろ」

キョンM 「どうやら半年もあればクラスメイトが俺の立場を正しく認識するに充分のようだった」

国木田は穏やかに、

国木田 「これから学校に戻るの? 本当にご苦労様だね」

キョン 「まったくだ」

谷口と国木田、手を挙げながら去っていく。

谷口 「じゃあな」

国木田 「また明日」

キョン 「おう」

高校への道を歩き出そうとしたところに、ポツリと雨が降ってくる。まだ雨粒程度。

キョン 「ちぇっ、降って来やがった」

空を仰ぎ見るキョン。

キョンM 「天気予報じゃ降水確率十パーって言ってやがったのに、あてにならん気象予報士だ」

 

段ボールを抱え直し、歩き出す。

キョン 「本降りにならんことを祈ろう」

〇渡り廊下。

ハルヒ、みくる(ウェイトレス姿でツインテール)、撮 影機材を抱えた古泉が歩いている。ハルヒは意気揚々、みくるは恥じらいつつ、古泉は微笑顔。

古泉がふと足を止め、廊下の窓から空を見上げる。

古泉 「雨のようですね」

窓ガラスが雨粒で濡れ始める。徐々に勢いを増す雨。

ハルヒとみくるも立ち止まる。

みくる 「キョンくん、大丈夫かな…」

ハルヒは微妙な表情で、窓の外を見つめている。

〇高校へ至る通学路県道沿い。

段ボールを抱え、息を切らしながら歩いているキョン。

小雨に濡れながら、

キョンM 「今ほどあの部室が恋しいと思ったことはない。一刻早く朝比奈さんの入れてくれるお茶にありついて、心と身体をあっためたいぜ」

〇文芸部部室。

長門が一人で読書している。と、突然扉が開かれ、

鶴屋 「やっぽー、みくるいるーっ? って、あれ? 長門ちだけ?」

長門は無言のまま。

鶴屋 「明日の掃除当番替わって欲しくてさー。それ頼みに来たんだけど、みくるは?」

長門、無言で片手を校舎の方に向ける。

鶴屋 「そっちの方にいんのかいっ? あんがとっ」

さくっと立ち去る鶴屋さん。

〇高校前坂道。

小雨の中、黙々と坂を上るキョン。

〇校舎近景。部室の向かいの廊下。(窓の外からの映像

窓の中で撮影中のハルヒ、みくる、古泉。そこに鶴屋が合流してみくるに何か言っている。〝明日なんだけどさっ、ちょっと用事人っちゃって、掃除当番替わってくんない?〟というロバク。

みくる頷く。ついでにみくると肩を組んで記念撮影する鶴屋。その後、いつもの笑顔でさっくりと立ち去る。

〇昇降口。

キョン、校門から走って昇降口に辿り着く。

キョン 「やれやれ」

段ボールを置き、服についた雨を手で払っているキョン。そこに現れる鶴屋。

鶴屋 「あれれ、キョンくん、お使いだったのかい?」

キョン 「鶴屋さん」

鶴屋 「道理でっ」(楽しげに)

キョン 「は? 何がです?」

鶴屋 「んーっ(猫のような口になりつつ)、何でもないっさ! ご苦労さんっ。んんっ、濡れてるねっ」

鶴屋、広げたハンカチをキョンの頭に放るようにして被せる。

キョン 「あ、ども」

鶴屋、にこやかな表情で鞄から折りたたみ傘を取り出しながら、キョンが首に巻いているマフラーを指さし、ますますニコヤカに、

鶴屋 「じゃーねーっ、ハンカチなら、それと一緒に後でみくるに渡しといてっ」

そのまま下校していく。その後ろ姿を見送りながら、怪訝な顔つきのキョン。

キョンM 「相変わらず、挙動のよく読めない人だ。さばけた感じの良い先輩だが」

〇文芸部部室。

キョン、段ボールを携えて部室に入り、マフラーをほどいてハンガーラックのみくるの制服に掛ける。このとき衣装の中にウェイトレスがないが、キョン気づかず。

長門は元々の位置で読書中。

キョン 「長門、お前だけか」

わすかに頷く長門。

キョン 「ハルヒ達は?」

わずかに首を傾げる長門。

〇体育館。

ハルヒが撮影するビデオカメラ視点映像の中で、体操着姿のみくるが跳び箱をしている。着地に失敗し、コケるみくる。

ハルヒ(off) 「そう! そこはコケるべきところよ! なかなか解ってるじゃない」

画面の中にデジタル表示で録画中であることを示す『REC』と、時間『4:10』が出ている。カメラが振られ、レフ板を持ってニコニコしている古泉が一瞬映りこむ。ここで一端映像が途切れ、再開したときには時間表示は『4:15』になっている。

