柳生新阴流道眼·新阴流截相口传书 文字整理版(一)

△身懸五箇之大事
第一 身を一重に可成事
第二 敵のこぶし吾肩にくらぶべき事
第三 身を沈にして吾拳を楯にしてさげざる事
第四 身をかかりさきの膝に身をもたせ跡のえびらをひらく事
第五 左のひぢをかがめざる事
右随分心懸稽古あるべし
重々口伝有之也
(註)身懸りー太刀を構えたり、斬り込んだりした時の姿勢、身の働き、そなえ、位についての五箇条の習訓である。これに関する最も古い文書は宗厳より丹下総八郎への天正七年(一五も九)のもの、次いで三好左衛門尉への天正八年のものが残されている.
「第一」は、敵に対し真正面の身になることをさけて、偏え身になることを重視する意である。偏え身•横身は防ぐところも少なく、斬り込んだとき太刀も能く伸びるからである.
「第二」は、太刀を斬り込んだとき大股になり身を低くすることによって、敵の拳とわが肩が同じくらいの高さになることをいう。
「第三」も、「第二」と関連して身を低くすることである。身を低くして、わが拳を差•し出し太刀を伸ばせば、鍔にて拳がかくれ、太刀中に身が入って隙がない。これを「刀中蔵の身」という。
「第四」は、例をあげれば、撥草から大きく袈裟に斬り込んだとき身が前の膝に充分にかかり、偏え身となって腰が開く身勢になることである。
「第五」は、太刀を斬り込んだときの注意で、左臂がかがめば太刀が伸びない、これを避けるための注意である。
以上の五つの教えは介者剣法時代の当流の基本的な刀法•身勢であり、この五箇条を完備したものを「五箇之身」といって重要視したのである。この身を現在の自然体を主眼とする「直立たる身」に対し「沈なる身」という。介者剣法の刀法、身勢を考えるのに、よい手がかりになる教えである。