チアガール姿にチェンジしたみくるが、あやうい手つきでバトントワリングしている。バトンを投げ、取るのに失敗して頭に当てるみくる。

みくる 「あいたぁ」

頭を押さえてしゃがみこむみくる。

ハルヒ(off) 「愡れ愡れするくらいのドジっこぶりねえ。ひょっとしてワザとやってない?」

カメラが揺れて古泉を写しだす。

ハルヒ(off) 「古泉くん、ちょっと、これ持ってて」

カメラの持ち手が古泉に替わる。時刻表示が『4:16』に。映像の中、みくるに駆けよっていくハルヒ。バトンを拾い上げると、

ハルヒ 「こうするのよ、こう」

見事なバトン芸を披露する。

〇文芸部部室。

キョンM 「三人が今どこで何をしているのか、少しは気がかりだが、さすがに嵩張る荷物持っての坂道登りはこたえたぜ。しかも同じ道を下校時にまた下りないといけないときた日にはなおさらだ」

 

ぶるっと震えたキョン、段ボールから電気ストーブを取り出して、コンセントを繋ぐ。スイッチをオンにして、かじかむ指先をかざす。

 

キョン 「あー、指先が冷てえ」

ゆっくりと赤みを増す電気ストーブ。キョン、しばらくストーブ前にしゃがんでいたが、パイプ椅子に座り、テーブルに着く。テーブル上にはやりかけのカードゲーム。

キョン 「疲れた…」

キョンはテーブルに突っ伏す。薄目を開けてばんやりしているウチにウトウトし始める。

霞がかった視界の端で、長門が本から顔を上げてキョンのほうを見る――と同時にブラックアウト。

× × ×

しとしとと降り続ける雨の音。テーブルに突っ伏して眠り続けるキョンと、無言で読書(『蹴りたい背中』綿矢りさ)している長門の姿。長門が時折ページを捲るだけで他に動きなし。それたけのシーンがカメラ固定でしばらく続いた後、長門は音もなく本を閉じて立ち上がる。

〇部室棟遠景。

本降りになっている雨。日が暮れかけているので薄暗い。

〇文芸部部室。

眠っているキョンのアップ。室内灯の灯りを誰かが遮っているような影がキョンの顔に落ちている。

キョン 「ん……」

キョン、人の気配を感じてゆっくり目を開ける。誰かが跳びすさったような音。顔を上げると、ハルヒが跳びすさった後のようなポーズで立っていた。部室内にいるのはハルヒとキョンだけ。

キョンの肩には女子用カーディガンが引っかけられている。二枚。

キョンは部室を見回し、やや掠れ声で、

キョン 「あん? お前だけか」

ハルヒ 「何よ。悪いの?」(ちょっと不機嫌な声)

キョン 「悪くはないが…」

顔を撫でながら、

キョン 「お前、俺の顔にイタズラ書きとかしてないだろうな」

ハルヒ 「しないわよ、そんな幼稚なこと」

キョン 「他の三人は?」

ハルヒ 「先に帰ったわ。あんた、なかなか 起きそうになかったから」

まじまじとハルヒを見るキョン。

キョンM 「で、お前は帰らずに残ってたのか」

ハルヒ、キョンを睨みつつ、早口で、

ハルヒ 「しようがないでしよ、あんた寝てるし、部室に鍵かけて帰らないとダメだし、それに雨も降ってるしっ」

キョン、窓の外を見る。本格的に降っている雨。

ハルヒ 「カーディガン、返しなさい」

キョン 「あ? ああ」

肩にかかっていたカーディガンを取り、ハルヒに手渡す。しかし、もう一枚のカーディガンがキョンの肩に残される。なぜか怒ったような顔でカーディガンに袖を通しているハルヒ。キョン、二枚目のカーディガンを手に取りながら首をひねる。

キョンM 「一枚はハルヒのもので間違いない。だが、このもう一枚は誰のだ?」

 

 

キョンの視線が動き、長門がいつも座っているテーブルの端(閉じた本が置いてある)と、みくるのメイド衣装が掛かっているハンガーラックを見比べる。

キョンM 「って待てよ。ということは、朝比奈さんは俺が寝ている横で着替えをしたのか? くそ、どうして本当に寝ちまったんだ。寝たふりをしておけば…」

ハルヒ、カーディガンを羽織り終え、

ハルヒ 「さ、とっくに下校時間だし、あたしたちも帰るわよ」

キョン、カーディガンを椅子の北冂に掛けながら、

キョン 「ああ。でも俺、傘持ってきてないぜ」

ハルヒ 「一本あれば充分でしょ」

キョンの前に手を突き出すハルヒ。握っているのは男物の黒いコウモリ傘。

〇校門外。

相合い傘で雨の中を歩くキョンとハルヒ。傘の柄を持っているのはキョン。

ハルヒ 「もっとこっちに寄せなさいよ。あたしが濡れるじゃないの」

キョン 「充分寄せてるだろ……。ああ? この傘、お前のじゃねえな。職員用って書いてあるぞ」

ハルヒ 「学校の備品だもん、生徒が使って悪いことなんかないでしょ。それとも何? 濡れて帰りたいってんなら貸さないわよ」

ハルヒはキョンから傘を奪い取り、走り出す。キョン、その姿を眺めつつ、

キョンM 「まったく…。せっかくストーブを貰ってきてやったってのに、いたわりの言葉もなしか、この団長様は」

 

キョン、溜息を一つついてから、

キョン 「待てよ!」

ハルヒの後を追って走り出す。

ハルヒ、身体ごと振り向く。楽しげな笑顔。そしてアカンベー。

(ストップモーション

 

おわり。




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